憧れの女の子

読んだ本の感想。

朝比奈あすか著。2013年2月24日 第1刷発行。



以下、ネタバレ含む。

第二話が面白かった。ネタバレ無しで読んで欲しい話。

憧れの女の子
二人の子持ち(両方とも男)である植松俊彦(38歳)の妻 敦子(36歳)が女児を産もうとする話。結局、6年が経過しても男児ばかりが二人産まれ、五人目を妊娠中。

ある男女をとりまく風景
納得した。

・専業主婦
・派遣社員
・平日にクラフト講座でオリーブ石鹸や簡単モビール作成

上記は女性がやれば普通だけれど、男性がやると奇妙に思える。

30歳?の夫婦 両角マスミ、ジュンの話。

男性が書くと、男の側が夢のような話を持ち出して、挑戦する振りをし続ける展開になると思う。簡単に負けを認める事は難しい。

以下は、女性的感覚の文章だと思う。

P71:
マスミもジュンが友人としての好意を超える瞳で自分を追っていることに気づいていた。だからこそ、他に交際相手がいる時もちょくちょくジュンに声をかけてはあの瞳を確認し、揺らぐ自信をこっそり取り戻したものだ。

P73:
もったいないな、とマスミは思った。ジュンは、よく見れば整った顔立ちなのに、磨かれるチャンスがなかったんだろう。磨く気もなく、磨いてくれる人もいなかったのか。

P74:
六年ぶりに会ったジュンは別人のように垢ぬけていた。グレーのスーツに包まれた体はひきしまり、すこし日に灼けた顔は自信に満ちていた。

P90:
自分の妻が他の男たちを欲情させるのだという事実にマスミは発情した。

弟の婚約者
33歳のインストラクター 沙織が弟の敦史(25歳?)の彼女と会う話。

沙織は、結婚直前までいった彼氏と、姑関係が原因で別れた経験があり、弟が家族より彼女を優先する事に複雑な感情を抱くらしい。

尿漏れ防止のためのエクササイズとか、老いに逆らう話とか良く分からなかった。

リボン
ゲイであり、「BONBON cafe」を運営するタケル(34歳)の話。

P171:
男子集団において、タケルの地位は一気にあがった。可愛らしい女と付き合う男はふつうは嫉妬されるが、智美は可愛らしい上に行動的で正義感の強い人気者だったから、彼女が認めた男だということで、一目おかれたようだった。

P194:
自分が周りにどう思われているかを知る前に、どう思われそうかを素早く察知し、それに対応して言動を変えた。自分の立ち位置と、どう振る舞えばいちばん楽にやり過ごせるかということを、瞬時にこまかく計算した。

わたくしたちの境目は
妻を亡くして一年が経過した勇造が、息子夫婦、孫の三人で温泉に行く話。乳房再建手術とか、男女混浴とか。

*********************

作者は愛情を描く場合に、三人必要な人なのだと思った。

男と女と誘惑者。

「憧れの女の子」では、主人公である植松俊彦を誘惑する羽入絵梨菜(入社一年目)が登場する。妻には無い若さという価値を持ちながらも、妻の方が美人であると思う。そして、羽入は妻に嫌がらせの電話をかけるようになるが転職して別の彼氏を見つける。

「ある男女をとりまく風景」では、共通の友人である熊野の存在がポイントだと思う。

地味なジュンに対して派手な熊野。マスミは、熊野がジュンを見下しているように感じている。学生時代の飲み会でも、熊野は一人で参加する勇気が無いからジュンを誘い、自分が溶け込んだらジュンを放っておく(マスミの意見)。

マスミによる熊野への批判は、作者が嫌いな女性への攻撃を男性によって代弁させているように思う。自分が嫌いな女がモーションをかえる男が、自分を盗み見ている。このような状況が好きなのではないか?

