GOTH 僕の章/夜の章

読んだ本の感想。

乙一著。平成17年6月25日 初版発行。





以下、ネタバレ含む。

リストカット事件
人間の手首を集める趣味を持つ化学教師 篠原を主人公が騙す話。

科学講義室のゴミ箱に捨ててあった手から先が無い人形から篠原の趣味を推測した主人公は、篠原の自宅に保存されている手首を全て盗み、黒い長髪を残しておく。

篠原が森野の手首を切断する事を期待したが、篠原は失敗し、痴漢として遠い地へ行く。

P42~P43:
ひた隠しにしていた僕の心の無表情さや非人間的な部分を、森野は心地よい無関心さで許した


人間を埋める趣味を持つ佐伯の話。

車で轢いて顔が分からなくなった少女を、所持していた生徒手帳から森野夜として、土中に埋める。少女は森野夜の生徒手帳を拾っただけの別人で、死後、恋人も彼女と一緒に土中に埋まる事を望む。

佐伯は一か月後か半年後くらいに自首するつもりらしい。

声 Voice
北沢博子(20歳)/夏海(18歳)の姉妹の話。

北沢博子が殺され、犯人が北沢夏海に北沢博子が死ぬ前に残したメッセージテープを届けにくる。

北沢博子の恋人 赤木は姉妹の外見が似ている事から、北沢夏海と間違えて北沢博子に声をかけ、それを知った事で姉妹の仲が悪くなっていた。

北沢夏海は、中学校時代の後輩 神山樹に接触し、犯人が森野夜に接触した事を知った神山樹は犯人を殺す。

暗黒系
森野夜が喫茶店に監禁される話。

連続殺人犯の手帳を拾った森野夜は、自らの恰好を未発見の被害女性に(水口ナナミ)に似せて連続殺人犯に監禁される。手帳を拾った喫茶店の店長が犯人と推測し、森野夜は救出される。

夕立の合間に外に出た喫茶店の店長は、手帳が雨に濡れて読めなくなったと思い、水口ナナミの死体が見つかる前に森野夜を監禁したらしい。

P40:
手帳を頻繁に見たいからだ。頭の中に暗黒の思考が入り乱れるたびに、手帳を読み返して気を落ちつける。そうやって頻繁に手帳を手にして確認するほど、なくす時間や地域が狭まることにつながる


犬(ユカ)との主従関係が逆転した少女の話。

ペット誘拐犯として、犬(ユカ)の前で他の動物と戦う。犬(ユカ)を虐める義父を、主人公からもらったナイフで殺害し、犬(ユカ)を主人公に託した少女は数時間後に保護される。

記憶
森野夜/夕 姉妹の話。

絵の中に描かれた首吊り自殺死体は靴を履いており、描いた人間は首吊り時に靴を脱ぐ知識が無い。しかし、九年前に見つかった森野夕の首吊り死体は靴を脱いでいた。

首吊り自殺の演技をする時のミスで森野夜は死んでしまい、以後、森野夕は森野夜として生きる事にしたらしい。

P125:
黒っぽい服を身につけ、病的な青白い顔をしている。外で遊ぶよりも、家で本を読むことを好むような、不健康は気配を持っている。一部ではそういった人々のことをGOTHと呼ぶ。

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ヒトデはクモよりなぜ強い

読んだ本の感想。

著者:オリ・ブラフマン、ロッド・A・ベックストローム。
発行日:2007年9月3日 第一版第一刷。



現代社会におけるヒトデ型組織が、クモ型組織を打ち負かし、社会を変えている事について。構造や指導者、機構を欠いた組織の誕生。

クモ型組織:中央集権
ヒトデ型組織:権限分散

<分権に関する法則>
①分権型の組織が攻撃されると、
 それまで以上に開かれた状態になり、権限を分散させる
②ヒトデを見てもクモだと勘違いし易い
③開かれた組織では情報が一カ所に集中せず分散する
④開かれた組織は簡単に変化する
⑤ヒトデ達は、誰も気付かない内に忍び寄る性質がある
⑥業界内で権力が分散すると、全体の利益が減少する
⑦開かれた組織に招かれた人々は、自発的に組織に貢献する
⑧集権型の組織が攻撃されると、
 それまで以上に権限を集中させる

<MGMとアパッチ族>
巨大エンタテイメント会社MGMは、2005年にインターネット上の音楽不正コピーについて裁判を行ったが、裁判で勝利しても不正コピーを撲滅する事が出来ていない。

これは近代におけるスペインが、アステカ帝国やインカ帝国を滅亡させながらも、アパッチ族を撲滅出来なかった事と似ている。

アパッチ族には、ナンタンという精神的指導者がいたが、行動で規範を示すだけで強要する権限を持たない。社会全体を守る唯一無二の存在がいないために、指導者を殺しても別の指導者が出現する。

音楽業界の百年を振り返ると、1890年頃には音楽家が力を持っていたが、1945年には独立系のレコード会社が登場し、1000人しか一度に相手に出来ない音楽家より巨大な利益をあげ、2000年には五大レコード会社に集約される。それがナップスターやカザー、カザー・ライト、イーミュール等の登場で分散し、一つの組織を叩いても別の分散型組織が登場するようになっている。

<分散型組織の特徴>
①単一の指導者がいない
②物理的本部が存在しない
③指導者を失っても壊滅しない
④明確な役割分担が無い
⇒中央集権型組織では、部門毎に機能が明確化している
⑤組織の一部を失っても他に影響しない
⑥知識と権限が分散している
⑦柔軟な組織
⑧参加者数が不明
⑨資金調達は各グループで独立して行う
⇒中央集権型組織では、利益を出す部門と出さない部門がある
⑩各グループが直接連絡を取る

<分権型組織の要素>
①サークル
小さく階層の無いグループが分散する。階層が無いので規則を押し付ける権限が無く、メンバーは規範に従う
②触媒
サークルを創設し、その後は表舞台から消えてしまう人物。指導者として引退する事で、サークルの所有権と責任を全体に渡す
③イデオロギー
アパッチ族の自治の思想等
④既存のネットワーク
現代では、インターネットが新しいヒトデの繁殖地となっている
⑤推進者
触媒が作ったサークルに熱意を吹き込む

<触媒について>
触媒となる人物は他人に興味を持ち、緩やかな繋がりを大切にする。個人的に親しい人間だけでなく、大勢の知り合いとのネットワークを持ち、各自が社会的に位置する場所を把握している。

人の役に立ちたいという情熱を持ち、命令によって人を動かすのでなく、情熱による模範によって他人を動かす。それらは感情的知性の賜物であり、相手を信頼し、相手に信頼される。

流動的な分権型組織においては、曖昧に対しても寛容でなければならず、秩序と組織構造によって干渉するとヒトデは死んでしまう。

<分権型組織との戦い方>
①イデオロギーを変える
他人を操作するのでなく、仲間にする
②権限を中央に集める
アパッチ族は、1914年までは脅威だったが、米国政府はナンタンに畜牛を与え、精神的なナンタンの権力を物質的な権力に変えた。ナンタンは物質的資源を分け与える事を権力の源泉とするようになり、創設されたアパッチ族内部の議席を争うようになった。

フラットだった権力構造を階層化する事によりアパッチの社会は崩壊した。

アルコホリック・アノニマス(アルコール中毒者の自助グループ)も当初はヒトデ型組織だったが、創始者ビル・W達が「ビッグブック」という本の売上を本部に寄付した事で、利益を守るための集権的システムが構築されてしまった

③自らを分権型に変える
あるムスリム国家では、アルカイダに対抗する分権型組織を構築しているらしい。サークルのメンバーは、他に似たサークルが幾つあるかを知らないし、メンバーの正確な数も知らない

<ハイブリッド型組織>
インターネット・オークションサイトのイーベイ等。

以下は、amazonの読書クラブがきっかけで出版された本。息子が誘拐される母親の夢を見た女性が書いた本で、テレビ司会者のオプラ・ウィンフリーが始めた読書クラブで取り上げた最初の本である事から注目されたらしい。

オプラの読書クラブで推薦されてから三週間で、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリストに躍り出たらしい。



①顧客経験価値を分散させた中央集権型組織
グーグルやイーベイ等、分権型組織の基盤となる
②中央集権型でありながら一部に分権を取り入れる
ジャック・ウェルチは、GEを独立した事業を展開する幾つかの部門に分けた。各部門長に責任と権限を与える

以下のルール。

①規模の不経済
大規模なユーザのネットワークを持つ小規模組織の柔軟性
②ネットワーク効果
新規メンバーによってネットワーク全体の価値が上がる
③無秩序の力
創造性が評価される
④組織の端の知識
最高の知識や情報は、組織の端に存在する
⑤誰もが貢献したがる
⑥ヒュドラの反撃
ギリシア神話に登場する多頭の怪物
⑦触媒が触発する
人々が行動する切っ掛けとなる人間
⑧価値が組織
イデオロギーが燃料になる
⑨測定し、観察し、仕切る
ヒトデ型組織を観察するには、サークルの状態や分散度、サークル同士の関係を調べる
⑩フラットでなければ負ける

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今日が始まる

これから一仕事ある。

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女學生奇譚

読んだ本の感想。

川瀬七緒著。2016年6月30日 初版。



2016年が舞台。読んではいけない本について取材する人々の話。

以下、ネタバレ含む。

女學生奇譚:
昭和三年六月発酵。発行所は日本橋の兎書館。

語り部の佐也子(17歳)が先輩である「蒼月の君」に騙されて、資産家の家に他の少女と監禁される筋書き。徐々に佐也子は狂っていき、逃亡を試みた道江という少女を裏切って捕らえさせる。昭和三年に実際にあった少女誘拐事件を版としているらしい。

【登場人物】
八坂駿:
34歳のフリーライター。ウルバッハ・ビーテ病であり、恐怖を感じない。そのために興味を持たれる。

芹澤聡:
八坂駿の一卵性双生児の弟。母を突き落として流産させた事で、両親が離婚して父に引き取られ、20歳の時に父と祖父母を殺して監禁されている。他人を操って自殺させたり、兄を調べたりしているらしい。

火野正夫:
オカルト雑誌の編集長。60歳。

篠宮由香里:
36歳の女性カメラマン。180㎝近い長身で、建築関係の写真を撮影していたが、不倫で会社の金を使い込み、オカルト系の仕事をしている。

竹里あやめ:
27歳。米国でボランティア活動をしていたが、悩みを相談した少年が、竹里あやめを悩ませる人間を殺した事で訴えられ六億円の借金がある。兄(曽根秋彦:34歳)の失踪とからめて、読んではいけない本を持ち込む。

臼井三郎:
60歳。昔は火野正夫と組んで、口裂け女の噂を流したりした。

勝浦民代:
昭和三年に失踪した友人を捜して新聞記事に掲載される。勝浦足袋(T・Kソックス社)の令嬢であり、105歳となった今でも存命で「蒼月の君」が実在した事を教える。

相原幸人:
法医学の専門家。潔癖症。『女學生奇譚』を鑑定し、インクの酸化具合から一年以内に作られたと断言する。

宍戸義隆:
子爵であり、鎌倉にある屋敷に少女を監禁していた。『女學生奇譚』執筆時には30歳前後。人肉食のためクールー病になる。

宍戸響子:
宍戸義隆の従姉妹。帝京タクシー経営者の娘。蒼月の君。ビオラ奏者で18歳でパリに留学。35歳で病死。人肉食のためクールー病になる。

火野小夜:
火野正夫の母。帝京タクシー支社長の娘。監禁されていたが、逃げ出し、『女學生奇譚』を著す。通報しようとしたが、金と地位で黙らせられたと推測される。昭和26年、38歳で処女作を出して50歳で亡くなるまでに七作品を書く。

【あらすじ】
オカルト系雑誌社に持ち込まれた「読んではいけない本」を調べる話。持ち込んだ人間の兄は失踪したとして、本の値札に使用された包装紙から、デパートの古本市、販売した古本屋を突き止める。

そこで、本が古い紙を使用しているものの、印刷方法や紙の裁断方法、糊等が新しいもので、一年以内に作成されたものである事を知る。

火野正夫の目的は、八坂駿の精神を動揺させて観察、実験する事にあったらしい。

失踪事件そのものは、実際にあり、女學生奇譚に書かれた屋敷の構造や、蝶の間という言葉から蝶の家紋を使用する家を調べ、監禁の目的が人肉食にある事を知る。

八坂駿が、屋敷を調査中に逃亡した実験の協力者 竹里あやめを篠宮由香里と一緒に米国に探しに行く事を決めたところで物語は終わる。

P126:
今の若い方はかわいそうね。自分たちで掴み取るものがないもの。すべて用意されて整えられて、誘導されて、決められた枠のなかで美しいまま生きているの。お池を泳ぐきれいな錦鯉みたいに。かわいそうに

P311:
情報というのは突き詰めなければ意味がない。たとえば駅に着いたら電車が止まっていたとする。非常停止ボタンが押されたらしい。なぜ?線路にだれかが落ちたから。なぜ?人に押されたから。なぜ?ホームが混んでいたから。なぜ?別の電車が止まって客が流れてきたから
(中略)
ほとんどの人間は、非常ボタンが押されたことがわかれば納得してしまうんだ。その先を考えない。別の目的があって電車が止められていたとしても、人は気づかないんだよ

P316~P317:
以前、人間行動学の論文を読んだことがある。嫌悪統制、選択行動、刺激性制御、協力行動、教示効果。まあ、もっといろんな分野を行動実験で細かく分析していくわけですよ。人間行動の法則発見が目的で、実社会の応用へ向けて研究されている
(中略)
恐怖を感じない人間に対する心理行動実験だ

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島はぼくらと

読んだ本の感想。

辻村深月著。2013年6月4日 第一刷発行。



瀬戸内海に浮かぶ冴島を舞台にした物語。終戦から10年経過していない60年ほど前に火山が噴火し、三年で収まったらしい。

【登場人物】
池上朱里:
高校三年生。10年後は看護師になる。

榧野衣花:
島の網本の娘。10年後は村長になる。

矢野新:
脚本家志望。

青柳源樹:
リゾートホテル経営者の息子。両親は離婚し、父親と島にいる。母はデザイナーで、後輩デザイナーと不倫をしていた。

多葉田蕗子/未菜:
元水泳オリンピック選手の親子。

谷川ヨシノ:
島の女性を集めた会社『さえじま』の専門アドバイザーである30代前半の女性。

本木真斗:
三年前にIターンした28歳の男性。昔は医者だった。

〇伝説の脚本
冴島には、植埜喜久夫という劇作家が書いた小学校の劇の台本『見上げてごらん』が伝わる。火山の噴火で疎開している子供達のために、人数が少なくても出来る劇を作ったらしい。

霧崎ハイジという自称 作家が島に脚本を探しに現れたので、矢野新が書いた台本を「幻の脚本」と偽って渡し、帰ってもらう。矢野新の書いた脚本は、霧崎ハイジ作『水面の孤毒』として中央テレビのシナリオコンクールで最優秀賞を取る。

〇大矢村長の問題
『さえじま』がテレビで取材される事になり、国土交通省の名がテレビに出ると国の手柄になると大矢村長が反発。島に医者がいないのも、島の有力者 外波家の孫が医者として帰還するのを待っているためとされる。

〇島の外へ
池上家の祖母と仲が良かった縞野家の祖母が亡くなり、千船碧子という仲が良かった同級生が島外にいる事を知り、死を知らせるために修学旅行を利用して東京に行く。
引っ越していたが、近所に引っ越し先を知っている人がいて、修学旅行後に連絡が来る。小学校の教師をしていたが、一昨年、死んでいた。

P54~P55:
霧崎さん、分析しちゃうんだ。Iターンの飲み会でも、段階についての話をしてた
(中略)
無関心が一番悪い状態(中略)興味を示される段階、『不便なことはないか』と心配される段階……と移っていく。自分は、来る時に、おしゃれなスーツケースを『気取りやがって』って島の人に言われたから、脈があるって言ってた
(中略)
そういうのが上から目線だっていうのよ。そんな段階段階ごとに、現実がきれいに色分けできるわけないじゃない
(中略)
頭でそんなふうに考えちゃうんだとしたらつらいだろうなって思ったんだよ。ともかく、霧崎さんはそういう“考える人”だ

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リライトシリーズ

読んだ本の感想。

法条遥著。

タイムスリップを題材にする。著者が前著で書いた矛盾を解消しようとした結果、矛盾が拡大していく印象。

リライト
2012年4月20日 初版印刷。



2002年と1992年を往還する物語。

【登場人物】
石田(大槻)美雪:
2002年時点で、高峰文子として作家になっている。三歳下に妹の雪子がいる。新婚だが夫の石田章介は建築の仕事で南米に赴任している。N中学二年生だった1992年に、未来人 園田保彦と恋愛関係になる。1992年7月21日に、中学校旧校舎倒壊によって建物の下敷きになった園田保彦を助けるために、2002年にタイムスリップして携帯電話を入手して1992年に戻り、電話をかけて園田保彦の居場所を知る。
2002年になっても携帯電話を取りに戻る人間が来ないので当惑している。中学二年生時の実体験に基づいた『時を翔る少女』を出版しようとしている。

園田保彦:
2311年から1992年にやって来た未来人。ラベンダーの香りのする薬で時間旅行を行う。薬は園田保彦以外が使用すると、五秒しかタイムスリップ出来ない。1992年には、骨董品マニアの親が持っていた1990年代初めを舞台にする学校小説を探しに来た。

酒井茂:
二年四組の副委員長。園田保彦と一番親しかった。

桜井唯:
二年四組のクラス委員長をしていた。2000年時点で殺される。新聞社に在籍。中学生時に美少女だったが、成人したら野暮ったくなっていた。

林鈴子:
二年四組に在籍。

雨宮友恵:
二年四組の生徒。野暮ったい眼鏡をかけた田舎娘だったが、成人したら美人になっている。読書好きで、クラス中からいじめられている。

増田亜由美:
二年四組に在籍。2002年時点で暴漢から襲われるが生きている。小説家志望で居酒屋でアルバイトしていた。中学時代は美少女だったが、面皰だらけの顔になる。

長谷川敦子:
二年四組一の美人。脚本家志望だったが2001年時点で殺される。モデルだったが鼻の整形に失敗。

P76
今は、私の『番』なのに

********************

【あらすじ】
主人公 石田美雪は、1992年に未来人 園田保彦との恋愛経験を持っており、2002年にタイムスリップして携帯電話を手にして、園田保彦を助けた記憶があるが、2002年になっても過去の自分が携帯電話を取りに戻って来ない事に当惑している。

当時の体験に基づいた小説『時を翔る少女』を書いているが、自分のかつてのクラスメイト達が二人殺され、自分の本名を調べるストーカがいる事を知る。中学校時代のアルバムには、7月21日に帰還したはずの園田保彦が運動会や剣道部で活動する写真が掲載され、卒業時の寄せ書きに『また、未来で』という園田保彦からのメッセージを見つける。

真相として提示される話は、園田保彦は担任を含むクラスメイト全員と小説探しをしており、記憶操作用具を使って、それが自分だけの記憶であると思い込ませていたというもの。

