古代中国の文明観

読んだ本の感想。

浅野裕一著。2005年4月20日 第1刷発行。



<黄河文明>
紀元前2500年頃~紀元前2000年頃に、龍山文化に代表される城壁に囲まれた都市的集落が現れる。紀元前2000年頃~紀元前1600年頃には二里頭文化(青銅器文化)が繁栄し、紀元前1600年頃から殷王朝が栄える。殷の時代の黄河流域には森林が広がり、像、犀、牛、熊、虎等の大型哺乳類が生息したとされる。

人口や物資、知識を集積する都市と文字の使用は漢族文明の特色であり、都市を建設出来ない異民族を黄河流域から駆逐していった。

文明は燃料としての木材を大量に必要としたために自然破壊が為される。

各国が覇権を競った春秋時代(紀元前770年~紀元前403年)、戦国時代(紀元前403年~紀元前221年)には各国が国力を増強するための開発によって砂漠化が進行し、その影響は現代まで残る。

<文明以前>
上古の時代、人類は圧倒的に強力な自然に脅かされていた。中国では住居を発明した者(有巣氏)や治水を行った者(禹)等の自然の脅威を克服する文明を創出した人物を聖人として王となる。

特に「文字」の発明は、音声が届く範囲外へ保存可能な記録を伝える意味を持ち、臣下の発言を悉く文書化し、証拠を揃えた上で実績と照合し、成文化された法と照らし合わせる事を可能にした。

文明の創始者 黄帝による万物の命名は混沌たる世界を、理路整然たる世界に改造したとされる。

◎需家
孔子(紀元前552年~紀元前479年)が紀元前530年頃に魯の都 曲阜に開いた学団を始まりとする。孔子は夏・殷・周の礼楽に精通していると自称し、周王朝時代の礼の制度に復帰せよと主張した。

王朝儀礼を唯一の行動規範として、主体的な意思を封印して受身の言動を取る。儒教の礼は、服装、車馬、邸宅、器物等の等級によって身分差を顕示し、社会秩序を維持する性格を示す。

孔子は周王朝の諸制度が、夏や殷に比べて装飾性に富み、美麗である点を評価した。それは節倹主義の否定である。天には恒常性があり、人間による影響は無いとする。そのため、人間側が対応を誤らなければ文明社会が存続出来るだけの富は供給される。

◎墨家
墨子が紀元前450年頃に魯に開いた学団を始まりとする。墨子は自然界に生きる人間を、他生物より遥かに劣った存在として、社会形成の必要性を説いた。

人類が生産出来る富の総量は人類全ての生存を保障し得るか危ぶまれるとして、人類が生存するための富の生産を征服でなく、無駄の除去に求め、装飾性や奢多品排除を主張。

◎道家
人事を天事の内部に包摂する古代天道思想に端を発する。宇宙の始原を説明し、そこから人間社会批判に至る。他思想では有意志の人格神である上帝を宇宙の主催者として世界を所与とするために宇宙の始原を思索対象とはしない。

道家では機械導入や動物の家畜化を自然に反すると考える。文明社会では、人々は社会の価値基準に照らし合わせて他人と競争し、持っている能力以上の結果を出そうとするために自己を見失うという主張。

太古のように狭い共同体に埋没して暮らす事を理想とする。

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ラ・ミッション ―軍事顧問ブリュネ―

読んだ本の感想。

佐藤賢一著。2015年2月25日 第一刷発行。



以下は、Wikipediaの「ジュール・ブリュネ」の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%8D

侍を美化し過ぎている。

幕末の日本で徳川幕府に雇われた軍事顧問団の一人ジュール・ブリュネが大政奉還後も自らの意志で徳川幕府残党に協力し、帰国後、自らが英雄として評価されている事を知る。土方歳三を助けるために、カズナーヴ伍長としてフランスに連れて行く事に無理を感じた。

P122~P123:
その『フランス的』というのは?
(中略)
世界に文明をもたらす使命があると信じながら、無知蒙昧のうちに苦しんでいる国々に、繁栄と正義と文化を与えようとする友好的態度のことです

◎メキシコ戦争
1861年12月~1867年6月までフランスがメキシコで行った。メキシコ大統領ベニト・フアレスが二年間の外国債務利払い停止を決めた事が発端で、フランス(債権三百万ペソ、6500人派兵)、スペイン(債権九百万ペソ、4000人派兵)、英国(債権七千万ペソ、700人派兵)が武力制裁した。

英国とスペインは1862年には撤退したが、フランスを訪れていたホセ・マヌエル・イダルゴ・イ・エスナウリサールがナポレオン三世に取り入り、皇后ウジェニーは新大陸にカトリックの大国を設立する思想に浮かれた。

新大陸にフランスの頼もしい友邦を築く夢。

◎セヴァストポルの教訓
海上砲撃のみでは陸上要塞を陥落困難である事。

クリミア戦争にて1855年9月に黒海沿岸のセヴァストポル要塞を攻撃した時は、四日目正午のフランス軍による奇襲が功を奏した。突撃したがらない海軍国の英国と、白兵戦を好む陸軍国のフランスの対比。

P394:
砲弾が城を占領するわけではない。それは人にしかできない。人が乗りこんでこないかぎり、我々は決して負けない

P399:
海のイギリス人と陸の日本人に連携されて、今やエゾ共和国は、海のイギリス軍と陸のフランス軍に共闘されたロシア軍と同じ

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寝ていた

気がついたら寝ていた。

現在時刻は6月29日の午前3時くらいと思ったら、まだ6月28日のままだった。

長い間寝ていたと思ったけど、それほど長くは寝ていなかった。

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学校では教えてくれない地政学の授業

読んだ本の感想。

茂木誠著。2016年10月4日 第1版第1刷発行。



以下は、「オトナカレッジ」へのリンク。

http://www.joqr.co.jp/college/2015/10/

以下は、「もぎせかブログ館」へのリンク。

http://mogiseka.at.webry.info/

<地政学>
国家間の関係性を地理的条件から説明する。国家には縄張りがあり、特に隣国との間には対立が発生する。

理想主義(進歩史観):正義が勝利するという歴史観
現実主義:歴史を生存競争の視点から考える

地政学は現実主義的思想である。

◎アメリカ
地政学的には大きな島。地理的条件から以下の二つの外交方針が生れる。

モンロー主義:引きこもり戦略
ウィルソン主義:積極的に海外派兵

米国は開拓農民や清教徒革命に失敗して国外逃亡したキリスト教原理主義者によって建国されたとして、以下の二大政党がある。

共和党:
英国から渡来した初期の移民達による支持。西部開拓農民の気質としての自助努力、一国主義を指向。

民主党:
白人の後から来た移民達の支持。後から来た方が貧しいため福祉や軍備縮小(国際協調)を指向する。

歴史的に日本と米国が隣国になったのは、1895年の日本による台湾併合、1898年の米国によるハワイ、グアム、フィリピン併合あたり。

やがて日米は中国市場をめぐって対立するようになる。日本が大陸に独自市場を築こうとしたのが満州事変であり、それは米国の利害と対立する。第二次世界大戦後は日本は米国の勢力範囲内になり、中国と米国が隣国になる。共産党支配下の中国市場に米国は進出出来ず、冷戦が発生する。1972年の米中関係好転後は日米安保が揺らぎ、沖縄が返還される(沖縄の地政学的価値低下)。

現在の米国には対中で以下の二派閥があるとする。

親中派(国務省、金融資本):
1972年のニクソン訪中を仕込んだキッシンジャー派と中国に投資する人々。

反中派(軍需産業、国防総省):

◎中国
南北逆転した地図による説明(進行方向を上にした方が分かり易いらしい)。

歴史的に遊牧民族との関係が大切だった。内陸を意識するためにランドパワーの国となる。「孫子の兵法」では海上の戦いは出てこない(台湾の中国領化は清の時代から)。

攻める(移動する遊牧民を補足する事は困難)、守る(防衛線が長過ぎる)、買収等の対応策。明や清は万里の長城を整備している分、海上の守りが疎かになり、倭寇や列強等のシーパワーの侵略を受けたとする。

以下の二つの思想。

ランドパワー(毛沢東):
商工業に興味が無く、土地を国家が管理する事を考える。

シーパワー(蒋介石):
海上交易を盛んにして海上に進出する。

現代の中国は、シーパワー的な市場経済、資本主義を取り入れている。ソヴィエト連邦崩壊によって北部ランドパワーの圧迫が緩んだため海上進出を行う余裕が発生。

2010年までに沖縄までの東シナ海と南シナ海を第一列島線として抑え、2020年までには小笠原、グアム島までを第二列島線として抑える目標。これは第一次世界大戦頃のドイツに似ているとする。

◎朝鮮半島
中華王朝に忠誠を誓う歴史。中国で新しい王朝が発生すると、前の王朝と繋がっていた勢力が駆逐され、新しい王朝が朝鮮でも発生する。

朝鮮王朝は明と連動して李成桂が建国したもので、朱子学(農業重視)等のランドパワー的政策を採用した。

現代の朝鮮半島は、ランドパワー(北朝鮮)とシーパワー(韓国)に分かれているとする。

<明治維新>
薩摩(シーパワー)と長州(ランドパワー)による革命。ランドパワーは大陸浸出に興味があり、ために日本は陸で中国と戦いながら海で米国と戦う事になったのかもしれない。

◎ロシア
ロシアはモンゴルの後継国家であり、コサック騎兵はモンゴルの騎馬文化を継承している。北京条約(1860年)で沿海州を奪い、日本の隣国になる。

バイカル湖以東の東シベリアの人口は600万人程度だが、旧満州の人口は1億人程度であるため、ロシアと中国との間で領土紛争が発生するかもしれない。

マッキンダーの地政学では、内陸国家ロシアの中心部分をハートランドとし、海洋国家である英国はユーラシア大陸の奥まで攻め込めないため、ロシアを封じ込める事を目標とする。

日英同盟や日米安保条約では、日本がロシア封じ込めを担当していた。

<ウクライナ>
黒海艦隊の基地であるクリミア半島の付け根にある。モンゴル支配下から比較的早く離脱したのがウクライナで、ポーランド(カトリック)の助力があったために西欧州の影響がある。食糧確保や黒海への出口として重要な拠点となる。

欧州におけるランドパワーとシーパワーの境目にあり、ウクライナを東西に分離させた方が平和かもしれない。

◎欧州
地政学的には半島。付け根にあるロシアの脅威がある。英国が最もロシアの脅威から安全で、島国であるために防衛に必要な軍隊が比較的小規模。

EUはドイツ統一を脅威としたフランス等がドイツを縛り上げる体制として1993年のマーストリヒト条約を作った事を端緒にする。

<サイクス・ピコ協定>
1920年代に英国のサイクス、仏国のピコという外交官が、仏国領シリアと英国領イラクの境界線を定めた。人工的に定められた国境線が争いの原因になる。

◎イラン
南下を目指すロシアとの対立。英国の進出もあった。シーア派であるが、イラク南部やサウジアラビアの東側の油田地帯もシーア派が多いためにサウジアラビアとの対立も抱えている。

◎トルコ
モンゴル高原の遊牧民を祖とする。欧州連合に加盟する話もあるが、経済規模の違いがあり、EUに加盟した場合はトルコからの大量移民が予想されるために難航している。

3000万人程度の人口をもつクルド人は、スンニ派であるが女性の力が強い独特の形態で米国と組んで独立する可能性がある?

