君が電話をかけていた場所/僕が電話をかけていた場所

読んだ本の感想。

三秋縋著。2015年8月25日/2015年9月24日 初版発行。





以下、ネタバレ含む。

失敗作だと思う。読まなければ良かった。

作者が本当に書きたかったのは、自分の美と恋人の美が両立しない物語で、主題を貫徹出来なかったために散漫な話になってしまっていると思う。様々なネタを詰め込み過ぎて登場人物の行動が一貫していない。

『君が電話をかけていた場所』P40~P41:
夏という季節は過剰な生をもたらす。太陽は桁外れのエネルギーを発し、雨雲は惜しみなく生命の源を地上に散蒔き、草木は化け物みたいに生長し、虫は狂ったように泣き喚き、人間は熱に浮かされて踊り出す。けれどもそうした過剰な生は、同時に過剰な死も連想させる。怪談が夏の風物詩となっているのは、ただそれが暑さを忘れさせてくれるからというだけではあるまい。多分、僕たちは暗に理解しているのだ。炎が大ききれば大きいほど、燃え尽きるのも早くなるのだということを。過剰な生はエネルギーの前借りによってもたらされているのであり、後で必ずつけを払う羽目になるのだということを。
いずれにせよそれらの過剰な生や死は、再び次の夏がくるまで記憶しておくには大きすぎて、知らず知らずのうちに記憶の中で矮小化されてしまう。だから毎年驚かされるのだ。夏というのはここまで強烈な季節だったのか、と。

『君が電話をかけていた場所』P182:
私も、人が幽霊と呼ぶものが、脳の見せる幻だということは理解しているつもりだわ。でも、錯覚だろうと幻覚だろうと、私は一向に構わないの。そういう現実の外にある事象をたった一つでも目撃できたら、私の世界は、ちょっとだけ意味を変えると思うから

〔吾子浜の八尾比丘尼伝説〕
人魚の肉を食べて不老不死になった女が海中で生活するようになり、若い人魚と漁師の中を取り持つが、人間と人魚は憎み合う関係にあり、人魚の正体を知った漁師と人魚は自殺してしまう。

【あらすじ】
1994年の話(冒頭にある1998年の話は読み落としている?)。

主人公は顔の右側にある痣が原因で、周囲と上手くいかない高校一年生。高校入学直前に、謎の存在が公衆電話から連絡し、痣を消す代わりに、1994年7月13日~1994年8月31日までに初鹿野唯と両想いになるよう賭けを持ちかける(主人公は入学直前に自己に遭って入院したため、7月から高校に通う)。初鹿野唯は、小学校時代の同級生で主人公が好きだった女性。両想いになれなかった場合、主人公は死ぬらしい。

なんだかんだあって主人公は賭けに勝つ。公衆電話の主は八尾比丘尼で、自分が自殺させてしまった漁師と主人公が似ていたため、恋愛を成就させたかったらしい。

【登場人物】
深町陽介:
主人公。高校一年生。顔の右側に痣があったが、無くなる。

初鹿野唯:
深町陽介のクラスメイト。中学二年生から顔の左側に痣が出来る。

荻上千草:
深町陽介のクラスメイト。実は八尾比丘尼で、公衆電話の主だった。

檜原裕也:
深町陽介の中学校時代の友人。天体観測が趣味であるらしい。

以下は、種々の疑問や矛盾。

<初鹿野唯の痣は何だったの?>
主人公と初鹿野唯は、小学校時代の同級生で、中学校時代は音信不通、高校生になって再開する。再会した時に、小学校の時には無かった初鹿野唯の痣に主人公が驚く。

当初、主人公の痣を無くす代わりに初鹿野唯の痣が出来たと思っていたら関係無いらしい。八尾比丘尼は初鹿野唯の痣を消せないの?

⇒多分、最初は初鹿野唯の痣を消すためには主人公の痣を戻さなくてはならない設定だったのだと思う

<初鹿野唯の中学時代の事件はどうなったの?>
初鹿野唯の性格が暗くなったのは、中学三年生の時に友人達の自殺騒動に巻き込まれたからとする。自分と同じように顔に劣等感を持つ友人(船越芽衣、藍田舞子)と三人組になり、仲良くなる。やがて、船越と藍田が自分をいじめる人間の家に放火し、警察沙汰になった事で初鹿野唯は一緒に自殺するように誘われるが、自分だけ逃げて船越と藍田だけが死亡する。

それが精神的外傷になり、性格が暗くなってしまったらしい。終盤で、この事件に関して言及が無いのだが、どのように処理されたのだろう?