園田保彦は、自らの探す小説が、自分との小説探しを元に書かれた小説である事を知り、最初に一緒に小説探しをした石田美雪が小説を書くと思うが、石田美雪は小説家ではなかったため、未来に戻る事が出来ず、本当の著者が分からないために7月3日と7月21日を往復し、酒井茂の協力でクラスメイト全員と同じ現象を再現し、同じ記憶を植え付けていた。

カラクリに気付いた中学二年生時の雨宮友恵は、中学校旧校舎倒壊時にタイムスリップせず、『時を翔る少女』を2002年時点で手にすると1994年の自分に渡す。雨宮友恵は『時を翔る少女』を書く可能性がある人間を殺すと脅し、自分の夫になるよう言う。

石田美雪が『時を翔る少女』を書けたのは、中学生の時に雨宮友恵の部屋で『時を翔る少女』を読んだから。

タイムパラドックスが発生し、園田保彦は未来に帰る事が出来ないが、皆の記憶にも残らない状態になっているらしい。

リビジョン
2013年7月20日 印刷。



複雑で良く分からなかった。

未来視をする能力を持つ千秋霞(27歳)が主人公。1992年に書店員をしており、園田保彦が探す小説を未来視で探した結果、存在が不確かな小説を検索したためにタイムパラドックスに巻き込まれる。

千秋霞①
弟の千秋邦彦との間に保彦という子を作る。

千秋霞②
書店の同僚 坂口清と1995年に結婚し一男一女をもうける。

未来視をする鏡で過去や未来の自分と交流し、複雑なやり取りをする。どちらを選択しても不幸になるらしい。最終的に、ヤスヒコは鏡の力で一条家に送られ、一条保彦になる。

リアクト
2014年4月20日 印刷。



タイムスリップする薬を発明した園田保彦を探しに、3000年から1992年に来たホタルが主人公。

【矛盾した種明かし】
プロローグ2で、ホタルと保彦の辻褄合わせが行われる。『リライト』で園田保彦の写真が卒業アルバムにあったのは、園田保彦が1992年7月を繰り返す内に二年が経過した事で見た目が変わり、成長したように見えた = 過去が変わったように見えたためとする。写真は携帯電話のカメラ機能を使ったためとする。

⇒辻褄が合わない。携帯電話は7月21日に手にし、データを取り出す機材も無いのに写真に出来るはずがない。運動会や剣道部での活動とも整合しない

ホタルは1992年時点に行き、雨宮友恵の家に暮らす坂口穂足と入れ替わるように生活するようになる。

坂口穂足は、兄と結婚する義姉である坂口霞の姿が見えず、筆談で会話をしている。日常生活に支障をきたすために雨宮家で暮らす。雨宮友恵は『リライト』を書き、その原因を類推する。

すると本当に園部保彦が転校し、その通りに行動し始める。石田美雪にあたる生徒が存在しないため、ホタルは自らの記憶を改竄し、石田美雪として生きる事にする。

リライフ
2015年3月20日 印刷。



今までの辻褄合わせだが、ますます矛盾が拡大しているように思える。

小霧という転生を繰り返す盲目の女性が登場。国枝小霧として1992年に生れ、1998年に父の再婚で一条保彦という義兄が出来る。

一条保彦は、タイムパトロールのホタルから貰ったラベンダーの薬を使って未来に飛び、小霧の盲目を治そうとし、自らがタイムパトロールの創始者となる。小霧の盲目は治癒したらしい。

ラベンダーの花言葉:あなたを、待ってる

⇒回を追う毎に複雑になり、リビジョン以降の話は読んでも解らない。リライトも自信がない

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人とミルクの1万年

読んだ本の感想。

平田昌弘著。2014年11月20日 第1刷発行。



世界の陸地面積の約37%を占める乾燥地帯では、水資源の制約から家畜飼育の比重が高い。

1章 動物のミルクは人類に何をもたらしてきたか
ミルクの成分の多くは乳腺で血液から合成され、牛の場合、1ℓのミルクを生産するのに、約500ℓの血液を必要とする。牛等の反芻動物は、消化し難い食物繊維も消化出来るため、栄養化の低い食物に依存してミルクを生産可能。

動物は家畜化されると管理し易いように小型化し、角も蹄も退化し、多く出産するようになる。畜産には手間がかかるため、ミルクを利用する技術が無ければ狩猟の方が効率が良い(肉利用から乳利用への転換で食料を生み出す効率は3.7倍になる)?

ケニアのトゥルカナ族やマサイ遊牧民は食料の約60%をミルクに依存している。

2章 人類はいつからミルクを利用してきたか
西アジアでの出土遺跡等から、少なくとも紀元前7000年頃には羊、山羊が重要な家畜となり、牛や豚は紀元前6400年頃に家畜化されたと推測する。

<ミルクの科学>
牛乳の構成成分は、水分87.7%、蛋白質3.0%(2.3%はカゼイン、0.7%がホエイタンパク質)、糖質4.4%、脂質3.8%であり、脂質のほとんどはトリグリセリド(グリセリンに三つの脂肪酸が結合)の脂肪。

カゼインは熱に対して安定で、酸度が増すと沈殿する。チーズを造ると、ホエイ(乳清)という黄色い水が出るが、それにホエイタンパク質が含まれる。

スイギュウの乳脂肪率は7.4%、羊は7.2%あり、馬は1.9%と脂肪分が少ないが、乳糖が6.2%と高く(牛4.6%、水牛4.8%、羊4.8%)、微生物が発酵し易いため乳酒の原料となる。

乳脂肪はミルクの中に脂肪球膜に包まれて存在しており、静置して表面に浮上したものがクリームで、攪拌して脂肪球膜を破壊し、脂肪のみを集めたのがバターになる。チーズは、有機酸を加えてカゼインを凝集させ、塊にしたもの。

以下の四つの乳加工の系列群。

①発酵乳系列群:発酵乳のヨーグルトにしてから加工
②クリーム分離系列群:クリームを取り出し加工
③凝固剤使用系列群:凝固剤を入れてチーズにする
④加熱濃縮系列群:過熱して濃縮

3章 ミルクの利用は西アジアの乾燥地で始まった
乾燥した西アジアで、草原に自生する植物を利用出来る牧畜が発達した。

シリア内陸部のバッガーラ牧畜民は、ミルクをそのまま飲む事はほとんどせずにヨーグルト等に加工する。さらにヨーグルトからバターやチーズを作る(発酵乳系列)。

ヨーグルトにするだけで、夏場の炎天下で50℃近くなる気温でも数日は腐らなくなる。そのヨーグルトを羊の革袋に入れて揺らすとバターになる。バターを煮詰めたバターオイルは水分は少ないため数年間の長期保存に耐えるという。

攪拌したヨーグルトから、バターを掬い取った後に残るバターミルクを加熱して乾燥させるとチーズになる。バッガーラ牧畜民のチーズは熟成させない。

4章 都市文化がひらいた豊かな乳文化-インドを中心に
西アジアから南アジアに伝わった乳文化は、インドで発展した。

インドのミルク生産量は、1998年に米国を抜き、2012年で年間一億二0000万tと世界第一位。水牛(一日の乳量約15ℓ、乳脂肪率約7%)と在来種のゼブー(一日の乳量約10ℓ、乳脂肪率約4%)では水牛の方が多く飼育されるようになっている。

<チャイ>
沸騰した湯に、茶葉、ミルク(水牛)、砂糖、チャイ・マサラ(香辛料)、生姜を加えて出来る。インドの紅茶は、1839年に英国がインド北東部で野生の茶を発見し、アッサム種の紅茶を生産し手から始まる。ダージリン種の紅茶は19世紀中頃に中国から茶の木を持ち込んでから栽培される。

赤道に近いインドでは、家畜は季節的な繁殖をしないため、一年中搾乳する事が可能。さらに、熱い気候はミルクにヨーグルトの種菌を加え、一晩放置するだけで発酵させる事を可能にする。

新鮮なミルクを年中得られるために、インドの牧畜民はチーズの形で乳蛋白を保存しないらしい。豊富な豆類による蛋白質も乳蛋白保存の必要性を下げる。ヨーグルトやバターは嗜好品として作成される。

ただし、インドの都市部にはチーズ作りを含む様々な乳利用の文化があり、牛を殺せないために、有機酸として牛の胃の代りに、柑橘系の果汁を凝固剤として用いてチーズを作る伝統があったらしい(現在は酢酸等の有機酸)。

5章 ミルクで酒をつくる-寒く、乾燥した地域での乳加工
冷涼な気候を利用したモンゴルの乳文化。

大草原に暮らし、市場と頻繁に交易出来ないモンゴル遊牧民は肉を食べる割合が多く、家畜を去勢して雄でも手元に多く留めようとする。

家畜の交尾も管理しており、羊と山羊の種雄に前掛けを付けて、三月中旬から四月中旬に子畜が一斉に産まれるように、十月中旬から前掛けを外す(植物の生育は四月下旬から九月下旬であり、その期間で子畜を成長させる)。

モンゴルの乳加工の特徴は、クリームを大量に作る事にあり、それからバターを作る。ミルクを鍋で加熱してクリームを集めた後に残るスキムミルク(脱脂粉乳)はチーズにする(凝固剤としてヨーグルトを利用)。寒い気温を利用して、十月下旬から一一月下旬に搾乳したミルクを冷凍保存する技術もある。

熱い地域ではミルクを静置するとクリームが分離する前にヨーグルトになるか腐る。馬乳酒も14℃~16℃の低中温を保つ事が出来る寒冷な気温だから実現した文化かもしれない。

6章 ヨーロッパで開花した熟成チーズ
チーズの熟成が欧州の特徴。黴や酵母を利用したチーズは、最初は冷涼な冬においてのみ作られたとする。

水分が多いソフト系チーズは塩水に漬け、水分が少ないハード系チーズは湿度が70%~80%あれば熟成するので、夏でも冷涼で湿度が70%ある欧州の山岳地帯で熟成したハード系チーズの文化が発達した。

<パルメジャーノ・レッジャーノ>
13世紀末に作られ始める。パダノ・ヴェネタ平野に排水システムが調えられてから乳牛を大量に飼育出来るようになった事が契機で、レンネットを加えて凝乳とし、55℃まで加熱して水分を排出し、塩水に25日ほど漬ける。夏は暑くなり、湿度が低下するために熟成庫を建築士、湿度を保った。

<ウォッシュ系チーズ>
チーズの表面を塩水で洗うと、多種類の黴が表面に展開され、微生物の分解作用で熟成される。より高い湿度が必要で、平均気温が5℃を下回る冬に洞窟や地下室で製造されたとする。

1791年頃に誕生したカマンベールは表面に白黴を生やし、多忙な農家の副業として作られたとする?

7章 ミルクを利用してこなかった人びと
ミルクを必要としなかった文化。

①母子関係への介入
谷秦氏は、人間の管理の下で数百頭の群れを飼育すると、母子の相互認識が不安定化し、人間が哺乳を助ける必要があり、それが搾乳の切っ掛けだったとする。数百頭規模の群れを飼育しない東・東南アジアでは搾乳が発生しなかった?

②食文化
15歳~17歳の弾性のカルシウム摂取目標量は、一日当たり850㎎。ミルク以外にカルシウム供給源が無い地域と違い、海水魚や小松菜等のアブナラ科の濃緑色野菜を食す文化ではミルクの必要性がやや低い。

③アメリカ大陸
アンデス高原の人々のカロリー摂取量の約78%はジャガイモ由来で、カルシウムは石灰を穀物と煮込んで粥にしたり、穀物の灰を塊にして乾燥させたリプタを噛む事で摂取しているらしい。

日本に乳文化は、嗜好品、栄養補助食、西欧型の食文化、米との融合(チーズカレー、ドリア等)、発酵食品との融合(味噌や醤油等)という型で入り込んでいる。

8章 乳文化の一万年をたどり直す
今までのまとめ。

搾乳は難しい技術で、西アジアで発明されて周辺地域に伝播したと考える。南アジアの乳文化は、西アジア型発酵乳系列群からチーズ加工のみが欠落した体系であり、インドの都市において加熱濃縮系列群という独自の形態が発達した。

他にユーラシア北方のクリーム分離や、欧州の熟成チーズも特徴的である。

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最高の戦略教科書 孫子

読んだ本の感想。

守屋淳著。2014年1月24日 1版1刷。



具体的手順を持ち難い前例の無い状態では、方向性の感覚(歴史書で学ぶ)と競争状態での原理原則(孫子で学ぶ)が必要になるとする。状況が刻一刻と変化する以上、過去の成功体験を安易に信じる事は出来ない。

Ⅰ部 『孫子』はそもそも何を問題とし、何を解決しようとしたのか
中国の春秋戦国時代は、約550年間継続した。負ければ国が滅び、且つ、敵が多数存在する状況。そのため、戦略は「如何に自らの消耗を抑えるか」が一つの眼目となる。

以下の三分類。

①敵の方が弱い
外交や威嚇によって味方に引き入れる

②彼我が同じくらいの力
相手の戦う力が弱い内に摘み取り、相手をかわして第三者と戦わせ、漁夫の利を得る

③敵の方が強い
傘下に入り、協力者として生き残る

<比較要件>
以下で彼我を比較する。

①道:理念の共有度
②天:タイミング
③地:インフラ
④将:責任者の能力
⑤法:規律や機材の性能

兵士と資金が入っていない。著者は、孫武が、斉の余所者として、呉王の兵士と軍資金に言及出来なかった可能性を指摘する。

****************

孫子では、自らの努力で維持出来る不敗体制を構築し、敵が機会を見せたら勝ちを目指す。さらに短期決戦で勝てる条件を重層的に構築していく。

そのために詭道(騙し合い)として敵との情報格差をつける。臨機応変に動き、こちらを弱く見せ、意図を誤解させる。これは手の内が露見すれば通用せず、抑制効果も望めない。不安定な戦国の状況で一発勝負を挑む者の思想である。

<情報格差のある状況での戦い>
以下の四つの側面。

①情報
②環境・肉体(地の利や疲労、空腹等)
③感情・精神(勢いや士気)
④物量・管理(兵数や組織化の度合い)

孫子では、「智将は務めて敵に食む」とあるが、これは行軍を速くするためであったのかもしれない。初期ナポレオンの軍隊も携帯食料のみを持って予想外の距離を移動し、補給は敵軍後方を襲う事で維持した。

さらに食料調達法が収奪だった場合、敵軍は看過出来ないが、自らは移動し次に現れる場所も予想されない。敵は広く薄く兵を分散するしかないので各個撃破が可能になる。敵の急所を攻撃し、救援に駆け付けた敵を待ち構える戦法も使える。

⇒「重要地点に兵を分散させる」と「戦力を集中させる」はトレードオフの関係になっている

<情報格差が作れない状況での戦い>
敵と再戦する場合、敵軍が焦土作戦を実行する等して警戒される可能性がある。

その場合、「奇」と「正」を組み合わせ、相手の罠にかかった振りや、相手を誘い出す戦法を使う。紀元前496年の呉と越の戦いでは、越王句践は、自軍の兵士達を敵軍の前で自殺させ、混乱状態となった呉軍を破った。

「相手が自分を騙そうとしている」という不安が、疑心暗鬼を誘発させ、時間を浪費させる。変化は必然的に崩れを伴い、攻撃や防御に即した態勢は欠点を抱え込む。また、敵の勢いを上手く外し、元気が衰えた敵と戦う事を目指す。

◎無形
・移動経路・目的地を補足させない
・自然体に構えて敵が先に動くのを待つ
・完全に姿を消す

孫子では、形の具体的説明が無く、口伝で伝えられたのかもしれない。兵力差に応じた戦いでも、「互角の兵力なら、よく戦う」とぼかされており、自由に解釈が出来る。

<組織管理>
愛情による心服と規律による統制が必要。そして強い危機感を兵士達と共有する。そのために兵士には作戦計画を知らせず、考えられない状態で絶対服従させる。人間は理解出来ない状態では固まってしまうか、他からの注文通りに動いてしまう。

情報:裏の読み合い、円環を招き易い
肉体:定期的に世話をしないと致命傷になる
精神:長続きせず、盛衰する
管理:統制されている限り大きい方が有利

孫子では君主との関係が特徴的で、将軍に全権を委任する事を基本とする。クラウゼヴィッツでは一人の人間が政治と軍事の最高責任者になるか、政治的決断に軍人が加わる事を提案している。

⇒クラウゼヴィッツの時代では政治家と軍人の役割分担が分かれていたが、孫子の時代では政治家と軍人が明確に分かれておらず、政治家が将軍になるという形が普通に存在し、政治的意図を理解した将軍に全てを任せる事が可能だった

<情報分析>
①敵との戦力差
②勝てる相手と勝てる方法で戦う
③味方が団結している
④情報格差によって奇襲が可能
⑤現場責任者に権限が委譲されている

スパイを用いて、敵の政治や団結、戦力や軍隊内部の様子、将軍の能力や君主との関係、こちらの戦意に気付いているかを調べる。孫子は聖智でなければスパイを用いる事が出来ないとしており、「聖」という文字は、この個所でのみ用いられている。

Ⅱ部 『孫子』の教えをいかに活用するのか
競争が激しい状態で孫子は必要とされる。

江戸時代を構築した当初は、「人々に夢を見させない安定した体制」が指向され、封建的身分秩序が導入された。野心の他に安定を脅かすのは生活苦であり、夢と生活のバランスを取る事が必要となる。

江戸時代初期の商家では、一攫千金を夢見て蜜柑を江戸まで運んだ紀伊国屋文左衛門等が目立つが、互いに潰し合う事を恐れ、享保期には家訓が大量に作られて道徳秩序を守る事が尊ばれるようになる。

こうした永続主義は争いを避ける事に繋がるが、和を守る集団は戦い慣れた外部勢力に食い荒らされてしまう。

<戦略の段階>
人間は自らの帰属集団の最適解に規定され、より大きい集団の利益を考えられない場合がある。

例として野球では、

選手:試合で勝つために意図的に打たせる等する
監督:ペナントレースで勝つために主力を温存
球団:観客動員を増やすために派手に勝たせようとする

という風に、下の階層を捨て駒にして目的を達成する事がある。これは高いレベルから考える事で、固執している思想から解放される事を示唆しているが、同時に自らが組み込まれている階層が切り捨てられる可能性も示唆する。

<試行錯誤と臨機応変>
孫子では敗北が致命傷になる状況での戦略を考えており、試行錯誤は想定されない。致命傷を回避するために大損害に陥る状況を封じ、事前に勝ちパターンを調べて、臨機応変にそこに嵌め込んでいく事を目指す。

ナポレオン戦争において、ロシアは広大な自国領土を逃げ続けて致命的な敗北を回避し、ロシアの厳しい環境がナポレオン軍を消耗させるのを待った。ビジネスにおいても勝ちに行くよりも、不敗を守って相手に華を持たせる形で成果を出した方が出世し易い場合がある。

一方で、試行錯誤がし易いのは以下の条件が確保されている場合である。

①再挑戦可能
②成功/失敗がすぐに分かる
③結果を出す以外に適否を判断する方法が無い

こうした状況では失敗が成果の元手となる。我慢出来る内は負けろ(ガルリ・カスパロフ)。

不敗のラインは自分で設定出来る場合があり、悪い時はそれなりにサイズダウン出来れば生き残り易くなる。映画監督の押井守は、映画監督の勝利条件を「次回作を撮る権利を留保する事」としている。