◎インド
南下するロシアとの関係。英国の植民地時代はアフガニスタンが防波堤だった。チベットにはダライ・ラマ13世の独立を認める代わりに英国軍が駐留した。

現在では米国がパキスタンを対ロシアの防波堤としている。

2020年代には人口が中国を追い越すため対中関係が変化するかもしれない。

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百冊を超えた、獣が帰る

2017年4月からの読んだ本の冊数が100冊を超えた。

年間で何冊に達するか自分の中で競争みたいになっている。

今週から自由な時間が減るので今までのようには本を読めないかもしれない。

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やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。

読んだ本の感想。

渡航著。

3巻と6.5巻が面白いと思った。以下のように比較で成り立つ物語。正反対のものを対置する事で、陰陽を表現していると思う。

2巻 P203

由比ヶ浜が興味深そうにぐいと身を乗り出してきゅっと手に汗握った。一方、材木座は嫉妬と憎悪に身を焦がし、殺意と共に拳を握った

1巻:
主人公が奉仕部に入る。何故、2勝ずつなんだろう?



P54:
高校生にありがちな思想形態だな。捻くれていることがかっこいいいと思っていたり、『働いたら負け』とかネットなどでもてはやされているそれらしい意見を常に言いたがったり、売れている作家やマンガ家を『売れる前の作品のほうが好き』とか言い出す。みながありがたがるものを馬鹿にし、マイナーなものを褒め称える。そのうえ、同類のオタクをバカにする。変に悟った雰囲気を出しながら捻くれた論理を持ち出す

2巻:
短編集的。職場見学に関わる噂話を潰す話、川崎沙希に塾のスカラシップを薦める話等。



P50:
同じカテゴリに属し、恒常的にコミュニケーションを交わしているからこそ、その親密性は保たれる。そうしたシチュエーションに依存して人の関係性はようやく接続できるのだ

3巻:
由比ヶ浜誕生日会。遊戯部と大貧民をする。



P216:
好きなだけじゃダメだったのだ。
だから彼らは補強した。知識を蓄えて、夢だけ見てる連中を眺め自分は違うのだと己を鼓舞した

4巻:
夏休みに小学生の林間学校に参加し、鶴見留美のいじめを解決する。



P30:
比企谷八幡がいなくても、ちゃんと回っている世界、というのを実感する。そのことに密やかな安心を覚えるのだ。かけがえのない存在なんて怖いじゃないか。それを失ってしまったら取り返しがつかないだなんて

P78~P79:
仲良くなるというのは感情の問題だが、うまくやること自体は技術の問題だ。話題をふり、話を合わせ、そいつの答えに共感してみせる。そうした過程の中で相手のストライクゾーンを絞り、また自分の守備範囲をそれとなく教える
(中略)
人とうまくやるという行為は、自分を騙し、相手を騙し、相手も騙されることを承諾し、自分も相手に騙されることを承認する、その循環連鎖でしかない

P121~P122:
お金の価値も、勉強の意義も、愛の意味も知らない。与えられるのが当然だと思っていて、それの源泉を理解していない。世の中の上澄みを啜ってわかった気になっている年代だ。中学からは挫折や後悔、絶望を知り、この世界が実は生きにくいものだとわかるようになってくる

5巻:
短編集的。進路相談や映画鑑賞、花火大会。



6巻:
文化祭。



P316:
相模はきっと、雪ノ下や由比ヶ浜みたいになりたかったんだろう。あんなふうに誰かに認められて、求められて、頼りにされる人間に。だからインスタントに肩書きを貼り付けた。委員長というラベルをつけることで箔をつけ、誰かにレッテルを貼って見下すことで自分の優位性を確認したかった。それが相模の言う「成長」の正体だ

6.5巻:
体育祭の話。



P66:
人は変われないのだ。もし、変われるとしたら手段は一つ。
何度も何度も痛い目を見て、心に消えない傷を刻みつけて、その痛みからの回避本能によって、結果的に行動が変化するだけだ

P124~P125:
悪口や陰口のコミュニケーションにおける効用は計り知れない。
経験、認識の共有、自身の悪性の開示と、その悪性をお互いが弱みとして握り合う、共犯意識。共犯意識ゆえの結束。さらには陰口を叩き合うことでガス抜きとなりその後のコミュニケーションを円滑にする
(中略)
何かの犠牲によって成り立つ友情は常に新鮮な生贄を求める。供給が断たれてしまえば、身内から差し出さねばならない

P309:
多数派を気取る奴らに教えてやろう。貴様らの信じる価値がいかに空虚かを。いるかどうかも定かでないさらなる多数派に怯える恐怖を

7巻:
京都への修学旅行会。



7.5巻:
タウン誌の結婚特集のページを作る。他に柔道部の話。



P102:
それぞれの役割を決め、そのロールに期待されるやりとりをする姿はままごとじみてすらいる。無自覚的にやっているのであれば本人たちは幸せだろうが、テンプレート化されてしまった会話や日常に自覚してしまったものは憐れだ。生涯、その意識と付き合っていかねばならない。その感覚は持ち得る者同士でしか共有することはできないが、その感覚ゆえに共存していくことは難しい

8巻:
生徒会選挙。推薦されてしまった一色いろはを落選させようとするが、当人の生徒会長をする意欲を掻き立てる事で解決する。



P197:
いつもそうやって言葉や行動の裏を読もうとする。そういうの、わたし結構好きだよ
(中略)
悪意に怯えているみたいで可愛いもの

P342:
そんな本物を、俺も彼女も求めていた

9巻:
クリスマスイベントの話。



P225:
彼らは人の意見を求め、それを取り入れる。失敗したときの責任を分散させるために
(中略)
報告も連絡も相談も協議も確認もすべては関係者を増やし、自身の責任を分散させる行為だ。全体の失敗、全体の責任という形にする事ができれば、一人一人の心の負担は減っていく

P387~P388:
この会議の最大のミスは否定が存在しなかったことだ。一番最初に否定がなかった。だから、まちがっていると知っていても、誰も修正できなかったのだ
(中略)
失敗したときに言うのだ。皆が決めたことだからと。その責任を分散し、自身の心を軽くし、名前のない誰かのせいにする。最後は「みんな」で決めたことだからと脅迫し、共犯者に仕立て上げる

10巻:
葉山隼人の文理選択をマラソン大会で聞く。



10.5巻:
生徒会のフリーペーパを作る。



11巻:
バレンタイン会。生徒会の企画でチョコレートを作る。



P101:
懐かしいと感じるのは、たぶんいろんなものが変わってしまったからだ。いずこかで同一性を失ってしまったから。二度と同じものを手にすることがないとわかっているから

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孔子

読んだ本の感想。

井上靖著。平成元年 九月十日発行。



孔子の架空の弟子 蔫薑(紀元前516年生まれ?)が、孔子の死後30年が経過してから孔子について語る。中原は、蔡国の出身で荷物持ちとして雇われながら孔子の弟子となったらしい。

P22:
この何年間に、何十年間に滅んでしまった国々の民たちが、新蔡というふしぎな国際市場には、日一日、その数を増やしておりました。亡ぼした国の民も居れば、亡ぼされた国の民もおります。が、ここでは総ては平等であるかのように見受けられました。

P73:
国境なる地域を超えましたが、―と言っても、特殊な国境らしい施設があるわけでも、境界の標識が示されているわけでもありません。ただ、そこには国籍不明の農民たちが共同で経営している大きな市場があって、それがこの辺境一体の、これまた国籍不明の住民たちを相手に、異常と言えば異常と言えるような賑わいを見せている

P90:
亡びるには、亡びる段階というものがあるらしく、州来という町になったり、負函という町になったり、次々に小さく分かれ、別個なものになって行き、そして最後は影も、形もなくなって消えて行く

<蔫薑による高弟達の評価>
P377:
子路への叱責、顔回への労り、子貢への無視、―みな、子の愛情の表現であった

①顔回
非凡な頭脳と純真な心。

P224:
頭がよすぎる。純真すぎる。努力しすぎる。勉強しすぎる。従って、顔回は後事を託されるような人ではなく、自分一人で、前人未踏の己が道を切り開いていく人

②子路
俊敏で激情家。純粋。

P229:
正義のために、己が生命が必要というのであれば、子路はいつでもそれを棄てるだろう

③子貢
地味であるが手堅い。

P232:
己が勉学、修養といったものは棄て、自分がこの世に生まれて来た意義は、あるいはその使命は、師・孔子にお仕えすることであると、そういう考えの上に、大きな信念を以て坐るようになりました

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ワールドエンドエコノミカ

読んだ本の感想。

支倉凍砂著。

文章が長い。長過ぎる。もっと短くて良いはず。

近未来の月面にて株式市場で大儲けする話。主人公達が馬鹿過ぎてイライラしながら読んだ。

投資プログラムによる人間のトレーダーの駆逐というテーマが有耶無耶になった印象。人間心理を読み解く事が出来るのは人間のみとしているが、それでは繰り返しバブルが発生する理由を説明出来ない。

主人公を英雄に仕立てるためには、投資プログラムを否定しなくてはならないが、その論理が曖昧にされている。

WORLD END ECONOMiCA Ⅰ
2014年12月10日 初版発行。



川浦ヨシハル(16歳)が数学の才があるハガナ(アンナ・ハーグ)という少女に、トレード用プログラムを組んでもらい一儲けするが、偽のインサイダー情報を掴まされて破産する話。

P201:
フレイザーの『金枝篇』
(中略)
百年以上前に物好きなイギリス人が、世界中の神様の話を集めた本

P215~P216:
ロイド・F・スティール著『数学定理』。有史以来の数学の定理を集めた本だって。これを、最初から逆算しているみたい
(中略)
本には千いくつか数学の定理が載っているらしいんだけど、ついこの間、八百個目の定理を導き終えたと言ってた

