奇妙という名の五人兄妹

読んだ本の感想。

アンドリュー・カウフマン著。2016年11月11日 初版。



祖母の願いによって「力」を与えられた五人兄妹が、その力によって不幸になったため、祖母によって力を解除され、最後は父を許す。

〇2010年4月7日~2010年4月20日:
ウィアード家の三女アンジーが、祖母からの依頼を受け、祖母が死亡する4月20日までに、力の解除のために他の兄妹を集める。

〇2013年1月22日:
力の解除によって、アンジー以外の四人が意識不明になっており、目覚めて死んだはずの父と出会い、アンジーが父を許す。

【登場人物】
リチャード(1982年3月16日~):
危機を予見する力を持つが、それがために三度の離婚をしている。カメラマン。

P173:
カメラは、光や色は取り込んでもすべての感情を遮断する半透明の膜みたいなもんだ

ルーシー(1984年~):
道に迷わない力を持つ。迷う自由を失った事に苦悩しており、様々な男と関係する事で自由を手にしようとしている。

アバ(1985年~):
希望を失わない力を持つ。自らをアップリフタ王国の王女と思い込んでいる。実際には金持ちの妻。希望から解放される事で、アップリフタが王制でない事を受け入れる。

アンジー(1987年5月4日~):
全てを許す力を持つために、周囲から利用される。ポールの子を妊娠し、ポーレットを産む。許す力を失った事で、全てを許せなくなるが、父を許す事で救われる。

P234:
お前にあれこれとひどいことをさせたのも、許してもらえるって分かってたからだ

ケント(1988年~):
戦う力を与えられ、他人から怖れられる。

P249:
弱き者だけが、腰抜けだと思われるのを恐れる

ベナール・リチャード・ウィアード
(1960年1月22日~2013年1月22日):
五人兄妹の父親。2000年頃に自らの死を偽装して失踪していた。

ニコラ:
五人兄妹の母親。精神異常者で自らを理容師と思い込んでいる。

アニー・ウィアード【シャーク】(1928年~2010年4月20日):
五人兄妹の祖母。

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そして、君のいない九月がくる

読んだ本の感想。

天沢夏月著。2015年10月24日 初版発行。



以下、ネタバレ含む。

ドッペルゲンガーを出す必然性が無いと思った。

高校二年生の夏に鳥蝶山で事故死した結城恵太のドッペルゲンガーが、結城恵太の友人達を訪れ、鳥蝶山へ行く事を依頼する。友人の一人 花野美穂が鳥蝶山で事故にあっており、自宅にいたのはドッペルゲンガーだった。

槙本舜:
陸上部に所属しており、100mを11秒程度で走る。自分よりも100m走が0.2秒速い結城恵太に劣等感を抱いており、それで喧嘩になった事を後悔している。ドッペルゲンガーから結城恵太にライバル視されていた事を教えられ救われる。

横山大輝:
花野美穂に惚れており、結城恵太が泣いている場面から花野美穂を遠ざけた事を後悔している。ドッペルゲンガーから、結城恵太がそれを知っていた事を教えられ救われる。

西園莉乃:
中学三年生の時に結城恵太から自殺願望について打ち明けられる。

花野美穂:
結城恵太の幼馴染で相思相愛。結城恵太が父親から虐待されている事を知っている。

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インストール

読んだ本の感想。

綿矢りさ著。2001年11月10日 初版発行。



以下は、Wikipediaの『インストール (小説)』の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%AB_(%E5%B0%8F%E8%AA%AC)

インターネット上の風俗チャットに登録されている人妻風俗嬢「雅」が、野田朝子(高校三年生)が操作するか、青木かずひこ(小学六年生)が操作するかで、異なる人格になる事を、インストール(コンピューターのソフトウェアを入れ替える事、新しい機能を取り入れる事)に喩えている?

【登場人物】
野田朝子:
高校三年生。登校拒否児。パソコンを捨てようとした事で、青木かずひこと知り合い、風俗チャットのアルバイト始める。一ヶ月で30万円ほどを稼ぎ、日常に復帰する。

青木かずひこ:
小学六年生。野田朝子のパソコンを貰い受け、風俗チャットのアルバイトを一緒に行うよう勧誘する。義理の母親 かよりとの距離感で悩んでいる。

雅:
有料ホームページ「コケティッシュチャット館」に登録している風俗嬢。26歳の人妻と称しているが、朝10時~昼二時までは野田朝子が操作し、昼二時~夕方六時までは青木かずひこが操作している。客である聖璽に人格が違う事を見抜かれる。

P25:
明日の予定がないため夜を境として一日一日を区切っていく必要がなくて、明日が今日の延長線上にあるということを実感できるこの生活は、自由?

P36:
媚びの武器としての不器用は軽い笑いを誘う可愛いものだけれど、本当の不器用は、愛嬌がなく、みじめに泥臭く、見ている人間をぎゅっと真面目にさせる

P90:
自分が間違っていたなんて絶対認めたくない。そのためには自分のスタイルに根拠のない自信を持ち続けなければ生きていけない。たとえその滑稽さに内心気づいていたとしても

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孫子伝/呉越舷舷

読んだ本の感想。

塚本靑史著。

紀元前六世紀前半の中国における物語。

二作をまとめて読むと、孫子(妻である巣夸と不仲になっていく)と范蠡(晩年になって西施を妻にする)の対比のようにも思える。

孫子伝
2008年8月18日 第1版第1刷発行。



以下は、Wikipediaの『孫武』の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%AB%E6%AD%A6

孫武(紀元前555年頃~紀元前506年)の人生を描く。

【登場人物】
孫武:
斉出身の兵法家。学者肌で実家は万家だが、歴史研究に興味を持ち、戦史を探求する。呉の王族 季札に勧誘されて呉軍の強大化に貢献するも越国の范蠡に暗殺される。

巣夸:
孫武の妻。料理が上手で学者肌の夫をサポートする。孫乂、孫了の二子をもうけるが、呉で社交に目覚めた夫と気質が合わなくなる。

牟夢:
呉における孫武の妾。孫武に労りを提供。知魯瑠という子をもうける。

季札:
呉王 寿夢の四男。孫武を呉に勧誘する。

闔閭(光):
呉王 寿夢の長男 諸樊の子。 寿夢の三男 余昧の子 遼が呉王に即位していたのを暗殺して呉王になる。正妻は東譱、愛妾は西倩。

【あらすじ】
〇殺人(紀元前535年頃):
戦史研究のために「牧野の戦い」の跡地を訪れた孫武が、自らを襲おうとした不良少年達を罠によって殺害する。

〇斉での私塾(紀元前529年~紀元前518年頃):
孫武が斉にて兵法塾を開設する。教え子として呉の王子である闔閭(光)達も参加。塾はそれなりに繁盛するが、孫武は同時期に兵法塾を開いた范蠡の政治をも視野においた軍略に影響される。

〇呉国へ(紀元前517年):
孫武は、季札から「牧野の戦い」跡地での殺人が露見する可能性を指摘され、呉への移住を決意する。

〇スパイ殺害(紀元前512年頃?):
孫武は、呉王 闔閭(光)の愛妾 西倩が越国からのスパイと見抜き、王に兵法を見せる名目で殺害する。さらに、同じく越国からのスパイと見込んだ牟夢を妾としてもらいうけるが、徐々に本当の妻のように扱い、巣夸との関係が悪化する。

〇暗殺(紀元前506年):
孫武が越国からの刺客(范蠡、西倩の子 西施)によって暗殺される。

P66:
束脩とは、入門時の謝礼を意味する干肉の束で、現在日本で遊芸の師匠へ入門時に渡す、膝尽きに当たる

P127:
孫武はこれまでのところ、戦闘行為の勝ち負けと、兵の訓練だけを問題にしてきたのだった。その彼より、范蠡の話は遥かに戦争以前を捉え、国家の大計と呼ぶに相応しい内容だった

P235:
論理的な教習と基本の訓練は孫師に、楚をはじめとした異国との策略と実戦は伍師に、それぞれお任せいたします

P291:
孫武は突然無性に、牟夢を愛おしく感じた。かつて女に、これほど痒い所に手が届くごとく、細かく面倒を見てもらったことがなかった

呉越舷舷
2004年10月30日 第一刷発行。



以下は、Wikipediaの『范蠡』の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8C%83%E8%A0%A1

呉と越の争いを軸に君主や配下、愛妾達の関係性が変化していく。

【登場人物】
范蠡:
越の軍師。斉出身だが、斉の宰相 晏嬰が聡明を嫌うと考え、越で士官する。その後、越王 句践を助けて呉を打倒。女衒の陶朱公という名もあり、各地の王宮に女を送り込み、情報を集める。句践が呉を打倒した後は、その増長を警戒し、西施を伴って斉に帰る。

西施:
呉王 闔閭(光)の愛妾だった西倩の娘。越王 句践や呉王 夫差の愛妾となり、范蠡に情報を渡す。呉王 夫差との子を呉越の戦いの中で失い、最後は范蠡と斉へ行く。

夫差:
呉王 闔閭(光)の長男。覇者となる夢を見て各国を併呑していくが、越国に敗れる。

伍子胥:
楚から亡命した策士。楚の平王の姫だった姫縹を妻として楚との戦で活躍するが、やがて呉王 夫差に疎まれて自害する。

句践:
越王。呉との戦に敗れた復讐から呉を滅ぼす。

P42~P43:
世の中は仁徳や義理に英知を働かせれば、動くものと信じていた
(中略)
今の世では、栄誉など絵に描いた餅にも等しかった

P162~P163:
気力、戦力、人数で抑えれば、戦いは勝つ!
(中略)
太子のようなお考えでは、鯨を漁るにも鼠を捕らえるにも、常に全兵力を費やす結果になります。鼠は矢一本で仕留められますぞ
(中略)
周辺国の策謀や動向を、儂が判断するのか

P196:
伍子胥は貪り読んだ。そして、さすがに孫武だと思った。どれにも詳しい数学的統計が付いていて、説得力があった。例えば戦場なら、双方の勢力の推定人員などである。
他のも通信や敵情探索の方法、陣形を列挙してあった。また、陣地に適さない状態『天陥(周囲より低い窪地)』や『天隙(凹凸が激しく道の通じない所)』などの記述もあり、孫武の洞察の深さに今さらながら感心した

P256:
王様は、覇者を夢見るようになられた
(中略) 
覇者とは、周宗室を崇めてその権威になりかわり、天下に号令をかける軍事的経済的実力者をいう
(中略)
時代遅れだということに、王は気がついておられぬ

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朱元璋 皇帝の貌

読んだ本の感想。

小前亮著。第一刷発行 2010年11月2日。



以下は、Wikipediaの『朱元璋』の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%B1%E5%85%83%E7%92%8B

明の創始者 朱元璋の17歳~41歳を描く(1344年~1368年)。

栄達するに連れて虚像を演じる事となり、41歳で皇帝に即位した時に描かれた肖像画には、本人の悪相とは丸で違う聖人が描かれる。

【登場人物】
朱元璋:
明の初代皇帝。吊り目と細長い顎の悪相。

徐達:
一人目の参謀。朱元璋の幼馴染で四歳年下。

李善長:
二人目の参謀。儒学者として朱元璋に仕える。1354年から朱元璋に仕え、劉邦を手本とするよう進言する。

劉基:
三人目の参謀。浙東の四先生に数えられる学士の一人。1360年から朱元璋に仕える。朱元璋に、西の陳友諒を先に相手にする戦略を提案する。東の張士誠は資金は豊富だが消極的と主張。

【あらすじ】
〇紅巾軍に参加(1352年~)
托鉢僧から自警団長になっていた朱元璋が白蓮教の紅巾軍に参加する。濠州を拠点とする紅巾軍の二つの派閥の一方の領袖 郭士興に気に入られ、その養女 馬秀英と1352年に結婚する。