自己点検を考える時期と勝ち進む時期を分けて考える。

<クラウゼヴィッツとの比較>
クラウゼヴィッツでは重心として敵軍司令部や敵軍の戦闘力の厚い部分、軍隊同士の結節点を撃破する事で勝利が得られるとする。戦争全体では、軍隊、首都、同盟国を撃破して勝利が確定する。

孫子のような①敵を操作して有利な態勢を築く、②敵の弱い所から平らげるという手法は重視されない。孫子が急所を突くのは相手を操作するためであり、直接的に撃破する発想は無い。クラウゼヴィッツは、仮想的がナポレオンであり、ナポレオンが罠に引っ掛かると想定しなかったためかもしれない。

クラウゼヴィッツは詭道(騙し合い)も基本的に否定しており、同じ相手と何度も戦う事を前提にしている。一回勝負であれば奇襲作戦は成功するが、幾度も戦うと通用しなくなる。

孫子は同じ相手とは一回限りしか戦いたくないという自国生き残りの書である。

クラウゼヴィッツでは軍隊レベルの勢いについての言及が無いが、国民(戦争の熱狂を担当)、軍隊(戦争の運営担当)、政府(知性担当)という役割分担がある。

中世までは戦争の熱狂は宗教が担当していたが、1648年のウェストファリア条約で宗教と政治が分かれ、戦争はプロの手に委ねられるようになる。

フランス革命において、ナショナリズムが戦争の熱狂を担うようになり、敵の存在が熱狂を際立たせる。

<選択と集中>
以下の二つの側面。

①既にある事業の整理
②新たな集中先をどのように見つけるか

〇アサヒビールとキリンビール
1980年代半ばまではビール業界はキリンビールが64%の最大シェアを持っていたが、アサヒビールに抜かれた。キリンビールはラガービール(熱処理されたビール)では圧倒的だったが、生ビールを用意していなかった(敵の虚を討つ)。

1987年に発売されたスーパードライは大いに売れたが、キリンビールはラガービールでシェアを持ち過ぎていたために、「生ビールの方が美味い」とは言えなかった。

アサヒビールは敵が真似出来ない商品を武器にした。過去の成功は簡単に捨てられない。著者は、キリンビールは各個撃破を避けるために一番搾りに集中すべきだったとする。

選択と集中した先が本当に利益が出るのであれば、敵が何社も存在し、自分より大きい敵が参入するかもしれない。そのため、参入障壁の有無や変化要因について理解する必要がある。

以下の参入障壁。

①自社の技術
②立地の優位性
③社員の士気
④会社の規模

現代では情報技術や流通網の発達で優位性を保ち難い状況にあり、ブランド価値や人件費が安い地域等の参入障壁が打破され難い。

生死が突き付けられる世界では価値観が収斂されるが、余裕のある世界では価値観が多様化し、勝てる場で戦う事も可能になる?

*****************

最終章で、著者は『孫子』を欧米圏に最初に翻訳したのは、イエズス会士のアミヨーによるフランス語訳(1772年)とし、現代版とはかなり違うとする。

「彼を知り、己を知れば、百戦して危うからず」において、「彼 = 部下」という訳になっている。そうした違いとナポレオンの行動をリンクした本を刊行する予定らしい。

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「覇権」で読み解けば世界史がわかる

読んだ本の感想。

神野正史著。平成28年9月10日 初版第1刷発行。



人類史は安定期と混乱期を繰り返すとする。

第1章 ローマ帝国
黒海からカスピ海の北方に拡がる草原地帯で暮らした遊牧民が、紀元前2000年頃に中部イタリアに侵入し、ラテン人と自称した事が発祥。建国当初(紀元前753年~紀元前509年)は王政だったが、紀元前509年から共和制になる。

民主と独裁のバランスを取った事が有名で、執政官は必ず二名いて300名の元老院議員の傀儡だったが、非常時には一名の独裁官を任命した。

貴族と平民に分かれているが、紀元前494年の平民放棄を契機に、護民官や平民会の設置が認められた。紀元前287年のホルテンシウス法(平民会の決定は元老院の承認を必要としない)でローマ民主制の完成とする。

市民皆兵による士気の高い軍隊を持ったローマは、紀元前272年にはイタリア半島を統一する。しかし、領土拡張は、安価な奴隷を大量に使用した大農経営を普及させ、自営農を中心とする平民達の生活が破綻する。

<グラックス兄弟の改革>
兄(ティベリウス)は紀元前133年、弟(ガイウス)が紀元前123年~紀元前121年に護民官になり、大土地所有を500ユゲラ(約125ha)以内に制限し、没落民に土地を再分配しようとした。内乱の一世紀(紀元前121年~紀元前27年)の原因となる。

市民皆兵が崩壊したローマでは、富裕層が没落民を雇う傭兵軍団を組織するようになる。傭兵軍団維持には資金が必要であり、財源確保のために戦争をし続ける。内乱の一世紀にも関わらず、地中海はローマに統一された。

⇒中央(元老院)が統治能力を失い、地方に軍団が割拠する

ローマは、カエサル、オクタヴィアヌスによってローマ帝国(共和精神を基盤とした帝政)として再編される。しかし、決定的な貧富の差は解消されずに、キリスト教が蔓延し、ローマ精神が損なわれる。

9年のトイトブルクの森の戦いの大敗でローマは膨張政策を止めるが、大農経営等は新しく供給される奴隷を前提にしていたため、その収益で支えられる軍団も打撃を受け、各地の軍団が皇帝を僭称する軍人皇帝時代となる。

そして376年にゲルマン民族がローマ領内に押し寄せた事で、ローマ崩壊は決定的となった。

歴史法則01:
バランスが取れた体制が安定の秘訣。一つの理想に偏重した組織は適応力に欠ける

歴史法則02:
バランスを失った時、為政者に富や権利を再分配する柔軟性があれば国家を再建出来る

歴史法則03:
組織の安定は対外膨張を促す

歴史法則04:
急激な変化は組織を破壊する

歴史法則05:
殷富は富の偏在を促し、富の偏在は秩序を破壊する

歴史法則06:
自己修正能力を失った組織は崩壊するが、その前に「変質」という段階を経る

歴史法則07:
旧秩序の破壊者は葬られる

歴史法則08:
新秩序の開拓者を葬っても、新秩序を葬る事は出来ず、別の者に継承される

歴史法則09:
国家が崩壊過程にある時は新興宗教が跋扈する事が多い(人は絶望すると妄想に救いを求める)

歴史法則10:
領土拡大が臨界点に達した時に崩壊が始まる

第2章 中華帝国
春秋戦国時代の中国は、鉄器段階における統治システムを模索する段階にあった。法家の政治理念に基づいた秦が中国を統一する。
秦は破壊者としてカエサルのように短期間で抹殺され、漢が継承者となる。漢は、郡県制が根付いた旧秦領は郡県制とし、東部は封建制を採用する郡国制の国となる(その後、理由を付けて改易していく)。

第七代 武帝の頃には先帝から受け継いだ領土を二倍にするが、国家は破産寸前となり、増税を行う。

<王莽>
漢の皇帝から禅譲される形で国号を「新」と改める。周制を採用するも、儒教政策(井田制等)が時代に合わず、赤眉の乱、緑林の乱等で失脚する

漢王朝が復興した後漢は、200年12代の皇帝の中で、成人後に即位した皇帝は初代 光武帝と二代 明帝のみ。外戚と宦官の勢力争いが発生した。

以下のパターン。

①戦乱の時代によって国土が荒廃
②統一王朝が生れ、社会が安定し、生産力が向上
③人口が増えて農地が足りなくなり、対外膨張戦争が発生
④戦費調達のための増税で国民が窮乏し混乱が発生

歴代王朝は、安上りな兵農一致を基本とするが、大帝国となるに従って兵士の負担が大きくなるため、傭兵制に移行する。唐でも府兵制が慕兵制(傭兵制)に移行し、安史の乱(節度使の反乱)の原因となる。

唐滅亡後の五代十国時代は、ローマ史の軍人皇帝時代と似ているとする。そのため、宋では君主独裁体制によって軍を弱体化させるようになる。

<宋以後>
唐と宋を隔てて中国史は転換した。それまでの戦乱時代と統一王朝の繰り返しのパターンから、漢民族と異民族の王朝の繰り返しのパターンとなる。

帝都も長安周辺(周:鎬京、秦:咸陽、前漢:長安、隋:大興、唐:長安)を原則として偶に洛陽(後漢、西晋、北魏)だったのが、北京(元、明:三代目以降、中華民国:軍閥政府、中華人民共和国)を原則とし偶に南京(明:初代と二代、中華民国:国民政府)というパターンになる

唐以前に中国に建国した北方民族は、浸透王朝(文化も漢化)だが、宋以降は征服王朝(自民族の文化を棄てない)となる。遼がモンゴル人と漢人に対して二重統治体制を採用したのと同じ流れになっていく。

<中華思想崩壊>
阿片戦争敗北により、中華システムへの信望が揺らいだ事が、1912年の帝政終了に繋がるとする。著者は、中国では民主制が合わない民族性として中華思想と帝国によって反映するとしている。

歴史法則11:
大きな時代の転換期には過渡期が必要となる

歴史法則12:
安易に増税する政府はほどなく滅びる

歴史法則13:
限度を超えた増税は国家寿命を縮める

歴史法則14:
法は万能でない。万能として国家運営を図ると混乱を招く

歴史法則15:
真の悪党は善人面をしている

歴史法則16:
国の成立・発展の礎となったものが、国の衰退・滅亡の原因となる

歴史法則17:
歴史の流れに逆らう者は、歴史によって屠られる

歴史法則18:
権力は必ず腐敗する。防ぐ手立ては存在しない

歴史法則19:
歴史は繰り返す(秦漢の関係は、隋唐の関係と似ている)

秦は統一後15年で滅び、隋は30年も保たない。漢は400年、唐が300年継続したのとは対照的。漢が簒奪王朝である新を挟んで、前漢200年、後漢200年に分かれるのと同じように、唐も則天武后が周(690年~705年)の挟んで、前半100年と後半200年に分かれる。簒奪者は両方とも外戚系で周に憧憬の念を抱き、簒奪王朝は15年で滅んでいる。

歴史法則20:
荒廃の時代は人口増加が国家を安定させるが、安定の時代は増え過ぎた人口が国を亡ぼす

歴史法則21:
経済大国は身を護るために軍事大国とならざるを得ないが、軍事費が財政を蝕む

歴史法則22:
外交において弱腰を見せると付け込まれる

歴史法則23:
混迷の時代には英雄が現れて平和の時代に導き、平和な時代には奸賊が現れて混迷の時代に導く。優秀な人は才で戦うが、無能は裏工作で戦う

第3章 イスラーム帝国
アケメネス朝ペルシア帝国の旧領は、7世紀までは西半分をビザンツ帝国、東半分をサーサーン朝が支配し、覇権を争っていた。アラビア半島は辺境であったが、二大帝国の争いを避けた迂回交易路が形成され、貧富の差が生じていた。さらに、ピザンツ・サーサーン戦争は同族内の抗争という政治的問題も生じさせた。

それらの問題を解消する手段としてイスラム教が誕生。創始者のムハンマドは神の言葉を伝える預言者として強い軍隊の組織に成功。貧富の差は喜捨の制度で再分配を計る事で解決を目指す。

<正統カリフ時代>
マハンマドの死後、各地に起った反乱がイスラム教団を結束させたが、半島統一のための軍隊を維持するために二代目カリフ(ムハンマドの後継者)のウマールの代からアラビア半島の外へ膨張戦争を始める。

イスラム帝国は、イスラム信者には救貧税(ザカート)等の軽い税を課し、異教徒にはジズヤ、ハラージュ等の税金を取る税制を採用していたが、イスラムへの改宗者が増えると税収が減っていった。

ウマイヤ朝は、改宗者にも課税したが、これは神を前に信者が平等というイスラーム精神に悖るため反発される。アッバース家はシーア派と協力してウマイヤ朝を倒す(750年頃)と、税制改革として土地税を全ての土地所有者に課した。土地所有者は改宗者ばかりなので、実際にはアラブ人を優遇したとする。

やがてトルコ人傭兵が採用されるようになり、オスマン帝国に繋がっていく。オスマン帝国は1299年から600年に渡って君臨し、その要因を以下とする。

①イェニチェリ(奴隷兵士)
②改革
オルハン1世(1324年~1360年)は、君主を頂点とし、行政、軍事、司法の三権を設置。キリスト教世界に対応した統治として、イスラーム圏のアナトリア半島にはアナドル州、キリスト教圏のバルカン半島にはルメリ州を設置
③異民族でも宰相になれる統治

やがて、社会が硬直化し、西欧文明の制度全般を導入出来ずに滅びる。

歴史法則24:
次世代の光は辺境より現れる

歴史法則25:
偉大な指導者による政権は、指導者を失った時に崩壊の危機に陥る

歴史法則26:
名君によって建てられた政権は短命。凡君によって建てられた政権は長命

歴史法則27:
内なる崩壊は外からの圧力によって止まる

歴史法則28:
国内矛盾を対外膨張戦争で押さえ込んだ国は、常に膨張し続ける事を余儀なくされる

歴史法則29:
自国防衛を外民族に委ねる国は亡びる

歴史法則30:
平和が社会を腐敗させ、繁栄が混乱と衰退を招き寄せる

歴史法則31:
素晴らしい思想でも必ず古くなる

第4章 大英帝国
イスラームの包囲態勢を打破する努力が、結果的に欧州を近代化させた。

大英帝国は産業革命を独占した事で繁栄を築いた。英国は機械の輸出や技術者の海外渡航を禁止(1774年)していたが、1830年代に産業革命が完成期に入ると、1825年、1843年と禁止令を段階的に解禁し、他国にも産業革命が拡がった。

1840年代~1850年代に産業革命段階に入った米国とドイツでは、「重くて熱量の低い石炭」から「軽くて熱量の多い石油」への転換が図られ、汽車よりも効率の良い自動車が発明された。化学工業も発達し、天然資源を産する地域を植民地にする動機が生じる。

英国では第二次産業革命への対応が遅れ、利権を守る事が難しく世界大戦を経て没落していく。

世界大戦は国民軍による戦争であるため、国王のためでなく、「自国民の生活を守る正義」のために戦う総力戦を挑む事になり、闘いの規模が激化した。

第二次世界大戦後は世界のルールが変わっており、1882年~1922年まで英国の植民地だったエジプトは、親英王朝(1922年~1953年)を樹立していたが、1952年のエジプト革命で滅亡。1856年にスエズ運河の所有を巡って戦争になる。軍事力では英仏がエジ
プト軍に勝利するものの、国際世論はエジプトの敵となり英仏は撤退を余儀なくされる。

武力でなく世論が重要視される時代で、欧州は衰勢の一途を辿る。

歴史法則32:
利点と欠点は表裏一体

歴史法則33:
崩壊の原因は絶頂の只中で生まれる

第5章 アメリカ合衆国
著者は、米国人の原体験をインディアンを蛮族として植民者個人が銃を持って敵対しながら生きてきた事とする。

アメリカ独立戦争は、1689年のウィリアム王戦争から、アン女王戦争、ジョージ王戦争、フレンチ&インディアン戦争という植民地獲得戦争による戦費を砂糖法(1764年)、印紙法(1765年)で植民地からの課税で賄おうとした事に起因する。

1777年に可決された米国最初の憲法は中央政府の権力が弱く、1786年にマサチューセッツ州で勃発したシェイズの乱に対応出来なかった事から、連合規約修正と偽って代議士を集め、中央集権の新憲法を制定した。

当時はフランス革命の混乱があり、他国が米国に介入する事が少なかった。1803年にはナポレオンのフランスからミシシッピ以西のルイジアナを購入。

<英米戦争>
1807年にナポレオンの大陸封鎖に対抗するため、英国は自由拿捕令を発布。1812年から反発した米国が英国と交戦状態になる。対英戦線では危機的状態だったが、インディアンとの戦争では絶滅作戦で目的を達した。この戦争を通じて英国経済への依存体制から脱却する。

1816年には一般関税法によって英国からの輸入品に関税をかけ自国産業を保護しようとする。英国は米国南部から輸入していた綿花に、報復として高関税をかけ南部の大農主が打撃を被る。

これが南北戦争に繋がり、米国が建国してから21世紀に至るまでの対外戦争の死者は60万人程度だが、南北戦争の死者は65万人を超える。

南北戦争後は大陸横断鉄道が貫通し、19世紀後半から20世紀初頭に4000万人が米国に移住(全欧州の人口が4億人程度だった時代)。

貧富の格差も生じ、1891年には農民達の利害を代弁する人民党が生れたが、民主党に政策を横取りされ吸収される。しかし、貧富の差を完全には克服出来ず膨張政策を採用していく。

第一次世界大戦後のパリ講和会議では、米国ウィルソン大統領の「14ヶ条の平和原則」が提示される。

①秘密外交の禁止
②公海の自由
③関税障壁の撤廃
④軍備縮小
⑤植民地問題の公正なる解決
⑥~⑬欧州における民族自決
⑭国際平和機構の設立

⇒米国の基準を世界に適用させる主張と言える

第一次世界大戦によって英仏に莫大な債権を持った米国は好景気となり、1920年代には世界の金の約40%、自動車の80%を保持する国となる。

そして、第二次世界大戦が終わると、以下の前提条件が変わる。

①軍隊
白人列強のみが国民国家と産業革命に支えられた近代的軍隊を持つ
②情報
マスコミが発達し、情報を握り潰す事が出来なくなった
③迷妄
白人の軍隊は無敵という信仰の崩壊

ヴェトナム戦争において敗退した米国は、外敵を設定して内なる分解を抑えようとするが、延命措置でしかない。著者は米国一驚時代が終了し多極化する混迷混乱時代が始まると予想している。