P367:
千百二十一個中、八百四十一個目まで、地球の数学の歴史を逆算した。解けなかったものは、一つもない

P580~P581:
ハガナのプログラムが俺のすべてをコピーし終わり、完全な自動化プログラムを作り上げたとしたら?現時点で、俺の生身の人間としての処理能力は限界に達している
(中略)
俺のやっていることが、別に俺でなくてもいいような、単純作業となんら変わらないからだ

WORLD END ECONOMiCA Ⅱ
2015年3月10日 初版発行。



エンロン事件をモチーフにしている。

川浦ヨシハル(20歳)が、4年前の投資コンテストの成績を評価されて株式市場での取引を行い、アバロンという電力取引会社が存在しない発電所の電力を売買して電気の値段を引き上げている事を暴露して儲ける。

P44:
抽象的なものを学ぶこと。なぜなら、現実の物に触れれば触れるほど、摩擦によって速度が落ちるからだ
(中略)
工場で半導体を作る人は、徒歩で歩く人。その工場を采配する人は車に乗る人。その工場で製造する半導体の設計図を引く人は飛行機に乗る人。その設計図を引く博士連中を束ねる経営者が、軌道エレベーターに乗る人

P221:
月面の電力生産は太陽光発電がメインですから、発電量とコストはほとんど固定ですけれど、需要は変数です。しかも、都市全体が一斉に停電に陥るのを避けるために、かなり細かく区分けされて電力が供給されています。よって、需要と供給の法則に従い月面のあちこちで局所的に価格が変動し、価格が変動する場所では必ず投資機会が発生する

WORLD END ECONOMiCA Ⅲ
2015年7月10日 初版発行。



2008年の金融危機をモチーフにしている。

川浦ヨシハル(24歳)が月面の不動産市場がバブル状態にある事を見抜いて大儲けする。金融危機を救うために、月植民地で徴税を行い、ムール(月の通貨)の価値を安定させる。

ABS(資産担保証券):
住宅ローンや国債等のキャッシュフローを生み出す資産を元にした証券。

P226あたりでABSへの投資を決定する意思決定過程が不明瞭。

P304からは月面の不動産市場がバブルである事を証明する記述があるがこれも不明瞭。

月世界の経常収支が圧倒的に黒字であるが、賃金や企業収益は不動産相場ほどには伸びておらず、不動産収益も利回り1.5%程度の低利である事は不自然。不動産バブルが発生した国でも賃貸利回りは3%台が限度であり、バブルが崩壊した後に5%~7%に戻る。10年ほど前までは、月面の不動産利回りは5%前後だった。

⇒後知恵だと思った。バブル崩壊を知っていなければ、このような論理展開にはならない

さらに、不動産バブル崩壊に反対する部下の意見も訳が分からない。ABS投資には熟慮の結果が見て取れたとしているが、熟慮なんてしていないではないか。

P603:
現代の通貨は純金などの、現物資産による裏付けがない。ではなにによって価値が決まるかと言えば、通貨を発行する政府の徴税能力に大きくよっている
(中略)
政府にも収入と支出があって、黒字や赤字がある。黒字の場合は市場から吸い上げられたムールが政府の金庫にたまるが、赤字の場合はムール札を刷って民衆に支払いをしていることになる。よって政府の営業が黒字であれば、市中に出回るムールが少なくなり、ムールの価値は上がっていく。赤字だと市中に出回るムールが増えるから、ムールの価値は下がっていく

P744:
純金などの裏付けがない現代の不換紙幣は、そのほとんどが、政府の徴税能力によって価値が担保されている

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フューチャー・オブ・マインド

読んだ本の感想。

ミチオ・カク著。2015年2月20日 第1刷発行。



著者による脳関係の現代技術解説書。1990年代半ばから2000年代にかけて導入された脳スキャン技術によって神経科学が一変したとする。

〇意識
目的(配偶者や食物、住処を見つける等)を成し遂げるために、種々のパラメーター(温度、空間、時間や社会)で多数のフィードバックループを用いて、世界のモデルを構築する過程。

レベル0:一単位の意識
サーモスタットは温度という一単位で部屋の温度調節を行う

レベル0:10の意識
植物は温度、水分、日光、重力等を評価した階層構造を持つシステム

レベルⅠ:
変化する位置を評価するパラメーター群。多くのフィードバックループがあるため中枢神経が発達

レベルⅡ:
他者との関係におけるモデルを構築。辺縁系という脳構造を必要とし、社会的関係を構築するために必要なフィードバックループの数や種類で定義する

レベルⅢ:
未来のシミュレート

人間の意識は、世界のモデルを構築してから、過去を評価して未来を時間的にシミュレートする(前島前皮質)。

機械的に人間の脳をスキャンする事で、脳内で想像される言語や映像を読み取ったり、道具を操作したり、記憶や思考を強化する事が可能になる。それは人間の意識が操作される可能性も示唆しており、精神を捉える文化は大きく変化するはず。

<アインシュタインの脳>
アインシュタインの脳は角回が普通より大きく、左右の脳半球の下頭頂領域が平均より15%広かった。この領域は抽象的思考や数字等の記号操作、視空間処理に関与している。

それでもアインシュタインの脳は標準の範囲内であり、アインシュタインの活躍は時代によって規定されていたのかもしれない。

1905年にニュートン物理学が、新しい物理学の実験によって崩れ出しており、エネルギー保存則に反して無からエネルギーを生み出しているように見えるラジウムという物質は、それを説明する人間を必要としていた。

現代にアインシュタインを再現しても歴史的状況から、アインシュタインは天才にはならないと思われる。

<意識と存在>
量子力学において客観的事実は否定され、観測者によって現実は収束する。観測する人と観測される人は切り離せず、観測者を見る第二の観測者が必要とされ、さらに第二の観測者が存在する事を確認する第三の観測者が必要になる。

1967年にユージーン・ウィグナーは、この無限の観測者問題を解決するために、宇宙意識や神が必要になるとして、ヒンドゥー教のヴェーダーンタ哲学に関心を持った。

1957年にヒュー・エヴェレットが提唱したのは多世界解釈で、宇宙は絶えず分岐して多宇宙になっており、起こり得る全ての現象は実在するとした。

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けむたい後輩

読んだ本の感想。

柚木麻子著。2012年2月25日 第1刷発行。



この話がどのように構想され、何が書かれているのか読み終わってから暫し悩んだ。

著者が考える女性の幸福について書かれた本だと思う。その本質は主体性の喪失にあり、他人が羨望する何かを無自覚的に奪う事で成立する。

登場人物は、羽柴真美子(才能)、増村栞子(過去の栄光)、浅野美里(努力)に分けられる。

増村栞子のつまらない彼氏が、浅野美里に簡単に惚れてしまう場面が多い。意図的に行うと悪者になってしまう。無自覚でなければならない。

羽柴真美子は才能や幸運によって他人が羨望する男や地位を手に入れていくが、それらは他者の嫉妬や羨望によって記述され、羽柴真美子自身の内面は描写されないため、圧倒的な虚無が感じられる。

増村栞子に対する崇拝は、無自覚的な演技であり、ラストの「煙草消してもらえませんか」という科白は、学生時代の演技の終焉を意味しているのだと思う。

羽柴真美子は、本当には増村栞子の才能を信じておらず、無邪気の自分を演じるための舞台装置として増村栞子が必要だったのだと解釈する。

【登場人物】
増村栞子:
ヘビースモーカー。聖フェリシモ女学院に通う。翻訳家 増村栄一郎の一人娘。14歳で『けむり』という詩集を出版し、中等部時代から蓮見教授と交際しているが浮気され、卒業後はフリーターになる。
中高時代は周囲から羨望されていたため、大学時代以降は凡庸になってしまった自分を持て余している。

羽柴真美子:
肺が弱い。増村栞子の一年後輩。実家は四十五代続く大地主の家系。多方面に天性の才能を持っている設定で、卒業後は脚本家になる。

以下は、Wikipediaの「澁澤龍彦」のページへのリンク。羽柴真美子は、一ヶ月で澁澤龍彦の著作を全て読破したらしい。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BE%81%E6%BE%A4%E9%BE%8D%E5%BD%A6

浅野美里:
羽柴真美子の友人。アナウンサーを目指して努力しているが、第一志望には受からず、地方局のアナウンサーになる。

真美子、とりこになる(一年生篇)
羽柴真美子と増村栞子が出会う。

浅野美里は、羽柴真美子の心酔が気に入らず、増村栞子を見学するために他学部の講義に出席したところ、増村栞子の恋人である蓮見教授から恋文を受け取ってしまう。

浅野美里は、恋文を見せびらかして増村栞子を笑いものにするが、羽柴真美子の信望は揺るがない。

P48:
あの頃の自分は十分魅力的だったのだ。変わりたくない、という気持ちと、取り残されているのかもしれない、という不安が交互に入り交じる

真美子、とりのこされる(二年生篇)
聖フェリシモ大学の伝統行事「七夕祭」のミスコンに浅野美里が出る話。

ストーカー騒動のためにミスコンは有耶無耶になる。

この章は女性の願望が描かれていると思った。羽柴真美子は、ミスコンのMCを務める芸人コンビ『ピロートークス』の村西(22歳、長身、ハンサム)の初恋の相手であり、村西は羽柴真美子に再会するためにMCを引き受けた事になっている。そして、羽柴真美子はミスコンの最中にストーカーと戦った事で英雄になる。

P99:
都合よく妄想される。少しでも意に添わなければ、ひがまれ、糾弾される。そうした茨の道を彼女は歩んでいくのだろう

P108:
栞子の趣味ってさ、もろ『ユリイカ』読者じゃん。個性派気取るわりには、趣味が安全パイなんだよ。金で買える個性っていうの?矢川澄子とか萩原朔太郎が大好きでさ。映画はゴダールでしょ

P128:
フクゾーのシャツとスカート、ミハマ商会のローファー、化粧気のない白い頬。真美子にはまだまだ少女でいて欲しい。せめて自分が完全に大人になるまでは。いつだって、彼女を守れる自分でいたいのだ

真美子、トリコロール(三年生篇)
増村栞子と羽柴真美子が、教え子を妊娠させたためにフランスに国外逃亡した蓮見教授を探して大学主催の美術研修旅行に参加したが、蓮見教授は結婚していた。

増村栞子はフランスで黒木隆一(26歳、カメラマン志望)と出会う。

羽柴真美子は偶然撮った写真が萩尾有春監督から評価され、「水沢マリカ主演 水底に眠る街」のポスターに羽柴真美子の写真が採用される。悔しがる黒木隆一。

真美子、鳥になる(四年生篇)
増村栞子は日大大通りの書店「CANEL」でフリーターになり、男子学生ばかりの職場で姫になる。

黒木隆一はカメラマンから脚本家志望に転身しているが、『猿でも書ける!シナリオ初級編』を読んだだけの羽柴真美子がテレビドラマ青空シナリオコンクールで優勝する。

増村栞子は羽柴真美子が重たくなっていき、自分は特別な人間でないと告白する。

そして三年後、増村栞子は黒木隆一との映画シナリオ共同執筆をを羽柴真美子に持ちかけるが断られる。

P216:
彼女もまた自分だけの居場所を見つけようと必死なのだろう。それなのに、いつも真美子が出てきて台無しにする。自分を慕ってくれているだけに、そうそう邪険にも出来ない。悪気がないのが一番タチが悪い

