モーパッサン

読んだ本の感想。

村松定市著。1996年11月20日 第1刷発行。



以下は、Wikipediaの「ギ・ド・モーパッサン」の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AE%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%83%E3%82%B5%E3%83%B3

1850年に生まれ、1893年に死亡。文学活動は30歳~40歳までで、360編程度の短編・中編、七巻の長編小説等を残す。

<出生地>
英仏海峡に面したノルマンディーに生まれる。フランス随一の農業、牧畜地帯で個人主義的で土地への執着が強い気風とされる。

母ロール(1821年~1903年)は製糸工場を営むポワトヴァン家出身で文学上の相談相手となる。母の兄アルフレッドはフローベールと友人。父ギュスターヴは税務監督や煙草販売をしていた家の資産に頼り、無職だった。

モーパッサンが生きた19世紀後半は、フランス産業革命を経て1851年にナポレオン三世による第二帝政が開始し、1870年~1871年の普仏戦争から第三共和政という激動の時代だった。労働者階級が台頭しつつも、地方では農村の社会的慣習が強く、プロイセンとの戦争で愛国心が燃え続ける。

モーパッサンは、人々の日常を描写し、田舎の農民や都会の勤め人の生活、愛国的思念等を記録した。

<三人の文学者>
以下の三人の文学的指導を受ける。

①ギュスターヴ=フローベール(1821年~1880年)
母ロールの紹介でフローベールと出会い、指導を受ける。後々までフローベールはモーパッサンの有力な後見人になる。

②ルイ=ブイエ(1822年~1869年)
フローベールの友人で、モーパッサンに詩作の指導を行う。その期間はルイ=ブイエが死ぬまでの一年間だったが、1888年に刊行された『ピエールとジャン』ではルイ=ブイエに才能と独創の精神の奥義を教えられたとしている。

③アルジャーノン=チャールズ=スウィンバーン(1837年~1909年)
1866年に溺れかけた詩人を救助した事が縁で昼食に招待される。1882年に刊行された「エトルタのイギリス人」では不気味な人物として回想される。また、1875年に刊行された「剥製の手」の元ネタは、スウィンバーンが所持していた干からびた手とされる。

<短編小説>
死を扱った作品が全体の1/3以上、出産や子供をテーマとする作品が1/5程度、滑稽味を醸しているのが1/4、悲壮感が1/4とする。描かれる人物は男女、家族、役人、農漁民、軍人、娼婦、乞食等。

私生児が片親の結婚によって救済される筋書きや、子殺し等の非情な作品等は、独身をとおしたモーパッサンの深層心理を反映しているかもしれない。

〇脂肪の塊
1880年に刊行された出世作。1870年~1871年にかけて普仏戦争に従軍した経験を活かし、極限状態における動物的激情を描いた?
県会議員ユーベール=ド=ブレヴィル伯爵、製紙工場主カレ=ラマドン、葡萄酒問屋ロウゾー、民主主義者コルニュデ等が、娼婦であるエリザベート・ルーセ(脂肪の塊)を犠牲にして戦場から出立する。

〇パリ人の日曜日
20代のほとんどを海軍省、文部省の下級官吏として暮らした経験から描かれた。52歳のバチソオを主人公に、1880年に掲載された。小役人の10の読切短編小説。

〇メゾン-テリエ
ノルマンディーの売春宿における物語。売春婦達を聖女に仕立てて、教会を揶揄する。

<長編小説>
短編小説を刊行した後、長編小説を刊行する。

〇女の一生(1883年)
娘、妻、母として喜びや苦しみを味わい、孫に生き甲斐を見い出す。

添え書きに「ささやかなる真実」とあり、卑近な日常を描写する写実主義の主張があったものと思われる。短編の繋ぎ合わせという印象で、幾つかのエピソードを再利用する方法を取っている。

〇ベラミ(1885年)
美青年が女を利用して出世していく物語。人間解剖文学?

1880年代の植民地主義、パリ風俗、社交かい等を写実によって批判する試み?悪を内包し、死を宣告された人間が、日常の中でどのようにクラスかを問う。

死を理解しても、結局は現世的欲によって動かされる。

〇ピエールとジャン(1887年~1888年)
不義の烙印を負う母親と、それに起因する兄弟の争い。

モーパッサンの自伝的要素があり、6歳下の弟エルヴェに対する愛憎が記述される?兄の弟への嫉妬は、アダムとイヴの長子カインが弟アダムを妬みから殺害する旧約聖書の挿話に原型があるのかもしれない。

モーパッサンの父親の不義に対する憎悪と、母親を絶対視する故に完璧を求める気風、弟に対する潜在的嫉妬が描写される?

心理を描くのに直接的心理描写を避け、行動や仕草によって語らせる。それによって客観的、暗示的描写が可能になる?

