不滅の書

読んだ本の感想。

萩耿介著。2012年6月25日 初版発行。



作者の意図を慮る事が難しかった。

金銭や信頼、身分、異民族との区別等について。

ウパニシャッド(ヒンドゥー教の聖典)が、ペルシャ語に翻訳され、さらにラテン語に翻訳され(ウプネカット)、ショーペンハウアーによる「意志の表象としての世界」として世界中で読み継がれる。

輪廻転生をテーマにしているようで、各人物は生まれ代わっているようだ。

第一章 扉
2009年?の日本。

帝国不動産販売に勤務する滝川隆(30代半ば)は、吸収合併された会社に在籍していたため、肩身の狭い思いをしていた。滝川隆には、15年以上前にインドで行方不明になった5歳上の兄がおり、残された荷物の中にあった『智慧の書(意志と表象としての世界)』が精神の安定を保つ糧となっている。

白鬼:
滝川隆の同僚。帝国不動産販売の売上二位。肌が白いために白鬼と呼ばれている。

P20:
『個体化の原理』がとり払われた人は、もはや自分と他人を区別することはなく、他の個体の苦しみに彼自身の苦しみと同じくらいの関心を持つ。そしてただ慈悲深いばかりではなく、自分を犠牲にして他の人が救われるなら、自分自身の生命をすすんで犠牲にする心構えさえある

P38:
誰でも青年期の夢から覚めれば、この人間界が偶然と誤謬の国であることを、そして偶然と誤謬は大小を問わずこの世に無慈悲に跋扈し、痴愚と悪意がこれと並んで鞭をふるっていることを認めるようになるだろう

第二章 言葉
1789年~1800年までのフランスが舞台。東洋学者アンクティル・デュペロン(1731年~?年)がウパニシャッドをラテン語に翻訳し、それがショーペンハウアーに引き継がれる。

彼は弟の義父であるメルボワと出会う。金と言葉のどちらが大切か。

デュペロンの弟デランドは、革命政府によって捕らえらる。デランドはメルボワの「金の思想」?によって解放される。しかし、デュペロンの想い人であるエグモン夫人を処刑から救う事は出来なかった。

P79:
あらゆる過去と伝統のすべてが敵。
(中略)
言葉は過去と切り離せない。今も生きている。彼らは言葉も敵に回すのだろうか。これまで使ってきた言葉。百年、千年と受け継がれてきた言葉。それさえ敵と見なすのだろうか。言葉を敵に回すということは知恵を敵にするということだ。

P118:
利益の追求は自由であり、商いはあらゆるものから自由でなければならないということだ。敵からも味方からもな。従ってアンティクル商会の行為は罪に値しない。
(中略)
賄賂など力の本質ではない。金はもっと自由なのだ。敵も味方もなく、国境さえ超えてどこまでも行く。そういう生き物なのだ。とてもわれわれが飼い慣らせる相手ではないのだよ。ダヴィッドとはこの点で一致を見たのだ。

P142:
孤立しているが、それぞれが大きな宇宙の原理の一部と考えれば、孤立は解消され、大きな原理に支えられる。その原理を古代インド人はブラフマンと名付けた。神でない壮大な仕組みとして。その原理の前にはすべては平等である。誕生し、滅び、変転し、再び生まれる。その輪廻からの解脱は原理の認識によって可能になる。

第三章 信頼
1656年~1659年のインドが舞台。

ムガル帝国の皇太子ダーラー・シコーが、ウパニシャッドをペルシャ語翻訳するもの、王位を奪われて処刑されるまで。

P193:
ウパニシャッドとは、もともと『近くに座る』という意味でございます。おそらくは師の教えを聞くためでございましょう。ですからこれ以外の題名は不要と存じます
(中略)
『智慧の書』はいかがでしょう。どこの言葉で書かれようとも、ここに記された智慧は広く読まれるに値します

第四章 憧れ
再び、2009年?の日本。

滝川隆は有給休暇を利用して、兄の足跡を辿るためにインドへ行く。主人公は兄の幻影と出会い、『智慧の書』の原典を入手するが、『智慧の書』はそれを必要とするものの所へと消え去ってしまう。

P279:
金を稼ぎ、家族を養う人生。悪意を浴びながら義務を果たす人生。それは道に生きる牛の人生より上だろうか。考えることを知らず、あるいは考えることをやめてしまった牛の顔は自分の顔より愚鈍だろうか

P291:
聖なるものは俗なるものを越えなければならない。超えきれず、敗北しても執拗に挑み続けなければならない。人は聖なるものに触れて初めて満たされるからだ

***************

難しい本だった。各個人が個人であって、同時に全体となる。異質は思考を促すが、考える事が反発を生む。

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オーダーメイド殺人クラブ

読んだ本の感想。

辻村深月著。2011年5月30日 第1刷発行。



他人の物語から脱却したい中学生の話だと思う。

これ、徳川君が美術で入賞していたり、難関の美大に一発合格していなければこうなっていないんじゃ。そう思うと作者が怖い。徳川君がメールアドレスに使用している『chiyoda』というライトベル作家は誰なんだろう?



主人公 中村アンは、家では母親(赤毛のアンが好き)の構築した物語に組み込まれ、学校では友人である斉藤芹香、成沢倖の物語に組み込まれ、その評価基準に支配されている。

昆虫系:
階級下位のクラス男子の事。地味な男子とも違い、キャラモノでチビだったり、体格が良かったり種類が多い。一人一人に意志を感じないが、クラスで一定数を占めていて、集団で一つの意志を持っているように見える。

*******************

主人公は、友人である斉藤芹香が好きな芸能人?セブンス・クライシスについて、「高校とか大学までならいいけど、二十歳過ぎてまでセブクラに夢中なんてイタい」と言った事から無視されるようになっている。

その後、同級生の徳川勝利(昆虫系)から、教師に反論する意見「だからの前を言って下さい。その前の論理が分かりません」という事で中が修復する。

その後、徳川勝利が動物の死骸を持っているのを見た事から、自分を殺し、特別な存在としてプロデュースするよう依頼する。学校内での身分が違うため、二人はこっそりと相談し、イメージ写真等を撮影。

その一方で、成沢倖が斉藤芹香の元カレである津島と付き合う事になり、二人の争いに中村アンは巻き込まれる。斉藤芹香が自殺未遂する事で、斉藤芹香と成沢倖は仲直りするが、中村アンは二人の共通の敵となり、無視される事になる。

そして、徳川勝利が持っていた動物の死骸が自分の元カレである河瀬の飼い猫の死体であった事にショックを受ける(この話はウヤムヤになって終わる)。

毎日がつらいので、12月に自分を殺すよう依頼するが、当日になって徳川勝利は殺害を拒否する。彼も父親が、中学校の音楽教師と結婚する事で悩んでいた。

そして、高校生になった中村アンは東京の大学に行く事になり、その直前に徳川勝利から自分が描かれたノートを渡され、東京での彼の住所を聞く。

*****************

P40~P41:
私も尊敬できるような大人がやってきて、肩に手をおいて「君は特別だ」とはっきり告げてくれること。同じ教室でそれを見てた芹香や倖の呆気に取られる顔を夢想する。
(中略)
だけど、そんな大人が現れない以上、特別になるためには命でも投下するしかないのだ。それが空っぽな、まだ何も成していない私たちにできる今の時点の精一杯

P149:
芹香はつまり、そうやって、ヒエラルキーのてっぺんから、疑問なくみんなの価値観を覆してしまえる女子なのだ。自分とは直接関係ない違うクラスの女子をわざわざ糾弾しにいけるくらいのバイタリティーに満ち、一人の女の子から最大の武器になりうるものを奪い、へし折る。

P153:
誰かの悪口を言ってるときが、芹香は一番輝いている

P229:
どうして自分たちに参加しないのか―、芹香と一緒にいるなんている空気の読めないことをするのか、と言葉の外で私を責めている

P246:
芹香や倖とこんなふうになって、私には、一緒の班になれる子がいない。立っていられる場所がない

P254:
班替えでいい人と一緒になれない事実を、みんなにどう見られているか考えたら、二人には悪いけど肩身が狭く、一緒にいるところを人に見られたくなかった

P255:
芹香は私とやりたがってたダブルデートを、倖と津島カップルとできるだろう。つまりはその程度のことだった。芹香にとって大事なのは、津島でも倖でもない

P266:
本の中の清潔な世界はどこにも存在しない。「少女」であることに価値がある、人形たちの無機質な表情こそ尊ばれるあの空間は幻想で、現実を生きるリア充たちには、そんなもの無価値だ

P312:
クラスのどの子が、ヒエラルキーのどのあたりで、どんな傾向のグループに属してて、カースト的にはどんな立場で。そんなことに全部自覚がある自分がくだらなかった。だけどその一方で、私たちは自覚せざるを得ないし、周りに敏感でなければならない。くだらないことを知ってても、ここで生きていかなきゃならないんだから

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戦闘破壊学園ダンゲロス

読んだ本の感想。

架神恭介著。2011年2月1日 第1刷発行。



読まなければ良かった。TRPGのノベライズらしい。

以下は、Wikipediaの『戦闘破壊学園ダンゲロス』の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%A6%E9%97%98%E7%A0%B4%E5%A3%8A%E5%AD%A6%E5%9C%92%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%83%AD%E3%82%B9

超能力を持った高校生達がグループに分かれて戦う話。キャラクターを作成した人は山田風太郎先生や南條範夫先生が好きらしく、疣蛙男、マゾ戦士、etcの『駿河城御前試合』に登場したようなキャラクターが多数登場する。

汚い描写やグロ系の描写が多いので、苦手な人もいると思う。

魔人という超能力者達が実在する世界の、希望崎高校という高校で以下のグループが戦う。

生徒会:
男性を皆殺しにする能力を持つ友釣香魚による待伏せを基本戦略とする。

番長グループ:
性別を反転させる能力を持つ両性院男女によって、女となり生徒会の待伏せを突破しようとする。

戦いの最初から、「転校生」という三人組が異世界から召喚される。「転校生」は生贄を報酬として、希望崎高校内の全ての魔人殲滅を約束する。

生徒会と番長グループは、「転校生」を脅威としながらも、まずは互いの勝敗を決する事とし、裏切者を潜ませていた生徒会が勝利する。勝利した生徒会を自衛隊の魔人小隊が、魔人殲滅のために襲撃し、生徒会もほぼ壊滅する。

「転校生」側は、魔人小隊も殲滅対象とし、以下の手順で学園内の人間を殺そうとする。

前提:
転校生には、ユキミ(他人の能力の範囲を拡大・縮小する能力)、黒鈴(死体の脳を食べる事で死者の能力を模倣する能力)、ムー(UFOを操作する能力)の三人がいる(ムーは途中で死亡している)。

①最初に黒鈴がムーの能力を模倣し、友釣香魚の死体を自分達の近くに運ぶ
②両性院男女の能力の範囲を学校中に拡大し、学校内の人間を全員男にする
③両性院男女の能力で「転校生」を女に転換する
④友釣香魚の能力を模倣し、能力の範囲を学校内に拡大して、学校中の男を殺す

上記の実行中に、両性院男女が「転校生」になる方法 = 自分が神に選ばれたと認識する事を知り、「転校生」となる。黒鈴は男を殺す能力を発動するが、両性院男女の元の性別が女性であったため、殺す事が出来ずに「転校生」は敗北する。

*****************

P274:
ボタンというのは元々人に押されるために作られたものであるからだ。つまり、ボタンという存在は「押せる」という情報を初めから備えたものである。たとえば紙を見ると、あなたは紙を「破れる」と感じるであろう。これは紙自体が「破れる」という情報を備えているからに他ならない。この概念をアメリカの知覚心理学者ジェームズ・J/ギブソンが「アフォーダンス」と名付けているのは良く知られた事実である。

P338:
感情的に戦いを挑むのでは士気も上がらぬ。何か堂々とした、自分達の行動を言い繕える、もっともな言い分が必要だったのである。「戦いなぞというものは理性的に行うものではない。感情的におっぱじめて……、後からその体裁を整える

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PSYCHO-PASS サイコパス (0) 名前のない怪物

読んだ本の感想。

高羽彩著。2013年4月18日 第1刷発行。



以下は、Wikipediaの『PSYCHO-PASS』の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/PSYCHO-PASS

2109年11月1日(金)~2110年1月15日(水)頃の話かな。

PSYCHO-PASS本編の3年前に発生した「標本事件」の話。佐々山さんも標本にされてしまうのか。

第一の標本:
2109年11月5日に、橋田良二議員が死体を標本化(液体合成樹脂で固定化)した状態で発見される。議員は、廃棄区画(社会システム管理外の人々が暮らす)の解体運動を行っていた。

第二の標本:
千代田区外神田パブリックパークにて、標本化された少女の遺体が発見される。

刑事達は、第二の標本が10年以上前のものである事に気付き、遺体の顔を検索したところ、桜霜学園社会科教諭 藤間幸三郎と遺体の顔が酷似している事が判明する。

藤間幸三郎は、廃棄区画出身であり、廃棄区画に双子の妹の死体を隠していた。廃棄区画解体運動によって死体を隠す事が困難になり、逆に世界に遺体を展示する事にしたらしい。

標本化の薬剤は、槙島聖護という人物からもらった。

⇒10年間も冷蔵庫で保存していたなら、ミイラ化しているのでは?