P218:
母親を見上げる赤ん坊のような表情を見て、一瞬でも彼女を追い返そうとしたことが悔やまれた。彼女は美里とは違う。こちらのテリトリーを荒らそうなんて思っていないのだ

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ユリゴコロ

読んだ本の感想。

沼田まほかる著。2011年 3月20日 第1刷発行。



以下、ネタバレ含む。

論理的整合性を求める話ではないと思った。

ユリゴコロ = 拠りどころ

愛する人間を殺害しなければ心の安定を保てない人間が書いた手記を読み進める話。

不幸が続く主人公が、実家で連続殺人犯が書いたと思われるノートを見つける。ノートを書いたのが自分の本当の母親と思い、やがて母親(美沙子)が自分の経営する喫茶店に勤務していた事を知る。

美沙子は主人公の恋人 千絵の夫を殺害し、余命少ない主人公の父親と旅に出かける。

【登場人物】
亮介:
主人公。1984年?生まれ。作中では27歳~28歳くらい?犬の運動場付きの喫茶店を経営する。父の病気、母の交通事故死、恋人 千絵の失踪等が連続して発生している。4歳の時に母親が入れ替わった記憶を持つ。

千絵:
主人公の恋人。ギャンブル好きな夫 塩見哲治に脅されている。

(柳原)美沙子:
主人公の母親。連続殺人犯である事が家族に露見し、実父から殺害された事にして失踪していた。

幼少期から人を殺し、娼婦をしていたが、五歳年長の主人公の父親と結婚し、子供が出来た事で憑き物が落ちたようになったらしい。夫が、自分が中学生の時に犯した殺人に関する責任を感じている事から?手記を残して自殺したいと思うようになる?

P273:
子供の将来を想うなら、家族とはいっさい関わるな。今日から別の人間になって生きろ

(柳原)柳原英実子:
主人公が四歳の時に、美沙子と入れ替わる。美沙子が主人公の喫茶店に細谷と姓名を偽って勤務している事を知り、そのしばらく後に交通事故死する。姉と入れ替わる必要はあったんだろうか?

P26:
子供というのはどこかで、ほとんど生理的に神を信じている生き物です

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楼蘭

読んだ本の感想。

井上靖著。昭和43年1月25日 発行。



最初の方に収録されている歴史的な話が好き。

楼蘭
中央アジア ロブ湖の畔にあった楼蘭について。ロブ湖は、1500年の周期で南北に移動する。

紀元前124年:
張騫が、漢の武帝に砂漠地帯の多くの国の一つとして楼蘭の存在を伝える。人口1万4000人~1万5000人程度。アーリア人種のイラン系で農耕や遊牧、採塩や漁業を行う。以後、楼蘭は漢と匈奴の狭間で揺れる事になる。

紀元前77年:
楼蘭の民は、匈奴の脅威から逃れて漢の庇護下に入るため、1500哩南に移動する。鄯善国の誕生。

8年:
漢に内乱が起こり、新が成立。西域諸国を軽視する政策を取る。後漢が成立しても西域諸国を軽視する傾向は変わらず、匈奴陣営につく国が増える。

73年:
北匈奴が河西劫掠を始めた事で、漢の明帝は、班超等の使者を西域に派遣。

107年(安帝、永初元年):
漢の安帝が西域放棄を決定。楼蘭は匈奴の屯所になる。

280年代:
タリム盆地周辺の小国家群が国の数を減らしていく。

445年:
鄯善国は、魏の大武帝と戦って敗北し、魏の郡県同様に扱われるようになる。

洪水
献帝(190年~213年)の頃の漢の将軍 索勱がタクラマカン盆地東部に植民地を築くために出兵し、アシャ族の女を得る。氾濫した河を渡る際に女を生贄にする事を薦められるも拒んで、軍隊をもって河と戦う。

しかし、帰国の最中に河を渡る際に、女を生贄とし、やがて氾濫する河に呑まれてしまう。

P78:
酒泉や涼州の街々のたたずまいを頭に思い浮かべると、何となく夷狄の女をその中にしっくりと嵌め込むことのできない気持ちがあった

異域の人
班超の話。

73年(永平16年)、42歳の時に西域に使した。102年(永元14年)に帰国すると、幼童から胡人と呼ばれる。

P107:
塞外の吏志はもともと孝子順孫ではない。皆罪過の徒をもって、辺土に補せられたものである。蛮夷は鳥獣の心を抱き、養い難く破れ易い。水清ならば大魚なし。こまやかな政は下の和を得ない。よろしく小過に寛にして、大綱を統べるべき

狼災記
紀元前210年頃に、秦の将軍 蒙恬が死亡し、その話を聞いた守備隊長 陸沈康は故国に帰還する事にしたが、途中でカレ族の女と七日間交わった事により、女と一緒に狼になってしまい、後に再開した友人 張安良を殺してしまう。

P126:
われわれの種族では、昔から他種族の者と七夜契るとけだものになると言い伝えられている

羅刹女国
セイロン島付近に散在した島の一つに五百人の羅刹女が棲む島があった。羅刹女は、同棲する男が己を疎んじると男を喰らうが、千日間を無事に過ごすと人間になる。島に漂着したソウカラは、一日を残して羅刹女を捨てて島を出た。

僧伽羅国縁起
玄奘三蔵の大唐西域記に紹介される話。虎と人間の間に生まれた男が、父である虎を殺し、後に獅子国を建国する。

宦者中行説
174年頃に、漢から匈奴へ公主の附添として同行した宦官 中行説が匈奴のために知恵を出す話。

P177:
匈奴の人口を調べたり、家畜の数を調べたりして、そしてそれを箇条書きにして、老上単于のもとに差し出した。こうしたことに依って初めて諸王の兵力や財物を知ることができ、兵制を改革する上に大いに役立った

P178:
漢軍の組織や戦闘法の長所も挙げれば弱点も挙げ、老上単于をして、それに対する対策を考えしめた

P184:
大軍を動かす機会はここ数年間にあると思う。それは漢に対して、呉、楚、趙の王たちのたれかが叛旗を翻す時である

褒姒の笑い
周の幽王の妃を笑わすために、狼煙で兵を動かす事を繰り返した結果、国が滅んだ話。

幽鬼
明智光秀が織田信長に反乱を起こす時に、自らが滅ぼした豪族 波多野一族の幻影を見る話。

補陀落渡海記
熊野の補陀落寺の住職 金光坊が、即身仏のように船に閉じ込めらて餓死する話。61歳で渡海する風習があった。船が沈んで海岸に打ち上げられるが、再度、渡海させられる。

P246:
救けてくれ、と言った。何人かの僧はその金光坊の声を聞いた筈だったが、それは言葉として彼等の耳には届かななった

P247:
求観音者 不心補陀 求補陀者 不心海 

小磐梯
磐梯における噴火の記録。

北の駅路
駅路図をめぐる人生の遍歴。

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月の扉

読んだ本の感想。

石持浅海著。2006年4月20日 初版第1刷発行。

以下、ネタバレ含む。



ハイジャックされた飛行機内で起る殺人事件。

【登場人物】
石嶺孝志:
不登校児の教育キャンプを主催する40歳。誘拐の疑いで不当逮捕される。7月26日に、彼と月を見たいがために、信望者達がハイジャック事件を起こす。

《輪廻転生》
本書の中における輪廻転生では、人間は生きている事で体内に汚れが溜まり、死後、再生の世界で汚れを落としてから現世に生まれ変わる。

石嶺孝志は、死という過程を経ずに再生の世界に行けば、現世に生れ変わらずに浄化のみが行われる平和な世界で永遠に暮らせるとして、皆既日食の夜(7月26日)に沖縄の広い場所に石嶺孝志と一緒に月を見る事で、他の者達も死を経ずに再生の世界に行けると主張した。

ハイジャック犯達は、逮捕された石嶺孝志を空港(沖縄の広い場所)まで連れてこさせる事で、再生の世界に行こうとする。

<ハイジャック犯>
柿崎修:
46歳の税理士。真の目的は石嶺孝志の殺害で、自殺した自分の子供が生まれ変わった時に、子供を癒す能力を持った石嶺孝志が再生の世界に留まっては子供が救われないため、先回りして石嶺孝志を殺すつもりだった。石嶺孝志が死を経て再生の世界に行けば、石嶺孝志は現世に生まれ変わる。

真壁陽介:
37歳の翻訳家。空手を嗜む。

P334:
真壁が、再生の世界へ行こうとしたキャンプのスタッフから、目的を失った犯罪者へと変貌した瞬間だった

村上聡美:
24歳のフリーター。

<乗客>
座間味:
座間味島のTシャツを着ているから、ハイジャック犯達に座間味と命名される。ハイジャック犯達から、飛行機内で発生した殺人事件の探偵役を依頼される。

武藤和子の姉:
12年前に、不登校児キャンプに参加した武藤和子を新興宗教に嵌ったと非難し、自殺に追い込む。その後、考えが変わって石嶺孝志と再生の世界に行くために沖縄を訪れるが殺される。

P309:
常に何かに頼りたくて、何かを信じようとする
(中略)
そのときそのときで情報を得て、自分に都合のいいものだけを信じる
(中略)
妹をもう一度破壊したことなどすっかり忘れて、キャンプの『信者』になった

杉原麻里:
22歳の歌手。武藤和子を自殺に追い込んでおきながら自らは再生の世界に行こうとする武藤和子の姉に憤り、トイレ内にカッターの罠を仕掛け、『戦うための武器を見つけました。ペーパータオルホルダーの中』という落書きをする。怪我をさせて月を見せない思惑だったが、武藤和子の姉が死んでしまった事で事態は混迷する。

P315:
手首を怪我してうんうん唸っているときに、他のみんなは再生の世界へ飛ぶ。あの女性は置き去りだ

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ブック・ジャングル

読んだ本の感想。

石持浅海。2011年5月25日 第1刷発行。



以下、ネタバレ含む。

深夜の図書館に閉じ込められ、ラジコンヘリコプターの大群と戦う話。ヘリコプターに拘り過ぎだと思った。他の罠も用意しておけば良かったのに。

【綾西市立図書館】
3月22日に閉館。本の搬出が始まる直前の4月4日(日)に閉館前を偲ぶためか、除籍された本を取りに来るために、幾人かが忍び込む。

【登場人物】
<男性>
沖野国明:
22歳。関東理科大学大学院進学を控えパプアニューギニアで昆虫学のフィールドワークをしていたため、日焼けして髭も剃っていない。少年時代は図書館に通っていた。

