暗黒女子

読んだ本の感想。

秋吉理香子著。2013年6月23日 第1刷発行。



以下、ネタバレ含む。

第61回 聖母女子高等学院文学サークル定例会で行われる「前会長 白川いつみの死」に関する朗読会。文学サークルには、白石いつみに誘われなければ入会出来ない。投身した白石いつみは、花壇で、鈴蘭の花を握りしめていたらしい。

以下の疑問。

・裏切者は誰だったの?
・各人の小説はどの程度真実なの?

〇聖母女子高等学院
創立六十年を超えるミッション系の女子校。英国の修道女が戦後に来日し、キリスト教精神を礎とした教育のために設立。初等部から短大までの一貫教育。毎年六月に、イースター&ペンテコステ祭を行う。一学年三クラス百二十名ほどの少人数制。文学サロンは別館校舎一階にある。

【登場人物】
白石いつみ:
高校三年生。文学サークルの会長。父親は聖母女子高等学院の経営者。高校一年生の時に休部状態だった文学サークルを復活させる。

澄川小百合:
高校三年生。文学サークルの副会長。

二谷美礼:
貧しいが成績優秀なため、特待生として聖母女子高等学院に入学。白石いつみの弟 和樹(小学四年生)のアルバイトをしている。

小南あかね:
実家は大正元年創業の料亭「こみなみ」。洋菓子作りを得意とする。小柄でアンティークドールのような美少女。

ディアナ・デチェヴァ:
ブルガリアからの留学生。左足が不自由。双子の姉 エマは旅行会社で仕事をしている。

古賀園子:
医師志望。香水にゲランのミュゲを使用。イースター&ペンテコステ祭の実行委員長。

高岡志夜:
『君影草』という小説でライトノベルの賞を授賞。ポニーテールの凛とした美少女。小学校一年生~小学校六年生までフランスに住んでいた。

1.開会のごあいさつ及び闇鍋ルールの説明 会長・澄川小百合
文学サークルで行う闇鍋会の説明。闇鍋をしながら、各人が自作小説(白石いつみの死がテーマ)を朗読する。

P15~P16:
わたしたちの年ごろの友情って、両極端だと思わない?似た者同士で、強く惹かれあうか憎みあうか、または正反対同士で、強く惹かれあうか憎みあうか。その中間なんて存在しないの
(中略)
自分というものを殺すか、それとも殺されるか―女子の友情って、いつもギリギリのところ。命がけのサバイバルだわ

2.朗読小説「居場所」 1年A組 二谷美礼
犯人として古賀園子を告発。

白石いつみから、白石いつみの父と古賀園子の不倫を相談されていたという。鈴蘭の香水を使用した事が根拠とする。

黒いバレッタを貰った逸話。

3.朗読小説「マカロナージュ」 2年B組 小南あかね
犯人として二谷美礼を告発。

白石いつみから、ストーカーのように付き纏われ、家庭教師として白石家に入り、窃盗をしていると相談されていたという。鈴蘭の模様が入ったバレッタも盗まれたもので、白石いつみが鈴蘭を握りしめていたのは告発のためとする。

文学サークルに入った切っ掛けは、自分が任せてもらうはずだった「こみなみ」の洋食屋が、実家の火事のために立ち消えになり、自分の夢を文学サークルのキッチンで実現するためとしている?

4.朗読小説「春のバルカン」 留学生 ディアナ・デチェヴァ
犯人として高岡志夜を告発。

高岡志夜の作品の名である「君影草」は「鈴蘭」の別名。

白石いつみとは、二週間ほどのホームステイをブルガリアで行った時からの仲。二年目のホームステイで白石いつみと一緒に来た高岡志夜の印象は悪い。高岡志夜が白石いつみに冷たい理由を高岡志夜の作品を酷評し、海外に翻訳する事を促したためとする。

当初、日本留学は姉のエマが行くはずだったが、事故のために自分が留学する事になったとする。

イースター&ペンテコステ祭で、ピンク色のバニーの着ぐるみをした人物が、白石いつみに「いつもわたしのことを見下して。絶対に許さないんだから。あなたなんて殺してやる」と言っていたと主張。

白石いつみに、彼女と似た人形を贈られた逸話。

P120:
日本の女子校は、それだけが独立した異空間のような感じがするのです
(中略)
女生徒たちはきりきりと主導権という糸を引っ張り合っています
(中略)
主導権とは、奪う方も、守る方も、無傷ではいられないものなのです。それなのに、表面では彼女たちは無関心を装い、笑顔で他愛ない会話をします