作品世界における恋愛は、自分が嫌いな女に勝つための手段なのだ。階層上位にいる男が、零落した事で自分の手に入る事になる。しかし、零落した事で、他の女より優位に立つための道具には出来なくなったため分かれる。

スタンダールみたいだ。

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人面屋敷の惨劇

読んだ本の感想。

石持浅海著。2011年8月3日 第一刷発行。



以下、ネタバレ含む。

後半で主人公が狂ってしまっている。村野哲美さんが気の毒。

【登場人物】
矢部美菜子:
主人公。三十代半ば?息子は勇作。運営するWebサイト『今夜もあなたと夢を見たい』が盛況で高収入。

糸居由規美:
丸眼鏡の女性。娘は春香。娘を虐待していたらしい。

加茂悟朗:
月刊インベスターズ・ジャパンの記者。娘は津村有紗(恋人の娘であるため名字が違う)。丸顔に天然パーマ、黒縁眼鏡。

中川弘也:
息子は正勝。三十代半ば?ややエラが張って、髭の剃り跡が濃い。美男子ではない。妻子が交通事故に遭うが、息子の遺体だけが見つからなかった。

藤田昭信:
猛禽類を思わせる風貌。息子は敦。

菅山秀一:
弟が土佐に誘拐されたとしているが、実際には土佐の養子。

土佐晴男:
連続幼児誘拐事件の犯人。富豪。50歳くらい。誘拐した児童の絵を描く趣味がある。丸坊主に近い髪型に顎髭、銀縁眼鏡に細い眼。

村野(土佐)亜衣:
誘拐されて土佐に洗脳された高校二年生。碩徳高校という進学校の生徒らしい。

【あらすじ】
12年前~10年前にかけて東京都西部で発生した連続幼児失踪事件の容疑者 土佐の屋敷(人面屋敷)にて若者を目撃したという情報があり、被害者会の有志が土佐の家に押し掛ける。

土佐の家で誘拐された幼児達の絵を見た藤田が激怒し、ナイフで土佐を殺害。

通報する前に家探しして、子供達を探す。誘拐された子供達の中で村野(土佐)亜衣が現れるが、土佐に洗脳されており、自分は虐待親から助け出されたと思い込んでいる。

そして、家探ししている内に、拘束されていた藤田が死亡。このままでは警察が無実とした男の家に押し掛けて殺害し、家探しをした事になってしまう。通報する前に幼児誘拐の証拠や犯人を見つけなくてはならない。

被害者会の中に犯人がいる事になり、犯人を推理するが、終盤で自分の子供が解体されていく様子を描いたスケッチブックを見つけた糸居が半狂乱になり、加茂を殺害し自分も死亡。

中川は、菅山が土佐の家に慣れている事から、被害者の兄でなく、土佐の養子であると推理。村野(土佐)亜衣と一緒になる前に藤田を殺す余裕があった事を指摘する。

何故か、中川と主人公は菅山を警察に突き出さず、軽井沢の別荘に自分達の子供が生きている可能性を指摘され、軽井沢に向かうところで終わる。

やたらに村野(土佐)亜衣が威張っているけど、土佐が幼児誘拐者である事等を考慮すると、もっと弱い立場なんじゃないの?

村野(土佐)亜衣は実親に虐待されていたと思い込んでいるけど、その洗脳は修正しなくて良いの?

警察が調べれば、被害者会の菅山が実は土佐の養子である事が判明するだろうけど逃げ切れるの?

土佐の遺産を村野(土佐)亜衣が相続するから実親に頼らなくて大丈夫とするけど、戸籍や法律、賠償は大丈夫なの(主人公はシングルマザーで親と仲が悪く、住民票を東京に移せないために苦労する記述がある)?

何より、平然と殺人をする者達を放ったらかしにして軽井沢に行く主人公達に違和感がある。何でこうなったんだろう?