秋元誠司:
色白で細い顎。銀縁眼鏡。工務店の跡取り。県西綾西大学出身。

<女性>
竹村真優:
長い黒髪。漫画やファンタジーを好む。ヘリコプターに襲撃され毒で死ぬ。

三砂(行田)百合香:
リムレスの眼鏡。濃い茶色のボブカット。父が図書館職員。除籍された『バオバブのルカ』を取りに図書館に忍び込む。碩徳女子大学英文科進学予定。

丹羽一実:
茶髪のツインテール。三砂(行田)百合香に劣等感を持っており、行田敏行と性的関係にあった。県西綾西大学に進学予定。

⇒不法侵入が露見すると、責任が追及されるため、行田敏行に図書館に招かれた事にする

<犯人>
シ・バン(行田敏行):
49歳?離婚した妻が元彼と再婚した事で、娘の三砂(行田)百合香が実子でない可能性に思い至り、恐怖を与えて殺す事を決意する。迷彩色のヘリコプターを操る。

終盤で救助を装い、毒針で皆を殺そうとするが、男女が一緒にいたのを怪しまなかった事から、真犯人である事を見抜かれて、逆に毒針で死ぬ。

熊さん:
対人恐怖症。30歳以下で細い目に髭の剃り残し。赤いヘリコプターを操る。

フクロウ:
痩身の目が異様に大きい若い男。青いヘリコプターを操る。毒によって死ぬ。

【ヘリコプター】
飛行時間は五分、捜査距離五m(十m?)、同時に三機を操作可能。多数のヘリコプターを用意しておき、竹串や毒、コショウ、爆竹等で攻撃する。

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伊藤くん A to E

読んだ本の感想。

柚木麻子著。2013年9月25日 第1刷発行。



見眼麗しいが夢見がちな伊藤誠次郎(27歳~28歳?)をめぐる女性達の話。伊藤君がどんどん非現実的になっていくので、伊藤君は実在せず、女の願望を投影した幻のようにも思えてくる。

基本的な人間関係は、女―友人―伊藤君という三角関係で推移する。

伊藤くんA
百貨店店員 島原智美(27歳)の話。

矢崎莉桜の『ヒロインみたいな恋をしよう!』に基づいて伊藤君という男性にアプローチするが、上手くいかない。伊藤君は矢崎莉桜が主宰するワークシップのために20万円が必要だと言い、最終的に島原智美は伊藤君と分かれる事にする。

伊藤くんB
塾講師をしている野瀬修子(23歳)の話。

同僚の伊藤君にアプローチされている。同室の宮下真樹と喧嘩し、学芸員として就職するために、自分を変える事を決意し、高価な鞄を買う。

伊藤くんC
クッキー屋に務める相田聡子(22歳?)の話。

友人の神保実希が大学の先輩の伊藤君と恋愛している事を知り、伊藤君を誘惑する。伊藤君とうまくいかなくなった神保実希と喧嘩し、相田聡子は孤独になる。

P116:
自信欲しさで、ずっと傍にいてくれそうな後輩に手を出しただけだろう

P119:
聡子には一度でも彼女の男と寝たという自信が残る
(中略)
実希と自分を比べて落ち込むたびに、立ち直るきっかけの核ができる

伊藤くんD
神保実希(23歳?)の話。

処女を理由に伊藤君に振られたと思った神保実希は、大学の同級生の久住健太郎(クズケン)とセックスする事にする。行為の直前に伊藤君に電話し、乱入した伊藤君によって場は滅茶苦茶になる。

P174~P175:
スカーレットは親友、メラニーを病気で失っていた。その寂しさから、レットのぬくもりにすがりたくなったと考えるのが自然な気がする。幸か不幸か、実希のメラニーはまだ生きている

伊藤くんE
矢崎莉桜(33歳?)の話。

若手脚本家だが、仕事が無くなり、自分のワークシップに通う伊藤君を見下す事が、プライドを維持する手段になっている。伊藤君が本当に脚本を書き上げて投稿した事を知り、伊藤君の仕事を邪魔する。

P208~P209:
「頑張らなくていい。このままでいい」と甘やかしてもらうためなのだ
(中略)
こうやって莉桜は伊藤を創ってきたのだ
(中堅)
ただひたすらプライドの高い自分を持て余していた。自分は人とは違う、という漠然として意識はあるものの、それをどう表現していいかわからず、かといって安全な場所を逸脱する勇気もなく
(中略)
莉桜は伊藤を完成させた。恋をすることも、何かになることも、あきらめることさえまともにできない正真正銘のクズ。それが伊藤だ

P228:
楽しいより、充実感を得るより、金を稼ぐより、傷つけられない方が本当は重要なんです

P231:
伊藤は勝ち続ける。周囲の人間を傷つけ続ける。たぶん、一生。勝てるわけがない。だって、伊藤は永久に土俵に立たないから。愛してもらえるのを、認めてもらえるのを、ただ石のように強情に待っているだけ。自分を受け入れてくれない人間は静かに呪う。結局、自分から何も発さない人間がこの世界で一番強いのだ

P233:
孤独を満喫しているつもりなのだろうが、通行人にあらぬ恐怖を与えたり、悪臭を放っていることに無頓着だ。ただそこに座ってさえいれば、なんとかなるという傲慢さは伊藤や父にも、そしてさっきまでの自分にも共通する

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本屋さんのダイアナ

読んだ本の感想。

柚木麻子著。発行 2014年4月20日。



矢島有香子(ティアラ)のキャラクター設定に失敗していると思った。大穴(ダイアナ)という名前を付けて、幼児の髪を染色するが、実は賢くて性格が良いというのに違和感がある。

二人の女性の9歳~22歳頃までの年代記。

【登場人物】
矢島大穴:
本を読むのが好き。母子家庭で、高校卒業後は本屋の店員になる。父親は『秘密の森のダイアナ』を書いた、はっとりけいいち。

矢島有香子(ティアラ):
16歳で大穴を産む。キャバクラ勤務。山の上女学園に通っていたが、変質者に襲われる等して学校を中退したらしい。

神崎彩子:
優等生。山の上女学園(女子校)に通い、大学ではスーパーフリーのようなサークルに入る。

沢渡みかげ:
神崎彩子の幼馴染。中学校から不良になって中退する。

武田良大:
肉屋の息子。矢島大穴の同級生で保護者的存在となる。

【あらすじ】
〇小学生時代
矢島大穴と神崎彩子が小学三年生で同クラスになり、互いを羨んで友人になる。山の上女学園の見学に行った矢島大穴は、卒業生名簿から母を見つけ、その住所を武田と訪れる。武田と二人で歩いているところを神崎彩子に見つかり絶交する。

〇中学校時代
矢島大穴は南台中学校に通い、神崎彩子は山の上女学園に通う。神崎彩子はヨークシャーに交換留学し、矢島有香子も留学していた事を知る。

〇高校時代
矢島大穴は、自分に万引きの濡れ衣をきせた同級生をしめた事で孤立している。神崎彩子は進路に悩むが、砂川女学院大学でなく共学の壮生大学への進学を決める。

〇大学(社会人)時代
矢島大穴は書店員となり、神崎彩子は大学サークルに入る。神崎彩子のサークルは女性を性的に食い物にするサークルで、大学四年生となった神崎彩子はサークルを告発する。矢島大穴は実父と対面し、その弱さにショックを受けるが父を受容する事を決意する。

P202~P203:
広い大学という場所に一人で放り出されるのが怖くて、権力を持つ男にどうしても媚びてしまうのだ
(中略)
男達はお気に入りの後輩女子をこれ見よがしに特別扱いし、知らず知らずのうちに女達を競わせるのが美味い

P237:
いつも周りに人がいるけれど……。誰とも親密な関係なんて築けたためしがないんだよね。上下関係やランクがないと誰とも繋がれないの
(中略)
だからいつも、そんなに怒っているんでしょう?それを隠すために、いつも楽しそうにしているんでしょう?









村岡花子の解説を読んで欲しいらしい。アンとダイアナの友情について。

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ナイルパーチの女子会

読んだ本の感想。

柚木麻子著。2015年3月30日 第1刷発行。



かなり毒が強い内容。著者にはいじめのトラウマがあるのか?男性や美しい女への憎しみが感じられる。

中盤以降の高杉真織の行動があり得ない。過激な中学生か高校生のいじめだ。分析的な序盤から、狂った展開が続く中盤以降の落差が激しいと思う。

P16:
人間の手で湖に放たれなければ、ナイルパーチも一生、自分が凶暴だなんて気づかなかったのにね

【登場人物】
志村栄利子:
30歳で商社勤務。友達がいない事がコンプレックス。『おひょうのダメ奥さん日記』というブログを愛読しており、ブログ主のストーカーとなっていく。

丸尾翔子:
30歳の主婦。受身で面倒を見てもらいたがる父親を重荷だと思っている。

高杉真織:
23歳の派遣社員。杉下康行と婚約。

杉下康行:
32歳で志村栄利子の同僚。

小川原圭子:
志村栄利子の幼馴染。高校生になって志村栄利子と違う友人を作った事で援助交際の噂を立てられ、現在はニートになっている。

【あらすじ】
〇ストーカー
志村栄利子は、自分が愛読するブログを書く丸尾翔子の友達になりたいと思い、メールを何通も送り、行先に出没するようになる。

〇脅迫
志村栄利子は、丸尾翔子の浮気現場の写真を脅し材料に友達になってもらう。自分は、杉下康行と浮気した事をネタに高杉真織に脅迫され、部員23人全員とセックスするよう言われる。

〇病化
志村栄利子は部長を誘惑した事で精神異常を疑われて休職、丸尾翔子と旅行しに行くが脅迫写真を破棄する。丸尾翔子もブログ活動にのめり込んだ結果、自分が有名ブログ主のストーカーのようになっていき、志村栄利子から解放された喜びから夫に浮気を打ち明け、離婚される。

〇解放
志村栄利子は小川原圭子と対峙し、丸尾翔子は父と対峙する。

終盤で高杉真織が、志村栄利子に迫る杉下康之を芋けんぴで刺す。この辺りの記述は完全に狂気の世界で、高杉真織は見つかったら志村栄利子のせいにすると言う。「あたしは好かれてるけど、あんたは嫌われてる」、不可能だろ。そして、高杉真織は志村栄利子に会社を辞めるように言う。離婚も確定だし、会社を辞めるどころか逮捕されるのは高杉真織の方のはず。