〇紅巾軍から分離(1353年~)
朱元璋は、略奪を行う紅巾軍の体質に悩み、弱者を救うための独立勢力となるため、南方攻略の名目で濠州を発つ。定遠等を攻略する。

元は淮東の塩賊あがりの張士誠を脅威として1354年に討伐軍を送るも失敗。

朱元璋は略奪を行う郭士興との関係に悩み、郭士興を病死に見せかけて暗殺する。

〇南方における勢力拡大
1356年までに朱元璋は和州、采石、太平、集慶等の都市を占領し勢力を拡大。集慶を応天符と改称して本拠地とし、紅巾軍を束ねる劉福通に江南の支配権を認めてもらう。

〇南方支配
朱元璋は、東部の張士誠、西郡の陳友諒と戦って勝利し、中華南部支配に成功する。1366年には白蓮教(紅巾軍)と決別し、紅巾軍を妖賊として弾圧。

P12:
遊牧民族たるモンゴル人が支配する元は、商業を重視しており、農業には冷淡であった。下級役人と地主に徴税をゆだねるだけで、開発を行って生産力を増やそうという発想はない

P35:
至正四年(西暦一三四四年)に流路を変えて以来、黄河は毎年のように氾濫を繰りかえし、大きな損害を出していた。一方で、もとの流路に沿って開かれた耕地は水不足に陥り、放棄を余儀なくされている

P124:
困ったのは、周辺の中小の地主が投降してくることだった
(中略)
地主は敵のはずだった。かれらが味方になれば、いったい誰から奪えばいいのだ
(中略)
勢力を拡大すると、弱き者、貧しき者のために戦うという理想を実行するのが難しくなる

P140~P142
命令を受ける身でいたい
(中略)
首領はしつこく捜索され、捕らえられて処刑されるが、それ以外の者は逃げきれる可能性が高い
(中略)
宗教があれば楽かもしれない。足もとを確かめることなく、信じる道を突きすすむことができる

P226:
農民叛乱をひきいて前王朝を倒した指導者が、次代につながる王朝を建てた例はない。王や皇帝と称して舞いあがっても、みな短期間で瓦解している。農民叛乱軍には、一時的な軍事力はあっても、知識も教養も理念もないからだ
(中略)
朱元璋はいまのところ、知識人の助言を正しく理解し、みずからの役割を演じている

P230~P231:
収入を確保する手段については、知識人たちに様々な案を出させ、多くを実行に移していた。治水工事や開墾事業を行って生産力を高めるとともに、公平な税制度を定める
(中略)
税は定めて終わりではありません。徴収を実行する機関が必要で、さらにそれを監督する制度も設けなければなりません
(中略)
銅銭を鋳造してはいかがでしょう。税の徴収が容易になりますし、貨幣は権力の象徴としての役割もあります

P283~P284:
韓林児とは何者ですか。何の力もない子供でしょう。白蓮教などという邪教の権威は、もう我らには必要ありません
(中略)
まだ子供の蔭に隠れているつもりですか

P345:
支配層にとって、後世の人々の評価は、ときとして人生そのものより重い。しかし貧農出身の朱元璋にその視点はない。だから、思いきった施策がとれる

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安禄山

読んだ本の感想。

塚本靑史著。平成24年1月31日 初版発行。



以下は、Wikipediaの『安禄山』の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E7%A6%84%E5%B1%B1

以下は、「楊貴妃伝」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-2879.html

ソグド人と突厥の混血で、15歳の安禄山(ロクシャン)が52歳で死ぬまでを描く(720年~757年)。

挿話にある井真成の話は、著者の別作品で登場するかもしれない。第八回遣唐使として日本から唐を訪れ、日本と渤海の国交を実現する。

話の要点は、以下の三つ。

①唐の皇女を娶る事で、威信を得る蛮夷
②安禄山が楊貴妃の養子となる事で地位が高まる
③唐におけるレビレイト婚

唐の太宗が、息子の妃だった楊貴妃を娶るのは、鮮卑族の風習だとも考えられる。

本作品における安禄山は楊貴妃と不倫関係にあり、反乱の噂をたてられたためにやむを得ず決起した事になっている。

P13:
ソグド人は中央アジアが本拠の、イラン系と言われているが、要は漢人のような黄色人種ではなく、鼻が高く卵形の顔をした白人系統の人種である

P16:
奚の王である。三年前、唐に入朝して公主を降嫁させて得意になっている。公主とは皇帝の娘の意である。降嫁は、その娘が異民族に嫁ぐことを意味している。つまり、唐朝と縁戚関係になったわけだ。こうなれば、唐からさまざまの援助を受けられる立場で、周囲に顔が利く

P158~P159
遊牧民は穀物欲しさに、決して侵攻を止めませぬ
(中略)
やつらに農耕を教えるしかない
(中略)
均田制(府兵制)の崩れから、半農で牧畜もする突厥が増えている
(中略)
遊牧民は気位だけは高い。だから、半農半牧を始めた突厥を蔑んで攻撃目標にしようとする

P202:
あれらのような輩を一番嫌っておられます
(中略)
煩雑な規則の多い詩の修辞技巧が、科挙の一部となっておるからです
(中略)
門閥貴族の出身である彼は、理屈っぽい科挙系官僚どもを嫌っている。それゆえ、科挙に関する属性を総て嫌う傾向になってしまう

P208:
韋堅なる官僚が、渭水に並行した運河(漕渠)を開削しつつあった。東の起点は黄河と渭水の合流点付近で、検問所の潼関があり、永豊倉(穀物倉庫)が建てられている。また洛陽と中間地点陝州には太原倉もある。以前のような飢饉が叫ばれれば、永豊倉や太原倉から漕渠を使って、食糧は長安に運ばれるので難問は氷解した

P229:
唐の帝室や貴族の一部は、もともと漢族ではなく北方の鮮卑である。遊牧民はたらふく穀物を食べることはなく、往々にして痩せていた。だから少し肥満している方が高貴に映ったのかもしれない。その観念が、女性にも適用された結果が、安禄山の目にした美女たちだったらしい。だから、彼のような肥満体の男が、時代の流れの中で皇帝隆基から寵愛されている

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完全版 知恵の七柱

読んだ本の感想。

編者:J.ウィルソン、訳者:田隅恒生。

T.E.ロレンスが第一次世界大戦において、オスマン帝国に対するアラブ側の反乱を英軍として支援した記録。

以下は、Wikipediaの「トーマス・エドワード・ロレンス」の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%89%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B9

自らが英国の利益のためにアラブ側を利用している事に対する葛藤、戦争の苛烈が描かれている。特に男色の記述が苛烈で、T.E.ロレンスが強姦された記述は真贋が議論されているらしい。

第一巻
2008年8月10日 初版第1刷発行。



第二章 反乱の気分 P64:
何年もアラブの衣装をまとって生活し、彼らの精神の土台をなすものを模倣した努力は、そのあげくに私から英国人としての自分を奪い、西洋とその習慣に新しい見方をさせることとなり、西洋を私は無にしてしまった。同時に、私がアラブの肌をほんとうに身につけることはできず、それは見せかけにすぎなかった

第五章 一神教 P77~P78:
アラブは、四万人の預言者がいたという
(中略)
彼らは人の多い場所に身を置いていたが、説明のできない、燃えるようなあこがれが彼らを砂漠に追い立てた。そこで彼らは修業の仕上がりはさまざまでも瞑想と肉体遺棄で過ごし、心に浮かんだ明晰なお告げをもって帰り、昔からのそしていまや疑いの眼をむける友人たちに説く。三大信仰の始祖は、いずれもこの一連の過程を経ている
(中略)
セム族の宗教信条すべてに共通して基礎にあるのは、現世を無価値とする顕著な考え方である。事物に対する強い反発から、彼らは無一物を、隠遁を、清貧を説くことになった

第六章 自治独立の動き P86:
トルコの支配とは憲兵の支配であって、トルコ人の政治論はその実践なみに粗雑なのだ。彼らがアラブに教えたのは、宗教の重要事が民族意識のそれよりも高位であること、地方の些細な関心事が愛国心に優るということ

第十章 ストァズとアブドゥッラー P137:
アラビアでは高い次元の政府は無用の長物にちかく、家内の成員を充分に規制している家族制度に抵触するなら、迷惑なだけである

第十七章 部隊 P210:
私は、部族民の長所は守備にのみあり、本領を発揮できるのはゲリラ活動だという結論を得た
(中略)
チームを組み助けあいながら戦うには個人意識が強すぎる。独りではいくさ巧者でも、兵士としては大抵は劣悪

第二巻
2008年10月10日 初版第1刷発行。



第三十五章 戦略と戦術 P81~P82:
狙いは敵の兵力でも弱点でもなく、敵の最寄の「もの」なのだ。鉄道遮断では、それは通常は一定の無人の線路区間だ
(中略)
士気は知識の上に築かれ、無知によって崩壊する。われわれも敵のことがすべて分かれば、気楽でいられる

第三十八章 アブドゥッラーと友人たち P120:
国王がいるという結構な事実が、このアラブという世界で英国の保つ信望に大いに寄与していることをまたも知らされた。アラブのような古くさい、うわべだけの社会の場合は、わが国とつき合うにあたり、国の最高位がただの功労やなしとげた大望への報奨ではないと証明されて、名誉心の満たされる安心感をもつ

第四十章 アウダとアカバ P148~P149:
アラブの戦いは地理的なもので、トルコ軍は攻撃目標ではなく、たまたまそこにいるというだけのことだ。われわれの狙いはトルコ軍の物的な環でもっとも弱い個所を捜し出し、そこだけに圧迫を加えて、時間の経過とともにその主要部分が崩壊するのを待つことだ
(中略)
分散は力であり、したがってわが方は前線を最大限に拡大して、トルコ軍をできるだけ受け身の防衛一方に専念せしめねばならない
(中略)
メディーナを占領してはならない。そこにトルコ軍がいることは、無害なのだ
(中略)
トルコ軍をメディーナに、そしてあらゆる遠隔地に、できるかぎりの大人数で張りつけておきたい。理想をいえば、最大の損失と苦痛をかかえたままで彼らの鉄道を、ただ運行できるだけ、だがそれだけにしておくことだ。食糧という要因で、トルコ軍はあらゆる鉄道の近辺に拘束される

第三巻
2008年12月10日 初版第1刷発行。



第六十章 アレンビー P37:
彼も私のような妙な人間をどう扱ってよいのか用意がなかったのだ。なにしろ、裸足に長い裾の服を着た小男が、後方連絡線に関するヴィリーゼン〔第二巻六八頁注参照〕の戦略を説き、物資と兵器と、転向者を信服させ統制するのに必要なソヴリン金貨で二〇万ポンドの資金を任せてくれれば、舌先三寸で敵を動けなくしてみせると申し出ている

第六十一章 再配置 P50:
エジプトに犠牲を払わせ続けるには、彼らに自信を持たせ、われわれを伝説的存在にしておかねばならない―大衆は本に描かれたような英雄を求める

第六十四章 シリアの政治 P68:
シリア人はすべて、なにか新しいものを求める
(中略)
完全に習熟するには難しすぎるものに対する情熱が結びついている

第六十五章 ゲリラ戦 P82:
規律が強ければそれだけ個人としての能率は低下するが、作業はより確実となる
(中略)
われわれの置かれた状況が、この戦争を単純で個人的なものにすることを要求している。軍に入れば全員が戦場で軍務につき、そこで自己充足していなければならない。われわれは、後方連絡線も労働部隊も設けてはならない

第七十九章 夜行軍 P222:
社会の外側にいて、諸部族と共通の感情を持っていない。被追放者であり、極端に自分を貶める意識を持つことを人の信頼を得る絶対の基礎にしてきた。ほかの人間なら希望とか幻想とかを抱いている。シャララート族は、この世でもあの世でも人類が彼らに認めているのは物理的生存以上のものではないと了解している

第八十一章 サラーヒーン P261:
賞に値するのは、世間でも人生でも何でもなく、希望そのものという敵に果てしない戦いを仕掛けることであり、失敗とは神が人間に与え給うた自由と思われる