結局、犯人はつかまらず、佐々山光留はミイラ化し、藤間幸三郎の教え子である桐野瞳子は薬物による脳機能損傷で意思疎通不可能になる。

P206:
この国はシビュラシステムによって完成された、超格差社会だと。経済活動はすべて国内で完結し、その富はシビュラシステムの職業適性考査という概念のもと、ほぼ平等に国民に分配される。誰もが等しく豊かな暮らしを享受できるのだ。ただし、シビュラシステムの管理下にいれば、である。
(中略)
廃棄区画で育つ無戸籍児童が、まさにあぶれ出したそれであった。

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インターネット回線の接続が悪い

理由が分からないが、読み込みや書き込みが遅い。

何故なんだ。

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Mission5:マインド・コントロール

読んだ本の感想。

ロバート・マカモア著。2009年10月30日 第1刷発行。



なんて恐ろしい世界観なんだろうと思いながら読んだ。

英国情報局の裏組織、CHERUB(10歳~17歳以下の子供達が活躍するスパイ機関)を舞台とするシリーズの第五段。CHERUBの構成員数は約300人くらいらしい。

主人公のジェームズ・アダムズは14歳だが、泥酔して11歳の妹に絡んだり、行動が暴力衝動と性欲に支配されていたりと中年男性のようだ。

そんな主人公や妹、同じくCHERUBの構成員であるデーナ・スミス(15歳)が、オーストラリアのカルト宗教団体サバイバーズに信者を装って潜入する。

*******************

読んでいると、カルト宗教団体とCHERUBが大差無いように思えてくる。双方ともに階級があり、組織への貢献によって階級が上がる事になっているし、目的のために嘘をつくし、色仕掛けも使う。

<カルト集団の洗脳の手口>
世界を破滅せんとする悪魔が存在しており、安全に暮らすために自らの共同体で暮らすとする。共同体を去る者は怠け者であり、悪と対抗出来ないと考える。

ポジティブな思考や発言を奨励され、その通りに行動すると明るい気分になる。すると疑問や批判が締め出されてしまう。頻繁な肉体的接触や運動も操作され易い心理状態を生む。

呼吸訓練として、深呼吸を行うと血中酸素濃度が上昇し、微かな高揚感が生み出される。動作のみを大きくし、呼吸を平常に保つ。また、嫌な気分になるものを思い出す事も対抗策として有効らしい。

***********************

主人公は教団中枢への潜入に成功するが、そこで教祖の実子ラスボーン(11歳)に女子シャワー室の覗きに誘われ、覗きを行った事で敬虔な信者でない事を見抜かれてしまう。

教団がインドネシアで二隻のタンカーを沈没させようとしている事を突き止め阻止し、教祖が死亡した事等により教団は壊滅する。ラスボーンはCHERUBに入会する。

P330~P331:
イヴは、コミューンの内でも外でも常にしっかり者だった。無駄のない受けこたえ、きりっとした笑顔、目的を見据えた迷いのない足取り。ところが、こなすべき日課から突如として解放されたとたん、イヴは完全なだめ人間になった。八歳のときからコミューンで暮らし、デビルやエンジェルがどうのこうのといったサバイバーズのたわごとを頭につめこみすぎたせいで、現実の世界は恐ろしいものだという考えが、すっかり染みついてしまったのだ。
(中略)
サバイバーズは、こうやって人間をだめにしているんだと思うと、デーナは腹わたが煮えくりかえった。

⇒この部分を読んで、お前が言うなと思った

結局、デーナはタンカー破壊を防ぐ過程で足の中指を欠損するが、主人公は足の指の爪を切る手間が10%減るとかいって、そんなに危険な任務が15歳の少女に押し付けられている事に疑問を持たない。

妹のローレンはCHERUB史上で三番目に若い黒シャツ着用者となった事で嬉し泣きする。こいつらの方がよっぽど危険なカルト集団じゃないか。

こういう児童書がベストセラーになる事が怖い。『窓から逃げた100歳老人』とか『国を救った数学少女』とかでも、登場人物達が暴力や性犯罪を躊躇わず、それをユーモアとして解釈する事が怖かった。欧州と日本の価値観は違うのだろうか?

柳広司先生の『ダブルジョーカー』で「躊躇無く殺せ 潔く死ね」をモットーとする「風機関」が登場するが、それをさらに過激したようだ。僕は目立たないように行動するスパイの方が好きだ。

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怪談

読んだ本の感想。

柳広司著。2011年12月20日 初版1刷発行。



後ろにいくに連れて話が雑になっていく。

以下を参考にしたらしい。



雪おんな
ミノワ工務店 副社長 箕輪健太郎(36歳)が、コンパニオンをしている本庄由紀子(22歳)を気にする話。

10年前に、箕輪健太郎は自分の借金を母の弟である茂叔父に被せるために、睡眠薬入りのワインを飲ませ、大量のドライアイスで体を囲んで心臓麻痺を起こす。ドライアイスは気化する。

家出しては企業の保養所で過ごしていた本庄由紀子は、茂叔父の髪の毛が凍る場面を目撃し、逃げ出していた。箕輪健太郎は、本庄由紀子を見張るために結婚を申し込む事にする。

ろくろ首
磯貝平太(32歳)が、長野県警の丸山(50代)の取り調べを受ける話。

磯貝平太は医者であり、薬物の横流しが露見したために菊池院長を殺害し、体をバラバラにして山中に埋めた後だった。

菊池院長は、磯貝平太が死体を解体するバスルームの場所を確認している隙に、磯貝平太のスーツの左袖に自分の血を擦り付け、気付かれないように拭い去っていた。

拭い去った血の跡は良く見れば分かる。

むじな
赤坂俊一(32歳)がテレビ番組の内容を思い出す。

夫を殺した不倫中の男女が、警官姿でコスプレに興じていた事を活かし、男が無人の交番で警察を装って待機し、女が夫に乱暴されたと言って帰宅中の男性を家に誘い、死体を発見させ、交番に行かせたところで一人で交番に待機させ、本当の警察に通報し犯人に仕立てる。

食人鬼
作場邦夫巡査と室田勝巡査長が、禁止されている食材の保管場所を捜索し、そこで人肉を発見する。

途中で作場巡査は薬物を盛られるが、気付くと人肉が減っている。室田巡査長が食べたようだ。

鏡と鐘
遠江聡美(62歳)が自分が作成した記憶の無いチャリティー用ホームページの募集先に住所を指定される話。

探偵は遠江聡美自身がホームページ作成を依頼しているとするが、遠江聡美が主宰したチャリティーに大切な鏡を拠出してしまい、それが原因?で自殺した間ゆかりの父 梶原圭一郎が探偵と組んで、遠江聡美が呆けているように見せるための行為だった。

梶原圭一郎は、幼い娘が鏡を見ながら一人で喋っている場面を見て、恐怖で家出し、それ以来、娘と会っていなかったらしい。計画も自殺した娘の計画だった。

耳なし芳一
ロックバンド 鬼火の芳一が、不思議な存在に魅入られる話。ライブハウスのオーナーである赤間は、若者の才能を吸い取る不思議な存在を知っており、彼らの対象が「才能があるだけでなく、顔に傷一つ無い、容子の良い19歳、20歳の若者」に限られる事から、顔に塗るイベント用ペイントに薬品を仕込んで、芳一の顔に傷を残す事で不思議な存在から助ける。

鬼火のメジャーデビューが実現し、芳一は喜ぶ。

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憧れの女の子

読んだ本の感想。

朝比奈あすか著。2013年2月24日 第1刷発行。



以下、ネタバレ含む。

第二話が面白かった。ネタバレ無しで読んで欲しい話。

憧れの女の子
二人の子持ち(両方とも男)である植松俊彦(38歳)の妻 敦子(36歳)が女児を産もうとする話。結局、6年が経過しても男児ばかりが二人産まれ、五人目を妊娠中。

ある男女をとりまく風景
納得した。

・専業主婦
・派遣社員
・平日にクラフト講座でオリーブ石鹸や簡単モビール作成

上記は女性がやれば普通だけれど、男性がやると奇妙に思える。

30歳?の夫婦 両角マスミ、ジュンの話。

男性が書くと、男の側が夢のような話を持ち出して、挑戦する振りをし続ける展開になると思う。簡単に負けを認める事は難しい。

以下は、女性的感覚の文章だと思う。

P71:
マスミもジュンが友人としての好意を超える瞳で自分を追っていることに気づいていた。だからこそ、他に交際相手がいる時もちょくちょくジュンに声をかけてはあの瞳を確認し、揺らぐ自信をこっそり取り戻したものだ。

P73:
もったいないな、とマスミは思った。ジュンは、よく見れば整った顔立ちなのに、磨かれるチャンスがなかったんだろう。磨く気もなく、磨いてくれる人もいなかったのか。

P74:
六年ぶりに会ったジュンは別人のように垢ぬけていた。グレーのスーツに包まれた体はひきしまり、すこし日に灼けた顔は自信に満ちていた。

P90:
自分の妻が他の男たちを欲情させるのだという事実にマスミは発情した。

弟の婚約者
33歳のインストラクター 沙織が弟の敦史(25歳?)の彼女と会う話。

沙織は、結婚直前までいった彼氏と、姑関係が原因で別れた経験があり、弟が家族より彼女を優先する事に複雑な感情を抱くらしい。

尿漏れ防止のためのエクササイズとか、老いに逆らう話とか良く分からなかった。

リボン
ゲイであり、「BONBON cafe」を運営するタケル(34歳)の話。

P171:
男子集団において、タケルの地位は一気にあがった。可愛らしい女と付き合う男はふつうは嫉妬されるが、智美は可愛らしい上に行動的で正義感の強い人気者だったから、彼女が認めた男だということで、一目おかれたようだった。

P194:
自分が周りにどう思われているかを知る前に、どう思われそうかを素早く察知し、それに対応して言動を変えた。自分の立ち位置と、どう振る舞えばいちばん楽にやり過ごせるかということを、瞬時にこまかく計算した。

わたくしたちの境目は
妻を亡くして一年が経過した勇造が、息子夫婦、孫の三人で温泉に行く話。乳房再建手術とか、男女混浴とか。

*********************

作者は愛情を描く場合に、三人必要な人なのだと思った。

男と女と誘惑者。

「憧れの女の子」では、主人公である植松俊彦を誘惑する羽入絵梨菜(入社一年目)が登場する。妻には無い若さという価値を持ちながらも、妻の方が美人であると思う。そして、羽入は妻に嫌がらせの電話をかけるようになるが転職して別の彼氏を見つける。

「ある男女をとりまく風景」では、共通の友人である熊野の存在がポイントだと思う。

地味なジュンに対して派手な熊野。マスミは、熊野がジュンを見下しているように感じている。学生時代の飲み会でも、熊野は一人で参加する勇気が無いからジュンを誘い、自分が溶け込んだらジュンを放っておく(マスミの意見)。

マスミによる熊野への批判は、作者が嫌いな女性への攻撃を男性によって代弁させているように思う。自分が嫌いな女がモーションをかえる男が、自分を盗み見ている。このような状況が好きなのではないか?