歴史法則34:
内乱や改革は外科手術であり、成功すれば健康になるが、失敗すれば死ぬ

歴史法則35:
歴史は勝者によって紡がれるため、悪は全て敗者に押し付けられる

歴史法則36:
全ての時代は、その時代毎の前提条件に支えられて成立しているため、条件が変われば時代も変わる

歴史法則37:
国家の特性が、時代の特性と符号した国でなければ、その時代の覇者とはなれない

歴史法則38:
不敗は権威を育み、権威は支配を容易にする。しかし、一度でも傷ついた権威は元に戻らない

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球形の季節/六番目の小夜子/現代女性作家⑭恩田陸

読んだ本の感想。

恩田陸著。平成11年2月1日発行。



編者:現代女性作家読本刊行会。発行:2012年2月20日。



【舞台】
東北内陸部に位置するI市の町 谷津。ほぼ正方形で、四つの辺の内、三つを蛇行する紅川に囲まれており、残る一つは鉄道と谷津駅に蓋をされて閉じられている。

別世界である「本来の谷津」を内包しており、ふとした弾みに別世界を垣間見る事が出来る。

【経過】
谷津という町にて、子供達に広まる噂の出所を「谷津地理歴史文化研究会」が探る。

一つ目の噂:
5月17日に如月山にUFOが来て、エンドウという生徒が誘拐される

⇒遠藤志穂(16歳)が行方不明になる

二つ目の噂:
7月14日、サトウさんの上に隕石が落ちてくる

⇒長篠高校一年生 佐藤保が高校教師 結城貞之に突き飛ばされて車に撥ねられる

三つ目の噂:
8月31日、教会にみんなを迎えにくる

⇒大勢の学生が教会を目指す

主人公 坂井みのりは谷津の物語の語り手となる。それは学校時代が嫌いだったと語りながら、学校時代を描き続ける恩田陸に重なる。

【示唆】
①緑は危険(クリスチアナ・ブランド)
P10で陸軍病院という密室を舞台にした推理小説が登場する。

②本来の谷へ行く方法
本来の谷津へ行くには境界である川を飛び越える必要がある。以下の重要ポイント。

駅南の教会:教会 = 境界と読み取る事も出来る。

如月山:紅川を超えた場所にある。

間加部:I市から電車で40分離れた場所にある。

閉塞的な現実世界からの脱出。現在という空間と時間は球形に閉じられており、本来の谷津に入る事は、現実の外に出る唯一の方法である。

<六番目の小夜子>
平成13年2月1日発行。



学校は新陳代謝を繰り返しながら活性化を図る生命体のような存在であり、規則正しいリズムの中にある。『六番目の小夜子』における学校は川や桜の木に囲まれる事で境界を形成し、周囲とは一線を画している。

転校生 津村沙世子は、快活と負の両極端を体現し、来訪神として学校の意志を表す神となる。本人は人間であっても、共同体が彼女を異形と認めた事で意味を持ち始める。

春に津村沙世子は卒業し、解放される。

【サヨコ伝説】
15年ほど前に、学園祭で『小夜子』の一人芝居が好評で、その年の大学合格率が良好だった。その三年後、『小夜子』を再上演しようとするが主役の女生徒が死亡し、上演は中止、その年の大学合格率は史上最低となる。

その後、小夜子の役割が引き継がれていくようになり、三の倍数の「サヨコ」は、役割を引き継ぐだけでなく、定められた役割を果たさなくてはならない。

卒業式で卒業生に花を渡す二年生が、花を渡す時に鍵を押し付けられ、その数日後に匿名で手紙が郵送される。

サヨコの役割:
始業式に赤い花を自分の教室に飾る。そしてサヨコの芝居を準備し、サヨコを凌ぐ芝居を用意出来るなら、9月の始業式に、赤い花を活け、昔のサヨコを再上演するなら空の花瓶を置き、何も出来ないなら何もしない。

赤い花を活けた場合、学園祭実行委員長にオリジナルの台本を郵送する。

登場人物 関根秋の兄は「三番目の小夜子」、その5年後に姉は鍵を渡すだけの小夜子をしている。

【解明されない謎】
以下、気になった事。

①加藤彰彦の謎
本来の「六番目の小夜子」は、加藤彰彦という男子生徒だったが、4月には小夜子の呪い?で心臓発作を起こして学校に来れなくなり、留年が確定する。

P57:
加藤はクラスに必ず一人か二人はいる、地味で社交性がなく冴えないが、その割に自意識過剰で自尊心が強い、というタイプの男子生徒である

⇒このような男子学生が「小夜子」に選ばれた経緯はなんだったんだろう?

加藤彰彦が留年し、卒業していないという事が気になる。他の登場人物達が高校から解放されるのに、加藤彰彦だけが学校に残る。

②五番目の小夜子
「五番目の小夜子」は『無言の小夜子』と呼ばれ、赤い花を活けたが何もしなかったとされる。

恩田陸の『図書室の海』に収録されている「図書室の海」では、関根秋の姉 関根夏が「小夜子の鍵」を演劇部の後輩である桜庭克哉か、自分に鍵を渡した志田啓一の幼馴染である浅井光に渡すか考える場面がある。

桜庭克哉も浅井光も、それなりに活動的に描写されているが、『無言の小夜子』になってしまったのは何故だろう?

そして、ここで①の疑問に返る。『小夜子』が選抜されているのだが、地味で非社交的な加藤彰彦が選ばれたのは何故だろう?

<麦の海に沈む果実>
「海より帰りて船人は」は、レイ・ブラッドベリの短編の邦題。

航海中に妻を失った船長が水葬を望むが、彼が葬られたのは小麦畑の一角だった。

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今日も歓送迎会

この一週間は変に忙しかった。

仕事ではなく他のモロモロ。

ああ疲れた。

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飲み会だった

終りの乾杯をしてから、さらに二時間延長した。

皆、帰りたがっていたけど、それなのに飲み会が終わらない不思議。

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歯医者に行こう

最近、歯医者に行っていない。

定期検診をした方が良いと思う。

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PSYCHO-PASS

読んだ本の感想。

深見真著。2013年3月22日/2013年4月18日 第1刷発行。





2112年?の日本が舞台。人間の犯罪傾向を数値化するシビュラシステムにより、治安が保たれた社会。犯罪傾向が高いと判定された人間は隔離されるか、執行官として犯罪者を狩る事になる。

槙島聖護:
犯罪係数と心理が一致しない免罪体質者(200万人に一人の割合で出現)。他人の犯罪を観察する趣味があり、様々な人間の犯罪を補助する。

シビュラシステム:
人間の脳を大量に接続する事で実現した犯罪監視システム。システムの構成には274の脳が使用されており、200の脳がセッションを組む事で日本中の犯罪係数を常時監視する事が可能になる。

使用される脳の条件は、従来の人間の規範に収まらない人格の持主である事。

下巻P41:
今やいかなる選択においても人々は思い悩むより先にシビュラの判定を仰ぐ。そうする事で誰もが葛藤に煩わされることなく、幸福と満足のみを享受できる

**********************

公安局が担当した以下の事件。

〇コミュニティフィールドすり替わり
インターネット上に構築されたヴァーチャル空間コミュニティフィールドの運営を、管理人を殺してすり替わり乗っ取る事件。殺されたコミュニティ管理人は、タリスマン(葉山公彦)、スプーキーブーギー(菅原昭子)、メランコリア(時任雄一)。

公安は、殺された三人のコミュニティフィールドの常連上位100人の内、殺された後に来場が途絶えた人間を犯人とした。

犯人は御堂将剛(27歳)、模倣能力が高い事から槙島聖護に興味を持たれ、援護(ホログラム・クラッキングの提供)されていたが個性が無いと思われて始末される。

上巻P153~154:
戯曲『さらば、映画よ』。みんな、誰かの代理人なんだそうだ。代理人たちが、さらにアバターを使ってコミュニケーションを代理させている
(中略)
君の核となる個性は、無だ。空っぽだ。君には君としての顔がない。のっぺらぼうだからこそ、どのような仮面でも被ることが出来たというわけだ

〇桜霜学園
桜霜学園の生徒である葛原紗月、大久保葦歌、川原崎加賀美、山口昌美等が芸術作品のように殺される。

犯人は、桜霜学園の学生 王陵璃華子。父である画家の王陵牢一が創作意欲を失った事で、自分が死体を使った創作を試みる事になる。

公安は、高犯罪係数の人間が収容される施設にいる芸術家 足利紘一に犯罪現場を見せ、それが王陵牢一の作品に近い事を知り、桜霜学園に在籍している王陵牢一の関係者を探る。

その過程から、独自性が無いと判断され、王陵璃華子は槙島聖護に始末される。

上巻P187:
美しい花もいずれは枯れて散る

上巻P207~P208:
私は父を尊敬していた。芸術家としての義務を自覚して、啓蒙としての創作姿勢にこだわり続けたあの人は、本当に素晴らしい絵描きだったと、今でも思っているわ(中略)だからね、その務めを途中で放棄してしまったことが許せないの

上巻P211:
彼が理想とした人の心の健やかなる形は実現した。芸術の形も一気に変貌した。美も数値化されシビュラシステムの適正判定を受ける時代がやってきた。その結果として自らの使命が完了し、その人生が無価値なものになった



〇地下でのデス・ゲーム
人間狩が趣味の泉宮寺豊久(帝都ネットワーク建設 会長、110歳、全身をサイボーグ化)が、執行官と戦いたがる。

監視官 常守朱の友人 船原ゆきが拉致され誘い出される形で、執行官 咬噛慎也と泉宮寺豊久が地下で戦う。泉宮寺豊久を殺す事に成功するが、船原ゆきは槙島聖護に殺される。槙島聖護は、犯罪係数が低いまま殺人を行う事が出来る特異体質であり、システム的に殺す事が出来ず取り逃がす。

上巻P277:
狩りの獲物が手強いほどに瑞々しい若さが手に入る

上巻P340:
僕は人の魂の輝きが見たい。それが本当に尊いものだと確かめたい。だが己の意思を問うこともせず、ただシビュラの神託のままに生きる人間たちに、はたして価値はあるんだろうか?

上巻P343~P344:
ドミネーターの利点は、たとえ人を殺してても、その責任を人間でなく「システム」が背負ってくれること。ドミネーターの殺しは、社会全体で殺すのと同義。猟銃で殺したら、それは―。自分で殺したことになってしまう

〇ヘルメット配布事件
周囲の人間の犯罪係数をコピーする事で、自らの犯罪係数を誤魔化す事が出来るヘルメット(2800個)が槙島聖護によって不満を持った人間達に配布される。

槙島聖護は、ヘルメットを被った人々が犯罪を実行する様をインターネットで拡散し、東京を混乱に陥れた上で厚生省本部ノナタワー地下にあるシビュラシステム本体を確認しに行く。

槙島聖護は公安によって拘束されるが、輸送中に逃げ出す。

混乱中に逃げ出した執行官 神月凌吾と監視官 青柳璃彩の話が良く分からなかった。

下巻P82:
シビュラシステムの実用化によって、誰かを疑ったり用心したりする心構えは必要なくなった。問題のある人間はトラブルを起こすより以前に隔離される(中略)サイマティックスキャンを欺く方法があると知れ渡ったら、パニックは避けられん

下巻P160~P161:
『正義』は論議の種になるが、力は非常にはっきりしている。そのため、人は正義に力を与えることができなかった
(中略)
俺は『誰かがパスカルを引用したら用心すべきだとかなり前に学んでいる』
(中略)
「そうくると思ってたよ。オルテガだな」槙島は笑う。「もしも君がパスカルを引用したら、やっぱり私も同じ言葉を返しただろう」

下巻P200:
『世界の関節』を外している気分だ







〇バイオテロ阻止
槙島聖護が食糧自給の要である遺伝子組み換え麦(ハイバーオーツ、食料の99%の原料)を壊滅させると予想し、北陸の穀倉地帯に行く。槙島聖護が、ハイパーオーツの創始者 管原宣昭を拷問した事で予想は確定する。

闘いの末、槙島聖護は死亡し、咬噛慎也は逃亡する。

下巻P251:
自分のサイコ=パスを自在にコントロールできる体質(中略)彼が覚えたのは……恐らく、疎外感です。この社会で、シビュラシステムの目に映らないということは、ある意味、人間としてカウントされていないのと同じでは

下巻P274:
我々は、かつて個別の人格と肉体を備えていた頃は、いずれもシビュラシステムの管理を逸脱した免罪体質者でした
(中略)
悪人の脳を掻き集めた怪物が、この世界を仕切っていたっていうの?
(中略)
善や悪といった相対的な価値観を排斥することにより、絶対的なシステムが確立されるのです

下巻P283:
僕はね、人は自らの意思に基づいて行動したときのみ価値を持つと思っている。だから様々な人間に秘めたる意思を問い質し、その行いを観察してきた

下巻P321~P322:
貴様は特別な人間なんかじゃない。ただ世の中から無視されてきただけのゴミクズだ
(中略)
他者とのつながりが自我の基盤だった時代など、とうの昔に終わっている。誰もがシステムに見守られ、システムの規範に沿って生きる世界には、人の輪なんて必要ない。みんな、小さな独房の中で自分だけの安らぎに飼い慣らされているだけだ

下巻P342~P343:
あなたはシビュラシステムに対し、完全に相反する感情的反感と理論的評価を抱いており、今なおその葛藤は継続している

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今日が終わる

会社の同僚達が慌ただしい。

自分まで渦の中に巻き込まれていくようだ。

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図説 世界史を変えた50の動物

読んだ本の感想。

エリック・シャリーン著。2012年10月10日 第1刷。




世界中に生息する蚊は3500種類ほどで、蚊は紀元前4億年ほどに誕生した。蚊は伝染病を媒介し、1900年には蚊が媒介したマラリアで約300万人が死亡した。
17世紀初頭、南米リマに滞在したイエズス会師が、現地人がキナノキの樹皮でマラリアを治している事を知り、1820年にはキナノキからキニーネ(マラリア予防薬)が作られた。

ミツバチ
欧州では中世に中近東から精製糖が齎されるまで、蜂蜜が唯一の甘味だった。他に蝋燭の原料となる蜜蝋。養蜂で、巣を破壊する必要の無い巣箱はロレンゾ・ラングストス(1810年~1895年)が発明した。

ミンククジラ
大規模な商業捕鯨は、17世紀初頭の北欧にて始まった。19世紀初頭に石油製品によって代替されるまで鯨油はランプ用オイルの原料だった。

アメリカヤギュウ
19世紀に欧州からの植民者によって大量虐殺される。

アクキガイ
フェニキアの都市テュロスで作られたティリアンパープルという染料の材料。紫は高貴な色とされ、ビザンティン皇帝は「紫の生まれ」と称された。

カイコ
伝説では蚕の飼育方法は、黄帝の妻、嫘祖(紀元前27世紀頃)が考案したとされる。考古学上の資料からは、紀元前4000年まで遡る事が可能で、染色は紀元前3000年頃には始まっていたらしい。
西欧には紀元前2000年頃に持ち込まれ、養蚕の技術が3世紀にインド、4世紀に日本、6世紀に中東に伝播した。欧州には12世紀~13世紀の十字軍を通して伝わったとする。

ウシ
家畜化は、紀元前6000年頃~紀元前4000年頃とされる。多くの古代文明で神聖視された。

ラクダ
多くの哺乳類では、脂肪が体中に分配され、寒さに対する断熱材となるが、ラクダは体熱を発散する妨げとなる脂肪を背中に集中させた。赤血球は楕円形で水分不足の濃い血液中でも流れる事が可能で、人間は水分の12%を失うと死ぬが、ラクダは40%を失っても死なない。
ラクダの家畜化は紀元前3000年頃とされ、オーストラリアの砂漠に19世紀から導入されたラクダが野生化し、15万頭以上が生息するとされる。

オオカミ
狼は人間が初めて家畜化した動物だが、家畜を襲うとして乱獲され絶滅寸前になっている。

イヌ
家畜化は紀元前2万年~紀元前1万年頃とされる。選択繁殖の結果、多様な外観となる。

ヤギ
紀元前8000年頃にトルコ東南部(アナトリア)で家畜化される。世界のミルク生産量の2%を占め、チーズ加工に向いている。ユダヤ教では、ヨーム・キップルーという贖罪の日に二頭の山羊が選ばれ、一頭は生贄に、一頭は贖罪の山羊として荒野に放たれて共同体の罪を背負った。

ビーバー
ビーバー香として、尾の近くの分泌物(カスター)が珍重された。頭痛、発熱、ヒステリー発作治療にも使用され、米国食品医薬品局では天然香料に分類している。

ニシン
北欧のハンザ同盟の経済力の基盤。17世紀にハンザ同盟が衰退したのは、バルト海の鰊減少が理由の一つとされる。

ハト
紀元前8000年~紀元前3000年頃の近東で家畜化される。帰巣本能が1000年頃までに発見され、エジプトやペルシア伝書鳩として利用された。

コイ
飼育は東西で別々に始まり、5世紀には修道院が鯉の養殖を広め、同じ頃に中国から日本へ鯉が輸出された。2002年には養殖されている淡水魚の14%を鯉が占めている。

カイガラムシ
古代メキシコやペルーでは、コチニールカイガラムシを染料の材料とした。19世紀初頭までコチニールはメキシコの専売品だった。1ポンド(454g)を作るには約7万匹が必要で、19世紀に化学合成染料が登場するまで赤い色素で優位を占めた。

ショウジョウバエ
ゲノムに人間の病気の原因となる遺伝子の75%が存在するため、病気を研究する資料となる。一週間で卵から成虫になるため研究に便利。

ロバ
アフリカノロバの原産地は、乾燥地帯だったソマリア、エリトリア、エチオピアの辺りとされる。紀元前4000年頃にエジプトで家畜化され、使役動物だった。

ウマ
軍馬として中央アジアの遊牧民を強大化させた。北欧では7世紀に、馬に鋤を引かせる耕作方が導入され、硬い粘土質の畑の収穫量が増加した。

ハヤブサ
南極大陸を除く全ての大陸に生息。殺虫剤の影響で数を減らし、1960年代~1970年代の環境保護運動の切っ掛けの一つとなる。

ネコ
エジプトでは、ライオンの頭部を持つバステトという女神がいた。その神殿が発掘された時、30万体以上の猫のミイラが埋葬されている事が発見された。

ニシマダラ
ジョン・カボット(1540年頃~1599年頃)がカナダのニューファンドランド島とラブラドル半島で見つけたタラの漁場は英国やフランスの対立の原因となった。18世紀におけるタラの価値は高く、「英国の金」と呼ばれた。

ニワトリ
紀元前8000年頃に東南アジアで家畜化される。紀元前7世紀頃には古代ギリシアに到達、南米には紀元前1300年頃にポリネシア航海民によって運ばれ、1350年頃の鳩骨の遺骨がチリのエル・アレナル遺跡で発見されている。

ダーウィンフィンチ
進化論発見の契機となった鳥。

ハクトウワシ
米国やローマ帝国で紋章に使用される。ローマでは他の動物も記章として使用していたが、紀元前二世紀頃には白頭鷲だけが残った。

ヒル
古代ギリシアやローマでは、肉体は血液、黒胆汁、黄胆汁、粘液によって生命を吹き込まれるとされ、蛭によって体液のバランスを保つ事が出来ると信じられた。
1980年代の医療では、血液の凝固を防ぐために、蛭の唾液に含まれる抗凝固剤ヒルジンが使用されている(合成ヒルジンが登場するまで)。

イグアノドン
科学的に検証された二番目の恐竜。最初に調査されたのは、1676年に英国で発見されたメガロサウルスで、聖書に出る巨人族の足の骨とされた。1822年に発見されたイグアノドンの歯は、進化論と結び付いて世界観を変えた。

ラマ
標高の高い土地に適応した家畜。ラクダに似ているが、寒さに耐えるために体中に脂肪が配分されている。アンデス文明におけるラマは肉や乳、毛の供給源だったが、国家の規模が大きくなるに連れて荷役用、生贄用の動物となっていった。

ゾウ
太古には戦象として活用された。43年にブリテン島に侵攻したローマ軍は、戦象一頭に驚いた敵軍を壊滅させたという。欧州における戦象は1世紀には使用されなくなるが、東南アジアでは12世紀にアンコールワットを造ったクメール人や、その後継国家ビルマ、シャムが戦象を大量に使用した。

ミミズ
糞には窒素、カリ、リン酸が含まれ、土壌を肥やす効果がある。

ミドリゲンセイ
催淫剤として使用される甲虫。マルキ・ド・サド(1740年~1814年)が使用したとされる。

シチメンチョウ
家畜化を示す資料は、紀元初期のマヤ遺跡から見つかる。16世紀にはクリスマスのメニューに登場し、1621年から始まる感謝祭においても主役を務める。

コブラ
ヒンドゥー教ではナーガというコブラを神格化した神が存在する。

ウサギ
スペインの国名は、紀元前2000年頃に栄えたフェニキア人がスペイン南部のウサギをハイラックス(イワダヌキ)と見間違えて、i-shaphanim(ハイラックスの国)と名付けた事に始まるという。
兎の繁殖力は高く、3歳~4歳で交尾可能になり、1年間に7回、1度に2~12匹を出産する。オーストラリアで増えすぎたために、粘液腫症のウィルスを散布し、個体数を6億から1億に減らしたが、原罪では免疫を持つ兎が増加している。

ヒツジ
白い毛を大量に生む動物。現在の羊の祖であるムフロンの家畜化は、紀元前8500年頃のイラクかイランとされ、紀元前6000年頃にはバルカン半島に到達し、青銅器時代(紀元前3300年~紀元前1200年)に欧州中に広まったとする。12世紀以降に盛んになった羊毛生産の中心地である英国とスペイン、製品製造の中心地である北海沿岸低地帯とイタリア北部の交易網は資本主義経済の予兆である。

チンパンジー
コンゴ民主共和国のルバ族の言語では、猿を「真似する人」と訳す。西欧の記録には16世紀のポルトガル人船乗りの日誌に登場し、17世紀に欧州に連れてこられた。人間と近い種の発見は、人間が特別でないという世界観形成に一役買った?