第四巻
2009年2月18日 初版第1刷発行。



第九十九章 辞任を申し出る P134:
私は選択権と要請権を手中にしていたが、命令を受けたことは一度もない。自由意志を働かすことに飽き、死ぬほどいやになった
(中略)
別の人種の民族的反乱を指導するふりをし、連日異国の衣服をまとい、外国語で人に説く
(中略)
欺瞞

第百章 新規の取り組み P141~P143:
駱駝は個別給餌を受け、手ずから世話をされた結果の肥りすぎで筋肉が衰え、欠食が一日でもあれば全部だめになってしまう
(中略)
いまなら駱駝に草を食むことを教えられる。それで五〇ポンドの穀物を入れた袋は外す。また一日おきに兵を水場に連れてゆくので、各自が携行するのは水筒二本で充分だ。こうして荷物が一〇〇ポンド軽くなった駱駝は、兵士の十日分の食料として追加の三〇ポンドを悠々と運ぶことができ、同時に牧草を食うことで耐久性と力がつくので遠距離の行軍が可能となる

第百十二章 アカバでの激論 P276:
私は混成軍を使うことは認めない。それは嫉妬を煽り、英、アラブ双方の自負心の低下に繋がるのみだ。アラブ人は好みの時と場所を得ると英兵以上の意欲と速力で善戦するが、持久力がないので時間どおりに勝負を制するのは英兵となる。両者とも相手の条件下に入るとあらが目立つため、あまり近くで比較するのを避けることでたがいの中傷が生まれる危険を防いでいるのだ

第五巻
2009年7月10日 初版第1刷発行。



第百二十三章 緩慢に終結を終える P35:
私はこのアラブたちに、また自分が彼らとは似ても似つかぬ事実に死ぬほど倦み果てた

第百三十二章 奇手 P139:
同盟国側〔ドイツ、オーストリア-ハンガリー、トルコ、ブルガリア〕は経済的だがもっとも危なっかしい兵力を使うという共通の顔をもった単一体なのだ。それはたがいにもたれ合いとなり、トルコというもっとも弱い環の破断によってすべてがばらばらになる

第百三十五章 英軍とともに P169~P170:
戦争や政府を維持することができるのは、恐怖を克服した―あるいはむしろ変質させた―民衆だけなのだ。畏怖させる代わりに私が試みたのは、彼らを何か迂遠な、分かりにくい、非現実的な理想(アラブについては「自由」がそれにあたる)を熱望させることだった
(中略)
限界を設けうるような目的では、それを見た人々を遠くまで連れてゆくのは不可能

第百三十七章 国づくり P205:
民族性のある国家の基礎を造ることだ。そしてアラブ運動における何人かの預言者的な人物を大切にすると同時に、保守層を満足させるための上部構造を加えることが必要となる。彼らの人口の九〇パーセントを占め、反乱を起こすことなど考えもしないほど堅実であって、その堅実さの上に新しい国家は築かれねばならない

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飛将軍 李広

読んだ本の感想。

塚本青史著。2009年10月8日第一刷発行。



以下は、Wikipediaの『李広』の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%8E%E5%BA%83

李広は、紀元前180年頃に生れた設定らしい。紀元前166年頃から紀元前119年頃に自決するまでを描く。

優れた弓術により辺境の太守として評価された李広が、自分よりも騎馬戦術に優れた衛青や霍去病の登場によって霞んでいく。

背景にあるのは、前漢初期の老荘思想に基づく防衛優位の思想から、儒教を基礎とする攻撃思想への転換で、長城を利用した防衛戦術に過剰適応したために、騎射を多用する遊撃戦に適応出来ない李広が描かれている。

優れた武人であっても、国家システムの中では代替される部品でしかない事を示す。

P10:
関中とは、東の函谷関と西の大散関(隴関とも言う)、北の蕭関、南の武関、この四つの関所に囲まれた地域を言う。しかし、要は長安を中心とした渭水盆地(陝西省南部)の意味

P25:
洗脳された精神で攻めてこられるのが、実は一番厄介

P74:
宮廷では、高祖(劉邦)以来の老荘思想(道家)が全盛を極めていた。いわゆる無為自然(人為をさけてあるがままを受け入れる)の思想だ。これは中国の歴史において珍しいことである。
為政者にとっては、身分制度や勤勉実直を謳う儒教を国是とする方が、都合が良いはずだ。無為自然ならば、そもそも国家権力そのものを否定しかねない。それでも前漢初期に老荘思想が持て囃されたのは、劉邦に教養がなく、儀式にも疎く儒者を嫌ったからだ

P123:
部下たちには、酒肴を振る舞うだけでなく、世情の噂話を聞かせて都のようすが判るように、いや、時には遊んでいるような気分にさせることも必要だったのだ

P192~P193:
儒教主義を政策に盛り込めるのである。それは、無為自然の道家主義に則った従来の政策の変更を意味する。方針を変えないとされていた匈奴への懐柔策も、破棄する前兆と取れる

P226~P227:
匈奴を、長城に拠って撃退するのも方法の一つでしょう。みどもはそれに加えて、撃って出てはどうかと、主上に提案したのです
(中略)
衛青の志を、武人は軽視すべきではない。李広には、それが判った

P232:
李敢が言うのは、旧来の戦術だ。まず輜重部隊が矢や食糧などの補給物資を置く陣地を作り、それを基点として騎兵が撃って出る方式
(中略)
彼の口癖は、「よく引きつけてから、矢を放て」だった
(中略)
戦いがつづいて、匈奴は次々に襲いかかってくる。匈奴兵ばかりでなく、部下たちの落馬も相次いでいる

P284~P285:
湯水のように矢を使いやがるな。武器をあるだけ雨霰と降らせりゃ、だれだって軍部一の手柄が立てられる
(中略)
矢の在庫が少なくなっている
(中略)
文帝と景帝時代に蓄積した国家財政を、匈奴戦争に注ぎ込み過ぎた
(中略)
桑弘羊の妙案は、国家が商売に手を出すことである。具体的に言えば、鉄、塩、酒の専売である

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顔のない敵

読んだ本の感想。

石持浅海著。2006年8月25日 初版第1刷発行。



地雷原突破 事件発生年 一九九六年
対人地雷に反対するNGOが行った、仮想地雷原を歩くパフォーマンスでメンバーのサイモン・フィッツウォーターが爆死した。音響地雷のはずが本物の地雷が埋め込まれていた。

犯人は同じくメンバーの坂田洋で、恋人のアネット・マクヒューが、サイモンが自らの功績拡大のために行った嘘の地雷解除済報告によって爆死した事への報復をしたもの。

音響地雷を音が鳴らないように細工し、仮想地雷原の中央にある本物の地雷を踏ませる。全ての地雷を本物にすり替える事は不可能だが、一つだけならば可能。中央の地雷が他の音響地雷を破壊するため、音が鳴らない仕掛けも破壊される。

利口な地雷 事件発生年 一九九七年
地雷を作成する安永工業で発生した殺人事件。

ジャーナリスト永井綾子と自衛官 小川正雄が、山崎(技術者、身長190㎝)が殺された事件を調査する。犯人は同僚の二宮で、山崎がスマート地雷(プラスチックを使用しているために経年劣化で三ヶ月後に無害になる)の情報を商社に横流しする事を防ごうとした。

金槌で殴った後、罠を偽装して現場にいない人間が犯人と思わせようとしたもの。自らの罪を暴かれた二宮は自殺する。

顔のない敵 事件発生年 一九九三年
カンボジアで地主のチュオン・トックが殺害された事件。

犯人は地雷で右足を失ったコン・ソルンで、チュオン・トックが土地を守るために地雷を埋めようとした事に反発したもの。衝動的に松葉杖で殴り殺したため、死因を誤魔化すために頭部を地雷で吹き飛ばした。

トラバサミ 事件発生年 二〇〇六年
『戦争被害者自立支援会』に所属する荒井が、日本人に戦争の恐怖を実感させるためとして仕掛けたトラバサミを探す。

日本人が醜悪を発揮する場所として、上野恩賜公園の花見場所を探し、トイレ近くのトラバサミを見つける。

銃声でなく、音楽を 事件発生年 一九九一年
坂田とサイモンが、地雷除去の寄付金を集めるために訪れた「マーチン&ノーラン社」にて、社長室で殺人を犯し、ロッカーに立て籠ったブライアン・グラハムを説得する。

社長のジェシカ・マーチンは、犯人のブライアン・グラハムが二か月前に四歳の娘を亡くしており、その責任があるとされるゲイリー・ハーパーを殺害したとする。マーチンはグラハムが衝動的に自殺しかねないとして、警察に通報するのを躊躇う。

坂田は、地雷被害者が地雷を埋めた人間を特定出来ないために復讐が出来ないとして、グラハムは地雷被害者より恵まれていると言って自殺を防ぐ。

未来へ踏み出す足 事件発生年 二〇〇X年
地雷除去ロボットの開発者 谷村健太郎(さいたま工科大学)が、酔った弓削直人(安永工業)を突き飛ばして殺してしまう。応急手当としてギプスの代りに地雷除去に使用する接着剤を頭部に塗る。

谷村は警察に通報されずに、カンボジアで地雷除去に従事する。

暗い箱の中で
地震で止まったエレベーターの中で発生した密室殺人事件。

理恵、由紀子、篠原、水島、金沢が、飲み会に行く途中で会社まで引き返し、閉じ込められた。犯人は理恵で、女子更衣室にある課長の死体が発見される時期を遅らせる事が目的だった。

閉じ込めらた人間の中で、自分以外の女性は由紀子だけで、女子更衣室にある本を取りに戻られると、自分が海外に逃亡する前に死体を発見されてしまう。

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中原を翔る狼

読んだ本の感想。

小前亮著。2012年2月10日 第一刷発行。



モンゴル第五代大カアン クビライがユーラシア大陸を結ぶ交易網を構築する。物流を支配すれば戦争にも勝つ事が出来る。

以下は、Wikipediaの『クビライ』の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%93%E3%83%A9%E3%82%A4

【登場人物】
クビライ(1215年~1294年):
元朝皇帝。各民族を統合する帝国を創る。チンギス・ハンの第四子トゥルイの子。

ウリヤンガダイ:
モンゴル軍の老武将。東欧遠征に従事したスベデイの息子。

アジュ(1220年頃~?):
ウリヤンガダイの息子。

姚枢(1199年~?):
クビライの側近。漢族でクビライに徳治を薦める。

劉侃(劉秉忠):
クビライの側近。都市建築を行う。禅宗の僧侶。

廉希憲:
クビライの側近。ウイグル人。襄陽や江陵の行政を担当。

ヤズディー:
西方民族の混血らしい。最初は廉希憲に仕えていたが、独特の鑑定眼を評価されてクビライに仕えるようになる。元寇の後で日本に行く。

P209:
陶器や織物をみるのと同じ目で人をみている

賈似道(1213年~1275年):
南宋の丞相。姉が理宗に寵愛されたために出世した。芸術の永遠を評価する。

バヤン:
クビライの弟フレグが支配するイル・ハン国の武将だったが、有能であったために使者として訪れた元朝から帰国出来なくなる。

【あらすじ】
〇雲南遠征(1252年~1253年)
クビライを総司令官として雲南への遠征が行われるが、長期戦を志向するクビライは大理を落とすと撤退する。遠征目的は南宋討伐の進軍路確保であるため、無理な破壊は行わない。

〇大カアンに(1258年~1264年)
モンゴル第四代大カアン モンケが短期戦による南宋攻略を狙うが、作戦途中でモンケが病死する。クビライは敵地に取り残された遠征軍を救出し、名声を確保したうえで末弟のアリク・ブケと戦って勝利し、モンゴル第五代大カアンになる。