作品世界における恋愛は、自分が嫌いな女に勝つための手段なのだ。階層上位にいる男が、零落した事で自分の手に入る事になる。しかし、零落した事で、他の女より優位に立つための道具には出来なくなったため分かれる。

スタンダールみたいだ。

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人面屋敷の惨劇

読んだ本の感想。

石持浅海著。2011年8月3日 第一刷発行。



以下、ネタバレ含む。

後半で主人公が狂ってしまっている。村野哲美さんが気の毒。

【登場人物】
矢部美菜子:
主人公。三十代半ば?息子は勇作。運営するWebサイト『今夜もあなたと夢を見たい』が盛況で高収入。

糸居由規美:
丸眼鏡の女性。娘は春香。娘を虐待していたらしい。

加茂悟朗:
月刊インベスターズ・ジャパンの記者。娘は津村有紗(恋人の娘であるため名字が違う)。丸顔に天然パーマ、黒縁眼鏡。

中川弘也:
息子は正勝。三十代半ば?ややエラが張って、髭の剃り跡が濃い。美男子ではない。妻子が交通事故に遭うが、息子の遺体だけが見つからなかった。

藤田昭信:
猛禽類を思わせる風貌。息子は敦。

菅山秀一:
弟が土佐に誘拐されたとしているが、実際には土佐の養子。

土佐晴男:
連続幼児誘拐事件の犯人。富豪。50歳くらい。誘拐した児童の絵を描く趣味がある。丸坊主に近い髪型に顎髭、銀縁眼鏡に細い眼。

村野(土佐)亜衣:
誘拐されて土佐に洗脳された高校二年生。碩徳高校という進学校の生徒らしい。

【あらすじ】
12年前~10年前にかけて東京都西部で発生した連続幼児失踪事件の容疑者 土佐の屋敷(人面屋敷)にて若者を目撃したという情報があり、被害者会の有志が土佐の家に押し掛ける。

土佐の家で誘拐された幼児達の絵を見た藤田が激怒し、ナイフで土佐を殺害。

通報する前に家探しして、子供達を探す。誘拐された子供達の中で村野(土佐)亜衣が現れるが、土佐に洗脳されており、自分は虐待親から助け出されたと思い込んでいる。

そして、家探ししている内に、拘束されていた藤田が死亡。このままでは警察が無実とした男の家に押し掛けて殺害し、家探しをした事になってしまう。通報する前に幼児誘拐の証拠や犯人を見つけなくてはならない。

被害者会の中に犯人がいる事になり、犯人を推理するが、終盤で自分の子供が解体されていく様子を描いたスケッチブックを見つけた糸居が半狂乱になり、加茂を殺害し自分も死亡。

中川は、菅山が土佐の家に慣れている事から、被害者の兄でなく、土佐の養子であると推理。村野(土佐)亜衣と一緒になる前に藤田を殺す余裕があった事を指摘する。

何故か、中川と主人公は菅山を警察に突き出さず、軽井沢の別荘に自分達の子供が生きている可能性を指摘され、軽井沢に向かうところで終わる。

やたらに村野(土佐)亜衣が威張っているけど、土佐が幼児誘拐者である事等を考慮すると、もっと弱い立場なんじゃないの?

村野(土佐)亜衣は実親に虐待されていたと思い込んでいるけど、その洗脳は修正しなくて良いの?

警察が調べれば、被害者会の菅山が実は土佐の養子である事が判明するだろうけど逃げ切れるの?

土佐の遺産を村野(土佐)亜衣が相続するから実親に頼らなくて大丈夫とするけど、戸籍や法律、賠償は大丈夫なの(主人公はシングルマザーで親と仲が悪く、住民票を東京に移せないために苦労する記述がある)?

何より、平然と殺人をする者達を放ったらかしにして軽井沢に行く主人公達に違和感がある。何でこうなったんだろう?

P265:
彼女にとって娘など、どうでもいい存在なのだ。娘の身を案じる親を演じ、悦に入っていた。由規美にとって、自分を被害者の立場に置くことは、何よりの快楽だったのだ。悲劇のヒロインでいられるから。自分を哀れむことができるから。
それが、人面屋敷で、立場が逆転した。土佐に愚弄され、しかも同行の仲間が殺人を犯した。由規美は一転して加害者の立場に立たされることになった。お互いを疑い合う状況では、仲間は同情してくれない。亜衣を共通の敵に仕立てあげて共感を呼ぼうとしても、誰もついてこない。

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ガーディアン

読んだ本の感想。

石持浅海著。2008年8月25日 初版1刷発行。



以下、ネタバレ含む。

こんなに危険な能力を持った人間がいたら、引き籠るしかないのではないか?

【ガーディアン】
主人公の持つ超能力?主人公に対する物理的被害を障壁のようにカットし、悪意を持って接触しようとする人間を攻撃する。攻撃強度は悪意の強さに伴って強化されていく。ガーディアンが発動すると、主人公の右手小指がうずく。

勅使河原冴の章
【登場人物】
会社内からキャリア十年以内の社員をセレクトし、一か月で会社のためになる企画を立案させるプロジェクトに参加する会社員達。テーマは会社のイメージアップ戦略。

勅使河原冴:
主人公。25歳~26歳?デザイン開発担当。本章終盤で栗原洋樹と結婚する。

栗原洋樹:
本社の知財担当。細身の体格らしい。

菅井美穂:
主人公の大学生時代からの同級生。横浜営業所で販売管理を行う。

原田健介:
最年長。静岡県の富士工場で品質管理を担当。

添島則行:
色白で銀眼鏡のエリート風。OAシステムセンター所属のプログラマー。

根岸繭子:
海外事業部。

*****************

主人公のガーディアンが添島則行を殺害する。ガーディアンは悪意に反応するため、添島則行が死ぬためには主人公に殺意以上の悪意を持っていなければならない。プロジェクトで出会ったばかりの主人公を憎む理由を考察する事が、本章の大部を占めると思う。

結局、仕事の悩みを抱えた添島則行がガーディアンを自殺に利用しようとした事になる。ガーディアンは超常的な存在であり、ガーディアンによる殺人は警察も事故として処理せざるをえないため、自殺によって生じる迷惑が自分の責任にならない。

添島則行の恋人であった根岸繭子は復讐のためにガーディアンの弱点を突き止める。その場所に悪意の主体が存在しない罠ならば、主人公を殺す事が出来ると思い、パソコンのプラグで感電させようとするが栗原洋樹によって阻止される。

そして、主人公のガーディアンは消失する。

栗原円の章
勅使河原冴の娘の話。やはりガーディアンの力を持つ。

【登場人物】
栗原円:
主人公。中学二年生?

倉中奈々子:
中学二年生?主人公の友人。

上野:
武装グループのリーダー。長身。

甲田:
武装グループのナンバー2。小柄。

重山:
身体が大きい。

利根:
左腕を怪我する。

奈良:
小心者だが運転が上手い。

****************

切手を買うために主人公達が行った郵便局に、警察から逃げた武装グループが突入する。ガーディアンによって奈良が殺害されるのを見た甲田は、ガーディアンの特性を観測し、対抗しようとするが、徐々に超常的な能力に魅入られていく。

最終的に武装グループは全員死ぬ。

P307~P308:
甲田は、上野に対する関心が急速に薄れていくのを感じた。考えてみれば、いくら上野が優秀で人を惹きつけるといっても、現実についてきたのは、重山や利根、そしてならといった連中じゃないか。つまりどこの組織も雇わないような、一山いくらのチンピラだ。自分は、その程度の人間しか束ねられない男を、ありがたがっていたのか。
(中略)
この二十分間で、甲田の価値観もまた大きく変わったのだ。どう変わったのか。その答えは、目の前にある。長髪の少女。この世ならぬ絶対的な力が存在し、ごく普通にそれを受け入れている人間が、ここにいる。
(中略)
甲田は、自分自身はつまらない人間だと思っている。だからこそ、上位の人間を求め、その人物の元で努力したいと願ってきた。今日までは上野だった。明日からそれが、女子中学生になっても、何もおかしくはない。年齢や性別は関係ないのだ。ただ、自分より上位でさえあれば。

P318:
甲田は今までずっと、上位者を求めていた。忠誠を誓える上位者を。

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マキアヴェリ戦術論

読んだ本の感想。

ニッコロ・マキアヴェリ著。2010年3月10日 第1刷。



とても読み難い本。

16世紀前半のイタリアにおいて、銃火器という新兵器が登場し、マキアヴェリは変化に対し、古代ローマの兵法によって対処する事を提唱したのだと思う。

しかし、それは失敗だった。

第一章 市民軍について
傭兵でなく、市民による自発的な軍に頼るべきとする。平時の軍は危険?

ローマもアッシリアも司令官を交代する慣例が無くなり、継続的に就役するようになると問題が生じた。

第二章 市民軍の武器、訓練、戦闘隊形
ローマ人の武装:
重歩兵(肩当てまである鎧や下垂れが膝まで届く胴着)と軽歩兵(腕に嵌めた円形の楯)に区分されており、約92㎝の剣と短剣、投槍を装備していた。

現在(16世紀)の武装:
鉄の胸当てと約5.2mの槍。さらに切っ先が丸い剣。

ローマ人と16世紀を比較すると、16世紀の方が装備が軽いが、ローマ人の方が装備に守られており、優れているとしている。騎兵と歩兵を比較すると、歩兵の方が様々な場所に移動が可能であり、また、馬が武器を恐れるために騎兵は使い勝手が悪いとする。

以下は隊形については、五列の80人縦隊を基本にし、各列の人数を調整する事で、10人並びで40列や、縦20列で一列20人並びにもする。

****************

隊形についての理解が難しい。多分、絵で説明してもらわないと分からない。火縄銃を音によって兵士を脅かすために役立つとしており、本書が書かれた時点では火縄銃は有効性の低い武器とされていたのだと思う。

第三章 軍事訓練の未来像
砲兵隊についての意見が興味深い。

大砲は運用次第では敵の陣形を破壊するが、軽騎兵による急襲で敵砲兵隊を占拠出来ると主張している。その根拠の一つとして、ローマ軍人ヴェンティディウスがパルティア人と戦った時、パルティア人の弓矢に対抗するために敵軍の宿営地に接近し、戦った例をあげている。

そして、大砲は古代の戦闘隊形や武装を無用にはしないとしている。

第四章 司令官の心得
地形の利用や士気について。

アレキサンダー大王が熱弁で軍隊を鼓舞した例。

宗教についての言及もあり、古代の軍は宗教と宣誓によって規律を保ったと考える。神からの期待は自己への威圧になる。

第五章 敵中行軍
継続的に攻撃される状況への対処。

ローマ軍は慣習的に二~三の騎兵分隊を行進の先頭に出していた。

第六章 陣地戦
地形を利用した戦術について。これも絵や表が無ければ理解し難い。

第七章 都市の防衛
高い城壁を作り、城壁の内側に堀を巡らすとする。城壁が砲撃によって崩れ去った場合、力学的には砲撃している側に倒れる。それによって豪の深さが増える。

P298~P300の名将の心得は面白いと思った。

より価値のあるのは兵士の数よりもその勇気である。しかも時としてこの勇気よりも地形の方が有益である

新しい事、目前に迫った事は軍団を狼狽えさせるものである。在り来たりの事や先の事は問題にされない。このため敵軍と戦う前に小さい戦闘で実体験を積ませて認識を深める必要がある

兵士が兵営に居住している時は畏敬や刑罰を与えなくてはならない。しかし彼等が戦争に参加した時は期待と報酬を与えねばならない

軍団配置は敵に察知されないようにし、戦闘隊形を第二、第三の布陣に移行し易いようにしなければならない

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賢帝と逆臣と

読んだ本の感想。

小前亮著。第一刷発行 2014年9月10日。



以下は、Wikipediaの『三藩の乱』の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E8%97%A9%E3%81%AE%E4%B9%B1

皇帝は孤独であるという話なのかな?

主に、康熙帝(玄燁)と、清のスパイとして呉三桂の部下となる李基信(1641年~?年)の視点から物語は記述される。

神を目指すとまでされる康熙帝に対して、呉三桂は決断力に欠ける。しかし、李基信は欠けるもののある呉三桂にこそ仕えたいと思う。

P227~P229:
玄燁ははっとした。討伐軍の編成を満州族に委ねたのは、政治的な判断というより、責任を分散しようという意識が働いた結果ではないか。失敗したときの批判をおそれて、逃げ道をつくっているのではないか。そのような弱気で勝てるのか。
(中略)
「失敗したときは、命令した朕が責任をとる。そなたのせいにはしない」
(中略)
もうひとりの自分に、非難してほしかった。暴君に堕ちたのだと、罵ってほしかった。しかし、やはり内なる声はもう聞こえない。

P231:
呉三桂たちの叛乱は、まったく支持を得られていないようだ。清朝の統治は安定していたから、どんなに大義名分が立派であっても、民はついてこない。まして、呉三桂の掲げる漢族復権と明朝復興は、説得力に乏しいのだ。

P280~P281:
叛乱軍はあまり兵士を補充できていない。負けても買っても、次の戦いで兵が増えないのだ
(中略)
民の支持を得られていないということだ。農民の叛乱が怖いのは、進むごとに参加者が増え、いったん鎮圧してもすぐに別の場所で蜂起が起こる点だが、いまの叛乱軍にそうした要素はない。城市を奪っても、叛乱軍の掲げる大義に賛同して加わる者が少ないのだ。徴兵を強行すれば、よけいに反感を買うのはわかっているし、士気の低い兵がいれば軍は弱くなる。だから兵を増やせないのだ。

P296~P297:
決断できなかった呉三桂を責めようとは思わなかった。それが人間なのだ。進言するだけの立場で合理的に渡河するべきだと判断するのと、すべての責を負って行動するのとでは、心の負担がまったく異なる。真の英雄なら、迷うことすらしなかった。呉三桂は覇者となれる器ではなかった。
(中略)
補佐を必要とするのは、何かに欠けた男だ。

************

ところで、三藩の一人である耿精忠に仕える李光地と陳夢雷の逸話は何だったのだろう?李光地が康熙帝に阿っているという事?