ライオン
娯楽や宗教的儀式のために狩られてきた。

シラミ
発疹チフスと塹壕熱を媒介し、第一次世界大戦中は、英国軍の1/3、ドイツ・オーストリア軍の1/5が塹壕熱に罹患したとされる。20世紀半ばまでは戦争の度に発疹チフスが流行した事から、軍隊は理想的な虱の生息場らしい。
三十年戦争(1618年~1648年)では800万人のドイツ人兵士が発疹チフス等で死亡し、第一次世界大戦では2000万人~3000万人が罹患し、戦後は300万人が死亡した。

アザラシ
北米に移住した人々の蛋白源。現在では毛皮を目的とする海豹猟への反対運動がある。

シンジュガイ
蛋白源として重要で、セルギウス・オラタ(紀元前一世紀後半頃)は、カキの養殖場をローマ南部のルクリーノ湖に作った。牡蠣は邪魔な存在を真珠袋で包んで隔離し、その上に炭酸カルシウムを堆積させる。数千年もの間、天然真珠は宝石として扱われた。

コウモリ
ジョン・ポリドリ(1795年~1821年)の『吸血鬼』(1819年)やブラム・ストーカー(1847年~1912年)の『ドラキュラ』(1897年)等の多くの創作の元となる。

トナカイ
完全には家畜化されていないが、北欧のサーメ民族等が移動用や食肉用に活用する。アティスとナヴィスという兄弟の物語が伝わり、月の神マノの娘と結婚したアティスが兄ナビスとの関係を悪化させ、終には殺してしまい、太古に地中に埋められたトナカイの心臓が殺人によって動き始め、世界が震えてアティスが尽きに吹き飛ばされたとしている。

ドードー
1507年にポルトガル人がモーリシャス島に訪れた後、100年以内に絶滅した。

ネズミ
アジアの一部では伝統料理に使用され、スペインでもパエーリャ・ヴァレンシアーナの材料となる。人間と約99%の遺伝子が共通しているのでゲノム研究のモデル生物となる。

タマオシコガネ
古代エジプトで神聖視された。動物の糞を土に埋める事で肥沃度を保つ。オーストラリアやニュージーランドは数種類のフンコロガシを計画的に導入している。

サバクバッタ
定期的に大発生する。アフリカ西部のモーリタニアからサハラ砂漠、アフリカ東部、アラビア半島からインド北部に生息。飢えると成長が早まり、1200㎢の範囲を1平方マイル(約2.5㎢)あたり1億2000万匹~2億4000万匹の密度で移動する。

ジュウケツキュウチュウ(住血吸虫)
住血吸虫症は、年間20万人の死者を出す伝染病。原因が特定されたのは19世紀半ばで、古代エジプト人の主な死因だったらしい。現代の患者数は2億700万人程度で、その半数はアフリカの住人。感染の結果、学習障害になり易い。

ブタ
猪は七カ所(中国、トルコ東部、中央欧州、イタリア、インド北部、東南アジア、東南アジアの島々)の異なる地域で家畜化されたとされる。

ノミ
以下の三代疫病の原因となる。

①ユスティニアヌスの疫病
6世紀~8世紀まで続く。ビザンティン皇帝ユスティニアヌス1世(483年~565年)にちなんだ。病気を媒介する蚤のついた鼠がエジプトからコンスタンティノープルに運ばれたためとされ、東地中海の人口の25%が541年の最初の流行で死亡したとされる。

②黒死病
14世紀に欧州で流行。1346年に黒海に面したジェノヴァの貿易港カッファを包囲したモンゴル軍が、伝染病に感染した死体を町に投げ込み、ジェノヴァ商人が逃げ出して欧州に避難したため、1347年にコンスタンティノープル、1348年に欧州南部で感染が広まったとされる。1665年~1666年にはロンドンを最後の大流行が襲っている。

③腺ペスト
1855年~1959年に中国とインドで数百万人を死亡させた。

ヒト
過去二万年に渡って、様々な動物を利用してきた。

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異世界君主生活

読んだ本の感想。

須崎正太郎著。2016年7月27日 第1刷発行。



以下は、「ライトノベル作家 須崎正太郎のブログ」へのリンク。

http://blog.livedoor.jp/suzaki_syoutarou/

異世界と現実世界を行き来出来るようになった主人公が、異世界に様々な物を持ち込んで栄える話。

<導入した物>
・蚊取り線香
・即席麵(アブラナの種から油を自作する)
・日本刀
・紙幣(和紙を持ち込んで印刷する)

異世界物作品は、主人公を賢く見せるために、周囲の人間が弱くて愚かな世界に転生させると聞いた事があるが、そういう話だと思った。

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高校時代を思い出す理由

この数か月間、高校生だった時の事を思い出す事が多い。

それは現在の自分の状態が高校生の時と似ているからだと思う。

毎日、同じ場所に、似たような服装で通い、同じ服装をした人々と単調な作業を繰り返す。職場には派閥があって、一緒に昼食を食べに行くグループ分けで揉めたりする。

平均年齢50歳くらいの高校生達。

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<世界史>の哲学 中世篇

読んだ本の感想。

大澤真幸著。2011年9月20日 第一刷発行。



第1章 フィリオクエをめぐる対立
1 消える死体/残る死体
ソクラテスの最期の言葉は、「アスクレピオスに雄鶏を」という依頼。ソクラテスの死体が雄鶏の死体に置き換わる。ホモ・サケル = 動物的生に還元された人間の身体としてのソクラテス。それは病を治された借りへの返済として神に贈与される。

キリストの死体は磔にされた姿で衆目にされされ、やはり神に捧げられる。

ソクラテスの死体は消えるが、キリストの死体は残ってさらされる事を指向している。

2 二種類の資本主義?
ミシェル・アルベールは、資本主義には以下の二種類があるとした。

①アメリカ型資本主義
経済的価値以外に無関心。
②ライン川流域的資本主義
宗教的背景を持つ。

著者は、一つの資本主義の中に二重性があるとする。

3 西洋が始まったとき
西洋の中世を五世紀末からの約1000年間と見做す。キリスト教が生活の全領域に滲透した時代。西洋という文明的単位が、西ローマ帝国のあった場所で形成された。

4 西と東のキリスト教
西欧と東欧を分かつのは、カトリックとギリシア正教の違いである。

西欧の中世後期には、都市国家間のネットワークを中華にする資本主義的経済があり、東欧から穀物等を輸入し、都市製品を輸出していた。

<ギリシア正教とカトリックの違い>
教会建築の違い。ギリシア正教では、主祭壇がある内陣に直接入る事が出来ず、聖像壁の向こう側にあるが、カトリックでは外陣の端から内陣まで見通す事が出来る。

ギリシア正教での神は不可視の抽象性を保つが、カトリックでは可視的具象性を帯びる。西欧では聖なる権威(教皇)と俗なる権力(皇帝)が分離したのと逆に、ピザンツ帝国では宗教的権威と世俗の権力が一元的である。

5 「フィリオクエ」の有無
「父と子から生じた聖霊」として、「と子」をラテン語でフィリオクエと表す。

ギリシア正教では聖霊が専ら父から生じると考え、三位一体では父を優位にする。カトリックでは父と子(イエス・キリスト)が同格になる。子は地上に受肉した神である。

これは父の権力のもとに一元化したピザンツ王国と、父(抽象的権威)と子(具体的権力)が拮抗した西欧と対応しているのかもしれない。

第2章 信仰に内に孕まれる懐疑
1 大学の言説
ジャック・ラカンは、言説(語り)を以下の四種類に分類した。

①主人の言説:行為遂行文
②大学の言説:事実確認文
③ヒステリーの言説
④精神分析家の言説

認知的言説 = 事実確認文全体を「大学」と名付けた事にラカンの西欧的特徴がある。近代以前に大学があったのは西欧(ラテン語文化圏)だけで、11世紀末~13世紀前半に多くの大学が設立された。

<大学>
教師達の同業者組合。

①開放性
普遍的教育方法に基づき、市民一般を教育する。都市の自由民に必須とされた文法、論理学、弁論術、算術、幾何、天文、音楽を教える
②世俗性
聖書の記述に盲従せず、官僚を養成する機関でもない

中世欧州において、知(学問)が信(宗教)から独立した事を示すとする。様々な文化で世界の説明は宗教的教義の形式を採用するが、大学は教会に付属しておらず、主人(神)の言説から大学の言説が独立した。離反は啓蒙主義の時代に完結する。

2 神の存在証明
神の存在証明は、中世の哲学者の中心的主題である。11世紀のカンタベリーのアンセルムスに始まり、トマス・アクィナスが証明方法を5つ提示している。
証明しようとする行為が神を棄損するとしている。信仰を批判的に検討する合理性の始まり。

3 普遍論争
神の存在証明が行われた理由は、神の存在への不信を表明する唯名論者との論争(普遍論争)がある。

夏目漱石は人間である:
「人間」とは一般的、普遍的集合としての人間を意味する。

人間が夏目漱石を包括するものとすると、夏目漱石と人間は相互に外在している事になり、イコールでなくなる。人間が夏目漱石に内在する事にすると、人間は夏目漱石の一要素となり、夏目漱石は人間と非人間の合成物になってしまう。

アベラールの唯名論は、このように言葉が意味するところの普遍者が実在するかについて、言葉は不関与とする。言葉で表現出来た者が実在するかは分からない(神の存在は否定していない)。

⇒キリスト教における自己否定要素の発現

4 存在の類比/一義性
以下は中世哲学の思索家。

〇トマス・アクィナス
神の存在を証明しようとした。人間の経験によって神を知りつつも、被造物の世界から超越した存在として神を扱わなくてはならない。「存在の類比」として、神は実在物の隠喩として語る事が出来るとした。

→神は普遍的存在

〇ドゥンス・スコトゥス
神と実在物の同義性を事象のレベルでなく、概念のレベルに見い出して、差異を確保しつつも両者に共通するものを語る「存在の一義性」を主張。概念として考えた時に、神も実在物も同義とする。

→神は単一的個体(内的固有の様態)

**************

中世において、神と現実世界の断絶性と連続性を両立させる事は困難だった。カトリックにおいては、聖霊は父なる神と子なるキリストの両方から発しており、神であるキリストは人間でもあるために十字架の上で死んでいく。

第3章 二本の剣
1 統治という技術
西洋キリスト教社会では、聖なる権威と俗なる権力の二元性がある。

<ミシェル・フーコー>
権力関係の様態をいかに区分。

①法システム
②規律メカニズム(法制度の外側で作用)
③人間達の統治

主権と統治は18世紀に分離したとする。

2 足萎えの王
円卓の騎士の物語群の一つ。足萎えの王の傷は、円卓の騎士ガラハッドが見つけた槍の先に残っていた血を塗り付けた事で治癒する。この寓話は、何もしない王の統治活動を象徴しているとする。王の権威はキリストの血によって、決定的に付与されている。

3 キリストの傷口-引力の斥力
西洋中世は、聖遺物等の「死体」に魅了されたように思え、1320年の作とされる「アルマ・クリスティ」の図象では、キリストの傷の部分が信者達によって集中的に触られた事によって剥落しているという。キリストの傷口には、信者の身体を引き寄せる力がある(統合)。

13世紀~14世紀には、脇腹の傷口から乙女を出産する図象が広く流布したという。生まれた乙女はエクレジア(教会の寓意像)であり、キリストは傷口から教会を出産している(分離)。

中世末期からルネサンスにかけて流布した執り成しの図象では、キリストとマリアが脇腹の傷口と乳房を指し示し、等価性を表す事で分離した体の再結合を予定している?

4 存在論的パラダイムとオイコノミア的パラダイム
ジョルジョ・アガンベンの『王国と栄光』では、中世キリスト教神学をいかに区別する。

①存在論的パラダイム:霊的権威に対応、神の存在を問う
②オイコノミア的パラダイム:世俗的権力に対応、神の活動を問う

古代ギリシアにおいては、オイコス(家父長的関係を示す組織)とポリス(都市国家)は区別されており、政治はオイコスを切り離す事で成立していた。

神の存在を把握しても、神が被造物にどのように関係するのかは説明出来ない。オイコノミア的パラダイムは、三位一体の子という基体を中心に据えており、子なるキリストが受肉して救済の実践に関与する。

5 一般摂理と種別摂理
三位一体の解釈では、神は各個人を配慮せずに普遍的法則を決定する(一般摂理)。個々の人間への恩寵は代務者が行う。代務者の原型はイエス・キリストである(種別摂理)。

イエス・キリストによる律法の否定では、律法を否定した上で、律法をキリスト自身の意志の表現として再肯定する。キリストは否定された律法を再帰属させる具体的人間である。

キリスト教において権力が二重化するのは、超越的神に帰属する規範があり、それを具体的命令に転換する指導者が要請されるから?

第4章 謝肉祭と四旬節の喧嘩
1 謝肉祭と四旬祭りの喧嘩
J・ル=ゴフは、西洋中世の人間生活は、四旬節(復活祭前の四六日間、断食と節制が要求される)と謝肉祭(四旬節前の宴、派手な肉食が許される)の間を揺れ動いたとする。

四旬節的精神:法や規範に従う精神
謝肉祭的精神:快楽を強調する精神

謝肉祭は12世紀に確立し、これはグレゴリウス改革(四旬節的精神)が完成した時期である。キリスト教の二重性が垣間見える。

2 正当な性交
男女の合意に基づくキリスト教的結婚(一夫一妻制、解消不可能等)が定着するのは12世紀である。それまでの一夫多妻制の婚姻に代わって制度化されたのは、1215年のラテラノ公会議においてで、性欲の過剰発露を抑制するために導入された。

中世には性に関する抑圧的規定が多い。身体に対しても否定的で、古代ローマで一般的だった裸体を提示する共同浴場やスポーツ競技場が消滅した。

3 原罪観念の変容と圧倒的矛盾
中世キリスト教は、原罪を基本的に性的罪と見做した。キリストが肯定的に指示したはずの愛が最悪の罪となる矛盾。

4 抑圧された体液の涙としての回帰
精液や血液への嫌悪。涙だけは恩寵の印とされた。涙は、抑圧された血液や精液の回帰かもしれない。

第5章 罪から愛へ
1 笑いの両義性
中世において、笑いは悪魔の側に属していた(六世紀の『師の戒律』等)。しかし、12世紀頃にアルベルトゥス・マグヌスは、地上の笑いは天上の幸福の予兆とした。弟子であるトマス・アクィナスも笑いに肯定的な神学上の地位を与えた。微笑みは肯定され、笑いが抑圧された中世文化の中でも、「修道士の戯れ言」という笑い話の習慣や、「ギャブ」という法螺話の伝統があった。

2 法の存在=不在
ユダヤ教とキリスト教の関係は、法と愛の関係であり、イエス・キリストは法を愛に置き換えた。神ヤハウェは世界を創造した後に、無為の内に君臨する。神が残した法は人間による恣意的解釈に開かれる。

3 愛と法の合致?
法の精神は愛の普遍化(全ての人間を対象とする)であり、愛による法の成就とは、全ての人間が愛される事である。より強い嫌悪を催す者を愛する事が倫理的に価値が高いと見做される。

4 罪と法の内在的関係
法が存在する前提として罪が必要になる。罪を犯す可能性が担保されなければ、拘束力のある法は必要無い。暴力は法治の対極にあるが、法は暴力によって維持される(W・ベンヤミンの『暴力批判論』)。罪は外観上は法と対立しているが、法の内在的構成素である。

5 罪=愛
罪(姦通)と愛(性的交わり)は内容だけを見れば同一。形式的構造が異なる。愛と法を統一しようと思えば、どちらかを否定しなくてはならない。法に従属する人間は、罪を犯し得る可能性を生きているのであり、法の支配から分離されれば、生は愛になる。

法は超越的神に帰せられて、法の妥当性を保証する神との関係を、人間であるイエス・キリストとの特異的関係に置き換えた時に、罪 = 生は法の領域から引き離される。

第6章 聖霊と都市共同体
1 三かつ一
イエスが隣人について説明した「善きサマリア人」の喩え話にあるサマリア人は、アッシリアによってイスラエル王国が滅ぼされた跡地に入植した異民族でユダヤ教に改宗した人々。ユダヤ主流派からは蔑視されていて、隣人とは縁遠い者の事である。隣人愛は普遍的で排除される他者はいない。その普遍的共同体を聖霊と呼ぶ。

このように、聖書には父、子、聖霊が登場するが、一つの神でありながら、三つの契機が独立性を保つ事になる。

2 謎の核心-子なるキリスト
物象化論の枠組みであれば、神と聖霊の関係を説明出来る。聖霊は想像の共同体であり、神として現れる。

しかし、子なるキリストが謎であり、神のもとにある普遍的共同体としての聖霊が実現するために、偶発的に現れた個人を媒介にする事に疑問がある。

3 中世都市
11世紀後半の欧州では都市化が進んだ。帝国としての一元的権威は芹何時せず、聖なる権威と封建的小領主達が併存していた。都市で生まれた資本主義が、近代経済システム(世界 = 経済)の原型となる。

4 死体が結ぶ都市
中世都市の中心には、聖人の遺体や遺物があった。宗教団体が都市の内的凝集力の中心となる。キリストの遺体の等価的代理物として、諸都市に散種される遺物を、三位一体の概念で解釈すると、子なるキリストが普遍性を指向する共同体の紐帯として機能している。