〇南宋征服(1268年~1275年)
南宋の賈似道がモンゴルの使者を投獄したために南宋に遠征し占領。

〇交易網構築(1267年~1294年)
大都の建設が1267年から始まり、紙幣(交鈔)や塩引(塩の交換券)の導入、交易網整備等により商業が盛んになる。

〇クビライ後
クビライの死後、オゴデイ家のカイドゥが起こした反乱は鎮圧される。カイドゥの部下達は反クビライ派であって、クビライの死後、その勢力は霧散する。カイドゥは1301年に戦死。

P53:
南宋と金が並立する時代が長くつづいていた。両国の国境となったのは淮河だが、度重なる抗争の結果、その流域から住民の姿は消えた
(中略)
水も食糧も補給できないため、この地を通って進軍するのは難しい。ゆえにモンゴルは、四川や雲南を先に攻略して進軍路を確保した

P155:
南宋を征服したあかつきには、開平府や燕京と、江南を結ぶ交通路が重要になる

P159:
モンゴル国の財務は、ウイグル人やペルシア人が担ってきた。漢族はどうも金を卑しいものととらえている

P182:
カラコルムは人工的に造られた消費するだけの都市であり、食糧も原材料もほとんどすべて輸入に頼っていた
(中略)
モンゴル高原と華北をつなぐ道であり、両方ともクビライの支配下にある。つまり、アリク・ブケの陣営はカラコルムにいるかぎり、食糧の供給を受けられない

P320:
そなたの言う朝とは何なのだ
(中略)
世の理、とでも言おうか。宋の朝も天地を律する正気の、ひとつの表れにすぎない

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春申君

読んだ本の感想。

塚本青史著。2010年12月20日 初版印刷。



以下は、Wikipediaの『春申君』の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%A5%E7%94%B3%E5%90%9B

ほぼWikipediaの記事と同じ内容。同作者の『始皇帝』を補完する内容と考える。

P298:
秦の運河の拡がりを思ってみた。やがて網の目のごとく拡がって、全中華が、包み込まれていくような気がしてならない

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持ち株の2/3を売却、もう少しで200冊

今日、保有株式の2/3を売却した。

お金が必要になったのと、何かがあるかもしれないから。このまま何も起こらずに株価が値上がり続けたらとても悔しいが売った。

朝鮮半島で戦争が発生する可能性は低いかもしれないし、そうではないかもしれない。新聞や雑誌、ブログを読んでいても暴落を予想する意見は少ない。

だから、何となく気になるだけだ。根拠は無いけど、今、暴落が発生した場合は値下げ幅が大きいような気がする。久しぶりに感じる大きな危機感。

それから、もう少しで年間の読書数が200冊を超える。仕事をしていなければ、もっと読めるような気がしていて、目的と手段が逆転している。

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はじめてのクソゲー

読んだ本の感想。

麻宮楓著。2011年9月10日 初版発行。



多分、作者はシリーズ化したかったんだろうな。

伏線が回収されないままになっているので、小説内に登場する『インフィニット・ダークネス』みたいになっている。冒頭で、七年前に経験した事と書いているのは何だったんだろう?

【登場人物】
藤宮遊真:
主人公。高校二年生。ゲームが好きで、バグだらけのゲーム『インフィニット・ダークネス』を購入した事が切っ掛けで、クソゲー(バグだらけのゲーム)の攻略日記を自らのブログ上にアップするようになる。

天野雪緒:
ヒロイン。藤宮遊真のクラスの委員長。バグだらけのゲームを好む。その理由は幼稚園時代に、主人公からバグだらけのゲーム『モカモカ』をプレゼントされたためらしい。

******************

『インフィニット・ダークネス』は、二人のプレイヤーが協力し、ゲーム内の主人公とヒロインが協力しなければクリア出来なかったというオチ。一人がジャンプし、もう一人が踏台になる。

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いじめの構造

読んだ本の感想。

内藤朝雄著。2009年3月20日第一刷発行。



森口朗著。2007年6月20日 発行。



<秩序の生態学モデル>
以下の二つの秩序がある。

①群生秩序
刹那的な群れの勢いによって是非が定まる。祭ろわない者は非人間的として嫌われる。

②普遍秩序
その場の雰囲気を超えた普遍的なルールに照合して是非が定まる。

どの秩序が優位であるかは変化し、それに伴って現実感覚も変わる。

秩序の中では身分が厳格に定まっており、低身分が楽しそうにしているだけで罰が与えられたりする。加害者側の被虐意欲には、自らの行為を被害者側の悲痛として現実化し、その手応えを加害者側が我物として享受する関与がある。

<行動様式の変化>
群れに帰属する事により、個々人の内部に秩序が寄生して思考や行動を操作する。

他者操作によって秩序が成立している場合、自己を映し出す他者が思い通りにならないと自己が解体する。ために加害者は被害者に独特の被害感を持つ。「お前が思い通りにならないせいで、私の世界が壊れた」。

秩序には奇妙な空間占有感覚(属領)があり、物理空間を秩序化する事で全能を体験しようとする。

そうした秩序は利害によっても選択され、相手が強いと認識されると相手を異物と認識出来なくなる。

<全能筋書き>
人間の感じる苛立ちは漠然としており、それに形を与える事によって全能感が得られる。弱者を虐待する事で全てが救済されるような無限の感覚を得られ、群れが形成される。

そうした全能感が得られる筋書きには以下の型がある。他者を壊し、その悲痛の手応えから力に満ちた自己を手に入れる鏡像の感覚。

①破壊神と崩れ落ちる生贄:圧倒的な力で他者を粉砕
②主人と奴婢:肉体的、精神的に損耗する様を楽しむ
③遊び戯れる神とその玩具:不条理を強要する

<投影自己同一化>
他者を自己投影の道具として、自分が傷ついた体験を癒そうとする。過去に痛めつけられた惨めな自分を他者に投影し、自分を過去の迫害者と同一化する事で、現在の自己を強者にする。

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俺俺

読んだ本の感想。

星野智幸著。発行 2010年6月30日。



2009年が舞台?

電気屋メガトン日吉店に勤務する永野均(29歳)が偶然に盗んだ檜山大樹の携帯電話を使用してオレオレ詐欺を行ったところ、檜山大樹の母親が家にやってきて、自分を檜山大樹として扱い、実家に帰省すると別の人間が永野均として生活している。

俺化は進展していき、各人の区別がつかなくなっていく。

俺同士は仲良くやっていたが、やがては自己嫌悪が進展し、全国的に殺し合いが発生する。

やがて俺らは消え、誰もが唯の自分となる。

P58:
仕事と同じ。異動があっても、担当が俺じゃなくて別の人間に代わっても、業務さえ回ってれば日常は続く

P150:
自在に海を泳いでいるようでいて、じつは俺はまわりの鰯に合わせて体を動かしているだけなのだ
(中略)
そこには意思がはない。外れたら食われる。だから俺は周囲の鰯に遅れないよう、きびきびと動く

P239:
自分を貶めている限り、この循環は止まらない

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君の名残を

読んだ本の感想。

浅倉卓弥著。2004年6月28日 第1刷発行。



1165年(永万元年)にタイムスリップした高校生や中学生の話。1189年に源義経が死ぬまでを描く。

律令体制から武家政治への転換期に、異邦人が必要とされたらしい。

全体的な印象として剣道強過ぎ。

【登場人物】
白石友恵:
高校二年生?剣道部員で、過去にタイムスリップした後は木曾義仲に剣道を教える。巴御前となり、最後は源義経と戦って殺す。木曾義仲による京都と平家(旧体制の象徴)の分離。

原口武蔵:
高校二年生?過去にタイムスリップして武蔵坊弁慶になり、源義経に剣道を教える。源義経の集団戦による平家(旧体制)の滅亡。

白石志郎(北条義時):
中学二年生?元は北条義時だったが、幼少時に現代にタイムスリップしていた。過去に戻り、鎌倉幕府三代目執権となる。源頼朝に天皇家を特別視しない思想を伝え、幕府成立の思想的根拠を与える。

P109:
皇族が継承権を放棄し臣下として仕える際に姓を賜る。これを臣籍降下という。清和帝から陽成帝の御世にかけて立太子もできぬ皇子が続出し、この子弟の多くが臣籍に降りた。源性はこれらの姓の一つだった

P115~P116:
国の中核に位置するのは朝廷という万世一系の血統に裏づけられた支配体制だった。各地の支配者である国司はすべて朝廷の任命であり、この国司の下で目代と呼ばれる在地の豪族が領内の収税を請け負っていた
(中略)
武力の優勢が誇示されても血統の論理はなお息づいていた。古代から中世への革新が源平争乱として集約されるのはこのためである。この両家は、武力と血の保証とを併せ持つただ二つの家筋であった

P248:
他人の言うがままかというとまるで違う。頼朝は場の誰かが己の意に沿う発言をすることをじっと待つのである

P250~P251:
王の残した檄文には平家討伐と並んで彼自身が帝位につくという目的が記されていた
(中略)
以仁自身がこの世になければ帝位を窺うことは不可能である。つまり、彼が平家討伐を命じた部分だけを抽出し王家の命令としての意味を持たせられる

P293:
鎌倉国家を支えている土地理論は頼朝が源氏の唯一の代表者であるという事実に大きく拠っている。血の保証があるからこそ、恩賞という制度、つまり皇室に代わって御家人らの利益を約束するという行為の正当性が確保される

P368:
滑稽にも見えたが、義仲の態度は皇室の血の意味するところを改めて友恵にも考えさせた。この時代の人々にとって彼らはやはり神なのだ。その血に連なるからこそ義仲もまたここまで来れた

P472:
御家人のそれぞれは法皇や朝廷の意を受けて合戦に参加してはいない。これらを慮るのは一人頼朝の役目であり、配下はその頼朝に報奨を約束され初めて戦地に赴くのである。
戦場での活躍に応じ新たな領地が分配される。その支配権を頼朝が保証する。それが坂東に芽生えた新たな規律である
(中略)
頼朝の方策は、極端な言い方をすれば全国土を荘園と見なすことによって初めて成り立つものだなのだ

P516:
契約に基づく信頼関係とでも呼ぶべきものが存在した。それは過去の蓄積を背景にお仕着せられた支配とはまるで異なる
(中略)
平安朝においてはなお皇室は神孫だった。字義通りの意味を持ち、代わり得るものを決して持たない唯一無二の存在なのだ。この不可侵性が権力と緊密に結びつくことで律令制は成立していた。だからこそ清盛は安徳を立てなければならなかったのだし、逆に頼朝はこれに正面から立ち向かう形となった

P548:
『時』は友恵と自分という異物を得て義仲と義経という英雄を作り上げた。両者が共に役割を終えた今、歴史は自らの痕跡を消そうと作用するのではないか

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破滅の箱/再生の箱

読んだ本の感想。

牧野修著。2010年8月4日 第一刷発行。

以下、ネタバレ含む。

共謀罪を批判する本になっている。

世界の狂気より作者の思想の方が恐ろしい。

〇トクソウ(金敷署生活保安課防犯係特殊相談対策室)
警察署内の役立たずばかりを集めた部署。明らかに事件性の無い奇妙な通報に対応する。

〇黒崎経済研究所
黒崎忠が経営する企業。黒崎は賢人会という交流会を主催しており、金敷市を狂気の街にすべく画策している。

〇異次元ハウス
鴻上克也の<環境=脳>理論に基づいて、居住する人間を犯罪者にする設計になっている。

【登場人物】
伊丹三樹子:
トクソウ室長。警部補。尾上法務大臣の秘書官 伊庭莞爾の元恋人。

斎邦夫(鴻上達夫):
童顔で低身長、黒縁眼鏡に七三分け。鴻上克也の息子で、黒崎等を操り事件を起こしていた。善悪の絡み合いが見たかったらしい。

野口キアラ:
28歳?途中からトクソウに配属される。死者が見える妄想を持つ。

天地重久:
元公安。伊丹三樹子の三年後輩。黒崎に洗脳され、最後は自殺する。

破滅の箱



第一話 破滅の箱
喜多島正義(27歳)がトクソウに配属される。田宮泰造に呪いの小箱について相談され、その田宮泰三が後に殺される。犯人は隣室に住む男で騒音が嫌だったらしい。喜多島正義は刺されて下半身不随になる。

第二話 二階にいる生物
赤座道男、靖子夫妻が、死んだ息子を蘇らせようとして人間を殺して死体の部品を一体化させていく。

第三話 ルミノス星人の陰謀
トクソウに配属された御厨ミミが全身火傷で廃人になる話。鴻上克也の<環境=脳>理論が金敷市で実践されているのか調べた事が切っ掛けだった。

第四話 ガラスの手を持つ男
<満開の華の尊厳の家族教会>の教祖 千徳が天誅として人を殺していた話。手が透けて見える者を悪人として処罰していた。千徳は自殺する。

第五話 大爆発
喜多島正義が爆弾を作って、黒崎忠と爆殺する話。喜多島正義は、再生の箱の最終話で病死する。

再生の箱



第一話 昆虫美人
妹を強姦した犯人や、犯人の弁護士を殺害する神崎美沙の話。毒で自殺した振りをして逃げ出す。

第二話 沈黙の叫び
芝浦洋一郎の自警団に囚われた野口キアラや斎邦夫が逃げ出す話。

第三話 二次元からの訪問者
子供を虐待する親を殺す次田雅之(11歳?)の話。

第四話 生まれてこなかった男
保護司をしている湯村菊朗の話。次田雅之を怪物だと断定して殺す。

第五話 地球は狙われている
「家族の教会」(満開の華の尊厳の家族教会)が異次元ハウスを利用して犯罪者を量産しようとする。犯罪処罰の世論を作り出し、共謀罪を成立させる事が目的らしい。最終的には警察国家を築くつもり?