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国土が日本人の謎を解く

読んだ本の感想。

大石久和著。平成27年7月10日 第1刷発行。



以下のように、災害による変化の多い日本の国土が、変化を前提とする日本的価値観を作ったとする。人間が変化を起こす事を前提として論理的に考えるより、言葉以外を使用して感じる気風。

<日本の国土の特徴>
①長い海岸線と細長い弓状列島
日本列島の最大幅は250㎞だが、列島の東北端から南西端までの距離は3300㎞に達する。欧米の国家が円に近い形をしているのと違い、日本では地域連携や移送に長い距離を克服する必要がある。

②四島に分かれた主要部分
四島に分かれ一体化し難い。加えて多くの島嶼部を持つ。全国的物流網を構築するのに手間がかかる。

③脊梁山脈による分断
1000m~3000mの山脈が国土を縦貫しており、日本海側と太平洋側の交通を困難にしている。また、山脈から発する河川は急流となる。雪国と非雪国の分割。

④不安定な地質
国土面積の70%が山岳地帯。氷河期には氷河が山頂部分にのみあったため、氷河融解期に風化岩が削られず、風化岩が山岳部に残ったままになっている。そのため、地震や豪雨によって土石流が発生し易い。

⑤狭く少ない平野
可住地(標高500m以下で傾斜していない、沼沢地でない等)の国土に占める割合は、日本27%、英国85%、ドイツ67%、フランス73%である。さらに可住地が河口部や盆地に分散している。

⑥軟弱地盤上の都市
大都市の全てが河口部に発達しており、軟弱な地盤になっている。そのため、工場造成等の際には長大な基礎工事が必要になる。欧米のほとんどの都市が岩盤の上に存在している事と違う。

⑦大地震の可能性
⑧集中豪雨
日本の降雨量は1400㎜~1800㎜であり、貯水設備に貯水出来る水の量は300億t程度。これは中国の三峡ダムや米国のフーバーダムの一つ程度。

⑨強風の常襲地帯
台風の通り道に列島が存在する。建設においては強風を意識しなくてはならない。

⑩豪雪地帯に大人口
国土面積の60%が積雪寒冷地泰にあり、年間累積降雪量が4mを超える地域に50万人を超える大都市が存在する。

⑪列島の位置
対馬海峡の幅は約200㎞。フランスと英国間のドーバー海峡の幅は約30㎞であり、ローマ時代でも大軍が通過出来た(54年のカエサルによる英国遠征で800隻以上の船に五個軍団、2000騎兵を乗せている)。

⑫黒潮
各方面から様々な文明が渡来している。

以下が、日本神話の由来?

イザナギ・イザナミの柱を周る国生み:
中国南部からインドネシアに豊穣祈願の習俗として分布

イザナギがイザナミから物を投げ捨てて逃げる:
中国華南地方と同じで、櫛、髪飾り、桃を投げて逃げる。三つの物を投げるのが共通で、多くは石、櫛、水らしい

天岩戸隠れ:
インドのアッサムから米国のカリフォルニアまで分布

兄弟の小さいのに悪がいて日食が発生:
インドネシア、カンボジア、ラオス、タイ、ビルマ等に分布

他に、五穀神話や八岐大蛇、因幡の白兎なども東南アジア、南アジアに似た神話があるらしい。

⇒総じて、日本では人災よりも天災が意識され易い

災害の多い日本と比較して、欧米では大災害が少なく、建築物等が消失し難い。流れる歴史を持つ日本に対し、欧米は積み重ねる歴史を持つ。彼の地では、人間が何かしなければ景観が変わらない。西欧では全ての出発点が人間であり、万物を支配する人間を想定する。

死を諦めて受容する日本に対して、恨んで復讐する欧州では正義の実現のために殺戮をする思想がある?旧約聖書では、ユダヤ人がエジプトからカナンの土地に落ち着くまでに12万8000人を犠牲にしている。

<都市と村>
以下は、「Selected Death Tolls for Wars, Massacres and Atrocities Before the 20th Century」のページへのリンク。

http://necrometrics.com/pre1700b.htm

米国のマシュー・ホワイトによって、戦争によって犠牲になった人間の数がまとめられている。世界の大量虐殺のスケールは大きく、人々は都市を城壁で囲み、その中で生きる事になる。都市においては、城壁を守るための責任を持つ市民が前提になる。

対して日本では、人口400人程度の村が基本であり、1834年に6万3562の村があったらしい。そこでは集落を単位に行動し、個人による公の観念ではなく、集団による共の観念が発達したとする。

公は独立した個を集合化する論理であるが、共は個を消して一体化する状態である。

暴力による殺戮を幾度も経験した欧米の言語は厳格は論理的な表現が可能。対して日本語では一人称や二人称を状況に応じて使い分ける等、相手に合わせて変わる言語でもある。厳密で隙間の無い情報伝達が難しい。

著者は、個人を強要する体制は日本に馴染まないと主張する。

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