P265:
彼女にとって娘など、どうでもいい存在なのだ。娘の身を案じる親を演じ、悦に入っていた。由規美にとって、自分を被害者の立場に置くことは、何よりの快楽だったのだ。悲劇のヒロインでいられるから。自分を哀れむことができるから。
それが、人面屋敷で、立場が逆転した。土佐に愚弄され、しかも同行の仲間が殺人を犯した。由規美は一転して加害者の立場に立たされることになった。お互いを疑い合う状況では、仲間は同情してくれない。亜衣を共通の敵に仕立てあげて共感を呼ぼうとしても、誰もついてこない。

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ガーディアン

読んだ本の感想。

石持浅海著。2008年8月25日 初版1刷発行。



以下、ネタバレ含む。

こんなに危険な能力を持った人間がいたら、引き籠るしかないのではないか?

【ガーディアン】
主人公の持つ超能力?主人公に対する物理的被害を障壁のようにカットし、悪意を持って接触しようとする人間を攻撃する。攻撃強度は悪意の強さに伴って強化されていく。ガーディアンが発動すると、主人公の右手小指がうずく。

勅使河原冴の章
【登場人物】
会社内からキャリア十年以内の社員をセレクトし、一か月で会社のためになる企画を立案させるプロジェクトに参加する会社員達。テーマは会社のイメージアップ戦略。

勅使河原冴:
主人公。25歳~26歳?デザイン開発担当。本章終盤で栗原洋樹と結婚する。

栗原洋樹:
本社の知財担当。細身の体格らしい。

菅井美穂:
主人公の大学生時代からの同級生。横浜営業所で販売管理を行う。

原田健介:
最年長。静岡県の富士工場で品質管理を担当。

添島則行:
色白で銀眼鏡のエリート風。OAシステムセンター所属のプログラマー。

根岸繭子:
海外事業部。

*****************

主人公のガーディアンが添島則行を殺害する。ガーディアンは悪意に反応するため、添島則行が死ぬためには主人公に殺意以上の悪意を持っていなければならない。プロジェクトで出会ったばかりの主人公を憎む理由を考察する事が、本章の大部を占めると思う。

結局、仕事の悩みを抱えた添島則行がガーディアンを自殺に利用しようとした事になる。ガーディアンは超常的な存在であり、ガーディアンによる殺人は警察も事故として処理せざるをえないため、自殺によって生じる迷惑が自分の責任にならない。

添島則行の恋人であった根岸繭子は復讐のためにガーディアンの弱点を突き止める。その場所に悪意の主体が存在しない罠ならば、主人公を殺す事が出来ると思い、パソコンのプラグで感電させようとするが栗原洋樹によって阻止される。

そして、主人公のガーディアンは消失する。

栗原円の章
勅使河原冴の娘の話。やはりガーディアンの力を持つ。

【登場人物】
栗原円:
主人公。中学二年生?

倉中奈々子:
中学二年生?主人公の友人。

上野:
武装グループのリーダー。長身。

甲田:
武装グループのナンバー2。小柄。

重山:
身体が大きい。

利根:
左腕を怪我する。

奈良:
小心者だが運転が上手い。

****************

切手を買うために主人公達が行った郵便局に、警察から逃げた武装グループが突入する。ガーディアンによって奈良が殺害されるのを見た甲田は、ガーディアンの特性を観測し、対抗しようとするが、徐々に超常的な能力に魅入られていく。

最終的に武装グループは全員死ぬ。

P307~P308:
甲田は、上野に対する関心が急速に薄れていくのを感じた。考えてみれば、いくら上野が優秀で人を惹きつけるといっても、現実についてきたのは、重山や利根、そしてならといった連中じゃないか。つまりどこの組織も雇わないような、一山いくらのチンピラだ。自分は、その程度の人間しか束ねられない男を、ありがたがっていたのか。
(中略)
この二十分間で、甲田の価値観もまた大きく変わったのだ。どう変わったのか。その答えは、目の前にある。長髪の少女。この世ならぬ絶対的な力が存在し、ごく普通にそれを受け入れている人間が、ここにいる。
(中略)
甲田は、自分自身はつまらない人間だと思っている。だからこそ、上位の人間を求め、その人物の元で努力したいと願ってきた。今日までは上野だった。明日からそれが、女子中学生になっても、何もおかしくはない。年齢や性別は関係ないのだ。ただ、自分より上位でさえあれば。