野口キアラは、「家族の教会」が医療刑務所で起こそうとしたテロを未然に防ぎ、斎邦夫が信者達に洗脳メールを送信するのも阻止するものの、共謀罪は成立する。

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リピート/リセット

読んだ本の感想。

以下、ネタバレ含む。

同じようにタイムスリップする物語だけれど、男女の違いが感じられた。

「リピート」の方が面白いと思う。

リピート
乾くるみ著。2007年11月10日 第1刷。



1991年10月31日?から1991年1月13日にタイムスリップする話。記憶が10ヶ月前の自らの肉体に憑依する。

世界をシステムによって捉えようとする人々が多く登場し、SF小説を参考にして金儲けを目論んだり、法則を探ろうとする。

登場人物達が逆襲される事を考えないで他人を騙そうとしたり、安易に妊娠させる事に違和感があった。

読んでいて篠崎鮎美の子は、毛利圭介との子ではないように思えた。時間遡行直後に肉体関係を持って妊娠、再度の時間遡行を拒否、髪を切る行為等が伏線だったのではないか?乾先生の作品に偶に登場する自分は浮気するけど、男の浮気は許さない女達?

【登場人物】
風間元春:
33歳の元自衛官。ヘリコプーター操縦中に時間を遡る事が出来るオーロラを発見し、同じ10ヶ月を10回繰り返している。本来であれば死ぬ人間を当人に気付かれぬように助け、自分と同じように時間を遡らせて、死んでいく様を観察している。大森に殺される。

毛利圭介:
主人公。文学部の大学四年生。少林拳同好会所属。本来は別れた恋人の町田由子に殺されるはずだった。再度の時間遡行に成功するも、転ぶのを堪えたために車道にはみ出して自動車に轢かれて死ぬ。

池田信高:
ゴルフのレッスンプロ。風間の仲間で、同じ10ヶ月を10回繰り返している。終盤で天童に殺される。

篠崎鮎美:
24歳。毛利圭介と恋愛関係になり妊娠するが、自宅にヘリコプターが墜落して死ぬ。

大森雅志:
日浄化成バイオ・ケミカル研究所主任。自分を操作しようとする風間を殺害するが、池田に殺される。

天童太郎:
身長190㎝。シナリオライター。自らを操作しようとした復讐に、時間遡行前に池田信高を置き去りにしようとするが相打ちになる形で死ぬ。

高橋和彦:
トラック運転手。時間遡行直後にトラック運転に失敗して死ぬ。

郷原俊樹:
郷原建機社長。狂った元警察官の麻生正義に殺害される。

坪井要:
大学一年生。タイムスリップして東京大学入試に合格しようとする。麻生正義に殺害される。

横沢洋:
45歳。倉田ファイナンス経理部人事課長。自宅が放火されて死ぬ。

P334~P335:
自分の感情ばかり優先させて、相手であるオレの気持ちなんてこれっぽちも構わずに、それ愛してるとかって平気で言う。相手に迷惑をかけておきながら、何が愛してるだ

P414:
他に誰もいなくなりゃ、自分が予言してみせたり、誰を助けるとか助けねえとか決めれる立場に立てるわけだ。要するに神様の立場だ。神様はひとりしかいねえからこそ有難いもんだ。一神教の神様になりてえんだよ

リセット
垣谷美雨著。2010年12月19日 第1刷発行。



2007年から1977年にタイムスリップする話。

「リピート」と読み比べて感じる最大の違和感は、経済的に困窮しているはずの主人公達が投資や賭博で儲けようとしない事。

女優とか結婚に夢を見ているけど、任天堂やセブンイレブンの株式を購入した方が良かったのでは?女性の権利とかに拘るけれど、作者自身が、女性は男性の性欲によって守られていると思っているから、このような展開になるのではないか?

自らに性的魅力が無ければ、男と同じように扱われるが、それは許容出来ない。男に働かせて自分は楽をしたいように読めてしまう。

「私は性欲だけの為に求められている訳じゃない!もっと尊く深い絆によって無条件に愛されるべき存在なのよ!」

終盤になって香山知子の長男が実はニートだった事になって叱責され、47歳のはずの主人公達に恋人が出来る展開に闇を感じた。お前ら、男に誠実を求めておいて、自分は浮気するんかい。

【登場人物】
香山知子:
一度目の人生では主婦をしているが、二度目の人生では女優を目指す。淫靡なイメージの女優になった自分に嫌気がさし、15年目で最初の47歳の自分に戻る。

黒川薫:
システム会社で副部長をしている未婚女性。二度目の人生で香山浩之と結婚するが、結婚生活が上手くいかずに、15年目で最初の47歳の自分に戻る。

赤坂晴美:
困窮した女性。二度目の人生では清令寺龍彦と結婚するが、子供を愛する事が出来ずに、15年目で最初の47歳の自分に戻る。

P223:
男性よりも劣るふりを年がら年中演技しなければならないのだ。そんなことはプライドが許さない。だって実際、劣っていないのだから

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賢者の贈り物

読んだ本の感想。

石持浅海著。2008年4月7日 第1版第1刷発行。



磯風(イソップ?)という女性が出てくる短編集。

金の携帯 銀の携帯
故障した携帯電話の代替機として、①今使用している機種、②最新機種(五千円がチャージされている)、③最新機種(五万円がチャージされている)を提示される。

五千円を加える事で、金を「貰う、貰わない」の選択が、「少し貰う、沢山貰う」の選択肢に変化するため、五万円の端末を提示する違和感を低下させる事が出来る。欠陥のある携帯電話を密かに回収しようとしている可能性。

ガラスの靴
後輩の須藤の家に靴を忘れた女性を推理する。

①尾上(姉御肌)、②鎌田(無口)、③国枝(自爆人間)

後で須藤の家に引き返す口実として靴を意図的に忘れたが、酔ったためにタクシーの中で眠って自宅に到着してしまった可能性。失敗を言い出せない性格の鎌田が靴を忘れたと推理し、二年後、須藤と鎌田は結婚する。

最も大きな掌
パームリサーチ社長の関本が体調不良により、社長を退任する。次期社長として、『最も大きな掌を持つ人物』を据えると言った。①大久保(プログラマー)、②矢島(証券会社から転職したお目付け役)、③近藤(MBA)が候補。

関本の意図は、一時的に身を退いて、各人の役割を明確にしてから社長に復帰するものと判断。短期的には会社を管理出来るだろう矢島を社長にするが、関本の体調不良が長引いたため、二年後にバームリサーチは倒産する。

可食性手紙
オブラートでカンニングペーパーを作った女学生が、クラスメイトの仲野のカンニングペーパーが自分のカンニングペーパーに紛れている事に気付く。きちんと読む前にカンニングペーパーを食べてしまったため、テスト中に理由を推理する。

苦手科目の日本史でカンニングペーパーを使用するのは良くないと判断し、嘘のカンニングペーパーをすり替えたらしい。

賢者の贈り物
フィルムカメラを持っていないのに、妻からフィルムを贈られた男の話。フィルムカメラの方が被写体に感情移入出来るとして、妻が懐妊した可能性を指摘される。

玉手箱
磯風から、平たい紙箱を渡された男の話。「この箱を開けてしまったら、もう二度とあなたとは会えなくなるでしょう」。売春の証拠写真や、誘拐の身代金の可能性を考える。

泡となって消える前に
28歳の藤原が、自らについて語らない彼女について相談をする。学生時代に沖縄の民宿で会った小学生の少女の可能性。強制的に思い出させるのでなく、自然に想起させたかった可能性。

経文を書く
高級ワインを買い漁る安井に関する相談。ワインを買いに行く前日に大量の酒を飲ませ、二日酔いにして、自然とワインを嫌いになるようにする。

最後のひと目盛り
失恋して過食症になった漫画サークル所属の女子大生の話。

現在58kgで、60kgまで太ったら漫画と縁を切るという主人公に対し、同じサークルの布部が二kgのビールを飲ませ、体重が簡単に増減する事を知らせ、漫画サークルに残留させる。

木に登る
ベンチャー企業KHSが開発したテーシー(テーストエンハンサーC、低カロリー食品の味を良くする物質)が危険であるという情報を入手した会社員が、ボリビアに出張中の同期社員 村田(KHSの株式を大量に購入している)に情報を伝えようとして上手くいかない。

結局、村田は出張前にKHSの株式を全て売却していた事が明らかになる。

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始皇帝

読んだ本の感想。

塚本靑史著。印刷 2006年8月15日。



以下は、Wikipediaの『始皇帝』の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A7%8B%E7%9A%87%E5%B8%9D

皇帝として中華を統一するも、不老不死を求めるようになって堕落する様を描く。

P14:
趙の王族がいた。彼こそ、平原君(趙勝)である。世に戦国四君と呼ばれる、信義と侠気を尊んで政に参画した人徳者が、当時民衆の崇敬を集めていた。彼の他に、斉の孟嘗君(田文)、魏の信陵君(魏無忌)、楚の春申君(黄歇)らがそれである

P86:
社交での、表面的な人当りの良さを演出するには、人の悪さよりも『善』を装う方が評判もよくなる
(中略)
男たちには社会で生き延びる術が必要なため、性悪説の方が人気を博したのだ
(中略)
法家主義とは、規則や法律で社会生活の総てを縛って統制する考え方である。法家に大きく作用したのは、人の生れつきを性善説で理解するよりも、性悪説での説得力だった

P138~P141:
中原(洛陽を中心とした、黄河流域)で秦に対抗する軍勢が編成
(中略)
関中(函谷関の内側の意で、咸陽を中心とした渭水盆地を指す)への退却を余儀なくされている
(中略)
函谷関が、中原側からは地形的に占領しにくい構造になっていると、充分知っていたからだ。関所は、背後に控える秦の領土を頂上にした、斜面の中程に構えているのだ。だから、そんな所へ仰向きの陣を構えても、秦が大軍で俯瞰しながら攻めてくれば、あっさり陥落してしまう

P163~P164:
「涇水から落水へ至る運河を、開設させていただきたいのです」
渭水盆地は、南方の秦嶺山脈からの雪解け水で渭水以南は肥沃であるが、北方は荒れ地が拡がっていた。鄭国が言う二つの川は、北方から渭水へ注ぐ支流である。双方をつなげれば、確かに現在やや塩っぽい土地も穀物が育つだろう