5 托鉢修道士と商人
13世紀初頭のアッシジのフランチェスコに代表されるように、田舎で暮らす宗教家だった修道士が、寄付によって生きる托鉢修道士として都市に出ていく。彼等は都市の経済的諸活動を肯定的に評価し、利潤を承認した。生けるキリストの身体の再現として、私的所有を許容する修道士達。

第7章 <死の舞踏>を誘発する個体
1 死の舞踏
中世後期に西欧で流布した、生者達が死者に連れられて墓所に向かう様子を再現した絵図。死体の有無を言わせぬ力が表現されている。守護聖人のプロセッションは公式の死の舞踏だった。

2 清貧に生きる者の富
持っている物以上に与える事は、「無」を与える事になり困難。自らを善人と思う満足が生じ、自己放棄が目指した他者が無視される。貧困である事により、自らの善を確信する矛盾。確信によって他者からの寄付を当然の事とする修道士の逆説。

3 『悪童日記』
アゴタ・クリストフの三部作。双子の悪は、隣人愛の原理に従っただけで目的化していない。他者が必要とする物を与える単純な行為を行う。彼等は一人称複数(僕等)と自称するが、別々に行動しないため、一人の人間が幻覚を見ているだけかもしれない。

4 個体の本源的不確定性
ドゥンス・スコトゥスの個体をめぐる思索について。実在論は、確定されていないものを事実的にも論理的にも原初的で優先的と見做す。個体は本来的に非確定であり、規定し尽す事が出来ずに普遍性を分有する。

対してオッカム流の唯名論では、個体は直接与件であり、一義的にそれがなんであるかを確定出来る。世界は確定された個体を構成要素として描かれる。

5 至高の個体としてのキリスト
イエス・キリストは個体であるが、同時に普遍的である。スコトゥスの論理では、存在は被造物と神といった異なるレベルを横断する超越概念となる。神であり人間であるキリストは、個体の不確定性の極大値である。

『悪童日記』の双子は、同じように一人なのか二人なのか確定出来ない双子という設定になって言うR。

第8章 聖餐のカニバリズム
1 死なない死体
18世紀中頃から「早過ぎる埋葬」への恐怖が、欧州や北米で広まった。死に関する感性の変化。中世の聖人の遺体は、死の兆候を見せな事で効果を発揮した。

2 「目」から「手」を経て「口」へ
エマニュアル・レヴィナスの思想:
現象学は、人に世界がどのように見えるかを記述する事から始まる(認識の水準) = 目。さらに実践の水準として、善悪の評価が問題になる = 手。
ハイデガーは、人間は最初から実践的関心をもって世界の中に存在するとして、目よりも前に手を規準とした。石は「ただの石」として現れる前に、胡桃を割るのに必要な道具として現前する。

道具としての手は、常に何かのために存在する。目的は生きる事であり、食べる事である。従って、存在者は最終的には口に対してある。

その前提で考えると、存在者は道具である前に「糧」である。林檎は生きるための道具ではなく、林檎を食べる事が生きる事である。

3 享受と可傷性
レヴィナスは、糧となるものを「元素」と呼ぶ。水を飲み、空気を吸い、火で暖まり、大地の上を歩く。世界は糧としての元素の総体からなる。

享受とは消費する事であり、世界と同化する事である。世界は自分に外在するが、自らの相関でしか意味を持たない。さらに享受する事は傷つく事でもあり、食する事は消化器官にとっての負担になる。

4 愛撫
私が可傷的であるという事は、私の外部に私を傷つける能動的主体が存在する事である。私が他者を愛撫する時に、触る事で触れ返されている。私が触れようとしても、それが私の能動的作用によるものであるのなら、愛撫は不在として去ったものとしてしか求めようがない。

5 カニバリズム-食の原型
食物は内化される対象であると同時に、味わっている「私」を対象化する能動的主体性を宿す。享受される食物は、生きているよううに感受される。
聖贄において人々はキリストの身体を断片化して食す。細分化されたキリストの血肉は生きており、カニバリズムの擬態となっている。

第9章 教会を出産する傷口
1 「キリスト・イエスに結ばれている限り」
「我々は皆、同じ人間である」という思想には、イエス・キリストとの結び付きという限定がある。聖霊が普遍的共同性に至るには、父なる神だけでは不十分なのである。中世の都市共同体は、キリストの死体に対する等価的代理物を核として必要とした。

2 死者の現前-日本戦後史の例から
1960年の左翼運動家 樺美智子の死や、1967年の中核派 山崎博昭の死は殉死として左翼活動を行っている者達を団結させた。

「ニューヨーク炭鉱の悲劇(村上春樹:1981年)」では、1960年代末期以来の左翼運動家の死者への思いが込められているとする(加藤典洋)。第二の話で女性が殺人を犯したという五年前は、浅間山荘事件が発生した1972年?物語は、死者が生者を思索に駆り立てる様を記述する。

死者としてのキリストも、聖霊を組織するための死者のイメージを喚起する手段として使用されたのかもしれない。

3 ペルソナという概念
三位一体の教説における「位格」はギリシア語の「ヒュポスタシス」であり、ラテン語では「ペルソナ」と訳された(人格の語源)。キリストは人性と神性の二つの本性を持つ一つの位格とされる。

ペルソナという個体的存在があり、それが本性を担う(坂口ふみ)。個体は定義する事が出来ない = 個体を指示する固有名は確定記述に置き換える事が出来ない。

個体の不確定性を極限まで追求すると、単一性さえも不確定になり、個体そのものが普遍化する。そのようにしてキリストは単一と普遍を架橋する。

4 教会を出産するキリストの傷口
求心化、遠心化が人間の本質であり相応しているとすると、私の存在と他者の存在は同値であり、私 = 他者となる。キリストに喩えると、人々はキリストに愛着し、自分自身が他者である感覚 = 隣人愛に至る。自己と他者の相互模倣。

5 『綴り字のシーズン』
父なる神は普遍性として君臨する。普遍性の未了性を開示し、普遍化を進める契機として子なるキリストがある。「綴り字のシーズン(マイラ・ゴールドバーグ)」では、ナウマン家のソールが末娘のイライザがスペリング・コンテストで優勝した事を神的能力の発露と考える。ユダヤ教の神においては言葉と事物は一体である。

ナウマン家を聖霊の共同体とすると、イライザという神が君臨し、父であるソールが祭司のように仕える。最後にイライザが全国大会で意図的にスペルを間違える事で、父の欲望からの自由を獲得する。

イライザは神である自分を否定し、イライザになる事で聖霊(家族)の連帯が齎される。

第10章 空虚な王座に向かう宮廷愛的情熱
1 玉座の準備
中世欧州で描かれた誰も座っていない玉座の表象。本来であれば神が座るべき場所に誰も座らない。著者の仮説として、イエス・キリストが復活した際に、墓が空っぽであった事と対応しているとする。

2 神の栄光化
キリストの死は聖霊としての復活であり、空虚な玉座は抽象化された神を玉座の位置に措定する操作である。それは栄光化の完成となる。

3 封建制とは何か
封建制では絶対的に優位となる者がいないまま権力が分散する。小領主や戦士が有力者に奉仕し、その報酬として封土を与えられる。契約は双務的で片方が契約義務を果たさなければ関係は破棄される。

封建制においては、支配者への人格的忠誠心と、自立する者の誇りが両立する。帝国(家産制)では、献身が自立者としての誇りを犠牲にして行われており、家産制的支配者は臣民の依存心に応じるために福利厚生に配慮せざるを得ない。

4 マゾヒズムとしての宮廷愛
騎士の貴婦人へのマゾヒズム的愛情。これは封建制的な主人と臣下の関係のモデルとなる。騎士が本当に愛しているのは、抽象化された観念としての女性であり、抽象的な女性を愛するために実在する女性を必要とする。

これは抽象的な神に到達するために、具体的なイエス・キリストを媒介にする事と似ている。

マゾヒズムにおいては、契約を犠牲者が創始し、主人に自らを痛めつける権利を付与する。それが契約によって構築されるのなら、忠誠心と自立心が両立する。

5 貴婦人という回り道
不可能を禁止した場合、可能であるのに禁止されているから出来ない事になる。宮廷愛は不可能の禁止であり、現実の貴婦人の彼方に禁止されているために到達出来ない超越的対象が想像される事になる。

封建制を同じものと考えると、人格的で親密な関係に基づくために小さな局域的共同体しか可能にならない。

第11章 利子という謎
1 利子という謎
利子を否定しつつも肯定した中世キリスト教の謎。

2 罪としての高利
『中世の高利貸』(ジャック・ル=ゴフ)では、利子が資本主義誕生と対応しているとする。12世紀を通じて欧州で貨幣経済が浸透すると高利貸への需要が出現する。利子は、与えた以上に受け取る不当な剰余とされた。

3 ウスラからインテレストへ
西洋で利子を正式に容認したのは、英国王ヘンリー八世による16世紀半ばの法令とされる。カトリック教会は19世紀まで認めていない。14世紀末頃には、正式な是認の前に容認されていた。正当な利子はウスラ(貪欲)でなく、インテレスト(中間期間)と呼ばれた。

4 疑似終末としての煉獄
利子が許容されたのは、時間の領域における煉獄の発明と関係するとされる。最後の審判は極端な二元論に基づいているが、煉獄は刑の執行猶予期間に入る場所である。小さな罪を犯した者は、猶予期間に煉獄で罪を償えば良い。

すると、罪深い高利貸には死後は煉獄という中間期間で罪を償う機会が訪れる事になる。同様に貸した金は、返すまでの中間期間を通じて浄化される。

地獄と煉獄の関係は、神とキリストの関係に似ているとする。

5 持っていないものを与える
愛とは持っていないものを与える事であるが、これは現在では存在しない金を要求する利子と似ている。

6 利子の発生
キリスト教における信者と愛の相互関係は、剰余 = 利子の発生を本来的に許容している?抽象的な実体としての神であれば信者に手を差し伸べないので剰余は発生しないが、人間として現前した神は清じゃに触れ返すために剰余が生じる。

第12章 「物自体」としての聖地
1 「新○○」という土地
欧州の人々が新大陸の植民地に付けた地名には、ニューヨーク等の「新」がつくものが多い。消滅した都市の後継者でなく、本来の都市も継続している。

2 十字軍
大航海時代は、中世欧州における巡礼や商人の移動の方向性を西へ転換した時に訪れている(関哲行)。巡礼の至高形態である十字軍は、聖人の遺体を目指してユートピアへの憧憬に基づいて行われた。ユートピアにおいては、想像する主体が、そこから排除される。

新天地を求める者には、楽園に所属しない外的な自分を、楽園に埋め込む願望があったとする。具体的な死体を目指した巡礼の旅が、具体的目標を解消して抽象的に外部へと開かれた時、大航海時代が始まった。

3 至るところに否定神学
神へ至る事を否定する事で逆説的に神に到達する(偽ディオニシオス文書、ディオニシオス・アレオパギテース)。語る事を否定する事で、神が語り得ない事を示す。

神を善であるとしても、神は善を超えているのだから、表現が比喩以上にはならない。神の真実には否定神学によってしか至り得ない。

4 中世解釈者革命
禁止や否定によって肯定的存在を確保する。ピエール・ルジャンドルの「中世解釈者革命」では、12世紀にユスティニアヌス法典によって教会法を整備した事を画期とする。

法の無効化に特徴があったキリスト教が、法の積極的措定に向かった。法の否定が、法の肯定に向かった?

5 「物自体」としての聖地
カントは、人間の認識は現象についてのみであり、物自体は認識の彼方にあるとした。人間は、それを異様に見たいと願う。見てはならないものは強烈な魅惑の対象となる。

十字架上のイエス・キリストは、その典型となる「物自体」である。

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眠くて頭が痛い

今からしばらく眠る。

変に忙しい一日だった。

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マルクスとハムレット

読んだ本の感想。

鈴木一策著。2014年4月30日 初版第1刷発行。



難しい本だった。

マルクスとハムレットには、ヘーラクレース(父性原理)とマーキュリー(母性原理)との間の揺らぎが見られるとする。

ハムレットは実在するか自らの願望を表すか分からない亡霊に悶え、マルクスは価格で表現し切れない商品の世界を、価格でしか表現出来ない事に悶えていたのかもしれない。


〇キドプロコ
無意識の取り違えという意味の演劇用語。ある物を掴んだつもりが、別の何かを掴まされる。マルクスは、商品を飼い慣らし難い「生皮」に喩えるが、これはシェイクスピアに由来する。『ヘンリー六世』では、ヨーク公がヘンリー六世の妻マーガレットの仮面を剥ごうとしつつも、それを生皮と表現してしまう。仮面の代りに生皮を掴まされ、それを相手のせいにしてしまう。

<ハムレット>
ハムレットは、父を殺した人間が叔父である事を確定していない。

①亡霊
元国王の亡霊は、30年前にノルウェーのフォーティンブラス王を決闘で殺害した時の甲冑姿で、中に誰が入っているか見えない。最初に学友ホレイシオが見た亡霊は甲冑姿だったにも関わらず、ホレイシオは見えないはずの銀混じりの髭の話をして、亡霊がホレイシオの想像の産物である事を示している。

→亡霊は、在るか無いか分からない

②対話
ハムレットが対話した父の亡霊は、弟に毒殺された真相を語っていない。生前の罪を自白し、弟クローディアスが「耳栓が詰まったワシの両耳に、ヘベノンのジュースを注いだ」と語るのみ。ジュースは噂の隠喩であり、噂を恐れる姿を示す。

③芝居
ハムレットが演出した芝居では、毒液を国王の両耳に注ごうとする役者を「あれはルシアーナス、王の甥だ」と注釈する事から、芝居の意味は国王の甥であるハムレットが、現国王クローディアスを毒殺し、母ガートルードとの近親相姦を犯す内容になる。クローディスの退出は怒りによるものであり、叔父の罪は確定していない。

ハムレットは、「在るのか無いのか分からない状態」に悶える王子。

同じようにマルクスは、資本や貨幣、商品の価値を計る尺度に悶えたとする。商品の価値尺度を人間労働(抽象的人間労働)としつつも、『資本論』ではそれ自体を価格で表示してしまっている。価格から分離したはずの価値尺度を、価格に依拠して論じる矛盾。

マルクスは、価値を『ハムレット』に登場する亡霊のように表現し、価値を「どこを、どう、掴んで良いか分からない対象」とまで言っている。これは、ハムレットの『ヘンリー4世』に登場するフォールスタッフのセリフ。

命がけの飛躍(マルクス):
商品を売り出すに先立って、価格や出荷量を決定する事。この場面では、抽象的人間労働を価格は無関係。

◉ヘーラクレース:
マルクスでは、ヘーラクレースが多く引用される。異界を征服し、分析的知性を持つ。産業革命は、母なる大地を捻じ伏せるヘーラクレース主義の本格化である。

◉マーキュリー:
『ハムレット』の三幕四場では、父王の姿をローマの神々に准えるが、その中に紋章官(王の伝令役)・マーキュリー(神々の使者)がある。ハムレットは父を侮辱しており、自分を逃亡するマーキュリーに喩えている?水銀には逃亡性がある(ユング)。

『ハムレット』一幕五場の亡霊との対話では、以下の言葉がある。

「この永遠の紋章は、生身の両耳・両穂にあってはならんのだ。聞け、聞け、ようく聞いてくれ。そなたがかつて父を本当に愛していたならば」

生身の両耳は、旧約聖書『創世記』四一章の「太った兄穂」、「やせ細った弟穂」という両国王であり、デンマークの紋章は元国王にも現国王にも相応しくなく、その屈折した息子の重いが投射されている。ハムレットは復讐に突き進まずに、オフィーリアへの恋心によって軌道をマーキュリーのように外れてしまう。

「そなたは忘却の川レーテの岸辺に安閑と根を張る太った雑草より愚鈍だということになろう(中略)わしは庭園で睡眠中に、蛇に刺された事になっておる」

『ハムレット』三幕四場で、ハムレットが叔父を「白黴の生えた麦の穂」に、父を弟穂によって「立ち枯れにされた健全な穂」に喩えており、これは旧約聖書『創世記』四一章のヨセフ物語で、エジプト王が見た夢を改作した比喩である。

その夢では、ナイル川の岸辺に根を張って太った兄穂を、やせ細った弟穂が飲み込む。だから、安閑と根を張る太った雑草は、兄穂 = 父だという事になる。

亡霊は、「獄舎の秘密を一言でも告げたなら…そなたの編まれ束ねられた巻き毛、発射装置はばらけ、その一本一本は、苛立つ山嵐の針のように、先の先まで立ってしまうであろう」と語っている。

だから、蛇に刺されたという亡霊の言葉は、蛇に変身したハムレットの巻き毛(山嵐の千本針)に刺されたという意味にもなる。デンマークの耳に噂をつたえるのは、発射装置としてのハムレットの巻き毛になる。

<アンリ4世>
アンリ4世(1553年~1610年)もマルクスで引用される。

「パリもミサに値する!」

アンリ4世は、ガリアのヘーラクレースを自称し、1593年にカトリックの儀式ミサに参列し、ユグノーからの改宗を偽装している。

シェイクスピアは、『恋の骨折り損(1595年上演?)』でアンリ4世のヘーラクレース主義を茶化している?さらに、『ハムレット』ではルターの創建した新教派のウィッテンブルク大学にハムレットを留学させ、ハムレットにプロテスタントのヘーラクレース主義を揶揄させている。

マルクスは、亜麻布と上着の価値関係を論じる部分でアンリ4世を引用しており、商品A(亜麻布、パリ)と商品B(上着、ミサ)は等値とする。マルクスは、商品の価値を価格に汚染されない抽象的人間労働で裏付けるため、亜麻布に自分の価値を独白ために、アンリ4世の言葉を引用した?

パリで表現された価値とは宗派に左右されない世界市民主義であり、同じように貨幣が国家を超えた世界貨幣に発展していく事を意味する?

本書の後半は、地産地消の紹介になっている。



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何かやりたい

日々の生活が単調なので、何かをしたいと思っている。

が、冒険出来ない性格なので、大した事は出来ないだろう。

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月見月理解の探偵殺人

読んだ本の感想。

明月千里著。

以下、ネタバレ含む。

つまらないというか、解り難い話だった。『人狼ゲーム』を模した『探偵ゲーム』というゲームが話の根幹になるけど、『人狼ゲーム』の達人という設定で良かったんじゃないかな? 