P318:
甲田は今までずっと、上位者を求めていた。忠誠を誓える上位者を。

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マキアヴェリ戦術論

読んだ本の感想。

ニッコロ・マキアヴェリ著。2010年3月10日 第1刷。



とても読み難い本。

16世紀前半のイタリアにおいて、銃火器という新兵器が登場し、マキアヴェリは変化に対し、古代ローマの兵法によって対処する事を提唱したのだと思う。

しかし、それは失敗だった。

第一章 市民軍について
傭兵でなく、市民による自発的な軍に頼るべきとする。平時の軍は危険?

ローマもアッシリアも司令官を交代する慣例が無くなり、継続的に就役するようになると問題が生じた。

第二章 市民軍の武器、訓練、戦闘隊形
ローマ人の武装:
重歩兵(肩当てまである鎧や下垂れが膝まで届く胴着)と軽歩兵(腕に嵌めた円形の楯)に区分されており、約92㎝の剣と短剣、投槍を装備していた。

現在(16世紀)の武装:
鉄の胸当てと約5.2mの槍。さらに切っ先が丸い剣。

ローマ人と16世紀を比較すると、16世紀の方が装備が軽いが、ローマ人の方が装備に守られており、優れているとしている。騎兵と歩兵を比較すると、歩兵の方が様々な場所に移動が可能であり、また、馬が武器を恐れるために騎兵は使い勝手が悪いとする。

以下は隊形については、五列の80人縦隊を基本にし、各列の人数を調整する事で、10人並びで40列や、縦20列で一列20人並びにもする。

****************

隊形についての理解が難しい。多分、絵で説明してもらわないと分からない。火縄銃を音によって兵士を脅かすために役立つとしており、本書が書かれた時点では火縄銃は有効性の低い武器とされていたのだと思う。

第三章 軍事訓練の未来像
砲兵隊についての意見が興味深い。

大砲は運用次第では敵の陣形を破壊するが、軽騎兵による急襲で敵砲兵隊を占拠出来ると主張している。その根拠の一つとして、ローマ軍人ヴェンティディウスがパルティア人と戦った時、パルティア人の弓矢に対抗するために敵軍の宿営地に接近し、戦った例をあげている。

そして、大砲は古代の戦闘隊形や武装を無用にはしないとしている。

第四章 司令官の心得
地形の利用や士気について。

アレキサンダー大王が熱弁で軍隊を鼓舞した例。

宗教についての言及もあり、古代の軍は宗教と宣誓によって規律を保ったと考える。神からの期待は自己への威圧になる。

第五章 敵中行軍
継続的に攻撃される状況への対処。

ローマ軍は慣習的に二~三の騎兵分隊を行進の先頭に出していた。

第六章 陣地戦
地形を利用した戦術について。これも絵や表が無ければ理解し難い。

第七章 都市の防衛
高い城壁を作り、城壁の内側に堀を巡らすとする。城壁が砲撃によって崩れ去った場合、力学的には砲撃している側に倒れる。それによって豪の深さが増える。

P298~P300の名将の心得は面白いと思った。

より価値のあるのは兵士の数よりもその勇気である。しかも時としてこの勇気よりも地形の方が有益である

新しい事、目前に迫った事は軍団を狼狽えさせるものである。在り来たりの事や先の事は問題にされない。このため敵軍と戦う前に小さい戦闘で実体験を積ませて認識を深める必要がある

兵士が兵営に居住している時は畏敬や刑罰を与えなくてはならない。しかし彼等が戦争に参加した時は期待と報酬を与えねばならない

軍団配置は敵に察知されないようにし、戦闘隊形を第二、第三の布陣に移行し易いようにしなければならない

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