P193:
孔子は『論語』で、人の分と生きるべき道を示しました。また、『春秋(魯国の年代記)』を著して、後の世の範例といたしました。現在は、それ以上に価値観が多様化いたしております。そこで国家の指標とすべき思想を創りださねばなりませぬ

P332:
この世界は、咸陽を中心として、拡がればその地に群を置き、また中は県に分割すること。それ以外は、一切認めぬ

P391:
考え方も、国家同様に、郡県制のごとく統一いたしましょう
(中略)
まず、史官(公文書などの記録や保管係)の所蔵している書籍の内、秦の基準に合わない物は、ことごとく焼き払いましょう

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七月に流れる花/八月は冷たい城

読んだ本の感想。

恩田陸著。2016年12月19日 第一刷発行。

以下、ネタバレ含む。

〇緑色感冒
全身が緑色になって死ぬ病気。インフルエンザと似ており、体が緑色にならない内は感染率が弱く、感染しても重篤化しない。緑色感冒の患者達には、緑色感冒で死んだ人間の肉を食べる風習があり?、食べた方は食べられた方の記憶も引き継ぐらしい。

〇夏流城の林間学校
緑色感冒に感染して死ぬ寸前の患者の子供達を林間学校として、施設近くの城に住まわせ、シェルター越しに子供に合わせる。国内で緑色感冒にて死ぬ患者が発生すると川に花を流す(白が男で赤が女)。

七月に流れる花



【登場人物】
大木ミチル:
主人公。中学一年生。

佐藤蘇芳:
中学一年生。両親が緑色感冒で亡くなる。

斉木加奈:
中学二年生。背が高く短髪。怜悧な印象。バレーボールの選手だったが膝を故障している。

稲垣孝子:
中学二年生。茶髪で色白。将棋が趣味。

塚田憲子:
中学二年生。眼鏡をかけたおかっぱ。

辰巳亜季代:
中学三年生。私立ミッション系の学校に通う。林間学校の最中に脳腫瘍で死ぬ。

八月は冷たい城



【登場人物】
嘉納光彦:
主人公。中学一年生。佐藤蘇芳の知り合い。

大橋卓也:
主人公の幼馴染。

丹羽幸正:
小柄。自分の親の死を認められず、殺人に見せ掛けた自殺を行おうとする。

唯野耕介:
大柄で間延びした話し方をする。

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雨の日も神様と相撲を

読んだ本の感想。

城平京著。2016年1月18日 第1刷発行。



主人公がとても嫌な奴になっている。作者も気付いていて、相撲を辞めたいはずの主人公が、周囲に蘊蓄を披露し、ヨイショされる矛盾を説明しようとしている(P181~P182)。

終盤で遠泉真夏と相撲をして、怪力や蛙神と話す能力を手にする展開や、乾理恵子殺人事件(他殺に見せかけて生命保険を夫に渡す)は余計な挿話だと思う。

久々留木村:
米作りと相撲が盛んな村。蛙神の加護により不作知らず。蛙神は一定以下の大きさの蛙に憑依する寄生生命体で、一度憑依すると依り代の蛙が死ぬまで離れられない。蛙神は繁殖力が弱く、1000体ほどが久々留木村で暮らす。

【登場人物】
逢沢文季:
主人公。中学三年生。150㎝に満たない低身長だが、幼少期から相撲を習っており、分析に定評がある。両親が死んだ事で、久々留木村の叔父(浅沼悟:34歳)に引き取られ、蛙の神様に相撲を教える事になる。

遠泉真夏:
中学二年生。遠泉神社の長女で、蛙神の加護により怪力を持つ。逢沢文季に一目惚れしており、逢沢文季に蛙の神様達の相撲を監督させ知り合いになる。逢沢文季に相撲で負けたため、怪力を失う。

P73:
強い相撲の姿勢っていうのはもともと不自然で窮屈なものなんだ。だから意識しないと楽しようと崩れてしまう

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煬帝

読んだ本の感想。

塚本靑史著。2011年1月25日 第一刷。





以下は、Wikipediaの『煬帝』の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%85%AC%E5%B8%9D

レビレイト婚(父親や兄弟の妻妾を兄弟が受け継ぐ)が物語のテーマになっている。遊牧騎馬民族の風習であり、儒教信望者から忌避される。

主人公の「煬帝」は他人の妻妾を奪う事に執着し、権力者として他人の妻妾を奪っていくが、後半になるに連れて女に利用されているようにも解釈出来るようになっていく。

これは中華王朝と騎馬民族との関係性にも当て嵌められ、漢民族が遊牧民に支配されているようで、実質的には取り込んでいった事を示しているのかもしれない。儒教の清廉は、夫の愛情を他の女に移さない独占性に由来する?

主人公 煬帝の出身部族である鮮卑は中華への強烈な憧憬があり、積極的に中華に同化しようとしている。

上巻 P32:
「農地を与えて、兵制に組み入れるのだ。食糧の生産と兵の確保を目論んでおる」
つまり府兵制は、土地制度を根幹として税と軍兵を整える制度である

上巻 P212:
新しい法律では、それまで当然のように実施されていた黥(入れ墨刑)や劓(鼻を切る)、剕(足切り)、宮(去勢する)といった肉体毀損の刑罰を廃止し、笞(むち打ち五十回まで)、杖(むち打ち六十~百回)、徒(懲役刑)、流(島流し)、死(死刑)に変わった。肉体を痛めつける刑はまだ残ったものの、当時としては進んだ刑法体系ができたのである

上巻 P245~P246:
五百家にて一里とせねば、新都が機能しません
(中略)
今までは、百戸を単位として三長制(五家で一保、五保で一閭、四閭で一族。それぞれの単位に責任者として長を置く)を強いていました。それを突然、五百戸を一つの単位になどすれば、厖大な人数を少数で束ねることになり、必ずや不正の温床になりましょう
(中略)
都の規模が五倍になるのですから、三長に支払う金銭だけでも莫大です。百単位を五百にすれば、単純に計算しても、支出は五分の一になるわけです

下巻 P44:
推薦制度では、結局大土地所有の貴族の子弟ばかりが推薦されるようになり、郷挙里選や、そこから発展した九品官人法は新しい息吹を送り込めず、事実上崩壊していたのであった。
そこで、改めて、もっと広く公平に選抜を行って優秀な人材を登用する方法が考案された。それが、中央(大興城)での選抜筆記試験である

下巻 P74:
蘇威は、郷里制の戸数を五百にする提案をし、実質的な運営に不正が多く介在する制度と結論づけられて、李徳林の百戸説に一旦は敗れた

下巻 P188:
皇帝広は念願の洛陽へ移ることにした。ここは、西周以来の都である。後漢も、三国時代の魏も、それを乗っ取った(東)晋も、洛陽に都を置いていたのは周知である
(中略)
北周や隋は都が渭水盆地にあっても、洛陽は副都扱いしていたので、宮殿などの設備はそれなりに整っている
(中略)
間中が寂れたら、吐谷渾ら西方の胡が蠢くかもしれないとの不安があったのだろう。だが、東方を睨む位置関係は、やはり洛陽が便利なのだ

下巻 P191:
武川鎮軍閥が身に着けた無骨さが、南朝貴族文化の優雅さに抱く、幼稚な憧憬以外のなにものでもない。そう考えると、皇帝広にとって運河の開通とは、北朝(男)と南朝(女)の交合と言えなくもない

下巻 P307:
目的を達成してしまえば、戦うことの動機付けがなくなったのだ。だから、彼は死なない程度にしか、もう戦えなくなったのである。それは、皇帝の位についた途端、派手な行列や儀式、後宮での淫楽以外に興味を失った皇帝広とよく似ている

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人間とは何か

読んだ本の感想。

マーク・トウェイン著。平成29年4月25日 初版発行。



哲学書ではなく、19世紀初頭の欧米人の思想について書いた本だと思う。

あらゆる機械が生活に導入されるに連れて、人間を機械の類型として考える思想が生まれる。それは自由意志と背反するものであるが、自由意志がキリスト教思想と結び付いた欧州的なものである事が示されている。

P90:
鍛錬というものは、どんな形をとろうと、それはすべて外部からの影響力のことだ

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なぜ地形と地理がわかると世界史がこんなに面白くなるのか

読んだ本の感想。

関真興著。2016年1月23日 初版発行。



第1章 文明の起こりと帝国の誕生
Q1 なぜ、人類はアフリカで誕生したのか
単一起源説の説明。

Q2 なぜ、古代文明は大河の周辺に成立したのか
食糧生産に必要な大量の水の確保。

Q3 なぜ、文字や鉄の誕生がオリエントだったのか
文字は、数万人の共通規範として紀元前3000年頃のシュメール人の都市国家で使用され始める。鉄は地表近くの鉄鉱石が山火事で焼けて鉄になっていたのを発見したのが利用の切っ掛けとする。

Q4 なぜ、地中海世界でポリスが発展したのか
都市国家は紀元前八世紀頃にバルカン半島で成立し始める。巨大河川が無いために広範囲を支配する事が不可能であり、土地も限られていたために、数千人程度に人口が増えると、他の場所に新しい都市国家が建設された。

Q5 なぜ、アレクサンドロスはインドまで征服したのか
豊かな東方世界への遠征。

Q6 なぜ、ローマは大帝国を維持できたのか
地中海を交易路とし、道路網を活用した。

Q7 なぜ、始皇帝は北方に万里の長城を築いたのか
騎射戦術は紀元前六世紀頃に黒海北岸のスキタイが始めたとされ、紀元前三世紀頃に匈奴強大化の一因となる。それに対処するために長城が建設され、国境としての意味を持った。

Q8 なぜ、漢の都は長安に置かれたのか
黄河流域では河岸に港を作り難く、支流に都を持つ事が多い。後漢では黄河支流の洛水に面する洛陽(紀元前770年に周が遷都した洛邑、魏や西晋の都)を都にしたが、前漢では渭水盆地の要害にある長安(西周の鯨京、秦の咸陽の近く)が都とされた。長安は洛陽の西にある。

Q9 なぜ、漢帝国とローマ帝国は同時期に滅亡したのか
三世紀~四世紀の小氷河期によって農民反乱や遊牧民族の移動が起こった。

Q10 なぜ、仏教はアジアに伝わったのか
中央アジアを経由した大乗仏教と、東南アジアの交易ルートから伝わった上座部仏教。インダス川流域にて一世紀~三世紀に栄えたクシャーナ朝ではガンダーラ美術があったが、その特徴である仏像はギリシア神像の影響とされ、分厚い僧衣を着た(ヘレニズム)。それは四世紀のグプタ朝のグプタ様式(薄衣で手足の輪郭を強調)に引き継がれる。

Q11 なぜ、イスラム教は世界宗教になり得たのか
普遍宗教であり民族に拘らない。

Q12 なぜ、アジア諸国は唐に朝貢したのか
朝貢によって官位を授かり君臣関係を結ぶ冊封体制や技術導入等。

Q13 なぜ、正倉院に西アジアの影響を受けた文物があるのか
アレクサンドロスによる中央アジア遠征や、前漢 武帝による匈奴攻撃等でシルクロードを通じた交易が盛んになった。

Q14 なぜ、ヴァイキングは地中海まで進出したのか
八世紀後半ごろの寒冷化で高緯度のスカンディナヴィア半島で小麦栽培が出来なくなり、森林から造船に使用する木材を利用し、南方に移動した。

Q15 なぜ、十字軍遠征は失敗したのか
欧州社会の人口増大が遠因だが、目的地が遠過ぎた。

Q16 なぜ、モンゴルは世界帝国を建設できたのか
遊牧民の移動や軍事における優位。

Q17 なぜ、明は北京を首都にしたのか
当初、明は長江以南の南京を首都としたが、三代目の永楽帝は北方騎馬民族に備える要衝である北京に遷都した(1421年)。儒教的に簒奪者である永楽帝には儒学者の多くいる南京は居住し難かったかもしれない。

