蒼き狼

読んだ本の感想。

井上靖著。昭和39年6月25日 発行。



自らの出自がモンゴル族であると確信出来ない成吉思汗が、自分の正統性を証明するために、他種族と戦っていく話。帝国を築いていくに連れて、モンゴル族の文化を遵守するのが自分だけとなっていき、やがて自分と同じ境遇の息子ジュチの死を知る。

P6:
自分たちが大自然の中の無力な小さい点であるという思いは、牧草を求めて転々とし、定住する家屋も、定住する土地も持たない遊牧民たちの誰もが必ず心の底に持っていて、いかなる行動もいかなる考えをも、結局はその根底に於てそれを支配する民族の呪文のようなものであった

P18:
全モンゴル人の血の中に等しく分け与えられている狼と牝鹿の血の方が、鉄木真にはずっと素晴らしいことに感じられた

P19:
弱者でありながら同じモンゴル人の血の所有を主張していることに対する反感と、憤懣が、八歳の少年の心に根を張っていたのである

P108:
ジャムカは利益を公平に分配していたが、鉄木真はそれを幾つかの等級に分けて分配していた。各自が出した労力に比例して利益を分配し、従って沢山働く者は沢山分前にありついた

P163:
鉄木真はいつもそうした女たちの中から、気に入った女を選んで自分の帳幕に招いたが、ただ一人も自分の躰を守るために抵抗を試みる者はなかった
(中略)
女たちは例外なく合戦に敗けたとなると敵方の男たちに従順であった。鉄木真は母ホエルンも妻ボルテをも引っくるめて、女というものを信じることはできなかった

P196:
母ホエルンは、自分に産ませたメルキトの略奪者を憎んだように、自分を憎んでいるのかも知れない。成吉思汗は自分の出生の秘密を、カサルを庇おうとする眼の中にはっきりと見せつけられた

P262:
モンゴルは今や金国を打破った統制ある大国であり、曾ての遊牧の民は今や階級に依って区別されたモンゴル国の国民であった

P269:
成吉思汗は耶律楚材に依って、人心を結集するに最も大きな力を持つものは、民族愛でも権力者に対する忠誠でもなく、信仰であることを学んだ

P275:
蒼き狼は敵を持たねばならぬ。敵を持たぬ狼はもはや狼ではなくなる。可汗は耶律楚材の如きまやかし者のために、契丹の魂を植えつけられようとしている。この際耶律楚材を棄てて、その替りに敵を持て。われわれの祖先がそうであったように、闘争を以てわれらモンゴルの民の生涯を埋めよ

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