かなり複雑な物語で、読み返すのも面倒なので、適当の端折って書く。内容はかなり間違っていると思う。

1 2009年12月31日 初版第一刷発行
主人公 都築初は、「0」というハンドルネームで、インターネット上の犯人当てゲームに参加していた過去を持つ礼新高校二年生。

4月に、君筒木衣梨花(月見月理解)という病気で留年していたため、二歳年上の女が転校してくる。彼女は探偵ゲームで三百勝以上した伝説のプレイヤーで、唯一勝利したのが主人公だった。

月見月理解は、主人公の父親が一年前に自殺した事件の調査を、主人公の妹から依頼されており、主人公に殺人の疑惑がかけられている。本当の犯人は、主人公の母親で、主人公は飛び降り自殺に行く様子を目撃していた。

自分が犯人と偽ろうとするが見抜かれる。



2 2010年4月30日 初版第一刷発行
礼新高校一年生の星霧交喙登場。四歳上の姉 花鶏がスパイであり、自分の親友を殺害したとして、且つて姉が入部していた放送部に入部する。

姉の後を追跡していたが、ノアズ・アークという地下施設に封じ込められ、『探偵ゲーム』に似たゲームをさせられる。

星霧交喙は、聖痕という、他人に触る事で、同一人物であるか判別する能力を持っているが、星霧花鶏はゲーム中に停電を引き起こし、自らが変装していた十条奏と入れ替わる事で能力をかわす。

星霧花鶏の能力は、洗脳で自分の人格を他人に移植可能であり、星霧交喙の中に自分の人格を移植しており、そちらが本体になっている。彼女が殺した事になっている星霧交喙の親友 佐倉いずみを殺したのは、実は星霧交喙の別人格で、それを洗脳する事で、自分としたらしい。



3 2010年8月31日 初版第一刷発行
主人公達が、月見月家の別荘に招かれる。

他人に感染する殺人衝動ウィルスを持つとされる月見月悪夢の脱走騒動に巻き込まれる。月見月悪夢には、殺人衝動ウィルスは無く、双子の姉妹である水無月沙耶と情報交換する事で、死ぬべき人間を知っていた。

月見月悪夢は死ぬが、水無月沙耶は生き残る。



4 2010年12月31日 初版第一刷発行
実体験版の『探偵ゲーム』に招かれる話。

果無連理出現。本選に主人公達が進む。



5 2011年6月30日 初版第一刷発行
船の中で行われる『探偵ゲーム』

思考を読む果無連理に対し、ゲーム中に発生した殺人事件を利用し、月見月理解の発言を確認する事無しに信じた事を指摘し、監禁、殺害に成功する。

⇒この本で行われているゲーム過程はとても複雑だった。



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組織サバイバルの教科書 韓非子

読んだ本の感想。

守屋淳著。2016年8月17日 1版1刷。



第一章 人は成長できるし、堕落もする―「徳治」の光と影
<論語と韓非子の対比>
論語(孔子):
人間を信用してかからないと、良い組織は作れない

韓非子:
人間は信用出来ないから、裏切らない仕組みを作る

孔子は、良い組織を作るために、家族的信頼感で結ばれた組織を理想とした。徳のある人物(憧れの対象)が感化力によって周囲の人間を良くしていく。下剋上の世界では、愛の対象となる範囲が、国から村、家族、自分だけと収縮してしまうため、そのベクトルを逆向きにする。

以下は、徳治の問題点。

①徳を持った人間はいないか、変節する
②徳でしか上下が結び付かず、現場が暴走する
③上司の問題点を指摘出来ない

こうした問題点を解決するために登場したのが、韓非に代表される法家の思想とされる。





第二章 『韓非子』は性悪説ではなかった?
性弱説:
孔子は人間は教育によって決まるとしたが、韓非子は人間は環境によって定まるとした。韓非子は、国家の生き残りという目的を掲げ、それに適う人間のみで構成された組織を目指したとする。それはスポーツチームや株式会社に近く、そうした環境が人間を構成する。

韓非子は、孔子のように良い家庭や国を作ろうとするのでなく、乱世の中で生き残る国家を作る事を目的とする。人間が信用出来ないという条件の下で、成果を出せる組織。



<韓非の先駆者>
〇管仲(?年~紀元前645年)
斉の恒公の補佐として、以下の政策を行う。

・農業の保護奨励
・塩、鉄、金等の重要産業の国家管理
・均衡財政の維持
・流通と物価の調整
・税制、兵役の整備

〇子産(紀元前585年~紀元前522年)
鄭の穆公の孫であり、以下の施策を採用。

・農地の区画整理、灌漑用水の整備
・農民を五人単位(伍)に編成
・軍事費を丘賦という税金で庶民にも課す
・成文法の発布

〇呉起(?年~紀元前381年)
魏の文侯の下で西河の太守、楚の棹王の下で宰相を務める。以下の施策。

・法体系の明確化
・不要不急の官職廃止
・遠縁の公族の官位剥奪

〇李克(紀元前455?年~紀元前395年)
魏の文侯の下で、以下の施策。

・身分、官位を問わない信賞必罰
・農業生産奨励と、穀物価格安定
・『法経』六篇を作り、法体系を集大成

『法経』は、商鞅が魏から秦に持ち込んで富国強兵を達成した逸話がある。

〇商鞅(紀元前390年~紀元前338年)
衛の公族だったが、秦の招賢令で秦に行き、以下を実施。

紀元前356年の変法:
・五家を五人組、十家を十人組として相互監視する制度
・一家に二人以上の成年男子がいる場合、必ず分家独立
・軍功をあげれば爵位
・農耕と織物を奨励
・公族や貴族でも、軍功が無ければ身分剥奪
・詩書を焼き捨て、法令を徹底

紀元前350年の変法:
・雍州から咸陽へ遷都
・封建制から中央集権制へ移行
・農地改革
・度量衡統一
・父子兄弟の同室同居禁止

⇒中国の政治制度の雛形

〇申不害(?年~紀元前337年)
鄭の下級官吏だったが、紀元前375年に韓が鄭を滅ぼした事で、韓の昭候に仕えるようになる。15年間、宰相を務め、中央集権化を進めた。

〇慎到(紀元前395?年~紀元前315?年)
趙の人であり、黄老思想を学んで、斉が学者を集めた「稷下の学」に参じた。後に韓の大夫になったとされる。「勢」の概念は韓非に影響下らしい。

著者は、①魏から秦の系統(法を重視、呉起や李克、商鞅)、②鄭から韓の系統(術と勢も重視、申不害や慎到、韓非)が相互に関連したと考える。



第三章 筋肉質の組織を作るための「法」
韓非の先達者達の要素。

〇商鞅(法、賞罰規定)
権力者の家族等の責任が伴わない者に権力が付随しないようにする。法によって全員を均しく枠にはめ、私的影響力によって指示系統が混乱しない組織を作る。
信賞必罰によって、構成員が従わざるを得ない状況を作り出す。そのため、学者、遊説家、侠客、商人や職人等の組織全体の価値観と異なる人々を排除していく。

⇒国力の胆である農業・軍事の推進という評価軸に則り、恩賞を素直に欲しがり、罰に怯える人間以外は組織に不要とする

〇慎到(権力)
〇申不害(家臣操縦術)

第四章 二千年以上も歴史に先んじた「法」のノウハウ
刑名参同:
事前に申告した内容と同一の実績を求める。事前申告を上回る実績も良くない。部下の裁量権を小さくし、事前申告させる事で権力者が強制的に目標を押し付けたように見えないようにする。

韓非が目指したのは、完璧な結果主義の組織で、結果を評価軸にする。

・組織の方向性を利益を出す事に一本化
・命令系統の一本化
・上記の方針に従わない人間には辞めてもらう

そのための賞罰規定が法であり、必ず法を守るという信頼性を保つ事で、法を定着させる。

第五章 「権力」は虎の爪
権力とは、利害によって相手を操り、相手からは操られない事。

権力の源泉は、賞罰であり、部下に奪われてはならない。派生権力として、相手に想像させる方法もあり、実際には源泉を持っていなくても、権力者と近しい等の理由で、持っていると思われる状況を作れば権力を行使出来る。

第六章 暗闇のなかに隠れて家臣を操る「術」
君主が情報を漏らし、部下が合わせる事が出来ないよう好悪の感情を隠す。賢さを見せない事も部下の素を見るコツとなる。

以下の術。

①部下の言い分を互いに照合する
②違反者は罰っして威信を確保
③功績には必ず報いて意欲を出させる
④部下の発言に注意し、責任を持たせる
⑤疑わしい命令を出し、思いもよらぬ事を尋ねる
⑥知っているのに知らないふりをする
⑦白を黒と言って相手を試す

さらに、外部権力を警戒すべきとし、外部にある権力の源泉が利用されないようにする。人間は不思議なもので、権力者が強過ぎると制約によって自由を欲し、権力が弱いゆえに混乱状態が続くと権力者を欲する。歴史はそのように動く。

<第二次世界大戦後の日本企業>
欧米の会社は機能体であるが、日本の会社は村であり、論語的価値観からなる。

戦時下において、総動員体制を作るために、温情主義、滅私奉公を植え付け、「学べば成長出来る」という論語的論理から、学歴、勤続年数、忠誠度、性別等が評価基準となる。

入社当初は差をつけず、長期間で評価する。同期との間の僅かな差が競争心を煽る。和には、強調しつつ、競争するという二つの要素がある。











第七章 改革者はいつの時代も割に合わない
法治は多くの人の既得権益や人間関係を損なうため、導入には君主の危機感が必要になる。

説得は相手の聞きたい事を話し、理論通りにはいかないために難しい。法治を採用した君主が亡くなると、後を継いだ君主は反動に走る事が多い。

第八章 人を信じても信じなくても行きづまる組織のまわし方
韓非が自殺したのは紀元前233年前後とされ、秦王 政の側近だった呂不韋が自殺したのは、その二年前の紀元前235年とされるので、秦王 政が韓非の『法』に感激したのは専横に悩まされていたためではないか。法による統治があっても、術や勢が欠けていた。

著者は、秦の問題を以下のように考える。

①後継者
韓非の組織では、派閥を作る事を防ぐために、皇太子が事前に周知し難い。後継者の伝達は、誰かを信じて託さなくてはならない。

②利の調達
賞罰によって人を操るが、古代中国の恩賞は土地であり、領土が拡大している内は恩賞に困らないが、新たに土地を獲得出来なくなると罰のみになる。

「陳勝・呉広の乱」は、国境警備の期限に大雨で遅刻しそうになり、罰である斬首を恐れたために発生したとする。厳罰によって刑無きに期すは、韓非の理想に過ぎず、信賞必罰は物理的限界を迎え易い。

<富士通>
1997年に富士通が導入した成果主義的人事制度は、①成果に応じた給与(信賞必罰)、②目標管理制度(刑名参同)という点で『韓非子』に近い。

しかし、全員が成果を出す事は想定されておらず、人件費抑制のために、人件費の総枠が最初から定められていた。そのため、相対主義となり、結局は年功序列によって上の部長から多く賞を得る事になったしまった。

『韓非子』の制度を導入するには、目標を達成したら与える賞の源泉が存在し、本人が納得出来る評価に連動して分配される事が必須になる。

利益への関与が数字で表せる部門なら良いが、間接部門や長期プロジェクトでは導入し難い。さらに、会社では人事や経営戦略が強い権力を持っており、富士通の人事部は全員がA評価となって不満を煽っていた。





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秦王朝の次の漢王朝も、七代目 武帝の時代になると賞の源泉枯渇が問題になった。そこで、儒教の「利で動く人間は恥ずかしい。高い志を持って国に尽くす人間が美しい」という価値観を打ち出すようになる。

前漢王朝の後半から儒教の影響が見られ、後漢王朝でも儒教の影響が強いために、外戚や宦官が権力を握ってしまい、三国志の時代となったため、『三国志』の英雄は法治を全面に出した者が多い。

<古代ローマ帝国>
賞の源泉として、権利を利用。投票や居住の自由等は、地位や身分が高く無ければ持つ事が出来ない。自由 = 権利の束であり、ローマ帝国に対して功績をあげて手に入れる仕組みになっていた。抽象的な権利を賞としたために、原資が尽き難い。

ちなみに、現代の米国では『韓非子』に近い制度が一般的であり、多様な文化的背景を持つ人々を纏めるために、金銭という価値観が重視され、パイの拡大が必須になっている。

個人の責任と権限を明確にし、職務は文章化され、日本企業のように協調性や忠誠心などの情意孝課等の評価要素は無い。



<法治定着>
紀元前221年に秦王朝が樹立して以来、中国の政治体制は以下の原理に則たとする。

①皇帝による専制支配
②郡県制度による直轄統治
③官僚による中央集権
④一君万民による独裁政治

法治という基盤の上に、儒教や仏教、道教が組み合わさって乗る。『韓非子』の考え方は、合目的でないはずの国家を軍隊や企業のように合目的にする事に矛盾があり、北方の遊牧民に対抗する必然性が法家的制度を維持させたのかもしれない。

欧州ではゲルマン民族流入による分裂以降、基本的に外部からの深刻な脅威が無い(国土の半分を明け渡すような事態)ために、一つになって対抗する意識が無かったのかもしれない。

統一された官僚国家の内部でのイノベーションには限界があり、各国が切磋琢磨した欧州の技術に追い抜かれるようになる。

第九章 使える権力の身につけ方
江戸時代における日本において、空間的なパイが拡大し難いため、時間的に継続する事を目指す気風が広まったとする。元禄時代以降の商家では家訓を作る事が一般的になった。





継続第一の組織の場合、前例踏襲が選ばれ易く、責任を負わないために権力を使って部下に押し付けるようになる。

上司としての以下の問題点。

①情報格差
②派閥によって対抗される
③論語的価値観

上記に対応するために、「自分にしか分からない人間」を作らないようにして、「他の人間も出来る」という状況を作り出す。外部コンサルタントを権威として活用する方法もある。

逆に部下としては、自分に依存させるよう「自分にしか分からない」という状況を作り出す事が権力に繋がる。







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経済で読み解く明治維新

読んだ本の感想。

上念司著。2016年4月20日 初版第1刷発行。



第一部 飛躍的に発展していた「江戸時代の経済」
著者が提示する以下の定理。

①社会は「金」と「物」のバランスから成り立ち、物に対して金が不足するとデフレになる
②景気悪化は、救済を唄う危険思想の蔓延を招く

経済は国の肉体のようなもので、政治は衣服のようなもの。肉体が成長すれば衣服を新しくしなければならない。

<江戸時代>
①財政構造
400万石の江戸幕府が、3000万石の日本全体を治める。
②管理通貨制度
官府の捺印を施せば貨幣になる。
③百姓は農民に非ず
農業以外も行う。

経済発展に必要な、物流の自由、決済手段、商取引のルール整備は江戸時代以前に相当なレベルまで整備されていた。

日本史では、中央集権的国家を目指す勢力と、諸侯が分立した状態を維持する勢力の争いがあり、江戸幕府は300諸侯が分立した状態を維持する徳川家康が、中央集権的仕組みを志向した豊臣家を打倒した結果とする。

江戸幕府三代目までの将軍は、幕藩体制維持のために、東照宮建設、江戸の都市建設、京都の諸公卿への賄賂等を行った。1643年に日本の金銀の埋蔵量は底をつき、備蓄を浪費していくようになる。1666年に日本の耕地面積は最大化し、8代将軍 吉宗の頃には収穫量改善で農産物生産量がピークを迎えた。

徳川家光は一代で500万両を使用し、4代将軍 家綱は600万両を相続したが構造的財政赤字が発生しており、1657年の「明暦の大火」の4年後には385万両に減少。年間10万両の経常的財政支出も嵩んだ。1680年に就任した5代将軍 綱吉が相続した財産は100万両以下とされる。

元禄時代(1688年~1704年)の好況は、財政難を打開するために勘定吟味役 荻原重秀が行った慶長小判から元禄小判への改鋳(金の量を2/3にして、通貨発行量を1.5倍にする。500万両の通貨発行益)が原因とする。

しかし、全国的な徴税権を持たない江戸幕府が全国を支配する構図に矛盾があり、1703年の元禄地震、1707年の宝永地震、富士山大噴火、1708年の宝永の大火等の復興費用を賄う名目で行われた諸国高役金令(1709年)で、諸藩から100石当たり2石の割合で資産課税を行うが、集まった46万両の内、6万両しか復旧予算に使用されていない。

その後、新井白石による貨幣の金銀含有量を慶長時代に戻す揺り戻しがあり、8代将軍 吉宗も当初は米本位制を志向していたが、1736年に元文の改鋳を行い、金銀の含有量を半分に落とした貨幣を発行する事で100万両の通貨発行益を手にしている。

その後、1818年には水野忠成による文政の改鋳が行われ、1834年に幾度も改鋳が行われた事で化政文化の背景となる好況が生じる。

第二部 資本主義を実践していた「大名」と「百姓」
日本経済は江戸時代を通じて発展し、石高は経済活動の一部でしかなかった。1643年に金銀産出がピークを迎えると体制に綻びが目立ち、経済が政治の枠組みを超え始める。

幕府と大名の連合政権の本質は、互いが存在を認め合う事で共通の敵を殲滅する双務的同盟で、殲滅すべき敵である豊臣家を滅ぼした後は、新たな敵が出現しないように体制を強化する事になる。

戦争が少ない時代は需要を増大させ、1620年には仙台藩が江戸へ、1621年には小倉藩が大阪への廻米を直営事業として起業している。菱垣廻船は1619年に登場し、木綿、油、綿、酒、酢、醤油等を大阪から江戸に運んだ。

海外からの絹の輸入も増加し、1628年の奢多禁止令は、絹輸入による金銀流出を防ぐためだったとする。鎖国は、貿易量制限により国内の通貨量を維持するためだったのかもしれない。

<国際金融のトリレンマ>
・江戸時代初期の日本
①固定相場制:〇
②金融政策の自由:×
③資本取引の自由:〇

・鎖国後の日本
①固定相場制:〇
②金融政策の自由:〇
③資本取引の自由:×

金融政策の自由が手に入ると、貨幣を自由に発行し、インフレ率を操作可能になる。元禄時代の貨幣改鋳は、鎖国という資本取引規制のためだったのかもしれない。

・江戸時代末期の日本
①固定相場制:〇
②金融政策の自由:×
③資本取引の自由:〇

開国によって外国為替取引が自由化され、交換レートが金銀含有量を基礎にした固定為替レートだったため、金融政策の自由を失った。

<流通>
江戸時代初期の海運業は、海賊から物資を守る警備会社の要素が強かった。都市への物資大量輸送の需要が発生すると、河村瑞賢が、1670年に東回り航路の整備事業を始める。江戸から小湊、銚子、那珂湊、平潟、小名浜を経由し、荒浜(宮城県)に至る。

さらに1694年には、江戸十組問屋仲間、大阪二十四組問屋仲間が結成され、菱垣廻船は両組合に所属する事が義務付けられた。競合する樽廻船には、菱垣廻船が取り扱わない7つの荷物のみ運ぶ事が許可され、専門の商い集団が形成されていく。



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1450年~1540年、1645年~1715年には、太陽黒点の極少期があり、太陽活動停滞のために北半球の気温が1.5℃ほど低い間氷期だった。フランス革命が発生したのは1787年だが、江戸の三代飢饉である享保の大飢饉(1732年~1733年)、天明の大飢饉(1782年~1788年)、天保の大飢饉(1833年~1837年)があり、天明の大飢饉では100万人ほど人口が減少したらしい。

これは各藩が余剰米のほとんどを都市に売却していたため、食料の備蓄が無かった事も関係しているとする。そして飢饉を機に官製流通網を通じて地方廻船問屋(北前船、尾州廻船)が独自に米を輸送するようになり、運賃の自由化が進む?天明の大飢饉以降、遠距離の船が大型化して数を減らし、近距離の船が小型化して激増する現象が見られるらしい。

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1786年6月29日に田沼意次は、百姓は百石当たり0.42両、町人は一間当たり0.05両、寺社山伏は格式に応じて最高15両を毎年、5年間に渡って課す法令を出した(失脚の二か月前)。