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君が電話をかけていた場所/僕が電話をかけていた場所

読んだ本の感想。

三秋縋著。2015年8月25日/2015年9月24日 初版発行。





以下、ネタバレ含む。

失敗作だと思う。読まなければ良かった。

作者が本当に書きたかったのは、自分の美と恋人の美が両立しない物語で、主題を貫徹出来なかったために散漫な話になってしまっていると思う。様々なネタを詰め込み過ぎて登場人物の行動が一貫していない。

『君が電話をかけていた場所』P40~P41:
夏という季節は過剰な生をもたらす。太陽は桁外れのエネルギーを発し、雨雲は惜しみなく生命の源を地上に散蒔き、草木は化け物みたいに生長し、虫は狂ったように泣き喚き、人間は熱に浮かされて踊り出す。けれどもそうした過剰な生は、同時に過剰な死も連想させる。怪談が夏の風物詩となっているのは、ただそれが暑さを忘れさせてくれるからというだけではあるまい。多分、僕たちは暗に理解しているのだ。炎が大ききれば大きいほど、燃え尽きるのも早くなるのだということを。過剰な生はエネルギーの前借りによってもたらされているのであり、後で必ずつけを払う羽目になるのだということを。
いずれにせよそれらの過剰な生や死は、再び次の夏がくるまで記憶しておくには大きすぎて、知らず知らずのうちに記憶の中で矮小化されてしまう。だから毎年驚かされるのだ。夏というのはここまで強烈な季節だったのか、と。

『君が電話をかけていた場所』P182:
私も、人が幽霊と呼ぶものが、脳の見せる幻だということは理解しているつもりだわ。でも、錯覚だろうと幻覚だろうと、私は一向に構わないの。そういう現実の外にある事象をたった一つでも目撃できたら、私の世界は、ちょっとだけ意味を変えると思うから

〔吾子浜の八尾比丘尼伝説〕
人魚の肉を食べて不老不死になった女が海中で生活するようになり、若い人魚と漁師の中を取り持つが、人間と人魚は憎み合う関係にあり、人魚の正体を知った漁師と人魚は自殺してしまう。

【あらすじ】
1994年の話(冒頭にある1998年の話は読み落としている?)。

主人公は顔の右側にある痣が原因で、周囲と上手くいかない高校一年生。高校入学直前に、謎の存在が公衆電話から連絡し、痣を消す代わりに、1994年7月13日~1994年8月31日までに初鹿野唯と両想いになるよう賭けを持ちかける(主人公は入学直前に自己に遭って入院したため、7月から高校に通う)。初鹿野唯は、小学校時代の同級生で主人公が好きだった女性。両想いになれなかった場合、主人公は死ぬらしい。

なんだかんだあって主人公は賭けに勝つ。公衆電話の主は八尾比丘尼で、自分が自殺させてしまった漁師と主人公が似ていたため、恋愛を成就させたかったらしい。

【登場人物】
深町陽介:
主人公。高校一年生。顔の右側に痣があったが、無くなる。

初鹿野唯:
深町陽介のクラスメイト。中学二年生から顔の左側に痣が出来る。

荻上千草:
深町陽介のクラスメイト。実は八尾比丘尼で、公衆電話の主だった。

檜原裕也:
深町陽介の中学校時代の友人。天体観測が趣味であるらしい。

以下は、種々の疑問や矛盾。

<初鹿野唯の痣は何だったの?>
主人公と初鹿野唯は、小学校時代の同級生で、中学校時代は音信不通、高校生になって再開する。再会した時に、小学校の時には無かった初鹿野唯の痣に主人公が驚く。

当初、主人公の痣を無くす代わりに初鹿野唯の痣が出来たと思っていたら関係無いらしい。八尾比丘尼は初鹿野唯の痣を消せないの?

⇒多分、最初は初鹿野唯の痣を消すためには主人公の痣を戻さなくてはならない設定だったのだと思う

<初鹿野唯の中学時代の事件はどうなったの?>
初鹿野唯の性格が暗くなったのは、中学三年生の時に友人達の自殺騒動に巻き込まれたからとする。自分と同じように顔に劣等感を持つ友人(船越芽衣、藍田舞子)と三人組になり、仲良くなる。やがて、船越と藍田が自分をいじめる人間の家に放火し、警察沙汰になった事で初鹿野唯は一緒に自殺するように誘われるが、自分だけ逃げて船越と藍田だけが死亡する。

それが精神的外傷になり、性格が暗くなってしまったらしい。終盤で、この事件に関して言及が無いのだが、どのように処理されたのだろう?

⇒無駄な設定だと思う。

<荻上千草に関する矛盾>
物語の途中で、荻上千草は、主人公と同じように公衆電話の主と賭けをしており、下半身不随を治癒する代わりに、1994年8月31日までに主人公と両想いになれなければ死ぬ事が明らかになる。

そして死ぬ直前に、公衆電話の主が電話をかける時に聞こえる音から、公衆電話の主が吾子町の特定地点から電話をかけている事を手紙で伝える。

しかし、終盤になって唐突に八尾比丘尼として登場し、上記は全て嘘であったと言う。

ならば、『君が電話をかけていた場所』のP199にある「今日、深町くんは私に対してとても残酷なことをしたんですよ。気づいてました?」という言葉は何だったの?両想いになれなければ死ぬのに、初鹿野唯の事を気にしているからじゃなかったの?

それと、『君が電話をかけていた場所』のP238~P240で、荻上千草が中学校時代に自分が凡庸である事に気付き、周囲の人間が退屈な人生を送る少女のサンプルのように見えたため、進学先を変更したとしているけど、これも嘘なの?

⇒荻上千草 = 八尾比丘尼という設定は作者が物語の終わらせ方が分からなくなってしまったため、急遽、思い付いた設定なんだと思う

<檜原裕也とは何だったの?>
物語の途中で、主人公は天体観測が好きな初鹿野唯のために、天体望遠鏡を持っている檜原裕也を誘って夜毎に天体観測を行う。やがて、初鹿野唯が檜原裕也に惹かれていっているように思うようになる。

初鹿野唯が自殺未遂を引き起こし、記憶喪失となり、「もしかして、あなたが檜原裕也さんですか?」と主人公に聞いた事で、主人公は自分が檜原裕也であると偽って初鹿野唯と接するようになる。

終盤になって、実は初鹿野唯は主人公の事が好きであって、主人公が自分を檜原裕也であると偽っている事に気付いていると八尾比丘尼は伝える。

P251:
「彼女としても、騙されていることにした方が、色々と都合がよかったんですよ。正面を切って深町くんに好意を表明するのはためらわれたけど、『深町陽介演ずる檜原裕也』になら、気兼ねなく自分の想いを伝えられたんでしょうね」

⇒何のためにそんな事をする必要があるの?記憶喪失の設定は何だったの?

檜原裕也は、保身のために中学校時代の不良グループに主人公を売るが、それは無かった事になっている。主人公は不良グループから逃げるためにバットで不良グループの一人を滅多打ちにしているが、復讐を恐れなくて良いのだろうか?

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「戦争と経済」のカラクリがわかる本

読んだ本の感想。

兵頭二十八著。2003年1月8日 第1版第1刷発行。



物凄く読み難い本。

<日本人の基本的考え方>
日本人は島帝国の伝統で「日本国」が無くなる事を考えない。そのため、貯蓄や公務員就職が人気になる。

しかし、国家が永続するとは限らない。国家の仕組みとして信用作りとしての金融と、物作りのバランスが取れている事が大切。

借金をしてでも巨額の資金を運用した企業の方が強い。

南部銃製造所の創設者 南部麟次郎は、日露戦争で二倍に増えた陸軍工廠を維持するため、自ら営業して新規の仕事を受注しようとした。新規市場として中国市場への売り込みのため、大倉、三井、高田の三代商社を統合し、明治四十一年に「泰平組合」を結成。第一次世界大戦でライバルのドイツ企業に輸出力が無くなった際に、中国市場に兵器を売り込むが、1919年には内戦への加担を恐れる欧米世論に抑れて輸出を自粛する。その後、作り出した武器メーカがミネベアの大森工場に繋がる。

日本政府も兵器を自給自足する必要性を痛感し、1918年に制定した軍需工業動員法により、三菱等が兵器の供給先として浮上する(当時の日本で内燃機関を製造出来るのは造船メーカーのみ、三菱造船所は高い総合力を持っていた)。

三菱重工業は満州事変後に誕生する。

しかし日本の工業力は弱く、第一次世界大戦で使用した砲弾数は米軍が四百億発、英軍が三億発、仏軍は三億四千万発、独軍は五億八千万発であるが、日本は日清戦争で五十万発、日露戦争で一0四万発、日中戦争を含む太平洋戦争で七千四百万発を生産出来ただけだった。

<石炭を持つ国>
近代の国家では、国内で石炭が算出するかが重要な問題だった。

鉄鉱石は重く、石炭は嵩張る。特に製鉄業では膨大な量の石炭を必要とする。そのため、殖産興業策では大炭鉱の近くにコークス・プラントと製鉄所を集める。

フランスでは石炭資源が乏しく、重工業に不利であり、金融資本が栄えても重工業は弱体化した。

一方で英国は石炭資源が豊富であり、強粘結炭(コークスに固めて高炉に投入すると、自重で空道が潰れない)や瀝青炭(軍艦のボイラーで向く)等が産出された。

日本の大炭鉱は本州に存在せず、八幡製鉄所は北九州に建設された。アイルランドの不利を石炭が算出しない事と考え(「英国の経済的勢力」堀川善哉著、大正五年)、満州の石炭権益を保持すべきとした。

その後、エネルギー源が石油に代わる事で、貿易の王座がロンドンからニューヨークに移転する。

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アドルフ

読んだ本の感想。

パンジャマン・コンスタン著。昭和29年6月5日 発行。



1816年に公刊された本。パンジャマン・コンスタン(1767年~1830年)の作。

著者には政治家としての側面があり、1830年の七月革命にも参画しているらしく、文学者としてよりも政治家として有名なのだとか。

主人公アドルフの22歳~26歳の物語。10歳年長のポーランド人エレオノールと恋仲になり、情夫である伯爵から奪う。しかし、自分のものになった途端に情熱が失せ、最終的にエレオノールが病死してアドルフは自由になるが、その後の人生を何一つ決まった道を辿る事無く終えたらしい。

*****************

P3:
遠くからだと他人に与えている苦悩の姿は、楽に通り抜けられる雲のような、茫漠としたものに見える。自分は世間の承認によって力づけられている。ところでこの世間ときたら、不自然極まるもので、規則で道義を、儀礼で感動を補い、醜聞を憎むけれども、背徳的だからといって憎むのでなく、うるさいから憎むというのである。その証拠には、醜聞さえなければ、悪でも結構歓迎している。

⇒冒頭のこの言葉が全体のテーマだと思う

主人公は、周囲からの抵抗や反対をもって情熱に変えていると思う。アドルフが最初に冷めるのは、父親からエレオノールが居住する町に滞在する期間延長を許可されてからであり、抵抗する事により自由を感じているのかもしれない。

アドルフの父親は息子に対しても内気であり、観察者として息子に接し、息子が愛情を示さない事を嘆く。

P37~P38:
P***伯爵は彼女に対してまことの愛情を抱き、その献身に対しては心からの感謝を捧げ、その性格に対しては非常な尊敬を払っていた。だが彼の態度にはいつも、何かしら、正式な結婚もせずに公然と身をまかせた女性を上から見下している、といったところがあった。
(中略)
私は彼女を天上の尊い創造物のように考えていた。私の恋は宗教的な性質を帯びていた。ところで、彼女はその反対の方向におとしめられはすまいかと絶えず怖れていただけに、私の恋はいっそう彼女にとっては魅力のあるものだった。

P69~P70:
激し易い女性が力や理屈の代りに使うあの苦しみの示威運動を、人々はどうかすると本当のものと信じたがるのです。心はそれに苦しみながら、自尊心はそれを悦ぶのです。そして、自分が引起した絶望に身を捧げていると思いこんでいる男も、実は、自分自身の虚栄心の錯覚にわが身を犠牲にしているにすぎないのです。世間にざらにいる情熱的な女で、棄てられたら死んでみせると言わなかった者は一人もありますまい。そのくせ、みな結構生き永らえて、けろりとしているのですからね。

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ベッドルームで群論を

読んだ本の感想。

ブライアン・ヘイズ著。2010年9月10日 第1刷発行。



難しい本だった。

1 ベッドルームで群論を
マットレスの返し方を考える話。

2 資源としての「無作為」
無作為(ランダム)を導出する困難について。

現代文明には様々な無作為に依存している。1940年代にロス・アラモスで生まれたモンテカルロ法は、無数にある中性子が原子核に衝突すると跳ね返るか吸収されるかをシミュレートするために使用された。コンピューター・ネットワークでも無作為を外部資源として活用している。

無作為の元は、乱数導出アルゴリズムの最初に入力される種となる値であり、ランダムな数とは最初に入力された種に含まれる無作為を引き延ばしたものである。

3 金を追って
パレートの法則では、収入分布はべき乗法則に従い、収入がx以上の人間の割合は1/(xのa乗)となる。つまり、富の大きさに偏りがある。

フリーマーケット・モデル:富が一人に集まる
結婚離婚モデル:
結婚と離婚を繰り返すように、二つの主体が取引し合った時の分配は、相互の財産を合算し、出鱈目に分割するようになる。気体分子運動をモデルにしたパターン(気体分子が衝突し、全ての運動エネルギーが一つの分子に凝縮される事は無い)で、富は指数的に分布するが、一人の人間のみに集まらない。

4 遺伝暗号をひねり出す
1953年にDNAの螺旋構造が解明されて以来、遺伝暗号 = 4文字のDNAのアルファベットで書かれた文字(アデニン、チミン、グアニン、チミン)から約20種類の蛋白質のテキストに翻訳する鍵が科学者達の思考対象となる。

遺伝子は多くのジャンクを許容しており、パターンを見つけたいという人間の衝動が精緻な遺伝暗号という的外れな方向に科学者を向かわせる。

著者は誤っていたはずの遺伝暗号の仮説を美しいとする?