P44:
海外ファッション誌のバックナンバー、大判のコミックス
(中略)
一見とがっているように見えて、いずれもセンスを商売にしている著名人が太鼓判を押したものばかり。個性的に見られることに心血を注いでいたあの時代
(中略)
あれほど生意気な言動を繰り返していたというのに、何一つ身に付かないまま、平凡な三十歳になってしまった

P111~P112:
一緒に長い時間居ると息がつまる
(中略)
自然なところがどこにもないからだよ。あの子はね、つくりものなの
(中略)
栄利子に関する悪い噂を聞きたい。身がよじれるほど、翔子は今それを欲している。
(中略)
自分をあれほど傷つけた女を、同じところ、いやもっと下まで引き下げてしまいたい
(中略)
同じ醜さを持っているに違いないからこそ、自分には同性が必要なのだ

P146:
この世界で何よりも価値があるのは、共感だ
(中略)
「私は一人ではない」と思わせる強いアルコールのような力

P238:
栄利子は、面白い、つまらない、の尺度でものを見ない
(中略)
フィクションの世界ですら自分の物差しを持ち込み、業務に取り組むように一つ一つをきっちりと計測し、自分と同等とみなした水準に達しないと楽しめないらしい
(中略)
栄利子の中で他者との価値観の違いは忌むべきもの、自分を孤独にするものであり、なんとしてでも正したいものなのだろう

P242:
社会に基準を押し付けられて、ことあるごとに競うように仕向けられている

P250:
自分の本能のままに行動することが、どれほど突飛で人の心をざわつかせるか、何故理解しない
(中略)
栄利子が求めているのは、狂気の世界に一緒に連れて行く道連れだ。だから、誰も彼女の傍に居たがらない

P305:
女の輪に入れずぐずぐず立ち尽くしている栄利子を見ていると、優越感と庇護欲で一杯になり、自分達も同じように気安く立ち入れないその領域を、安心して憎めるのだろう

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インド三国志

読んだ本の感想。

陳瞬臣著。1984年6月12日 初版第一刷。



インドのムガル王朝は、1857年のセポイの反乱によって滅びたが、第六代皇帝アウラングゼーブの死(1707年)の時には実質的に帝国は解体していた。

以下の三勢力による争いを経て、英国がマラーター族等の抵抗に勝ち、植民地化していた。

①西方帝国主義勢力
英国やフランス等。オランダや英国の東インド会社で活躍したフランソワ・カロンの逸話。

②土着勢力
マラーター族、ラージュプート族等。

③ムガル王朝
1765年のアラハーバード条約により、ムガル皇帝は年金を受けるだけの存在になっていた。

ムガル帝国は、八世紀にアラビア人がシンド地方を占領して以来、デリーを首都としたインド回教王国の後継に位置する国である。創始者バーブルのデリー入城(1526年?)は清による北京占領と比較される。

満州族に軍律以外の文明が無いのに対し、ムガルは回教徒としてサラセン文化やイランの芸術の洗礼を受けていた。そのため、ムガルは清のように現地化する事が困難で、特に宗教的対立を抱えていた。

第六代皇帝アウラングゼーブはインド全土をイスラム化しようとして、異端者の処刑、非回教徒への人頭税(ジズヤ)等を行った。

現代のボンベイ東部から東南部の西ガーツ山岳地帯に居住するマラーター族はヒンズー教として、英雄シヴァージー指揮下でムガル王朝の威令に対抗。それまで山地に居住するマラーター族は小グループに固まっていたが、ムガル帝国との対抗上、国家となっていった。

P59~P60:
三の力では歯が立たないことがある。相手が四であるからだ。そこで五の力を集めると、この四をそっくり奪うことができる。三のままでは得るものはゼロだが五に増やせば四が手に入る
(中略)
侵略戦争は古来自己制御が困難である。侵略で大きくなった組織は、もっと多くの滋養分を必要とする。したがって、それを獲得するために、別に新しい侵略戦争をおこさねばならない

P96:
力によって住民から税を取り立てる。その組織が「国」である。マラーター族はこれまで、ただの住民であり、もっている「力」をほかの国に提供していた

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青年のための読書クラブ

読んだ本の感想。

桜庭一樹著。発行 2007年6月30日。



聖マリアナ学園を舞台に、読書クラブの部員達が残した記録。

第一章 烏丸紅子恋愛事件
1969年度 読書クラブ誌 文責<消しゴムの弾丸>:

読書クラブ部長 妹尾アザミが、『シラノ・ド・ベルジュラック』を下敷きに転校生の烏丸紅子を王子としてプロデュースする。王子は聖マリアナ祭における投票で選ばれる。知的不良を演じるが、不純異性交遊で孕んで中退する。

P11:
抑圧された性欲を抱える女ばかりの楽園には、捌け口となる、安全で華やかなスターが必要であった
(中略)
学園には常に“偽の男”が一人いた

P16:
恋は、人の容姿にするものか?それとも、詩情にするものなのか?
シラノ・ド・ベルジュラックの極めて醜い顔をアザミは思った。シラノはぼくさ

第二章 聖女マリアナ消失事件
1960年度 読書クラブ誌 文責<両性具有のどぶ鼠>

1919年に設立された聖マリアンヌ学園の成り立ちについて。

1899年にパリ郊外で生まれたマリアナが日本に行くはずだったが、病死したために6歳上の兄ミシェールが女装して日本に来る。死後、自分の遺体から性別が判明する事を恐れ、行方不明になる。

P88:
父さんはどうなる。誰よりも君を愛していたのに。君がいなくて、生きていけるものか

第三章 奇妙な旅人
1990年度 読書クラブ誌 文責<桃色扇子>:

生徒会でクーデターを起こし、生徒会六本木化計画としてディスコクラブを作った生徒三人が、不純異性交遊の写真等を播かれた事で失脚し、読書クラブに亡命する。

三人の内、一人は読書クラブに馴染み、読書クラブ誌を書く。

第四章 一番星
2009年度 読書クラブ誌 文責<馬の首のハリボテ>:

山口十五夜と加藤凛子の話。山口五十夜は他校の男子生徒を加藤凛子と見間違え、秘密の彼氏がいると疑ってロックバンド「人体模型の夜」でそれについて歌う(ホーソンの緋文字における姦通罪)。

疑いが解けて山口十五夜は読書クラブに戻る。

第五章 ハビトゥス&プラティーク
2019年度 読書クラブ誌 文責<ブリキの涙>:

「ブーゲンビリアの君」として生徒の没収品を匿名で返してあげる五月雨永遠の話。シスターに化けて生徒指導室に出入りしていた。『紅はこべ』(バロネス・オルツェ)が元ネタ。演劇部の曽我棗は、五月雨永遠にブーゲンビリアの君の話を聞き、演劇の題材にする。

聖マリアンヌ学園は共学になる事が決定しており、読書クラブ部室があるビルも取り壊される。最後に残った部員である五月雨永遠は、ビルに侵入してクラブ誌を運び出し、政治家となった妹尾アザミに渡す。

かつての読書クラブ部員達は、『慣習と振舞い』というコーヒー専門店に集まっており、読書クラブ誌はそこに飾られる事になる。

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連作のすすめ

読んだ本の感想。

木嶋利男監修。2012年12月1日 第1版発行。



現代技術(太陽熱消毒、抵抗性品種等)で連作を有効にする事が可能になったとする。

農作物は種類によって、適した土壌の粒形や緻密度等が異なり、同じ作物を同じ畑で栽培する事は、土壌条件をそのまま活かす事に繋がる。

連作すると品質が向上する作物:
綿、麻、薩摩芋、南瓜、玉葱、人参、大根、etc

連作の影響がほとんど無い作物:
稲、大麦、小麦、粟、カラス麦、玉蜀黍、黍、蓮根、etc

連作すると障害が発生し易い作物:
里芋、じゃが芋、甜瓜、白瓜、トマト、インゲン、白菜、etc

著者の実験では、連作するとキャベツで4年~5年目、大根・小麦では3年~4年目に病害が発生して収量が減少した。しかし、連作を継続すると収量は安定したらしい。

<土作り>
固相、気相、水相の三相のバランスを保つ立体構造を作る。

プラウ耕:下層を鍬等で粗く耕す(深さ20㎝)
ロータリー耕:鋤等で細く耕す(深さ12㎝~15㎝)
ハロー耕:表層を細かく耕す

吸肥根は浅い位置、吸水根は深い位置に伸長するなど、根の役割は深さによって違う事を踏まえる。水の縦浸透を促進する暗渠(地中に埋めた排水用水路)や明渠(地上に設けた排水用の溝)を設置して水はけを調整。畝や畦を利用して、傾斜によって水が流れ易くする。

<土壌処理>
連作によって病害が発生した場合の対処。

①太陽熱消毒
作物の栽培終了後に、10アール当たり稲わら1t、米糠100kgを混ぜて耕す。土壌表面をビニール等で覆い、7月~8月の高温時に約一ヶ月の消毒を行う。

②バイオフューミゲーション
植物が持っている殺菌成分を活用。アブラナ科に含まれるグルコシノレートは加水分解すると土壌病原菌に効く。

ウリ類(胡瓜、メロン、西瓜等)や茄子類を夏に栽培した後に、秋にコブタカナや黒ガラシを栽培し、春先に土壌に鋤き込む方法。鋤き込んだ後はビニール等で被覆して約一ヶ月放置し、グルコシノレートが加水分解され、土壌病原菌が殺菌されるのを待つ。

<土壌改良資材>
①堆肥
作物の種類に合わせて対応する。

アブラナ科野菜(キャベツ、ブロッコリー等):
有機物分解が得意な根圏微生物と共生しているので、やや未熟な堆肥。

ウリ科野菜(胡瓜やメロン等):
アンモニアを硝酸態窒素に変える酵素を持たないため、完熟した堆肥を使用。春菊や小松菜も収穫までの期間が短いため完熟した堆肥を表層に施用する。

根の深い野菜(茄子やオクラ等):
20㎝程度の深い位置に施用する。

②転炉スラグ
ケイ酸カルシウムを主成分とする。アルカリ度を上げる効果があるため、アブラナ科野菜の根こぶ病(酸度ph7.2以下で感染)を防止する効果。

③コーラル(珊瑚化石)
ミクロネシア、カリブ海の島々、沖縄は根こぶ病の発生し難い地域とされる。

④米糠、コーヒーかす、ソバ殻
乳酸菌の繁殖を促し、自活型センチュウ(植物に寄生しない)が乳酸菌を餌として増殖し、尿酸を排泄する。自活型センチュウは100ppmまで耐性があるが、寄生型センチュウは10ppmまでしか耐性が無いのでセンチュウを防除出来る。