5.朗読小説「ラミアーの宴」 3年B組 古賀園子
犯人としてディアナ・デチェヴァを告発。

ディアナ・デチェヴァが、白石いつみに似た人形を刺している場面を見たと主張。ディアナ・デチェヴァの村は鈴蘭が有名で、苗を村から持って来た。

白石いつみが、留学生の来る国をブルガリアに拘るべきでないとして、ディアナ・デチェヴァの姉が日本への招待留学継続を見込んで旅行会社から長期雇用された事が危うくなったために恨みを抱いたとする。

ディアナ・デチェヴァの呪いによって、白石いつみが体調を崩し、爪や髪が伸びるのが速くなったという。

白石いつみの父に事務能力を認められ、イースター&ペンテコステ祭の事務作業を書斎のパソコンで行った逸話。

6.朗読小説「天空神の去勢」 2年C組 高岡志夜
犯人として小南あかねを告発。

白石いつみの食べる洋菓子に毒を盛っていたとする。小南あかねの左腕には、掌くらいの大きさの赤い痣がある。

文学サロンが白石いつみの卒業と同時に閉鎖され、自由に洋菓子作りが出来る環境が失われる事に反発したとする。

文学サロンのキッチンは、「こみなみ」が買い取って移築して洋食レストランにするらしい。

P187~P188:
性器を切り取られて、海に投げ捨てられるって……すさまじいよね。だけどヴィーナスの美しさの源が、天の神の去勢によって生まれたっていうのは、なんだかすごく納得がいく
(中略)
男性を排除しきった世界……女子校ならではの、神々しいまでの美しさっているのか。究極の美っていうのは、やっぱり特殊な環境から生まれいずるものなんじゃないかな

7.朗読小説「死者の呟き」 前会長 白石いつみ
澄川小百合による白石いつみの小説の代理朗読。

文学サロンを創設した目的を自分が主役になるための環境を作るためだったと告白。

当初は、教師である北条慎二と逢引するためだったが、それだけではつまらないので、脇役となる少女達を弱味を握って入会させていく。

高岡志夜:
『君影草』は、フランス小説の盗作。

小南あかね:
実家の二号店が兄に任される事になった反発から、実家に放火し、現場を目撃される。アリバイ作りを白石いつみに手伝ってもらう。

古賀園子:
白石いつみの父の書斎にあるパソコンをクラッキングして学校のホストコンピューターに入り込み、自分の成績や評定値を書き換えていた。

二谷美礼:
援助交際。

ディアナ・デチェヴァ:
自分が日本に留学したいがために、姉を突き落とした。

⇒高岡志夜と小南あかね以外の脅迫材料が、やっつけ過ぎる。経済的に困窮している二谷美礼や、留学生のディアナ・デチェヴァは弱味を握らなくても懐柔出来たのでは?

北条慎二との子供が出来たが、密告によって妊娠が父に露見し、中絶される。すずらんは子供に付ける名だった。

ブルガリアでの逢引写真、エコー写真のコピー、父に密告する機会等から、文学サークルのメンバー全員が疑わしい事になり、謎の自殺を装って失踪し、文学サークルのメンバーに重圧をかける事にする。

各人は定例会で、鈴蘭に別の意味を与え、他の人間に罪を擦り付けようとする。その小説がそのまま遺書になり、闇鍋に仕込まれた毒によって死ぬ事がクライマックスであるらしい。

⇒死体の処理はどうするつもりだったんだろう?

P217:
ブルガリアなら、イヴァン・ヴァーゾフという文学史上重要な作家がいるわ

P220:
主人公になりえるほどの美と才を持った人物を、脇役として押さえつけることが、主人公でいることの醍醐味

P224:
高岡は知らなかったに違いない。脇役に徹するということが、どれほど屈辱的で鬱屈させられるものかを。どれほど自分の魂をすり減らすものであるかを

P226:
小南あかねの秘密を知りたい。可愛ければ可愛いほど、その秘密は醜悪であってほしい

8.閉会のごあいさつ 会長・澄川小百合
澄川小百合による告白。

白川いつみは、既に毒殺しており、闇鍋に危険物は入っていないという。これからは、澄川小百合が主役になるらしい。

***********************

メタな視点が許されるならば、裏切者として白川いつみの妊娠を密告したのは澄川小百合なんだと思う。ブルガリア旅行に高岡志夜が同行したのは、澄川小百合の仕込みで、疑われないように逢引の証拠を掴んでおく。

北条慎二教諭も協力者なのではないか。女学生との結婚なんてリスクが高過ぎる。

そして、各自の短編小説の内容が、執筆者自身に関する事以外は真実だとすると、白石いつみは文学サークルのメンバーが結託しないように、普段から悪い情報を巻き散らしていた事になる。