5 死を招く仲違いに関する統計
ルイス・フライ・リチャードソンの研究。

戦争を1820年~1950年までで、マグニチュード(死者数)で分類。マグニチュード2.5以上(死者数約300人以上)の戦いが315件掲載される一覧表を作る。

マグニチュード7(死者数約1000万人以上)の戦争は人類史上二回しか発生しておらず、この二つの戦争の死者約3600万人は過去130年間の戦争による死者の約60%になる。

マグニチュード6の戦争は死者約50万人~約200万人で七回発生しており、太平天国の乱(1851年~1864年)、南北戦争(1861年~1865年)、ラ・プラタの三国同盟戦争(アルゼンチン・ブラジル・ウルグアイとパラグアイの戦争)、ボルシェビキ革命(1918年~1920年)、国民党と共産党の第一次抗争(1927年~1936年)、インドの宗教対立(1946年~1948年)である。

この戦争における規則を見つける事は困難で、隣国である事や軍備拡大競争は戦争における決定的な予見とはならない。大国は多くの国と隣国であるし、315の事例で軍備拡大競争の証拠があったのは15件だった。

6 大陸を分ける
分水嶺 = 分水界(雨水が流れる方向を分ける境界)となる山脈の事。

地理的に考えるのと数学的に考えるので違うらしい。

7 歯車の歯について
歯車の歯の数を決定するために数学が用いられた話。

例えば、一分間に一回転する歯車の動きを、一日に一回転する歯車に伝えなくてはならないとする。この場合、歯車の歯の数は、後者は前者の1/1440となる。しかし、歯車が一つの歯しか無い事はあり得ず、後者に10個の歯があると、前者の歯は1万を超える膨大なものとなる。

解決策は幾つかの歯車を組み合わせる事とする。

6/200と5/216の複合歯車を組み合わせると、積は30/43200となり、1/1440と一致する。30/43200の30を素因数分解すると、2 × 3× 5となり、この内の二つの数を掛け合わせた歯車を使用すれば、歯が30の歯車と同様の効果を生み出す事が出来る。

8 一番簡単な質問
集合を二つの集団に分ける困難について。NP完全問題。

簡単に出来る事でも、解答に時間がかかる。

9 名前をつける
識別に必要な名前や数が枯渇していく事について。

17世紀~18世紀にかけて、カルロス・リンナエウスは、同じ動植物が異なる名前で呼ばれないよう、ラテン語二名法つぉいて生物を属と種に分けて名付けるようにした。

現在では名前が枯渇していく。証券取引所のティッカー・シンボル、電話番号、製品コード、社会保障番号、etc。

天文学では星や銀河の数が膨大過ぎて意味ある名前を付けられる見込みは皆無となっている。

10 第三の基数
記数法の基準となる数について。

10は指で数える人間の基数であり、二進数は数値(1か0)と論理値(真か偽)を同じ信号で表現可能。

著者は、3が効率の良い基数とする。

自動車の距離計では、10進数を使用すると、10の目盛りがついた6個のホイールで0~99万9999の100万の数を表現出来る。それが二進数では百万の数を表現するのに20個のホイールが必要になる。

目盛りの数 × ホイールの数とすると、10進数は60、二進数は40の費用となる。

これを三進数とすると、13のホイールで百万の数を表現可能(費用は39)。

3の効率が良いのは、自然対数の基底である約2.718に近いからであり、分数が許されるなら2.718進数でホイールは13.82個が百万の数を表現するのに必要となり、費用は37.55になる。

11 アイデンティティーの危機
コンピュータープログラムで同値性を保障する困難。

以下の「同じ」は違う。

アレックスとバクスターは同じネクタイをしている。
アレックスとバクスターは同じ先生に習っている。

同じ種類と、一にして同じは異なる。アレックスとバクスターを同じ部屋に連れてくれば、二人のネクタイが一本なのか二本なのか明確になる。計算機でも、二つの対象のメモリ内でアドレスが完全に一致した場合に一にして同じと考える。

12 長く使える時計
ストラスブール・カテドラルの時計から、長く使用される時計について考える。

入念に整備した機械でも数百年後には動かなくなる。機械が壊れた時に部品を取り換えるには、その装置を支える制度も存続させなくてはならない。

さらに未来は異なる世界である。ローマ暦は1500年使用された後に放棄され、エジプトの暦は3000年、マヤ暦は2000年しか使用されなかった。現代の価値観が永遠の真実を具現している可能性は低い。

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インドシナ文明史

読んだ本の感想。

ジョルジュ・セデス著。1969年12月5日 初版第1刷発行。



かなり古い本。インドシナ = インド + 中国(シナ)であり、ガンジス河以東の半島において、アジアの二大文明の影響を強く受ける地域があった。征服による中国化と文化的浸透によるインド化。

インドシナ半島の大部分はインドの影響が強いが、ヴェトナムは初期から多くの文化要素を中国から受け継ぐ。中国化したヴェトナム人はインド文明に影響されるというよりも、異なる文明を破壊する傾向があった。

インドの影響が強いのは中央集権的政府が存在した地域であり、インド文化を身に付けた王族が、村落レベルまで統治権を及ぼした。それまで部族の域を超えた社会集団が存在しなかった地域に、集団間の障壁を破る国が誕生したものと思われる。

以下は、文明が広範囲に影響する王国を形成する要因。

①公共事業
排水、灌漑、道路等の地方的レベルを超えるインフラ整備を行う制度や技術。
②権威
インド法におけるダルマの概念は、異なる慣習の上に画一性を課す事無く、精神的権威として君臨する枠組みを提供した。

インドシナ土着社会の内部には、インドにおけるカーストに相当する社会区分が存在しており、インド文明が浸透し易かったとする。独自性を失う事無しに統合される枠組み。インド文明は共通語としてのサンスクリット語によって統一性を保持しながらも種々の文化を達成した。

インド的観念では王の位格は神聖とされ、九世紀初頭に形成されたアンコール王朝は、全世界の支配者である唯一人の王として集権的国家を作りだした(その前の扶南王は六世紀に全大地の所有者の称号を名乗っている)。

インドが齎したのは、諸概念、方法、用語であり、中央集権国家形成のための法体系を創るために必要な道具だった。武力によらない文化的浸透は強い力を持ち、多神教の伝統を持つ一般民衆は、ヒンドゥーや仏教の神々が土着の神と並んで崇拝されても気付かなかったかもしれない。

<インドシナ半島の地形的条件>
インドシナ半島の土壌は一般的に貧しく、農業に適した地域は主要な河(紅河、メコン河、メナム河、サルウィン河、イラワディ河)のデルタ地帯と中流平野、シナ海の沿岸平野とトンレサップ盆地である。

山岳地帯と高原では水不足により、焼畑耕作以外の耕作形態が馴染まなかった。対して平野とデルタ地帯の大部分では水稲耕作が行われた。

交易においてはシャム湾に面したヴェトナム南部の西海岸や、ベンガル湾に面したインドシナ半島西海岸に良港が多くあり、支配権を巡ってメナム河下流域の国家とイラワディ河下流域の国家で衝突が発生する傾向がある。

また、北部においては中国との境は通り難いわけでなく、守備防衛は困難。紅河渓谷は雲南地方への通路であり、フランスがトンキンに勢力を置いた。広西省の西江の支流がランソン省に流れ込んでおり、中国から紅河デルタへの進出は容易。イラワディ渓谷やサルウィン河が貫流するビルマ方面も自然の通路であり、第二次世界大戦中は援蒋ルートがあった。

そして半島東部では安南山脈や1000mを超える峠が交通を困難にしており、大規模な同質的社会集団の発展を妨げた。半島西部ではメナム川が交通路として機能し、中央部のメコン河は南と北の連絡路となる。

〇ヴェトナム
紀元前221年の始皇帝による中華統一後、江南地方は中国による遠征の対象となり、紀元前214年には広東地方を南海(広東)、桂林(尋州)、象(南寧)の三郡を中心に支配された。

秦始皇帝の死後、ヴェトナムの支配者達は独立を模索する事になる。0年~25年まで交州を統治した錫光は中国化を行い、中国人植民者の影響により紅河デルタの文化は中国化していく。学校や鋤の使用、中国式結婚儀礼、中国風軍隊、etc。

〇タイ人
カンボジアの支配下に置かれたメナム中部の民族。北部から南部への民衆の地滑り運動によって移動したと思われる。アンコールワットの寺院には、王に随伴する軍の戦闘に、クメールとは異なる服装の兵士集団が示されており、碑文はシヤームとしている。

タイ人は遅くにインドシナ半島に到達したので、クメールやモン、ビルマのようにインド文明の支脈と見做す事は出来ない。他民族の文化要素に同化する事に熱心で、八世紀に南詔王国を雲南に建国した民族の基盤とされる。

<十三世紀>
モンゴルの侵略等により、インド化された諸国が衰退していく。1282年がモンゴル軍による最初の侵略とされ、タイ独立の契機となる。1287年にモンゴル軍がミャンマーの都市パガンを奪取すると、その領土は分割され、それを利用したタイ人がパガンの東方の米作平野の小さな領土の幾つかで権力を掌握していく。

モンゴル軍による動揺は変化を速めただけであり、十二世紀からインド文明から離れた独自色を帯びる土着民が人口を増加させた事が根本的要因とする。

王個人を崇拝するヒンドゥー教や大乗仏教は大衆と関係無い宗教になっていき、セイロン仏教が広まっていく。それがモンゴルによる同様によって作用し、クメール帝国やチャム王国、ビルマ王国が新しい国家に代替されていく。

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なぜ国家は壊れるのか

読んだ本の感想。

ビル・エモット著。2012年8月22日 第1版第1刷発行。



イタリアの経済について書いた本かな?