以下は中国の首都の変遷。〇は国家の順。

・洛陽(①周、④後漢、⑤晋1)
・咸陽(②秦):黄河の西端
・長安(③前漢、⑤晋2、⑦隋、⑧唐):咸陽の近く
・健業(⑤晋3)→健康(⑥南北朝、宋):長江の東端
・開封(⑨北宋):洛陽と建業の中間
・臨安(⑩南宋):長江以南
・南京(明1)
・大都(⑪元)→北京(⑫明2、⑬清、⑭中華民国、⑮中華人民共和国)

Q18 なぜ、鄭和は大航海を行ったのか
1405年~1433年まで七回行われている。第三代 永楽帝による国威発揚の目的。

第2章 ヨーロッパの台頭と一体化する世界
Q19 なぜ、イタリアでルネサンスが花開いたのか
アジア、アフリカ、欧州を結ぶ交易路の中間点で富が集まり、神聖ローマ帝国と対立したローマ教皇が、イタリアで優位に立つために市民自治を奨励した。

Q20 なぜ、大航海時代はポルトガルから始まったのか
1492年にレコンキスタが完成し、欧州最西端ので大西洋に面したポルトガルでアジアと直接貿易する欲求が高まった。1453年にビザンツ帝国が滅び、オスマン帝国が東地中海の制海権を確立したために、交易ルートが遮断される懸念があった。

Q21 なぜ、コロンブスは西回りでアメリカ大陸を発見できたのか
イタリアの地理学者トスカネリの地球球体説の影響。

Q22 なぜ、インカ帝国は高度な文明を達成できたのか
1200年頃に建国され、4000㎞を統合した。根拠地である高原地帯は降水量が多く、じゃが芋や玉蜀黍栽培が行われた。

Q23 なぜ、オランダは商業国家となり得たのか
バルト海と地中海の中間地点の優位性。

Q24 なぜ、ドイツで宗教改革が起きたのか
神聖ローマ皇帝カール五世は、1517年のルターによる「九十五カ条の論題」に対して、イタリアでの介入戦争のために弾圧する余裕が無かった。

Q25 なぜ、ロシアはサンクトペテルブルクに遷都したのか
1712年に内陸のモスクワから、バルト海に面したサンクトペテルブルクに遷都。

Q26 なぜ、ポーランドは歴史の舞台から消えたのか
十世紀頃に建国され、1385年にリトアニアと同君連合を組んで強国となったポーランドは、シュラフタ(地主、貴族層)が支配層として、1572年からはシュラフタの選挙で国王が選ばれるようになる。

シュラフタの権力基盤であるバルト海交易でのポーランド産穀物の輸出が一七世紀から減少に転じると、シュラフタが没落した。

Q27 なぜ、アメリカ独立戦争はボストンから起こったのか
1630年に建設されたボストンは商工業地域の核であり、1773年にボストン茶会事件が起こる。

Q28 なぜ、ナポレオンは大陸封鎖を行ったのか
英国の孤立化を狙った。

Q29 なぜ、ナポレオン戦争後ウィーンで会議が開かれたのか
ウィーンはローマ帝国の東端にあるドナウ川中流域のウィンドボナが起源であり、東方防衛の拠点だった。1278年からはハプスブルク家の拠点となり国際都市として繁栄した。

1853年にフランス セーヌ県知事となったジョルジュ・オスマンによるパリ改造事業が進展するまで欧州文化の中心はウィーンだった。

Q30 なぜ、世界初の鉄道はリヴァプールに敷かれたのか
ランカシャー地域の面工業を背景に、港町のリヴァプールと工業地帯のマンチェスターが接続された。

Q31 なぜ、イタリアの統一は遅れたのか
細長い地形のために地域毎に文化、気風が違う。イタリア中部を支配する教皇領が政治的統一の障害となった。1861年に樹立されたイタリア王国が教皇領を併合するのは1870年。

第3章 帝国主義と世界大戦、そして戦後
Q32 なぜ、イギリスは世界を支配できたのか
1600年からインドに進出し、本国とインドを結ぶ経路を確保し、交易で栄えた。

Q33 なぜ、イギリスは上海を開港させたのか
1842年に開港される。中国経済の中心である江南に位置した。

Q34 なぜ、欧米列強は次々と日本を訪れたのか
1792年のロシア使節ラクスマンや1808年のフェートン号事件等。特にインドや東南アジアに拠点を持たない米国が日本と関係を結ぼうとした。

Q35 なぜ、オスマン帝国をめぐって列強は対立したのか
ロシアによるボスポラス海峡、ダーダネルス海峡支配への対抗。

ちなみにエチオピア原産のコーヒーは、1517年にオスマン帝国セリム一世がエジプトを征服した時にオスマン帝国に齎され、1683年の第二次ウィーン包囲の際に欧州に伝わったとされる。

Q36 なぜ、アメリカは独立後に南北に分裂したのか
商工業が発展した北部と、降水量が少なくて綿花栽培に適した南部の対立。

Q37 なぜ、タイは帝国主義時代に独立を保てたのか
英仏の緩衝地帯。ドイツ台頭の影響もあり、1904年の英仏協約ではチャオプラヤ川東がフランス、西が英国の勢力圏として妥協された。

Q38 なぜ、ビスマルクはロシアとの同盟にこだわったのか
フランスとの対抗上。

Q39 なぜ、英仏はスーダンで衝突したのか
ナイル川上流に位置するスーダンは、英国のアフリカ縦断政策(カイロとケープ植民地を結ぶ)とフランスのアフリカ横断政策(アルジェリアを中心としたサハラ砂漠周辺から紅海のジブチ周辺を植民地とする)が交わる地域だった。

1898年にスーダンでマフディー派が盛り返すとフランスがスーダンに侵入し、ファショダで英国と衝突した。

Q40 なぜ、日露戦争は起こったのか
満州利権をめぐる日露対立。

Q41 なぜ、バルカン半島は欧州の火薬庫となったのか
オスマン帝国の支配が終わり、居住地が入り組む民族が残された。

Q42 なぜ、「アラビアのロレンス」は英雄になったのか
アラブ人の国家意識を利用しながら西アジアでの英国勢力拡大を図る。

Q43 なぜ、ソ連はウクライナを含むのか
ウクラナイナ南部のクリミア半島の重要性。不凍港であり地中海に進出出来る。

Q44 なぜ、毛沢東は長正で延安を目指したのか
1934年~1936年に江西省 瑞金から陝西省 延安まで1万2500㎞をいどうしたが目的地は定まっていなかった。

Q45 なぜ、ヒトラーはミュンヘンで決起したのか
バイエルン州の州都であり反中央政府的傾向がある。

Q46 なぜ、連合軍は反転攻勢の場にノルマンディーを選んだのか
ドイツの防衛が手薄でパリまで最短距離を進撃可能。

Q47 なぜ、第二次世界大戦後ベルリンは分断されたのか
東から西への亡命者問題への対処。

Q48 なぜ、パレスチナで民族紛争が続くのか
オスマン帝国衰退による宗教対立激化。

Q49 なぜ、アメリカとキューバは国交断絶したのか
1959年のカストロによるキューバ革命成功後、1961年に国交断絶。

Q50 なぜ、日本は復興を遂げることができたのか
1950年~1953年の朝鮮特需の影響とする。

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鉄のあけぼの

読んだ本の感想。

黒木亮著。印刷 2012年6月15日。





以下は、「コトバンク」の「西山弥太郎」の記事へのリンク。

https://kotobank.jp/word/%E8%A5%BF%E5%B1%B1%E5%BC%A5%E5%A4%AA%E9%83%8E-1099347

以下は、Wikipediaの「川崎製鉄」の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%9D%E5%B4%8E%E8%A3%BD%E9%89%84

川崎製鉄(現JFEスチール)の初代社長 西山弥太郎を軸にした話。

大正8年に川崎造船所に入社。昭和14年に川崎造船所が川崎重工業に社名変更し、昭和25年に川崎製鉄が川崎重工業から分離独立すると社長に就任。

第二次世界大戦後に初の臨海製鉄所を千葉市に建設。千葉製鉄所は、昭和28年6月に第一溶鉱炉が稼働し、昭和48年には粗鋼生産量625万トンを達成。

<鉄の製造プロセス>
①原料処理
鉄鉱石を溶鉱炉に入れる前に、コークスや石灰石と混ぜ、焼き固める。コークスは、石炭をコークス炉で蒸し焼きにして作る。

②製銑
鉄鉱石をコークスと一緒に炉の上から入れて、炉の下から1200度の熱風を酸素と一緒に吹き込んで、鉄鉱石を溶かす。

⇒小説内では、川崎製鉄が製銑工程を担うまでが描かれている

③製鋼
固くて脆い銑鉄(炭素分を3%~5%含む)を、スクラップと一緒に転炉に入れ、酸素を吹き込んで炭素等の不純物を燃やす。

⇒小説内の川崎製鉄では、昭和37年に、それまでの平炉から転炉への転換を行っている

平炉は溶解室の窓から内部の火の色を見て温度を調節するが、転炉は火を使わずにガス(酸素等)を炉内に吹き込み、酸化熱で鋼を精錬する。それまで1時間20分必要だった精錬時間が、17分~18分に短縮された。

計器を頼りに炉内の状況を計算し遠隔操作する。重筋肉労働から頭脳労働への転換。

④連続鋳造
鋼の湯を連続的に鋳型に入れて冷やす。冷えて固まった鋼を長い帯上に加工して、切断すると、羊羹型の半製品「スラブ」になる。

⑤熱間圧延
スラブを圧延機で伸ばし、様々な形の鋼板に仕上げる。

⑥冷間圧延
上記⑤の工程で生まれた薄板を、さらに薄く仕上げ、高品質の薄板にする。

⑦表面処理
薄板に鍍金をして、錆びにくくする。

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本当は面白い「日本中世史」

読んだ本の感想。

八幡和郎著。2013年4月25日 初版第1刷発行。



第一章 大唐帝国の終焉と中世日本の始まり
01 平安・鎌倉・室町時代は究極の「小さな政府」の時代
奈良時代の律令制は、唐や新羅の軍事的脅威に対抗する常備軍や、大陸文明を普及させるシステムのために中央集権が必要とさたが後に地方自治が盛んになっていく。

02 平安遷都と東北経営で国の形をつくった桓武天皇
   (桓武~平城)

平安遷都は、豪族達の本拠地だった大和から離れ(農家は本拠地から出難い)、国威発揚のための寺院からも離れる意味があった。淀川水系の山城国には大阪湾から大型船が乗り込む事が出来る。

桓武天皇は天智天皇の曾孫で、称徳天皇の死で途切れた天武天皇の血統を、聖武天皇の皇女・井上内親王の夫で、天智天皇の孫である光仁天皇で補完した事で即位出来た。

03 橘嘉智子という女性が藤原良房を押し上げた
   (嵯峨~淳和)

藤原不比等は文武天皇の乳母であった橘美三千代と結婚した事で運が開けた。娘の光明子は聖武天皇の皇后になる。藤原北家の優越も嵯峨天皇の皇后である橘嘉智子の姻戚であったため?