集まった金を大阪表会所で大名に年利7%で米切手を担保に貸し出す。返済が滞ったら米切手は米に転換される。滞納すれば年貢を幕府に召し上げられるため、徴税権を奪う事に繋がる。

第三部 なぜ江戸幕府は“倒産”したのか?
米を年貢として徴収し、それを売却して現金を得る石高制は、米の価格が他と連動しなくなると上手くいかなくなる。江戸時代の米価は1石 = 1両前後で推移していたが、他の商品作物が高騰する事で米を給料として支給された武士階級が困窮するようになる。

明治時代に行われた地租改正では、課税の基準を収穫高でなく、地価の3%として税収が収穫高で左右されないようにした。第二次世界大戦後、地租は固定資産税となって税率は1.4%程度となっている。

<幕藩体制によるデフレ>
江戸時代の各藩は、江戸屋敷の維持や参勤交代の費用が恒常的に発生し、藩内で生産出来ない商品を輸入するために、常に一定額の金銀が流出する。金銀の流出超(貨幣不足)を避けるには、常に江戸や大阪が好景気で、各藩の物資を購入する必要がある。

しかし、幕府は貨幣の信用維持のために貨幣量を抑制し、結果的に都市の需要が抑制される事が多い。

財政問題と貨幣不足解決のために、各藩は藩札を発行するようになる。1661年に福井藩が発行したのが最初とされ、大抵の藩札は銀札だった(幕府が金の保有残高を重視したため)。

1700年代中頃には、藩札は全国的に普及し、裏付けとなる資産も金、銀、銅、米と多様化した。1871年の廃藩置県当時の藩札の残高は約9000万両であり、幕末の金貨、銀貨の発行残高が1億3000万両だった事を考えると、貨幣量を倍増させる効果があった事になる。

<薩摩藩と長州藩の藩政改革>
◎薩摩藩
1753年の木曾三川の手伝普請で40万両の巨額債務を負い、1801年には121万両の借金があった。当時の薩摩藩の歳入は年間10万両程度。その後も手伝普請等で、1833年には500万両の借金となる。

家老である調所広郷は、借金を250年かけて返すと一方的に宣言し、砂糖の専売や清との密貿易を行った。1837年に長崎での唐物販売が10年間に渡って禁止され、調所広郷は自害している。

それでも、薩摩藩は500万両の借金を整理し、300万両の収入を得た。

◎長州藩
1840年時点で141万両の借金があった。当時の長州藩の歳入は年間約6万3000両程度。1838年には士卒の俸禄の半分を上納させ、庶民への4.5%の増税を行い9万両の財源を確保。対外債務については、1844年に金利を3%に引き下げ、37年払いで完済すると一方的に宣言。

そして、製塩業、金融業、製紙業、綿工業を推進した。廃藩置県時には100万両の余剰金が残されたらしい。

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江戸時代後期においては、開国時の貨幣レート不備から海外に金が流出し、1860年には金貨の品位を1/3に下げて国際標準に合わせる万延の改鋳が行われる。

これは激しいインフレを引き起こし、米価1石当たりの平均価格は、1840年代で銀82匁、1850年代で銀104匁、1860年代で銀365匁、1870年代で銀411匁となっている。こうした通貨の信用低下は、藩札の信用を上昇させ、安定通貨となっていく。

<製糸業>
激しいインフレの裏側では、自国通貨安が発生しており、製糸業の海外輸出が盛んになっている。

太平天国の乱(1851年~1864年)や欧州における蚕病によって絹は供給不足であり、1859年の横浜開港では欧州産に比べて半値で購入出来た日本の生糸が販売された。

1865年には、総輸出額1746万ドル程度の内、1461万ドル程度が生糸の輸出によるものとなっている。

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明治時代に実施された政策は、中央政府による全国一律の課税や、開国、同一通貨による石高制廃止、金本位制への対応等、江戸幕府でも実現出来た政策ばかりであるが、体制の根幹に関わるものであったため、関ヶ原の論功行賞に囚われている政治体制を一新しなければ実現出来なかった。

明治時代は、揺り戻しへの道を完全に断った事で実現した。

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経済で読み解く大東亜戦争

読んだ本の感想。

上念司著。2015年2月5日 初版第1刷発行。



序章 【経済と戦争の相関】
第一次世界大戦から昭和恐慌(昭和30年)まで日本経済が低迷した原因はデフレとする。第一次世界大戦において、各国が戦争のために金本位制から離脱し、自国が保有する金の量以上に通貨を発行した。戦後、各国は金本位制に復帰するために多額の資金を吸収したためにデフレが発生した。

1930年の井上準之助による金本位制復帰による恐慌から、1931年~1935年の高橋是清による財政金融政策による景気回復、その後の五・一五事件、二・二六事件を経た第二次世界大戦までの流れを追う。

<ポール・ポーストの戦争の鉄則>
①戦争前の経済状態
不況である事が、戦争によって利益を得る前提。戦費調達によるデフレ脱却。
②戦争の場所
本国から遠い戦争が経済的に利益となる。自国が依存している資源の供給地、輸送路も除く。
③戦争資源、兵士の量
失業率が高いほど戦争の経済効果が高い。近年はハイテク兵器型の資本集約型の戦争であるため、失業率を減らす効果が低い。
④戦争の期間、費用、資金調達法
デフレである場合、通貨発行によって脱却出来る。

第一部 【第一次世界大戦までの世界経済の動向】
1870年までは、英国(1844年に金本位制を確立)を除く世界各国は金銀複本位制を採用していた。1850年代半ばから新金山が発見されなくなり、代わりに銀の産出量が急増していた。

1840年~1850年だのゴールドラッシュで、金産出量は1831年~1840年の年平均20.2トンから、1851年~1870年の192.6トンに急増していた。

普仏戦争(1871年)で賠償金を得たドイツは金本位制に移行し、1876年にはフランスも移行。1897年には日本とロシア、1900年には米国も金本位制に移行。金本位制には為替リスクを低減し、貿易決済を効率化する意味があった。

金本位制の問題は、金の保有量以上に通貨を発行出来ない事とし、1876年~1896年まで英国で物価が32%下落するデフレ(ヴィクトリア均衡)は、1896年に南アフリカやカナダで金山が発見され、青化法(金の抽出率を高める)が発見された事で、通貨発行量が増加して解決されたとする。

そして、1900年代半ばから金産出量が頭打ちになると、1907年に米国のウォール街で株価暴落が発生。直接的な原因は、1906年のサンフランシスコ地震によって銀行や保険会社に多額の損害が発生した事だが、背景には資金不足があったとする。

第二部 【第一次世界大戦の明暗】
1907年恐慌の後、米仏のGDPは乱高下したが、日英独のGDPは緩やかに回復したとする。世界経済は不安定で、金保有量の多い国は、金流出リスクを恐れて通貨発行量を抑制していた。

そして、第一次世界大戦で日米から欧州への輸出が激増し、両国経済は活況となった。1914年時点で欧州から米国への債権額は72億ドルだったが、1919年には33億ドルまで減少。米国の金準備高は1919年に64億ドルになった。日本も日露戦争の対外債務10億円があった状態から、28億円もの外貨を獲得している。

一方、敗戦国となったドイツでは1320億マルク(金に換算して4万7312トン、当時のドイツのGNP20年分)の賠償金が課せられた。英国の経済学者ケインズは、賠償金支払いに必要な貿易黒字を生み出すために、ドイツは通貨切り下げによる輸出推進を行う必要があるとし、復興需要の妨げになると指摘。それではドイツは経済的に困窮したままになる。

*************

日本では1917年に2億円だった英国への輸出、1918年には1.5億円程度だったフランスへの輸出が1921年には5000万円以下になり、1923年には関東大震災が発生していた。関東大震災の被害総額は55億円~65億円(当時の国家予算は15億円)で、GDPの4割程度だった。

しかし、1925年の加藤高明内閣は金本位制復帰を押し出し、為替レートは1ドル = 約2円から1ドル = 約2.5円まで円高が25%進んだ。その後の若槻内閣、田中内閣、浜口内閣でも金本位制復帰という点では一致していた。

当時、金本位制に耐える事が出来たのは金流入が続く米国だけだったとする。

第三部 【第二次世界大戦前夜の日本経済】
第一次世界大戦後のベルサイユ体制は、世界中の金が米国に吸い上げられる仕組みだった。米国以外では金が不足するために金本位制下ではデフレが発生する。

<クレディト・アンシュタルト銀行>
1931年5月に、オーストリア最大の銀鉱クレディト・アンシュタルト銀行が破綻する。それはドイツ第二位のダナート銀行にも飛び火し、英国や米国にも波及した。英国から大量の資金が引き上げられ、英国は1930年9月21日に金本位制から離脱。
日本からも資金が引き上げられ、1931年に金本位制を離脱し、為替レートは1ドル = 2円から1ドル = 5円まで下落している。1932年に高橋蔵相は、1932年に歳入補填国債の直接引き受けを始めている。

1932年のオタワ会議で英国とその植民地が、域外の国々に関税引き上げ等を決定して以降も、日本の輸出産業は1932年から1938年まで対前年比増を続けたとする。

高橋蔵相は、1935年に公債政策に関する声明を発表し、緊縮財政に舵を切る事を計画したが、二・二六事件によって暗殺され、1936年に就任した馬場蔵相は国債の日銀直接引き受けによる大量の国債発行による軍事費増を行った。

終章 【日本の戦後復興】
第二次世界大戦における日本の被害総額は1340億円(日本の国富総額の41.5%)。

戦後の経済政策は、以下のように大別可能。

①インフレ加速期(終戦直後~1947年)
1945年8月~1945年11月に、復員・解雇手当等で140億円の財政支出が発生。軍需生産廃止に伴い経営危機に陥った企業救済のための銀行貸し出しのため、資金供給が増加してインフレが発生。政府は価格統制を実施するが、闇市場の経済メリットが生じただけだった。
1946年5月に就任した石橋蔵相は公定価格を毎月改定するようにし、供給力を高めるために復興金融金庫を設立して投資資金を貸し出せる態勢を整備。鉄鋼業や石炭産業に重点的に資金を配分。

②インフレ減速期(1947年秋~1949年秋)
中間安定計画として、緊縮財政が志向される。経済安定本部が四半期毎に定める計画に基づき、割り当てる資金が決定された。

③デフレ期(1949年秋~1950年秋)
1949年に来日したデトロイト銀行頭取ジョセフ・ドッジが、超均衡予算、復興融資停止、価格差補給金停止をアドバイス。1949年度予算は1567億円の黒字を計上する超緊縮予算となる。超緊縮財政によるデフレが発生。1945年4月25日からは、1ドル = 360円の公定為替レートが実施される。

第二次世界大戦後の通貨体制は、金本位制ではなく、ドルを基軸通貨と定め、ドルに限って1オンス = 35ドルの金との交換レートを設定。そして他国は自国通貨とドルに対する固定レートを定める。米国以外の国は、自国の金保有量に縛られる事無く、ドルと自国通貨の関係だけを考えれば良くなる(ブレトン・ウッズ体制)。

その中で、1950年6月25日に朝鮮戦争(1950年~1953年)が発生し、朝鮮特需が始まる。ドルが大量に日本に流入し、それに合わせて日本円も増刷可能になる。緩和政策への転換。

経済成長のために金を集まる時代は終わり、政府と日本銀行が目標を定めて貨幣量を調整する時代となる。

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経済は世界史から学べ!

読んだ本の感想。

茂木誠著。2013年11月21日 第1刷発行。



以下は、「もぎせかブログ館」へのリンク。

http://mogiseka.at.webry.info/

第1章 お金(1)
紙幣は、民間金融業者が、金銀の預かり証として発行したのが始まり。金銀が信用の源だったが、政府が真似て紙幣を発行するようになり、乱発して信用が失われるようになる。

<交子>
世界最初の紙幣。北宋にて、商人が重い鉄銭を預かり、引換券として発行した。政府が商人から権利を取り上げて、国が発行するようになる。南宋の会子、元の交鈔等は、全て政府が紙幣を乱発してインフレになり、王朝が崩壊している。

欧州では、スウェーデンのカール10世が最初に紙幣を発行しており、民間のスウェーデン銀行が発行していたが、やがて国の恣意的支配から独立した中央銀行(リスク銀行)を設立している。英国でも、名誉革命で即位したウェリアム3世が、フランスとの植民地戦争による国債を引き受けるためのイングランド銀行設立を許可している。

第2章 お金(2)
最初の基軸通貨は、メキシコドル(スペイン領メキシコで発行された銀貨)とされる。やがて19世紀を通じて英国のポンドが国際通貨となり、第一次世界大戦後は米国のドルが国際通貨となる。世界大戦によって貿易代金と戦債の償還金が米国に流れ込んだ事で、米国は世界最大の債権国となった。

第二次世界大戦後は、1ドル = 360円の固定レートを維持したブレトン=ウッズ体制により、米国が日本円の信用を担保した事で日本企業の輸出が促進された。

やがて米国のパワーダウンにより、固定相場制から変動相場制に移行する。日本は円高で輸出企業に不利と分かっていながらも、安全保障を米国に頼っているために1985年のプラザ合意等を受け入れている。

第3章 貿易
自由主義(経済活動の自由を求める)と保護主義(外国製品の流入を阻止して国内産業を守る)の対立。

第4章 金融
金融とは、貸し手が借り手に資金を融通する事で、返済と同時に利子を支払うのが一般的。ハンムラビ法典が、利子の上限を定めた最古の規定らしい。

金融業者として活躍した民族は、異民族に支配された少数民族である事が多い。フェニキア人(中東レバノンを本拠地とした)、ソグド人(中央アジアのウズベキスタンを本拠としたイラン系民族)、アルメニア人(イランと欧州との中継貿易で栄えた)、ユダヤ人、客家(黄河流域から広東省、福建省へ移住)。課税対象になり易い固定資産よりも、持ち逃げし易い金融資産を持つインセンティブ。

第5章 財政
財政とは、政府の収入と支出の事。多くの国家は、官僚機構と軍組織が肥大化し、増税と民業圧迫による貧困層増大によって法家敷いている。

<中国>
漢の武帝による対外遠征の資金を財政危機を克服するために、桑弘羊が均輸法(物価の安い地域で物資を徴発し、高い地域で転売する)や専売制(塩、酒、鉄の販売の国営化)等を行う。

唐王朝は、国有地(均田)を人民に貸し与えて租庸調を取り立てたが、農民逃亡によって破綻すると、塩の専売制によって塩税を重くしたために黄巣の乱等が起こり国乱れた。

************

徴税権は権力の源であり、議会政治は課税権をめぐる王と貴族の対立の中から生まれ、経済学は国家財政のバランスシートを重視する思想から生まれた。人口、耕地面積、生産量、税収、貿易収支、軍事費等を数量化し、産業育成による国富増大のための政策決定。

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マルクスちゃん入門

読んだ本の感想。

おかゆまさき著。2016年1月27日 第1刷発行。



「マルクス思想の入門書になっていないじゃないか」と思いながら読んだが、最後まで読むと分かり易かった。用語集が良いと思う。敗北した気分だ。

〇真確定現実
現実は、現象を認識する人間の数だけ種類があり、大勢の信頼関係の中で現実が確定されていく。真確定現実は、それを超越し、神の視点で確認されて現象が起こり続けている、後戻り出来ない事象平面。

〇搾取
人間は自然状態では、自分の生活に必要な分しか働かなくて良いはずだが、社会の中では余計に働かなくてはならない。その余剰分が資本家に回っていると考える。

〇疎外状態
本来あるべき状態から遠ざけられた状態。マルクス思想では、疎外が至るところに存在するために幸福になれないとする。例えば、働いた成果を自分のために全て使えない =本来の幸福を受け取れないシステムは、人間があるべき状態から疎外されていると表す事が出来る。

〇制約
「自由」とは、「制約」という概念と対義語となる事で意味と価値が生じる自立出来ない言葉。無人島で生まれ育ち、外界を知らない者は、彼の自由を奪う社会が存在しないため、逆に自由を感じる事が出来ない。

〇不可能問題
あらゆる問いは不可能問題に属するが、それを防ぐために「定理」が使用され、問いの無限性を封じ込める。

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感じる事と考える事

昨日の続き。

子供の時は、人間社会が崩壊する事が怖かった。全ての秩序が壊れ、決まり事や法律、習慣や基準が通用しない状態が発生する事の恐怖。地震だったり、伝染病だったり、または誰かが襲い掛かってきたりする可能性を考えていた。

自分独自の判断というのは頼りないもので、全てを自分で考えて決定しなければならない事は大変な負担だ。見る事や触る事、聞く事や嗅ぐ事のみで世の中は存在しておらず、感じる事の出来ない枠組みが人間を規定している。

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スクールカースト:動物的―社会的

DIAMOND onlineの連載 「DOL特別レポート」の『スクールカースト頂点も卒業後は貧困…ニッポン階層社会の現実』から。

人間の平均寿命が30歳を超えるのようになったのは、文化・文明による人為的な作用である。

10代までの子供の社会では、容姿や腕力による原始的本能による階層付けが為されるが、人為的に生きる高齢になるに従って、学歴や資産等の文化的付加価値が階層付けに影響する大人の社会が形成される。

子供の社会では、社交的で運動神経が良い上位にいて、下位には漫画が好きなオタクの子がいる。女性は階層下位の男を相手にしないので、下位の男は女性から排除され、現実世界での自己実現を諦めた時に、妄想の世界に切り替える。オタクコンテンツ業界は、彼等のために二次元作品では理想の学園生活を量産する。巨乳の少女にモテまくるのが基本的なプロット。

歴史的に公立中学校が荒れる地域(福岡県の旧炭鉱地帯、沖縄中部、神奈川県の川崎市や相模原市等)では、中学校時代のヒ階層で将来の序列まで決まる部分がある。順位は喧嘩が強い順に決定され、中学校1年の時、同列に100人いたのが、脱落して18歳では2~3人まで絞られ、スカウトされて地元のヤクザに就職というパターンがある。

社会的秩序が高い地域では、実家の資産と社交性で序列が決まる。有力者や女性との人脈。

大学進学は、上位と下位が入れ替わる場でもある。大学デビューするのは、二軍として燻っていた人達で、一軍になりたい人の熱量に元一軍が負けたりする。容姿と社交性のみで上位にいた人々が学歴で転落するパターン

女性も容姿と序列が正比例するが、大人の社会では美貌しかない状態では階層下位になる。子供の時に容姿が良かった人でも、30歳くらいになると横並びになり、年収と子供の時の顔が比例するという事も無い。結婚によって転落するリスクもある。

『インターネットで死ぬということ』(北条かや著)

*****************

大学生がクロスポイントとしていたけど、高校三年生の時が実際のクロスポイントだと思う。それまで、自分の拠り所としていたものが社会的に評価の対象とならない事を知る。

オタクコンテンツ業界が、学生時代に下位だった人達に、虚構世界での理想的学園生活を販売しているという考えは面白かった。大人の社会で上位にある場合でも、子供の時に手に入らなかったものが欲しいのかもしれない。

やがて失われると分かっていても、そこに行きたいのだ。

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