1950年代~1970年代で、経済成長率は日本が第一位でイタリアは第三位。日本の年率8.9%に対しイタリアは5.8%(OECD加盟国の平均は4.1%)。

日本は重工業とハイテク産業によって成長したが、イタリアはデザインやマーケティングに重点を置く北東部や中部の中小企業が中心だった。

イタリアの経済成長は製造業、特に中小企業が貢献し、北部のトリノ(フィアット自動車工場の本拠地)、ミラノ(銀行業務とファッションの中心地)、ボローニャ(オートバイのドゥカティ、自動車のフェラーリの本拠地)に多くの労働者が移った。

しかし、イタリアの経済成長率は、2001年~2010年で世界164位と落ち込んでいる。

イタリアでは1970年代の労働争議の影響で過度に保護的な労働法が施行され、労働争議鎮静化のために導入された寛大な公的年金等で膨大な政府債務が発生した。

〇中小企業
1970年に制定された労働法は、15人以上の労働者を雇用する企業は“正当な理由”が無ければ従業員を解雇出来ないとする。さらに賃金を三ヶ月毎にインフレ係数に連動する義務を負わせた(1992年まで)。

そのため、イタリアでは多くの企業が15人未満の小規模に留まろうとする。

10人~99人を雇用する企業の割合は、1961年にドイツ18.3%、イタリア26.4%だったのが、2001年にはドイツ22.5%に対してイタリアは41.8%と急増している。

競争激化等に対応するために買収や合併で企業規模を拡大する方策が、銀行業務を除いて発生し難い。

著者は、投資を促進する労働法や市場参入が容易になる制度、インフラ投資や大学改革等を提唱している。

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確率的発想法

読んだ本の感想。

小島寛之著。2004年2月25日 第1刷発行。



Ⅰ 日常の確率
第1章 確率は何の役に立つか
一般の人達の確率は、個人的経験の中で「〇〇%という確率と言われた時では、このような場面に遭遇した」という個人的記憶に基づく印象に従う事を意味する。

天気予報等の確率は、「気温、湿度、気圧等が今と同じ過去において、どの程度雨が降ったか」という数値である。一般の人達はマクロな数値と体験を混同している。

【用語】
標本空間:
明日の天気={晴れ、曇り、雨、雪}という可能性の列挙。

ステイト:
標本空間を構成する要素。上記では、晴れ、曇り、雨、雪がステイトとなる。ステイトを複数集めたものをイベント(事象)と呼ぶ。

⇒標本空間として発生し得る事象が列挙され、一つのステイトが選択されると、世界のあり方が決定される

オッズ:
ステイトの起こり易さの程度。

不確実性モデル:
表法空間にオッズを組み合わせたもの。過去の情報からオッズを定めると統計的オッズになり、主観的オッズと対置する。

正規化:
足し合わせて1になる事。オッズを正規化すると、他の不確実性モデルと比較し易くなる。

確率における不確実性の源は、未来の時間と知識不足であり、情報を得る毎にモデルを変更出来る「条件付き確率」が提唱される。

第2章 推測のテクニック~フィッシャーからベイズまで
以下の二つの思想。

①統計的推定
大数の法則として、確率という仮想的な数値が多数回の観測という現実の行為の中で頻度の比として確認されると考える。

<コイン投げの例:フィッシャーの最尤思想>
本物のコインと偽物のコインがある。偽物のコインは表裏に偏りがあり、コイン投げをすると表が出る確率が60%である。偽物コインを百回投げて表が49回出た場合、その確率は(0.6の49乗)×(0.4の51乗)となり、本物のコインを百回投げて表が49回出る場合の10倍以上の確率となる。
仮にコインが偽物であるとすると、本物である時と比較して1/10未満の奇跡が発生した事になり、本物のコインと判断した方が無難。

⇒現実に発生した事は、最も起き易い出来事と考える

②ベイズ推定
最初に先入観による確率を設定し、得られる情報によって先入観を改訂していく。

<嘘つきの例>
ある人物が「正直」か「嘘つき」かについて、二つのステイト{正直、嘘つき}を設定し、それぞれのステイトについて、正直なら本当の事を90%の確率で言い、嘘つきなら本当の事を20%の確率で言うと設定する。

さらに、その人物が正直か嘘つきであるかの確率を半々と先入観で設定する。

次に、人物の言動を確認し、一回嘘をついた場合、正直が嘘をつく確率(10%)、嘘つきが嘘を言う確率(80%)から、最初の半々の確率が、0.5×0.1:0.5×0.8 = 8:1となり、嘘つきである確率が8/9と50%から変化する。

⇒ベイズ推定は、最初に先入観で確率を割り当てる事に特徴がある

<癌検診の例>
的中率95%の癌検診について考える。
癌の罹患率を0.005と仮定すると、

癌で陽性の確率:0.005 × 0.95
癌で陰の確率:0.005 × 0.05
健康で陽性の確率:0.995 × 0.95
健康で陰性の確率:0.995 × 0.05

となり、陽性となった場合、0.005 × 0.95 : 0.995 × 0.05 = 19:199となり、陽性となった場合でも現実に癌である確率は19/218で9%程度となる。

ベイズ推定では、95%の有効性のある検査でもそれほど確度は高くないが、自然罹患率0.5%程度だったのが、9%となったのは危惧すべき状態でもある。

<コイン投げの例:ベイズ推定の場合>
統計的推定で出したコイン投げの例をベイズ推定で考える。

コインが本物で表が出る確率:0.5
コインが本物で裏が出る確率:0.5
コインが偽物で表が出る確率:0.6
コインが偽物で裏が出る確率:0.4

最初にコインの真偽を半々で設定し、コインを一回投げて表であった場合、0.5 × 0.6:0.5 × 0.5 = 6:5となり、偽物である可能性が高くなる。

******************

ベイズ推定は最初に適当な確率を設定する事から恣意的という批判を受けたが、1950年代のレオナルド・J・サベージの研究により、不確実性は主観的なものという指摘によって復権していく。

ベイズ推定は一回の試行によって推定値を求める事が可能であり、多数回実施すればフィッシャー流と変わらない結果が出るため、逐次合理性という最新の情報だけでアップデートしていく方法論として重宝されるようになる。

第3章 リスクの商い
人間は期待値の通りに動かない。例えば、競馬では100円の馬券に対して期待値は75円になる(開催費や国庫納付が25%)。

そうした不合理を説明するために、フォン・ノイマンとオスカー・モルゲンシュテルンは1944年に『ゲーム理論と経済行動』を出版し、選好理論として人間は内面的な好みの順位に従って行動するとした。

個々人の内面には各種の行動への好みを表現する関数(期待効用基準)が存在し、確率的に整合的でない行動も内面的な満足によって選択する場合がある。

期待値が数学的に正しい規範を意味するのに対し、期待効用基準は「そのようにすれば人間の行動を説明出来る」という記述的意味合いがある。

個人間でリスクに対する態度が異なる事が、保険や先物取引が成立する原因である。

第4章 環境のリスクと生命の期待値
人間はリスクを評価する基準として、期待値以外に恐怖因子や不可知因子を重要な要素として考える。

〇ホフマン方式
自動車事故等で人間が死んだ場合、損失を期待値 = その人間が生きていた場合に稼いだであろう所得で計算する。

期待値は仮想的な数値であり、人間の価値を算出する根拠としては納得し難い面もある。

Ⅱ 確率を社会に活かす
第5章 フランク・ナイトの暗闇~足して1にならない確率論
ベイジアン的確率論の紹介。

〇エルスバーグのパラドックス
被験者に以下の二つの壺を見せる。

壺①赤球が50、黒球が50入っている
壺②赤球と黒球が入っているが、数は不明

上記から一つを選んで球の色を当てる場合、多くの被験者が①を選ぶ。主観確率で考える限り、①と②で正解する確率は等しいが、人間は不確実性を厭う。

測定可能なリスクは不確実ではない。不確実性回避として確率が分からない状況は忌避される。

エルスバーグは、壺①の方が選好される事から、後にキャパシティ理論(数学者シャケが提唱)と呼ばれる、壺②では赤球と黒球を選ぶ確率がそれぞれ50%以下となり、合計確率が100%にならない状況を理論的に説明した。

〇マルチプル・プライヤー
上記の壺②に対しては、球が100個入っているという以外に客観的情報が無いため、赤球と黒球が100:0~0:100で入っているという101通りの状況が考えられる。

この101通りの状況が平等に発生し得るとして期待値を計算する(マルチプル期待値)。その状況で期待値が最少となるのは選びたい球が一つも入っていない0の状況で、壺①での最小期待値である0.5より小さい。

このようにして、最悪の数値を避けるために壺①が選好されると考える事も出来る(マックスミン原理)。

*****************

不確実性を厭う性向は、経済社会も説明出来る。最も悪い数値を指標に用いるため、不確実性のある状況では決断に尻込みして、環境変化に対応し難くなる。

第6章 僕がそれをしっていると、君は知らない
   ~コモン・ノレッジと集団的不可知性

コモンノレッジ(共有知識):
多くの人々が知っており、且つ、互いに知っている事を知っている状態。

個人個人が同じ情報を持っていても、相手が知っている事を知らなければ以心伝心は出来ない。暗黙の了解が公的に告知される事で変化が発生する事がある。

⇒本章では数学的に共有知識を説明している

第7章 無知のヴェール
   ~ロールズの思想とナイトの不確実性

〇ジョン・ロールズ
人々の効用を合計して最大化を測る事を拒否する。以下の公正の原理を提唱。

①自由の優位
各人は、他人の自由と両立する限りで広範な基本的自由に対する権利を有する。
②格差原理
不平等は不遇な人々の利益を最大化し、機会均等の条件が満たされる限りにおいて許容される。

不平等を是認するが最も不遇な人々の厚生を最大化しようとする。ロールズはそれを数学的に導出される原理と考えた。

ロールズは道徳的人間(公正を理解・実践し、人生の目標を追及していく)を仮定し、基本材(人間が社会生活を営むために必要な財)を目標にするとした。

第8章 経験から学び、経験にだまされる
   ~帰納的意思決定

経験から引き出す推測を理論化する試み。

事例ベース意思決定理論:
自分の知識や経験から類似の問題を抜き出して、その結果を踏まえて判断する(頻度主義)。

帰納論的意思決定理論:
プレイヤーがゲームの構造を勝手に想像すると仮定する。根拠の無い仮定が、経験によって正当化されていく事がある。

多くの人間は確率ではなく理屈で証明する。

他人と予想が食い違った場合、「幾ら賭けるか」と質問するのは、自分の正しさを証明するためである。人間は内面に「公理系」と「過去の経験の蓄積」を持っており、それらを現状況に当て嵌めて行動する。そして公理系には経験による自己修復機能がある。

人間は固着した論理から離れられない場合でも、強制的体験から自分の過誤に気付く事がある。貧しい個人的体験によって、最適でない行為を最適と思い込む事がある。



第9章 そうであったかもしれない世界
   ~過去に向けて放つ確率論

意思決定理論は、人間が不確実性を定式化し、どのように意思決定するかを分析する。それは選好という内面的好みを定式化する事によって行われる。

しかし、決断は出来事が生起する前に行われるが、その帰結は事後に齎されるため、事前での好みと事後での好みは食い違う場合がある。

多数回同じ事象に立ち会う事は稀であり、一回の参加に対する基準は難しい。結果のみで考えるのでなく、他の選択をした場合の世界を対にして初めて不確実性への選好が理解出来る。

成功者が寄付するのは、自らの成功が過誤の結果である事の償いの意味があるのかもしれない。

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森友学園が話題になっている

テレビや新聞、インターネット等で『森友学園』というキーワードがヒットするようになった。

媒体によって主張する内容、事実、思想が全く違うので、何が発生し、現在どうなっていて、これからどうなるかが全く分かららない。

森友学園という「戦前の教育」を良しとする学校があり、朝日新聞等が森友学園が安倍首相と組んで日本を右傾化させようとしているという思い込みから針小棒大に大騒ぎしているという解釈が最もしっくりくる。

が、他がはっきりしない。

教育で野党を攻撃していたという籠池理事長が、幼児達に敵と教えていたはずの野党とタッグを組んで安倍首相を攻撃しているようだし、民進党が根拠不十分な発言をして謝罪をしたというが報道されないから明確にならない。

様々な人達の間で、最初に結論があり、それを補強する情報のみが取捨選択されているようで正しい事が不可能になっている。

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中東の絶望、そのリアル

読んだ本の感想。

リチャード・エンゲル著。2016年11月30日 第一刷発行。



1996年から中東で活動する米国人の取材記録。

中東の問題は、国家意識が未成熟な土地に、部外者である欧州人が第一次世界大戦の戦後処理の一環として、即席に国家を作った事にある。

第二次世界大戦後は米国が中東を仕切るようになり、ソヴィエト連邦と覇権を争うようになる。1957年のアイゼンハワー・ドクトリンは中東諸国への経済・軍事支援を約束し、1980年のカーター・ドクトリンはペルシャ湾保護を誓った。

米国配下の中東では、人工的に作られた国家を支配する独裁者と、イスラム国家を夢想する原理主義者の争いがあった。イスラム原理主義者にとって、政教分離は異端であり、日常生活全てを規定する宗教があるのだから、国家も宗教に従うべきとする。

21世紀に入って、ブッシュ大統領の介入と、オバマ大統領によるムバラクやシリアの放棄が混乱を加速させたとする。

<イスラム教>
草創期から急速に拡大し、8世紀~11世紀にかけては世界の文化の中心だった。13世紀末にモンゴルによって破壊されると、トルコ系部族による帝国が600年間維持された。

この地では国民国家という概念が構築されないまま、第一次世界大戦で以下の問題が発生した。

クルド人:5つの国へ分散された
シリア:初期カリフ制の中心地が小国へと縮小
イラク:スンニ派、シーア派、クルド人の連合
パレスチナ:ユダヤ人の委任統治領

イスラム教徒は、ユダヤもキリストも自分達と同じ神を信望しているが、それは古いテキストに則ており、完全なのはイスラム教だと考えている?