⑤木酢液
炭を焼いた時に出る煙を冷却した時に結露する。希釈すると微生物が繁殖し、濃い濃度で殺菌、薄い濃度で微生物の餌となる。

⑥廃糖蜜
砂糖精製時に発生する黒褐色の液体。スクロースを主成分として、茎葉に散布すると葉面微生物が活性化する。

<別の作物>
間作(畝間に別の作物を育てる)や混作(同じ畝に育てる)の技術。

トマトと韮、苺と長葱、野菜類とハーブ、柑橘類とナギナタガヤ等は病害虫防除を目的とする。

囮作物として、大根を利用する方法もある。根こぶ病菌は死んだ組織には寄生せず、アブラナ科が無い時は休眠する。大根を植えると根こぶ病菌が休眠から覚めて、大根に寄生するが、表皮から生じた根にのみ寄生するため増殖出来ない。草生栽培では、カバープランツ(地表を覆う食物)や緑肥に使用する。

雑草で雑草を防ぐ方法として、秋に冬野菜の小松菜や水菜に、夏草のスベリヒユやアカザを繁殖させて敷き草のように地表を覆わせて冬草発生を抑える方法がある。

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覇王の家

読んだ本の感想。

司馬遼太郎著。昭和54年11月25日 発行。





徳川家康の幼少期から小牧・長久手の戦いまでをメインに書く。

軍律や統治法は武田信玄を模倣し、国家統一は織田信長、豊臣秀吉に相乗る形で成就していく。

尾張(利益集団)と三河(忠誠集団)の国民性を対照的なものとして考え、商業という原価の何倍もの値段で物品が売れる世界にいる人間は、自分の能力を信じ、農業を主とする三河は忍従的美質を持ったとする。

利によって奮起する集団は利を求めて勢力を拡大し、忠を基盤とする集団は現状を維持しようとする。日本の拡大期が終了した時に、利益集団から忠誠集団に政権が移行した。

P20:
独創や創意、頓智などを世間の者は知恵というがそういう知恵は刃物のように危険で、やがてはわが身の慢心になり、わが身をほろぼす害物になってしまう
(中略)
物まねびの心得ある者は、古今東西のよき例をまねるゆえ、一つ癖におちいることがない

P43:
家康は信長の同盟者として信長に運命を託し
(中略)
三河者にとっては、商人のにおいのする尾張者よりも、おなじ農民のにおいのする甲州者により親近の思いがあった

P138:
三河武士団の頂点にすわるべき一個の機関であり、機関としての頼もしさをひとびとに感じさせなければならない存在であった

P174:
徳川家の陣法や軍制を一変し、ことごとく甲州流に変えるというほどの思いきったことまでした

P236:
家康は不幸なまでの地方主義者で、かれの領国である三河、遠州、そして駿河の三国の国境のそとに自分の欲望や想像のつばさをひろげようとしたことがない

P269:
信長や秀吉は貨幣経済に力点を置き、さらに国家貿易を考え、国家そのものを富ましめようとしたが、家康の経済観は地方の小さな農村領主の域から一歩も出ず、結局この家康の思想が徳川政権のつづくかぎりの財政体質となり、財政の基礎を米殻に置きつづけるようになり、勃興してくる商業経済に対抗するのにひたすら節約主義をもってし、そのまま幕末までつづく

P318:
秀吉と戦うにあたって、三河陣法を廃止し、甲州陣法に変えた

P334:
独創的な案とは、多量の危険性をもち、それを実行することは骰子を投ずるようなもの
(中略)
譜代の者が家政を担当する。閣僚を老中と言い、局長級を若年寄とする職名も、三河松平郷のころのままにして日本国の維持をやらせようとした

P418:
忠誠心が原理であれば、父の池田勝入斎は織田信雄に加担して秀吉の敵たるべき立場にあった
(中略)
尾張的な契約の原理で諸将も諸士も支配され影響されている以上、池田家の人数の場合も、いったん敗軍になれば主将のそばから散ってしまう

P481:
愛知県は旧分国では西半分が尾張、東半分が三河国にわかれる。三河は山が多いが、尾張は野である
(中略)
林業民や狩猟民をあつめて軍隊組織をつくり、水のある山麓にむかって戦闘による進出を開始したのが、松平氏勃興のはじめである
(中略)
三河衆のつよい団結の習性というのは、原型をそこにもとめるべき

P504:
農民社会そのものの印象をもった。この集団が、のちにさまざまな風の吹きまわしで天下の権をにぎったとき、日本国そのものを三河的世界として観じ、外国との接触をおそれ、唐物を警戒し、切支丹を魔物と見、世界史的大航海時代のなかにあって、外来文化のすべてを拒否するという怪奇としか言いようのない政治方針を打ちだしたのは、基底としてそういう心理構造が存在し、それによるものであった

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倒立する塔の殺人

読んだ本の感想。

皆川博子著。2007年11月第1刷発行。



終戦直前から敗戦直後の女学校を中心に、女学生の殺人事件を調査する。

【登場人物】
阿部欣子:
異分子を略してイブという渾名とベー様という渾名がある。土管のような体型。

三輪小枝:
上月葎子の死を殺人と疑い調査する。

上月葎子:
**女学院専門部 三年生。チャベルにいる時に、空襲に遭い死亡する。

七尾杏子:
**女学院専門部 三年生。昭和19年に失踪。

設楽久仁子:
ジダラック。本を読む趣味がある。

雫石郁:
11歳だった時の上月葎子に恋するが、彼女前に上手にピアノを弾いた事で、ピアノを閉められて指が不自由になる。18歳になった彼女が自分を忘れていた事から、「倒立する塔の殺人」を上月葎子の部屋に置く。

空襲下に、倒立鏡の仕掛けがある部屋に上月葎子を閉じ込め、七尾杏子は毒殺したらしい。

<倒立する塔の殺人>
女学生達が連絡する小説。

日本の女学校に赴任したジュウル・サマンが、前任者ギイ・ロスタンの死を調査する。ギイの幼少期を綴った手記には、上下逆様に磔にされた過去が記述されている。

幼児を体罰した事で、ジャスミンの毒で毒殺されたらしい。

P58:
乱歩は、アンリ・バルビュスの『地獄』に触発されて「屋根裏の散歩者」を書いたのではないだろうか

P81、P89:
尽くすのもまた、支配のひとつの形なのだ

P295:
鏡に倒立した映像が映ったぐらいで、狂いはしない
(中略)
わたくしは狂いました

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たいていのことは20時間で習得できる

読んだ本の感想。

ジョシュ・カウフマン著。2014年9月24日 第1版第1刷発行。



あまり大した事は習得出来ていないようにように思えた。

<超速スキル獲得法>
以下の段階で行われる。

(1)分解
スキルを小さなサブスキルに分解する
(2)学習
個々のサブスキルについて知識を得る
(3)除去
練習の邪魔になる障害を取り除く
(4)練習
20時間の練習

以下の基本ルール。

①スキルに関連した事を調べる
②分からなくてもやる
③心的モデルと心的フックを知る
→心的モデルとは繰り返し登場する概念や技術(パソコンを学ぶ際の「サーバー」という概念等)、心的フックとは新概念を学ぶのに役立つ類似性や比喩
④望んでいる事の「逆」を想像する
→事故に遭遇した場合を考えて、事前に準備しておく?
⑤実際にやっている人の話を聞いて予想する
⑥環境から邪魔な要素を除去する
⑦間隔を空けて反復、強化する
→復習
⑧チェックリスト、ルーティンを設ける
⑨予測して検証する
⑩自分の生物学的欲求を大切にする

<ヨガ>
以下の手順。

・必要な道具を揃える
・インストラクターに基本を習う
・ヨガの基本は呼吸に集中し、様々な動作を行うと知る
・基本的な立位、座位のポースを10個学ぶ
・呼吸法を学ぶ
・25分かかる練習を繰り返す

<プログラミング>
ウェブアプリケーションを作成するために、Rubyを学ぶ。

<タッチタイピング>
パソコンのキーボード配列を、QWERTYからColemakに変更する。そのためにKeyzenの練習プログラミングを使用して、就寝前に45分ずつ練習した。最終的に98%の正確性で持続的に毎分60ワードを打てるようになったらしい。

<囲碁>
約150の級別問題を解いて、18級のレベルになったらしい。

<ウクレレ>
ウクレレを弾く。

<ウインドサーフィン>
道具を買って、方向転換の方法等を学ぶ。

⇒六つのスキルは、一年間で同時進行的に習得したらしい。

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雨の恐竜

読んだ本の感想。

山田正紀著。2007年3月第1刷発行。



以下、ネタバレ含む。

福知県(福井県?)東谷渓谷で、中学校教師 浅井(34歳)が殺される。現場には、恐竜のような足跡が残されていた。

恐竜の専門家 佐伯邦彦教授がフクチリュウ(体長六m~八m、鳥脚類イグアノドン科の草食)とトウダニリュウ(体長二、三m、ドロマエサウルス化の肉食)を間違える謎。

【登場人物】
斉藤ヒトミ(モウマク):
中学二年生。浅井教諭に裸の写真を撮影されており、元データ削除のために事件を調査する。叔父は県警の刑事 田所慎次。

芽崎サヤカ:
恐竜オタク。尊敬する佐伯邦彦教授を追って東谷渓谷の事件現場に赴く。

勇魚アヤナ:
陸上部の美少女。母親はレイコ。

*****************

20年前に捏造した恐竜の足跡化石の影響。捏造した伊沢公彦を恋人だったレイコが重機で殺し、妊娠していたために佐伯邦彦らが事件現場を偽装した。

浅井教諭は、吊り橋(材料に20年前の恐竜化石発掘現場の資材が使用されていた)の裏にあった偽の足跡を確認しようとして落ちたとされる。

トウダニリュウの足跡を偽造するか、マツヤマリュウの足跡を偽造するか比較したために、足跡の区別がつかなかった?