04 富士山大噴火や東北大地震という時代に摂関制が生まれた
   (仁明~陽成)

人臣で最初の摂政は清和天皇の時の藤原良房とされる。関白は良房の養子である基経が最初。

05 臣籍降下したのちに復帰して即位した宇多天皇
   (光孝~村上)

光孝天皇は即位する時に子を全て臣籍降下させたが、即位後、三年で病気になったため、第三皇子の源定省を親王に復帰させ、宇多天皇とした。宇多天皇は藤原基経の妹である淑子の猶子であった事が有利だったらしい。

宇多天皇は菅原道真を登用し、国司に租税納入を請け負わせる国司請負や、「滝口の武士」創設等の律令制再構築(寛平の治)を行った。

06 菅原道真が失脚して日本は進路を間違えた
律令制の骨子は以下の三つ。

①官僚統治
地方領主を認めずに政府が任命した官僚が法律に則て統治する
②徴兵制
③土地は国有にして自作農に貸す

時代の変わり目で政治的指導力が強いと、このような中間搾取の無い政策が志向されるが、維持費用が高いため地方自治の要求が高まる。

平安時代では皇子の数が増えたために臣籍降下が行われ、傍系が官職に就き難くなり、菅原道真を最後に大貴族以外が大臣になる事が無くなる。

第二章 『源氏物語』と『平家物語』を政治史として見る
07 天皇よりも関白よりも強力な天皇の生母(冷泉~一条)
藤原道長は、同母兄妹である超子(三条天皇生母)と詮子(一条天皇生母)の力で権力を掴んだとする。

08 「皇后陛下」は明治になってから始まった西洋式制度
   (三条~後三条)

皇后という名は律令制で始まったが、聖武天皇の皇后に藤原氏出身の光明子があてられて乱れ始め、一人の天皇に複数の皇后がいたりする。

09 河内源氏と伊勢平氏の創業期二〇〇年物語
平氏と源氏の由来について。

10 史上空前の独裁者だった白河法皇とその院政
   (白河~近衛)

院政の創始者である白河天皇は、孫の鳥羽天皇に待賢門院を中宮として押し付けたが、崇徳天皇が白河院の子である事は日記の分析から間違い無いとされる。
鳥羽院の院政が始まると崇徳天皇は惨めな思いをすりょうになり、保元の乱へとつながっていく(藤原信西による崇徳院排斥)。その後の平治の乱は藤原信西の権勢を排除するクーデーター?

11 後白河法皇と平清盛を手玉に取った貴婦人
   (後白河~高倉)

後白河天皇の在位期間は三年であり、その理由は鳥羽院の妃・美福門院が養子である二条天皇の譲位を迫ったためとする。

12 南宋との貿易を梃子に平氏はのし上がった(安徳)
平忠盛、平清盛が日宋貿易で利益を出した話。

第三章 京都の論理と関東の不満が正面衝突
13 「平家追悼の令旨」が勘違いから大事件に(後鳥羽①)
以仁王の「平家追悼の令旨」が誇張されて各地に伝わり、蜂起を導いたとする。

14 京都人だった源頼朝と関東武士の微妙な関係(後鳥羽②)
源頼朝は京都出身であり、大江広元のような京都出身の官僚を重用した。後白河院崩御の後は、後鳥羽天皇に近い源通親を通じて娘の大姫の入内を行おうとしている。

15 関ケ原の西軍より勝機が大きかった後鳥羽上皇
   (土御門~仲恭)

後鳥羽院による承久の変は、大内惟信(美濃、伊勢、伊賀、越前等の守護)や佐々木一族(近江、長門、岩見等)を抑える武士達が上皇側についてため、後世言われるほど敗北濃厚だったわけでない。

16 鎌倉幕府の黄金期と京都の怪物公家(後堀河~後深草)
後鳥羽院が隠岐に流された後は、九条道家(東福寺創建者)が政治の実権を握る。後鳥羽天皇の同母兄で、平家と西国に降り出家していた守貞親王に院政を敷かせ、その子である後堀河天皇を即位させている(1221年)。

後堀河院の子である四条天皇が崩御し(1242年)、子がいなかったために後鳥羽天皇の孫である後嵯峨天皇が即位する。

17 北条時宗の仲裁が引き起こした南北朝へのカウントダウン
   (亀山~花園)

後嵯峨天皇が崩御した後に、子である亀山天皇(大覚寺統)と後深草天皇(持明院統)が対立。北条時宗は兄である後深草天皇が締め出される事を憂いて、両天皇の系統が交互に帝位を占めるようにし、それが倒幕の遠因となる。

18 北条政子や松下禅尼が体現した関東武士の論理とは
承久の変の後、守護や地頭として警察職を行う武士達に禅や浄土思想が広まっていく。

第四章 後醍醐天皇の夢を足利義満が完成した
19 建武の中興はどこが間違っていたのか(後醍醐)
後醍醐天皇の時代は官僚という専門職が世襲でノウハウを伝授していたため、幕府に代わる中央政府を持てなかったとする。

20 親鸞と日野富子を出した日野家の女性たち(後村上&北朝)
日野家は藤原冬嗣の弟の出自であり、伏見区日野を領地にしていた。足利義満の正室である業子、大正天皇の生母を出した柳原家等。

21 北朝はお家騒動・南朝は即位が確認できず(長慶~称光)
朝廷が二つに分かれ、室町幕府が勢力を伸長させた。

22 足利義満は皇位簒奪をもくろんだか
東国の武力集団を押さえるか、西国の経済を押さえるかの選択。鎌倉幕府崩壊は西国の貨幣経済に対応出来なかった事が原因?であり、室町幕府は畿内に政権を樹立する必要があった。

鎌倉には足利尊氏の母の実家である上杉家を関東管領としてお目付け役として自治区のようにする。

足利義満は公家社会に取り込まれたと言える。

23 北朝の血を引く皇室が南朝を正統とした事情
室町時代後期から太平記等を通じて南朝への同情が広がった。著者はどちらが正統かは甲乙つけ難いとする。

24 戦国の争乱が全国に皇室ブームを起こさせた
   (後花園~後陽成)

応仁の乱によって地方に逃れた公家が文化を広めたとする。

第五章 外交と宗教から見た中世日本を総括する
25 比叡山の僧兵が強かった本当の理由
門跡は貴族が独占したが、僧侶の世界ではある程度は実力で出世出来た。比叡山には教育機関の役割もあり、鎌倉仏教の下地となる。
さらに延暦寺等は皇族や貴族で余った子の天下り先であり、相続争いを起こさないために利用された。

26 浄土真宗や日蓮宗は戦国時代になって発展した
個人の救済を目指す鎌倉仏教は現代社会に向いているとする。

27 神戸と杭州が日中の首都だった時代があった
平清盛の時代に日宋貿易が整備された話。

28 元寇と遣明船の時代に学ぶ日中韓の関係
各時代において正式な国交関係を曖昧にしたまま交易が行われた事について?

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戦争プロパガンダ10の法則

読んだ本の感想。

アンヌ・モレリ著。2002年3月29日 第1刷発行。



戦争プロパガンダの基本的法則。

第1章 「われわれは戦争をしたくない」
ヒトラーは1939年に仏首相エドゥアール・ダレディエに平和への意志を表明している。

第2章 「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」
争い事の原因は全て相手にある。

第3章 「敵の指導者は悪魔のような人間だ」
敵に具体的イメージを付与し、醜さを強調する。一群全体を憎む事は困難であり、個人性を消す必要がある。容易な方法では、敵指導者をヒトラーに喩える。

第4章 「われわれは領土や覇権のためでゃなく、
     偉大な使命のために戦う」

人間は誰しも全体のために行動していると思いたがる。

第5章 「われわれも誤って犠牲を出すことがある。
     だが敵はわざと残虐行為におよんでいる」

敵側だけが残虐行為を行っている。

第6章 「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」
自分達が使えない兵器は卑怯と主張する。

第7章 「われわれの受けた被害は小さく、
     敵に与えた被害は甚大」

人は勝者の立場を好む。

第8章 「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」
広告会社が誕生するまでは、芸術家や知識人が戦争における感動を作り出した。

第9章 「われわれの大義は神聖なものである」
害を齎す悪に釣り合った聖が必要。

第10章 「この正義に疑問を投げかける者は裏切者である」
戦時に政府批判を行う事は難しい。

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見えない復讐

読んだ本の感想。

石持浅海著。平成22年8月30日 初版発行。



「法人」という曖昧な存在に復讐する話。

大学院生 田島祐也は、自分の所属する研究室の秘書 松居里子(29歳?)が横領の濡れ衣で自殺した事を恨んで、母校である東京産業大学への復讐を決意し、起業して復讐資金を集める。

曖昧な「法人」である東京産業大学への復讐というテーマであったが、途中で横領は大学の理事達の仕業だった事にして、彼等を殺した事で復讐が完了する。

多分、作者も曖昧な存在である「法人」への復讐方法が分からなくなったのだと思う。

【登場人物】
田島祐也:
機械のように動く大学院生。身長175㎝くらいで端正な容姿。経営学修士に進学し、エフ・シー株式会社を起業する。起業目的は、東京産業大学への復讐のための資金稼ぎであるらしい。

中西邦夫:
エフ・シー株式会社 副社長。中肉中背で細い釣り目。工学系大学院生。

坂本保久:
エフ・シー株式会社 副社長。小太りで長髪。工学系大学院生。

小池則久:
40歳~41歳?元公務員だが株式取引で大儲けをしてベンチャー・キャピタルを運営し、エフ・シー株式会社に投資する。同級生の稲田が自殺した北四号館の低い柵を放置している東京産業大学を恨んでおり、エフ・シー株式会社に投資した理由は復讐を代行してもらうため。弦巻達男が父親を殺すよう誘導した事で、その意図を田島祐也に見抜かれ、自殺を装って殺される。

富岡絵里子:
私立大学生で小池則久の会社でアルバイトをしており、後に田島祐也と結婚する。

弦巻達男:
さいたま工科大学の学生で、年生からエフ・シー株式会社の契約社員になる。母親を虐待する父親を憎悪しており、小池則久から「お母さんを大切にね」という暗示を受けた事が原因で父親を殺害し、自首する。小池則久の目的は、弦巻達男の復讐を利用して、田島祐也の復讐心を燃え上がらせる事であったらしい。

P5:
曖昧な存在に対して、人は明確な意志を持ちにくい
(中略)
企業から解雇された人間がいるとする。その人物は、会社を恨むだろう。しかし、彼は具体的に誰を恨めばいいのか。社長か。人事部か。
(中略)
彼自身にもわからないだろう。憎むべき相手が確かに存在するのに、どう憎めばいいのかわからない。それはとても辛いことだ

P116:
憎しみは、奴らのうち誰かを、あるいは全員を殺すことによって消え去るのか?
(中略)
消え去りはしない
(中略)
大学そのものを消してしまえばいい。そうすれば、これ以上復讐のしようがなくなる。心は満たされないかもしれないけれど、少なくとも終わりはやってくる

P242:
小池にとっては、起業家などゲームの駒に過ぎない
(中略)
経営者として実際に雇ってみると(中略)社員は家族同然
(中略)
経営者と投資家の差が、ここに現れた。投資家は、徹底して部外者であることが求められる。しかし、経営者はそうでないのだ。その違いが、今夜、二人の道を決定的に分けてしまった

P244:
復讐の相手を変えました。大学そのものではなく、理事たちへと。つまり法人という姿の見えない復讐ではなく、はっきりと相手の姿が見える復讐を選択した

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君がいなくても平気

読んだ本の感想。

石持浅海著。2009年12月25日 初版第1刷発行。



以下、ネタバレ含む。

恋人が殺人犯だった主人公の話。

【登場人物】
水野勝:
ソフトウェエア会社ディーウィ社員。29歳?恋人である北見早智恵のレシートから、彼女が煙草を購入していた事を知り、ニコチン中毒を利用した殺人犯である事を知る。

北見早智恵:
25歳~26歳?甥である杉本雄輝が、自分の贈った玩具着ロボで死亡した事を知り、安全確認テストを怠った同僚や設計者を殺していく。最後は栗橋千鶴子と一緒に焼け死ぬ。

粕谷昇:
42歳の係長。独身でキャバクラに入れあげている。安全確認テスト結果をチェックしないで承認印を押した事を恨まれ、ニコチンを大量に注入された二日酔いの薬を飲まされて死ぬ。

栗橋千鶴子:
32歳の童顔設計者。酒と煙草が好き。着ロボの設計者で、北見早智恵といっしょに焼け死ぬ。

尼子久信:
30代半ばで、玩具会社ベイビーバンドから派遣された。着ロボの安全確認結果を捏造した事を恨まれて、ニコチンを強化した煙草を吸わされて死ぬ。

桜沢務:
水野勝の同期。

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