<ワッハーブ運動>
ムハンマドの時代に戻ろうとするイスラム教の運動。

オスマン帝国に対する反発から始まり、オスマントルコ人はアラブでないとする。1811年~1818年にオスマン帝国と、オスマン=ワッハーブ戦争を戦って敗北している。

著者は、ワッハーブ派をアーミッシュ(米国等に住む質素な生活様式を保持する宗教集団)と同類と考え、古代に書かれたテキスト通りに行動しているとする。ワッハーブ派は、イスラム文化の中心たるメッカとメディナを支配する事で影響力を持っている。

****************

著者は、エジプトやイスラエル、イラクでの取材を通じて、米国が抽象的な怒りの象徴になっていると感じているようだ。アラブ人達が国境警備が厳重なイスラエルに有効な攻撃を仕掛ける事は難しいが、イラクへは比較的簡単に行く事が出来る。

イラク戦争によって、イラクはジハードの象徴的場になってしまい、個々人の様々な理由からなる怒りを米国にぶつける場になってしまっている。

イスラム国の戦いは、現代世界のルールに歯向かって生きる可能性を示唆し、サイコパスや欧州社会での人種差別に直面したイスラム教徒に訴えかけた。グロテスクな行為が信仰だと主張すると、ある種の人々が引き寄せられる。

著者の取材では、過激派になる者達は感情の赴くままに流される追随者であり、自信が無く、鬱の傾向があり、感情的になると泣く型とした。彼等を社会復帰させるには、就職や結婚を斡旋する事が有効とする。

かつての単純な時代のジハード戦士は理想主義によって動機付けられていたが、2015年までには社会不適応者も引き寄せるようになり、欧州の繁栄から疎外され帰属意識を渇望する人間や、権力に反抗したい憤怒を抱えた人々等を誘っている。

2014年にイスラム国の首席スポークスマンであるアブムハンマド・アル・アドナニは「イスラム教徒は、自分達が苦しめられたのと同じような罰を相手に与えなくてはならない」と語っている。

著者は、これからの数年間で中東にて新たな独裁が確立すると予想している。

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世界史の逆襲

読んだ本の感想。

松本太著。2016年2月23日 第1刷発行。



21世紀における新しい戦争について。

第一部 万人の万人に対する戦い
二度の世界大戦を経て、米ソ冷戦下の核兵器による相互確証破壊によって、17世紀のウェストファリア条約以降の三世紀に渡る国家、政府、国民の三位一体によって戦われる主権国家の戦争は消滅した。

現在では非政治的な低強度紛争が主体となっている。

以下の変化。

①軍事技術
無人機や宇宙開発、サイバー空間等。
②国際法
1928年の不戦条約以降、国際法上、武力行使が許容されるのは、(1)集団安全保障措置としての国連憲章第七章第四二条の規定による強制措置の場合か、(2)国連憲章第五一条に定められる主権国家による個別的自衛権に基づくものでしかない。1974年には国際連合総会にて侵略の定義に関する決議が採択され、かつて存在した戦争のほとんどが非合法化された。
③非国家主体
アルカーイダやヒズボラ等。

グローバル化や通信手段発達により、非国家主体の戦う力が強まる一方で、国家は法規範や社会規範による制約を受けている。傭兵は17世紀の三十年戦争以降、神聖ローマ皇帝フェルディナント三世が歴史上初めて平時の常備軍を設立する等して姿を消していったが、現代では法的規制が不十分な民間軍事会社が大いに活用されている。

<ダーイッシュの戦術>
イスラム原理主義者の以下の戦略。

①移住(ヒジュラ)の実行:イスラム国への移住を推奨
②忠誠(バイア)の誓い:世界各国の組織が忠誠を誓う
③ジハードの扇動:個人による攻撃の実行

イスラム主義者の指南書『野蛮の作法』を書いたアブ・バクル・ナージは、民族的・宗教的復讐心を創り出し、大国からの軍事的反応を引き起こす事の有効性を指摘する。

恒常的な暴力を継続する事で、イスラムが勃興する七世紀以前にあった無秩序状態が生じて、それに乗じてイスラム法を広め、安全を提供する事で人気を集めるとする。

第二部 国際秩序の変動と歴史の逆襲
21世紀には、以下の国家類型が併存する。

①プレモダン:主権国家を確立する事が困難な国々
②モダン:国家主権に基づいて行動する。
③ポストモダン:
自由主義が普遍化し、国境の役割が低下し、国家が相互依存を高める状態。

現在の国際秩序は、1648年以降のウェストファリア体制が欧州近代の枠組みで生じ、19世紀後半から世界に広がった普遍的規範である。

三十年戦争後に結ばれたウェストファリア条約は、主権国家間の平等を内政不干渉を基本原則とする。その動機は、宗教に関わる議論が宗教紛争に繋がる恐怖である。そのため、国家を超える宗教的権威等を認めない。さらに、戦争を避けるために主権国家間の合意や条約、規範が遵守される事が求められた。

<三十年戦争の思想的影響>
ルネ・デカルト:
確かと思われた信仰によって大量殺戮が行われた現実に、「我思う故に我あり」という疑う事による合理精神を生む。

フーゴー・グロチウス:
1625年に『戦争と平和の法』を著し、ウェストファリア条約の理論的基礎を創る。国家間の基礎となる確かなものとして国際法を認識。

ホッブズ:
社会秩序の基礎として、トゥキディデスの『歴史』を翻訳し、『リヴァイアサン』にて国家理性に主権を委ねる自然状態を措定した。主権国家という思想の誕生。

平等な個人間の社会契約による国家形成という視点は宗教戦争を終焉させるために不可欠であり、ルソーやロックによる批判的発展を経て近代の主権国家論に繋がる。

<華夷秩序との対立>
中華文明を唯一の文明とする中華思想はウェストファリア体制とは相性が悪く、近代における中国の世界進出を困難にしていた。

近代国家では明確な領土を画定しなければ排他的な主権が確立しないが、1871年に台湾で琉球民が殺された事に抗議した日本政府に、清朝は台湾を「化外の地」であるために関知しないとしたため、日本政府は無主の地に対する先占の論理に基づいて1875年の台湾出兵を正当化した。

さらに朝鮮半島でも朝鮮が属国か独立国かの議論が発生。日本は朝鮮は清への朝貢国であるが属国ではないとし、朝鮮を保護する事を主張し、日清戦争へと繋がっていく。

<アジアのウェストファリア体制>
1954年に中国の周恩来首相とインドのネルー首相との間で発表された平和五原則(領土、主権の相互尊重、内政不干渉、平等互恵、平和共存)はアジアのウェストファリア条約と言える。

これは1955年にインドネシアで開催されたアジア・アフリカ会議(バンドン会議)の平和十原則採択に繋がっていく。

<アラブの混乱>
オスマン帝国崩壊後のアラブは、国家意識が未醸成な地域において、軍事独裁による権威主義的統治と、イスラム主義との対立を特徴とするようになる。

第三部 国家の羅針盤
中国や非国家主体の台頭により混乱が発生している。

アラブにおいては権威主義体制とイスラム主義という二つの秩序に代わる新たな統治術が求められており、著者は現代の国民国家体制以外は無いとする。

他国の主権を侵害するウェストファリア秩序以前の秩序は摩擦を生じさせ、合意と協力に基づく秩序創造を保障しない。

国際社会において主権国家の行動を制約する上位権威が存在しない以上、国家は相互に平等であり、そのような社会では勢力均衡が求められる事になる。

しかし、力の無い平和はあり得ない。危機における宥和政策は1938年の英国首相ネヴィル・チェンバレンのドイツのチェコ併合承認と同じく、より大きな争いを生む可能性が高い。

日本も急激な中国の台頭に備えて長距離ミサイルや潜水艦開発等の非対称能力開発に勤しむべきとする。

以下は日本の戦略的課題。

① 米中が戦略的安定を志向する状況での日米同盟強化
② 米国の中長期的プレゼンス低下
③ 米国の核による中国の核抑止

上記のためにも地域諸国との間で、経済や貿易、文化的紐帯の深まりを含めた関係構築を行う必要がある。現在の競合は非軍事面の競争が大きな比重を占める。

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独裁者の教養

読んだ本の感想。

安田峰俊著。2012年10月25日 第一刷発行。



著者のワ州(ミャンマー)旅行記と、各国の独裁者について調べた内容がチャンポンになっている。アヘン王国と呼ばれるワ州でミニ独裁を体験し、自らの知識と融合させようとしたのかもしれないけど失敗している。

以下は、各国の独裁者の知識や体験への考察。

スターリン:
1878年頃に生まれる。寄宿舎制の東方正教会付属学校で教育される。校内では宗教と無関係な教養が禁止され、監督制度も存在した。独裁者となってからも、「正しい〇〇とは―」という問答を部下に仕掛ける事を好んだが、これは司祭が一般信者に正統的教義理解を問う方法と似ている。正しい見解が最初から定まっており、それに反する意見は許容されない。

カトリックでは死後の世界を天国、煉獄、地獄の三つに分けるが、東方正教会では天国・地獄の二元論的世界観を持つ。この世界観は、社会に出るまで神学以外の教育を受けなかったスターリンに強く影響したとする。

批判はあるものの、スターリンは愛国主義を唱え、大祖国戦争に勝利し、ロシア史上最大の版図を確立した。

ヒトラー:
1942年の「ラインハルト作戦(ユダヤ人問題の最終解決)」に先立つ事、三年前、「T4作戦」として障害者等を殺す作戦を実施している。一年半で約七万人の障害者等を抹殺処分した。

ヒトラーの思想を形成するドイツ民族主義や反ユダヤ主義、優生学思想等は当時の常識であり、多くの人々が望んだ正義だった。ヒトラーは常識を寄せ集めて政治に反映させたに過ぎない。

毛沢東:
少年時代は「水滸伝」、「三国志演義」、「隋唐演義」、「岳飛伝」等の中国の英雄伝に興味を示す。正規の大学教育や留学の経験は無い。読書家ではあったが、教養のほとんどを独学で蓄積していた。

中国的な反乱のスタイルに拘り、農村にて短期間の恐怖現象を作り出すべきとした。共産主義の平等な社会を中国思想の大同(天下を一つの家と見做す平等思想)と解釈し、人民公社は屯田制、共産主義革命は水滸伝の豪傑による蜂起と理解した。

ポル・ポト:
かつては大帝国を築きながら、タイやヴェトナムに圧迫されるカンボジア人の民族主義がポル・ポトを生み出したとする。

ポル・ポトの一族は、従姉が皇太子の男児を出産するなど権力との距離が近く、その縁でポル・ポトは上座部仏教の寺院や木工作業の専門学校、フランス留学等の教育を受ける。

フランス共産党のスターリン主義の影響により、都市人民を農村で再教育する等の政策を行う。中国・北朝鮮式の共産主義を本家以上に真面目に実践した結果、悲劇が生じた。

革命の中心に行政経験者はほとんど存在しないため、正しい理想を掲げれば、現実はついてくると考えた?

ニヤゾフ:
人口520万人程度のトルクメニスタンで、1991年から2006年に没するまで実権を握る。

1940年にトルクメニスタン最大部族のテケ族に生まれ、1962年にはソヴェエト連邦共産党に入党し、レニングラード工科大学に進学する。1970年にトルクメニスタン共産党中央委員会へメンバー入りすると、1980年にはアシュガバート市共産党委員会第一書記に就任。

これらの政治経験のためか、2007年のトルクメニスタンの一人当たりGDPは約5000ドルとそれほど悪くない。ソヴィエト連邦以外の政治体制を知らないため、自身への個人崇拝を行う小さいソヴィエト連邦を作り出した?

トルクメニスタンでは、20世紀初めまで部族社会が維持されており、権力とは共産主義政権か遊牧政権のイメージしかない。ニヤゾフも族長的鷹揚で石油資源からの富を分配した。

リー・クアンユー:
1923年に生まれる。当初は現地人が通う華人小学校に入学するが、華語が理解出来なかったため、英語系のテロク・クラウ小学校に編入する。後にラッフルズ学院中等部に入学し、トップの成績となる。

1942年にシンガポールが日本に占領され、天皇が無限の忠誠を捧げる存在として一夜にして至高の存在と設定された事が強烈な印象になったとする。

さらに当時のシンガポール住民の大部分が日本を恨んでいたが、圧倒的な力の統治に対して実際に反抗する者がほとんど存在しない事実が、権力の意味を考えさせたらしい。

後にマレーや華僑の伝統文化を希薄化させた英語圏の国としてシンガポールを設計していく。

フセイン:
1937年に生まれる。育ての父である叔父ハイルッラーのアラブ民族主義、愛国主義の影響を受けたとする。

青年時代にはバグダードのストリート・ギャングの頭目となり、後にはバアス党の秘密警察の拷問担当者となる。

カダフィ:
1942年にリビア北中部のベドウィンの一家に生まれる。遊牧民族の口承文学として、反イタリア戦争の英雄アブー・ムニールの伝説を好んだとする。

イスラーム学校で教育を受け、エジプトのナセル大統領の影響が強かったとする。

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光の庭

読んだ本の感想。

吉河トリコ著。2016年2月20日 初版1刷発行。



現代版『ボヴァリー夫人』かな?