高岡志夜との争いや小南あかねの毒、ディアナ・デチェヴァの人形も真実だとすると、色々な人間に憎まれていた事になる。

文学サークルのメンバー達の弱味が共有知識となり、澄川小百合が殺人という弱味を晒しているので、文学サークルの秩序は長続きしない気がする。

皆にばらすのでなくで、白石いつみがどこかで見張っていると嘘をつく設定にすれば良かったのに。

⇒白石いつみの肉を闇鍋として食べたと思わせる設定?人肉の解体なんて簡単には出来ない

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完本 信長私記

読んだ本の感想。

花村萬月著。2015年12月10日 第一刷発行。



織田信長の幼少期から本能寺の変の直前までを書く。母子関係がテーマの一つかな。話が長過ぎて冗長になっていると思った。

P111:
俺は自分が神仏に生れなかったことを呪う。人に生れてしまったが故にあれこれ面倒をこなさねばならぬ。手順を踏まねばならぬ。なんとか一息に世界を破壊し尽してしまえぬものか

P123:
竹千代とは、新たな世界をつくりあげる上でどうしても避けて通れぬのが、闘争である―との意見の一致を見た。

P155:
弓矢が満足にとどかぬところから鉄砲をぶっ放せば、弓隊はお仕舞だ。つまり戦は畢竟、間合いである。間合いさえ保って戦うことができれば、負けるばずもない

P167:
奴らは慾を醜いものと感じている。だから醜い慾を抱いている自分に対する言い訳が必要なのだ

P200:
残虐と愛嬌は表裏でございますからな
(中略)
子供は平気で虫を潰すもの。割り切りなさって残虐を極めてはいかがでしょう

P204:
己を卑下したり、おどけてみせたりするのは、いわば他人を支配したい気持ちの裏返し。その延長線上に天下取りがあっても一向にふしぎではない

P239:
母上と俺は似すぎていたのです
(中略)
心持ちが我が身にそっくりである俺が日々成長して、母上には成し得ぬことを成してゆくのですから、母上としては心穏やかではいられなかったかもしれませぬ

P329:
この世のすべてには終わりがあり、人の最後は否応なしに死の苦しみで終わることを鑑みれば、世界は『悪』によって成り立っている
(中略)
『悪』を否定する者は、己の拠って立つ場所を斥けるという愚を犯しているのだ。たぶん己だけは死なぬと心のどこかで楽観しているのであろう

P367:
天皇の基盤は、坊主の基盤はどこにあるのか。腹立たしいことに現世にない。だから始末に負えないのである

P384:
信玄の凄さの一例を挙げれば、度量衡の統一に腐心したことである。国家の経営とは、基準を設け、徹底させることにある

P424:
人があれこれするときは、一律でないと不公平だと吐かす輩が必ずでます。けれど神仏は気まぐれなもんですわ。それでも皆は離叛もせずに従います

P440:
家臣など皆すべて同じ貌で、同様の体格であればよいものを。粘土細工のように型に仕込んで無数に模ることができぬものか。もちろん名もいらぬ。役目に応じて赤青黄橙緑黒、着衣を色分けし、その色の采配を振るう。こうきたらこう動くとすべての動作を寸分違わぬよう仕込ませて、ついでに背に番号でも標でも縫いつけさせておき、それで細かいところまで指図すれば戦もよりうまく戦えるというものだ

P461:
母に支配されて育った男は、あれやこれやの気配も満足に読めぬくせして当人は己が悧発であると思い込んでいるような輩が大部分であるから始末に負えぬ
(中略)
光秀の場合、実際に誰よりも抽んでた力もあるがゆえ、なおさら始末に負えぬ

P472~P473:
おまえがさらに背丈を伸ばすためには、おまえの母堂を消し去ることこそが肝要
(中略)
よいか。神の為すこと、凡夫に悟れるはずもない。黙って受け容れよ
(中略)
俺など、疾うに母を葬り去っておるわ。ゆえに、斯様に屹立し、神の領域に踏み入れることが叶っておるのだ
(中略)
光秀よ。これは欠片といえどもおまえにもこのような境地のあることを知って慾しいからこその、いわば親心、いや神の心である

P488:
光秀は皆が羨むほどの大いなる力を得たわけだが、夕庵に諮ったところ、力を与えすぎではないかと腕組みした
(中略)
畿内を統べる大軍団をまかせることのできるのは、母堂の死後、性根が見事に入れ替わり、目つきも鋭く据わってきた冷徹な光秀くらいのものである

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