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失われた過去と未来の犯罪

読んだ本の感想。

小林泰三著。2016年5月30日 初版発行。



「マリオネット・エンジン」と併読すると面白いと思った。

以下は、「マリオネット・エンジン」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-713.html

第一部
世界中の人間が長期記憶を維持出来なくなる事象が発生。某国の核実験の影響らしい。

結城梨乃(父 譲二は原子力発電所職員、母は美咲)等が事象に対応していく。

第一動者として、アナウンス機能等が付加されたアプリケーションをインターネットで拡散し、人的ネットワークを形成していく。

幕間
「大忘却」への対処の説明。

脳内の記憶を保存する半導体メモリが多くの人間に埋め込まれるようになる。

第二部
新文明にて発生する物語群。

①見合い
互いの記憶メモリを間違えて、差し込んでしまった男女(広田哲司、田所智紗子)の物語。互いが元の身体に戻るために、記憶メモリを抜いて、10分が経過してから記憶メモリを基に戻すが、死にたくない意識から残っている記憶がある。

②替え玉
徳川俊哉が、石田巌/建人親子に頼まれて、替え玉受験のために、自らの記憶メモリを差し出す話。石田巌は、賢い息子が欲しくなり、徳川俊哉の元の身体を殺し、石田建人の記憶メモリを放置する。

③双子
陽菜、陽香姉妹の物語。記憶メモリ調整を行ったところ、両方の身体に陽菜の記憶が持ち込まれ、そのまま半年が経過してしまう。身体を陽香に戻すと死ぬ事になるため、身体を交互に使用する事にする。

④親子
大槻智也、美月、悟(12歳)、彩(5歳)の話。交通事故で、美月と彩の記憶メモリが破壊されたため、美月(母)に悟(息子)、彩(娘)に智也(父親)の記憶メモリを差し込む。

身体と記憶の意識の違いを感じるようになる。

⑤集団
記憶メモリを拒否する村を訪ねた水科奈々の話。村人全員が短期記憶しか保持出来ないために、村村存続が危うくなり、水科奈々は自分の記憶メモリを村人達に差し込んで、多くの身体を一つの記憶が支配するようになる。

⑥イタコ
死者の記憶メモリを差し込む職業。息子を失った夫婦に同情し、安値で身体を提供したところ、契約終了後も身体を乗っ取られてしまう。

⑦遺跡
遺跡から発掘された記憶メモリを再現する存在。あらゆる感覚を人工的に再現出来るようになっており、様々な人間の記憶が混在し、全ての人類に浄土が約束された。

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十五万両の代償

読んだ本の感想。

佐藤雅美著。2010年12月15日第1刷発行。



徳川幕府 十一代将軍家斉を太政大臣に、父 一橋治斉を准大臣にするために、老中首座 水野忠成が島津家(隠居 斉宣の娘 郁姫が近衛家に嫁ぐ支度をする等、朝廷とつながりが深い)と協力。代償に島津家による長崎貿易を許可し、それによって幕府の海外貿易が圧迫され、十五万両以上の損失となった話。

P88:
寛政三年三月に権中納言に昇進していたが、尾張や紀伊のように大納言でもない。水戸と同等のたかが中納言。将軍の父というのに、尾張や紀伊より格下というのはたえがたいことであった

〇家斉の子沢山
養子や嫁に出すには持参金が必要で、嫁がせた娘への仕送りは年三千両と相場が決まっていた。

子沢山のために仕送りが多額になり、また、子を産んだ母親達が大奥にいるために、天保十三年の大奥に対する出費は歳出の5%に当る七万五千三百七十一両であったらしい。

【水野忠成の政策】
田沼時代、江戸幕府の剰余金は三百万両に達したが、田沼失脚の後、天明六年七月の集中豪雨を経て、剰余金は八十万両に減る。

寛政元年から文化十三年までの28年間の歳入は平均して年百二十二万二百九十五両、歳出は平均年百二十二万七千二百七両。

財政難を救うために、老中首座 水野中成は、銀貨に金貨の単位を刻印し、金貨として通用させる事にする。文化十五年六月には真文二分判(金貨二分の代用貨幣)を発行し、文政元年からの四十年で平均年四十四万九千両程度を改鋳によって稼いだとする。

それ以前の松平定信、信明の時代は、26年間で年平均七万両を諸大名から上げ金の名目で出されていたが、水野忠成の時代にはそれが無くなる。

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蛇行する川のほとり

読んだ本の感想。

恩田陸著。2010年6月30日 第1刷。



以下、ネタバレ含む。

P326:
僕のせいじゃない。殺そうとしたんじゃない

**********************

1980年頃が舞台?

約10年前の事件について、真相を知る者(九瀬香澄)と、自らが殺人を犯した物語に怯える者達(斎藤芳野、貴島月彦、志摩暁臣)の関係性。

事件当時、現場にいた蓮見毬子は、演劇部の舞台背景製作合宿を口実に呼び出され、過去の物語構築に参加させられていく。

物語途中で、九瀬香澄が死亡し、蓮見毬子が事故によって物語から退場する事で、他の人物達は九瀬香澄による母殺しの物語を作り出して真実とする。

それは、真実を知る蓮見毬子によって崩壊させられる可能性をもった物語。

【10年前の事件】
九瀬香澄の母親が、下流に流されたボートに、絞殺死体として発見される。同日、野外音楽堂で志摩暁臣の姉(宵子)が、梯子から転落して死亡する。

【登場人物】
蓮見毬子:
高校一年生の美術部員。10年前は、九瀬香澄(香澄子)と仲が良く、事件に遭遇したが、記憶を失っている。

P120:
カズコさんは、毬子さんが思い出すのを待ってるんだ。

九瀬香澄:
高校三年生。旧名は香澄子だが、10年前の事件を機に名前を変える。M.S(松田聖子?)と似ているらしい。

斎藤芳野:
高校三年生。大学生の姉 萩野がいる。10年前の事件において、九瀬香澄と犬の死体を埋めた記憶を持つ。

貴島月彦:
高校二年生。九瀬香澄のいとこ。10年前、九瀬香澄の母(母の妹)に睡眠薬を届けていた。

志摩暁臣:
高校一年生。自分が姉を殺さなかった物語を作りたいようだ。

真魚子:
高校一年生。事故にあった蓮見毬子の代りに、合宿に参加する?

【作られた真相】
第三部での独演。

九瀬香澄が、浮気する母を父のために始末した事になっている。

【真相】
九瀬香澄の母による自殺。自らの浮気が夫を傷つける事が嫌だった?睡眠薬を飲んでロープを首に巻き、ボートの中で眠る。ボートを繋ぎ止めるロープに毒入りの肉を付け、睡眠薬で眠らせた犬(健太、ケンタウロス)を近くに置く。犬が目覚めて肉を食べるとボートが動いて首が絞まる。

⇒夫や浮気相手、娘のアリバイ工作らしい。死亡推定時刻は午前四時だが、九瀬香澄は午前一時頃には斎藤芳野の家にいたので疑われない

九瀬香澄は、犬の死体の始末をした。

死体を隠す途中に志摩宵子に追跡され、高い場所から九瀬香澄達を探そうとした志摩宵子は、梯子に登る。志摩暁臣は、悪戯目的で梯子を揺らそうとして梯子にロープを巻き付けるが、蓮見毬子がロープに躓いた事で、志摩宵子は転落死してしまう。

【あらすじ】
第一部 ハルジョオン
美術部の舞台背景製作合宿に参加する人々。

P98:
真実とは、あたしたちが見たいと思っているもののことです

第二部 ケンタウロス
九瀬香澄が死亡するまで。貴島月彦が、10年前に無くなった犬と睡眠薬の話をする。過去を思い出した蓮見毬子にのみ、九瀬香澄が真相を話す。

第三部 サラバンド
残された者達による演劇。

終章 hushaby
真相の提示。

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残業して帰る

来週から忙しくなるらしい。

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おれたちと大砲

読んだ本の感想。

井上ひさし著。1977年4月25日 第1刷。



【あらすじ】
1868年頃の日本を舞台に、本所小梅町の貧乏御家人の餓鬼達で作られた黒手組が、幕府に加担しようとして、挫折するまでを描く。大砲は、剣道道場 鬼兵館からもらい受けた木製のもの。

横浜で薩摩の船に大砲を打ち込むはずが花火を打ち上げ、ガトリング砲の盗難に失敗。京都で天皇誘拐を試みるも、公家の少年に騙されただけで終わり(鳥羽・伏見の戦い)、江戸の彰義隊駐屯地から商家の金蔵の金を盗もうとして土中を掘る間に難を逃れる。

最終頁で大砲が割れたのは、黒手組の活動終焉を象徴している。

P490:
古い言語とか習慣は僻地に残る
(中略)
時世に敏感な上の階層が旧体制を見限って、新しい体制に寝返った時点でも、まだ、認識の上で旧体制の中に取り残されている下層の庶民たちは、自分にとって収奪者以外の何者でもない旧体制がゆさぶられているのに気づくと、基盤を失うという錯誤の危機感から、その擁護に立ち上がる

【登場人物】
土田衛生:
黒手組。23歳。将軍の尿管役を務める家の出身。

鶴巻重太:
黒手組。将軍の草履取を務める家の出身。

北公路甚吉:
黒手組。将軍の髪結職を務める家の出身。

一力茂松:
黒手組。将軍の籠担ぎを務める家の出身だが、身長が六尺に足りないために、家を出ている。

丸本時次郎:
黒手組。将軍の馬の爪髪役を務める家の出身だが、海外留学を目指しており、黒手組のガトリング砲盗難事件に巻き込まれて留学を断念し、やがて蔭間役の痔の治療をしているところを、浮気と勘違いされて殺される。

塚原鬼伝:
剣道道場 鬼兵館の主。木製の大砲を黒手組にくれる。

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吉野北高校図書委員会

読んだ本の感想。

山本渚著。2008年8月25日 初版第一刷発行。



吉野北高校の図書委員達の話。

西川行夫君に同情しながら読んだ。自分に優しくする事が人格者の証明になってしまうなら、当人は人間不信になってしまうと思う。

【登場人物】
川本かずら:
主人公。友人の武市大地と後輩の上森あゆみが付き合い始めた事でモヤモヤしている。「かずら」は徳島県の名所『かずら橋』からきており、中学二年生の弟は工芸品の『藍染め』から藍希と名付けられている。

藤枝高弘:
高校一年生の時は登校拒否だった。理科部や図書委員との関わりを通じて高校に通い始めた。

西川行夫:
ETのような外見で背が低くオタク趣味。気持ち悪がられていて、彼に優しくする事が良い人格である事の証明になる。

岸本一:
図書委員長。理科部とも関わりがある。

吉野北高校図書委員会
徳島県徳島市にある進学校を舞台にした話。

川本かずら(高校二年生)は、友人(武市大地)と後輩(上森あゆみ)が付き合い始めた事でモヤモヤしているところに、友人(藤枝高弘)に告白される。

日常が過ぎてゆき、新年度のワックスがけの話をして藤枝と道で別れる。

P47:
私たちは価値観が似ていて、他の人とはよくある、会話をしていてそんなつもりは無いのに知らないうちに傷つけたり、傷ついたりしてしまうということが一切無くて、私は初めて自分の言葉がそのまんま通じる人を見つけたと思った。
 
あおぞら
上森あゆみの話。

武市大地の彼女には、人格者の川本かずらの方が相応しいと思ってしまう。

P173~P174:
シンクロ率高いのに、一年以上もなんも始まらんかったんや。
(中略)
大地は多分、自分にないものがお前にあったけん好きになったんやと思う

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