以下は、Wikipediaの『ボヴァリー夫人』の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A1%90%E9%87%8E%E5%A4%8F%E7%94%9F

恩田陸の『球形の季節』と桐野夏生の『リアルワールド』を足して二で割った感じでもある。

1996年3月に高校を卒業した五人組(銀チョコラバーズ)の話。

仲間の一人の大石三千花は1998年2月に殺されており、2013年?に残された者達が当時を偲ぶ。

【登場人物】
大石三千花:
1998年に殺される。高校卒業後はフリーターになるが、将来に絶望し、かつての友人や男に依存していたらしい。

村西志津:
主人公。ライターをしているが売れず、同期の安田真生子が東日本大震災をテーマにしたベストセラーを出版した事に焦りを感じ帰郷する。殺された大石三千花を題材に本を書こうとする。

岩田麻里奈:
市役所の職員になる。自らを支配しようとする母親との間に葛藤がある。

倉木理恵:
モデル経験者。社長夫人。貧しい実家に劣等感を持っており、優雅であろうとする。eriという名で不倫ブログを運営する。大石三千花が高校生の時に好きだった萩尾と付き合っており、現在でも不倫関係にある。

菅川(橘)法子:
大学二年生時に妊娠し結婚。自らの醜い容姿に劣等感を持つが、それを認められない。インターネット中毒者。律子という名で倉木理恵の不倫ブログを荒らす。

岸田(稲川)比佐子:
高校卒業後の大石三千花の友人。大石三千花の名前でfacebook登録をする。

P129:
十八歳から二十歳にかけて、急速に世界が拡大し、めまぐるしく価値観が変化していく渦中にいた少女たちをいったいだれが責められるだろう。後にも先にもあれほど刺激に満ちた時代はなかった。もっともっと新しいことを知りたかったし体験したかった。もっと早く、先へ先へと進みたかった。故郷を思い出す時には郷愁よりも煩わしさが先に立つ、その若さをいったいだれが責められる?

P183:
雛形を三千花に押しつけ、そこからはみ出すことを許さなかったMと、自分の知らない世界に飛び出していこうとするMの足を引っぱり自分のほうが上だと示すことに躍起になっていた三千花。支配と従属がめまぐるしく入れ替わり、互いに互いを縛りつける。うまく機能しているうちは他のだれも寄せ付けない二人だけの世界に浸っていられるが、少しでもバランスを崩せば待ちかまえているのは悲劇だけだ。

P206:
三千花はくりかえした。ごめん、ごめんね。謝るから許して。無視しないで。一人にしないで。私を置いていかないで。
「正直ぞっとした」と率直にNは語った。
(中略)
Nにとって三千花はもうすでに、無敵の高校時代をともに過ごしたかけがえのない仲間ではなくなっていた。冬のあいだじゅう着込んでいたせいで重たく湿気った季節はずれのオーバーコート。

P248:
地元に残り、友だちはおろか恋人もおらず、職場と家を往復する毎日だった比佐子は、空いている時間のほとんどを三千花に明け渡した。そういう存在を三千花は必要としていたし、比佐子も切実に求めていた。さびしさを埋めるための間にあわせの関係だとわかっていたが、それでも構わなかった。
(中略)
「あたしたち最高」は気持ちがいい。外の世界に向かって大声で「あたしたち最高」を知らしめるのはもっと気持ちがいい。高校を卒業し、それぞれ少しずつ輪から離れていっても、三千花はただ一人あの場所に鎖につながれ、いつまでもその快楽に溺れていた。

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パルテノン

読んだ本の感想。

柳広司著。初版第一刷/2004年7月25日。



神権政治から民主制が確立していく過程を描きたかったのかな?

巫女
紀元前480年頃のペルシア軍第三次ギリシア遠征頃の話。

デルポイの巫女アリストニケの話。

神託とは名ばかりで、実際には各地のスパイからの情報に基づいてお告げを行う巫女の話。ペルシア軍侵攻に伴い、当初は降伏を考えるが、命懸けで戦ったスパルタ王レオニダスに感動し、情報戦によってペルシアに立ち向かう事を決意する。

テミストクレス案
紀元前472年の話。

ペルシア軍第三次ギリシア遠征にて活躍したアテナイの武将テミストクレスが追放されるまでの話。

エウメネス(付き人)、アリスティデス(テミストクレスのライバル?)、シキンノス(テミストクレスの家来)がテミストクレスについて証言する。

テミストクレスは民主政が英雄を望まず、自らが追放される事を予期していた。テミストクレスの望む英雄は、自らの決定にのみ従う人物であり、民主政とは対立せざるを得ない人物だった。

パルテノン
紀元前447年頃~紀元前429年までの話。

パルテノン神殿を建設したフェイディアスと、アテナイに民主制を根付かせたペリクレスの物語。

ペリクレスは、民主制の目標を「支配者と被支配者の区別を消滅させる事」と考え、莫大な建設予算を伴うパルテノン神殿建設を行う事で、公共事業として民衆に賃金を支払った。

フェイディアスは、神殿建設に自らの像を刻んだとして、自分とペリクレスを告発したリュシスを恨まない。リュシスの信念は、少数の優れた者が政治を行う寡頭制であり、自分以上にアテナイを愛するからこそ民主制を破壊しようとした。

そして、「夷狄などには、けっして破壊されぬものとなろう」と宣言されたパルテノン神殿は、1687年にパルテノン神殿に立て籠ったトルコ軍を制圧せんとするヴェネチア共和国軍に砲撃され、廃墟と化す。

パルテノン神殿は、ギリシア文化の正統な後継者を名乗るイタリア・ルネッサンスの担い手であるヴェネチア人によって破壊された。

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奴隷のしつけ方

読んだ本の感想。

マスクス・シドニウス・ファルクス著。ジェリー・トナー解説。
2015年6月12日 第一刷発行。



ケンブリッジ大学の古典学研究者が古代ローマ人(1世紀~2世紀)を想定して、古代の奴隷について書いている。待遇や値段、仕事や罰等。

読んでいてい感じたのは、当たり前の古代を書く事の困難。歴史書に記録されるのは非常識な事件ばかりだから、当たり前の日常に関する記録は少ない。そのため、非常識の記録から、それが非常識とされる常識を探っていく事になる。

例えば、四世紀ローマの歴史家アンミアヌス・マルケリヌスは、著作で奴隷を持たない民族(アラン族)の存在を聞いて仰天している。奴隷はそれくらい当たり前の存在だった。ただし、ローマでは奴隷は一時的な状態で、条件が整えばローマ市民になる事も出来たらしい。

1世紀頃のローマ人口を6000万人~7000万人とすると、1/8は奴隷で、イタリア半島居住者の1/3~1/4は奴隷という推計がある。

共和制ローマにおいては、兵役の義務から一般農民が農地を離れる事が多く、その間に富裕層が所有地を広げる事があった。富裕層は兵役に駆り出されない奴隷を労働力として好んで使用し、奴隷を繁殖させて自らの勢力を拡大した。

その結果、イタリア半島の自由人の人口が少なくなり、自由民の農地維持や職業軍人の活用等が解決策とされた。

<奴隷の値段>
一般的な奴隷の値段を知る事は難しい。

マルクス・アントニウスが美しい双子の奴隷に20万セステルティウス支払った逸話があるが、それは異常な事件だから記録されたのであり、日常ではない(一家四人の年間生活費を1000セステルティウスと推定)。

また、大カトは、60ヘクタールのオリーブ畑で13人の奴隷、25ヘクタールの葡萄畑で15人の奴隷が必要としている。

<奴隷使用に関する哲学>
古代ローマ上流階級はストア哲学の影響により、奴隷所有者は奴隷の身体を所有しているが、精神は所有していないとしていた?セネカは、奴隷も適正で公正な扱いを受けるべきとしていた。

ただし、その思想が普及していたかは別問題で、ハドリアヌス帝(在位117年~138年)が、癇癪を起して奴隷の目をペンで突いた逸話がある(異例だから記録された)。

一方で古代ギリシアでは奴隷は劣った存在であり、アリストテレスも非ギリシア人は奴隷として処遇すべきとしていた?解放奴隷が市民になる事もあり得ない。

キリスト教における奴隷の状態も古代ローマと大きな違いは無く、312年にコンスタンティヌス帝(在位306年~337年)がキリスト教に改宗しても、家族をばらばらに売る事を禁じ、奴隷の顔に烙印を押す事や、売春の強要を禁じたくらい。

キリスト教の立場から奴隷制を批判する文書は、4世紀後半のニュッサのグレゴリオスが最古?

◎サトゥルナリア祭
12月17日から、何日間か男女が逆の服を着用し、奴隷が王を装う。万民が平等だった農神サトゥルナリアが支配した黄金時代を祝う祭りとする。

小プリニウスは、奴隷の楽しみを邪魔しないために自室に引き籠ったとある。

著者は、古代ローマが奴隷所有者と奴隷の階級闘争に満ちていたというのは誤りで、大規模な抵抗や深刻な問題は少なかったとする。

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安楽探偵

読んだ本の感想。

小林泰三著。2016年2月20日 初版第1刷発行。



以下、ネタバレ含む。

探偵事務所に持ち込まれる奇妙な依頼集。重ね合わせの物語だと思う。二つの可能性が提示され、物語終盤で一つに集約される。

第一章 アイドルストーカー
アイドル富士唯香がストーカー被害を相談する話。

ストーカーは、富士唯香自身になりたいらしい。終盤まで、相談者が富士唯香であるのか、自分を富士唯香と思い込んでいるストーカーであるのか明確にならない。

ストーカーは元マネージャーである事が判明して物語は終わる。

第二章 消去法
気に入らない人間を消去する能力を持つと主張する中村瞳子の相談。自分と同じ能力を持つ山日という同僚が現れたとする。

中村瞳子は、超能力で探偵助手を消去するが、終盤で探偵が調子を合わせていただけと告白する。

会社がリストラのために、職場全体で中村瞳子を騙していたと説明される。

第三章 ダイエット
ダイエットについて相談する戸山弾美の話。

「依頼者はふらふらと立っているのもやっとな状態で、事務所の中を歩いて」という描写から、戸山弾美は痩せているように思えるが、終盤で太り過ぎである事が判明する。

スーパーマナと称して大量のピザを食べていたらしい。

第四章 食材
大鐘達郎、久子夫妻の依頼。娘の千里が行方不明になったと言う。

ショズ・ビザールというレストランが舞台で、客が持ち込んだ食材をシェフが即興で料理する。レストランが娘を調理したと思わせながら、実際には誘拐事件だったという話。

店員は身代金要求の脅迫状を届けるために、夫妻を追いかけていた。

第五章 命の軽さ
慈善団体に寄付する伊達杏太郎の話。

依頼者は、自分の寄付金が動物救済でなく、人間の子供を救うために使用されるのが嫌なだけだった。

第六章 モリアーティ
これまでの物語の総集編。

探偵助手は、探偵がシャーロックホームズに登場するモリアーティのように、依頼された事件の黒幕で、事件の真相を知っていた可能性を指摘する。

ある人物Aが、別の人物Bを正直者としたとする。そして、BがAは正直者としたとする。この場合、AとBの両方が正直者であるか、両方が嘘つきであれば矛盾が無く状況を説明出来る。

ある前提で矛盾無く全てを説明出来たとしても、その前提が真実とは限らない。

安楽椅子探偵は、依頼者が推理に必要な全ての情報を語ってくれなければ成立しない。そのため、依頼者は必要な情報を収集出来るくらい観察力、記憶力、判断力に優れていながら、それらを使用して推理する論理的能力のみを持たないという微妙な存在となっていく。

問題は、依頼者が話さなかった情報を、探偵が知っていた場合に生じる。

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戦国時代のような職場

職場の派閥の話を聞く。

各グループが自分を保護してくれる攻撃的な人間を中心にまとまっている。派閥間の争いに上司が介入する見込みはない。皆、内心ではボス達に不満があるが、正面きって文句を言わず、自分以外が贄になるのならば黙認するそうだ。

『障害者』という位置は、かなり微妙なものだと思う。障害者を管理するべきという考えの人達がいて、自分が指示を出し、命令し、作業を確認したいようだ。

手や足を使った仕事は無理であっても、それは下っ端の仕事であるという意識なのかな?

僕の場合、いつのまにか派閥の一員になっていて、今後、僕(他の障害者の人も)に対して個別にメールを送信する事を禁止するらしい。

僕は、誰かが見張られていないと侵略される。不自由な立場だ。

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今日が終わる

明日から会社に行きたくない気分だ。

火曜日までに終わらせる事があるから行くのだろう。気分が重い。

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少し風邪気味

何だか体調が良くないし、インタネット回線の接続も悪い。

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