⇒無駄な設定だと思う。

<荻上千草に関する矛盾>
物語の途中で、荻上千草は、主人公と同じように公衆電話の主と賭けをしており、下半身不随を治癒する代わりに、1994年8月31日までに主人公と両想いになれなければ死ぬ事が明らかになる。

そして死ぬ直前に、公衆電話の主が電話をかける時に聞こえる音から、公衆電話の主が吾子町の特定地点から電話をかけている事を手紙で伝える。

しかし、終盤になって唐突に八尾比丘尼として登場し、上記は全て嘘であったと言う。

ならば、『君が電話をかけていた場所』のP199にある「今日、深町くんは私に対してとても残酷なことをしたんですよ。気づいてました?」という言葉は何だったの?両想いになれなければ死ぬのに、初鹿野唯の事を気にしているからじゃなかったの?

それと、『君が電話をかけていた場所』のP238~P240で、荻上千草が中学校時代に自分が凡庸である事に気付き、周囲の人間が退屈な人生を送る少女のサンプルのように見えたため、進学先を変更したとしているけど、これも嘘なの?

⇒荻上千草 = 八尾比丘尼という設定は作者が物語の終わらせ方が分からなくなってしまったため、急遽、思い付いた設定なんだと思う

<檜原裕也とは何だったの?>
物語の途中で、主人公は天体観測が好きな初鹿野唯のために、天体望遠鏡を持っている檜原裕也を誘って夜毎に天体観測を行う。やがて、初鹿野唯が檜原裕也に惹かれていっているように思うようになる。

初鹿野唯が自殺未遂を引き起こし、記憶喪失となり、「もしかして、あなたが檜原裕也さんですか?」と主人公に聞いた事で、主人公は自分が檜原裕也であると偽って初鹿野唯と接するようになる。

終盤になって、実は初鹿野唯は主人公の事が好きであって、主人公が自分を檜原裕也であると偽っている事に気付いていると八尾比丘尼は伝える。

P251:
「彼女としても、騙されていることにした方が、色々と都合がよかったんですよ。正面を切って深町くんに好意を表明するのはためらわれたけど、『深町陽介演ずる檜原裕也』になら、気兼ねなく自分の想いを伝えられたんでしょうね」

⇒何のためにそんな事をする必要があるの?記憶喪失の設定は何だったの?

檜原裕也は、保身のために中学校時代の不良グループに主人公を売るが、それは無かった事になっている。主人公は不良グループから逃げるためにバットで不良グループの一人を滅多打ちにしているが、復讐を恐れなくて良いのだろうか?

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「戦争と経済」のカラクリがわかる本

読んだ本の感想。

兵頭二十八著。2003年1月8日 第1版第1刷発行。



物凄く読み難い本。

<日本人の基本的考え方>
日本人は島帝国の伝統で「日本国」が無くなる事を考えない。そのため、貯蓄や公務員就職が人気になる。

しかし、国家が永続するとは限らない。国家の仕組みとして信用作りとしての金融と、物作りのバランスが取れている事が大切。

借金をしてでも巨額の資金を運用した企業の方が強い。

南部銃製造所の創設者 南部麟次郎は、日露戦争で二倍に増えた陸軍工廠を維持するため、自ら営業して新規の仕事を受注しようとした。新規市場として中国市場への売り込みのため、大倉、三井、高田の三代商社を統合し、明治四十一年に「泰平組合」を結成。第一次世界大戦でライバルのドイツ企業に輸出力が無くなった際に、中国市場に兵器を売り込むが、1919年には内戦への加担を恐れる欧米世論に抑れて輸出を自粛する。その後、作り出した武器メーカがミネベアの大森工場に繋がる。

日本政府も兵器を自給自足する必要性を痛感し、1918年に制定した軍需工業動員法により、三菱等が兵器の供給先として浮上する(当時の日本で内燃機関を製造出来るのは造船メーカーのみ、三菱造船所は高い総合力を持っていた)。

三菱重工業は満州事変後に誕生する。

しかし日本の工業力は弱く、第一次世界大戦で使用した砲弾数は米軍が四百億発、英軍が三億発、仏軍は三億四千万発、独軍は五億八千万発であるが、日本は日清戦争で五十万発、日露戦争で一0四万発、日中戦争を含む太平洋戦争で七千四百万発を生産出来ただけだった。

<石炭を持つ国>
近代の国家では、国内で石炭が算出するかが重要な問題だった。

鉄鉱石は重く、石炭は嵩張る。特に製鉄業では膨大な量の石炭を必要とする。そのため、殖産興業策では大炭鉱の近くにコークス・プラントと製鉄所を集める。

フランスでは石炭資源が乏しく、重工業に不利であり、金融資本が栄えても重工業は弱体化した。

一方で英国は石炭資源が豊富であり、強粘結炭(コークスに固めて高炉に投入すると、自重で空道が潰れない)や瀝青炭(軍艦のボイラーで向く)等が産出された。

日本の大炭鉱は本州に存在せず、八幡製鉄所は北九州に建設された。アイルランドの不利を石炭が算出しない事と考え(「英国の経済的勢力」堀川善哉著、大正五年)、満州の石炭権益を保持すべきとした。

その後、エネルギー源が石油に代わる事で、貿易の王座がロンドンからニューヨークに移転する。

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