不足している

心にも体にも何かが不足している。欠乏している。

そのような気分だ。

何か役に立たない事が大切であり、それを見過ごしているのだと思う。

人気ブログランキングへ
スポンサーサイト

食いたい

空腹になり易くなっている。

今日は、朝にヨーグルト、鳥唐揚げ、林檎、エクレアを食べた。

さらに昼ご飯の他に、缶コーヒー2本。

夕食の他にコンビニの御握りと魚フライを食べた。

多分、自分の中に何か栄養が不足しており、それを補おうとしている。

人気ブログランキングへ

恋愛市場

インターネット上の掲示板やらからのコピペ。

自由恋愛が当たり前となっている現代では、『恋愛市場』が形成される。誰も自分を出品した覚えが無いのに、商品のように値付けされ、評価され、購買対象となってしまう。

自由な市場では、パレートの法則により上位20%が異性を寡占し、下位80%は妥協するが疑似恋愛による代替を行う事になる。

現代は、Facebook等によって自らの生活を公開するインセンティブがあるため、見栄による基準の上昇が発生している。

昔は、結婚は仕事と並列に語られる存在だった。一人でも生きていくインフラが無い。各人が己の専門領域を狭めた方が有利な環境は存在する。ドラゴンクエストにおけるサマルトリアの王子は、回復も戦闘も一人で出来るが、100人のサマルトリア軍団は、50人のローレシア+50人のムーンブルクに惨敗する。

多くの伝統的社会でも専門化のために、身分や男女や年齢によって「やって良い仕事」、「やるべきでない仕事」を決定し、「皆で協力しないと生きていけない社会」を形作る。その極端な例がインドのカースト制。

家事の家電化が進んだ現代では、結婚の理由は生殖しか無いが、それはしなくても個人の生活には直ちに影響は無い。

そのような状況で、結婚無しで個人の幸福や名誉を追及するための新しいライフスタイルが望まれている。

人気ブログランキングへ

お前がムカつくから殴ってやる

上手く纏まらない話。

精神科医と面談した。

僕「子供の時に、お前がムカつくから殴ってやるって
  言われた事があるんです。
  今でもそういうのが怖くて、不安になる事があります」
医「私も密室の中で患者と相対しているからね。
  同じような経験はあるよ」

上手く伝えられなかった。普段から僕が感じている恐怖。

***********************

社会に上手く適応出来ない人間というのは存在する。そうした人間でも社会常識に則て行動する事を期待される。

僕は学校に行かなくてはならなかったし、学校に在籍している以上、授業に参加し、林間学校だとか、文化祭、運動会に参加しなくてはならない。

僕が行事に参加すると周囲の人間の負担となる。

学生だった時、「お前がムカつくから殴ってやる」から殴ってやると言われた事がある。

文化祭のグループ分けで、僕と同じ班になった事が気に入らなかったらしい。その人とは、それが初めての会話だった。

「お前、何でそんな話し方なの?どうしてそんなに気持ち悪いの?」
「お前、何でムカつくのか分かったぞ。お前、気付いてないだろ」
「とにかくムカつくから殴らせろ」

絡まれて僕は泣いた。僕が泣いていると、次のように言われる。

「そんなに、傷つくと思わなかった。許してやる。俺がお前を見守っていてやるよ」

僕が恐ろしかったのは、そうした行為が「正義」として認知される事だった。皆、言わないだけで僕を気持ち悪いと思っている。皆が言わない事を代弁しているだけなのだから、僕を殴ると正義の味方になる事が出来る。

「俺さ、前からお前の事嫌いだったの。歩き方とか話し方とか人と違うじゃん。だから気持ち悪かったの。でもそれは個性だから大切にしないといけないと思うようになったんだ。だから、俺はOがお前の事を殴ったりするのも個性だと思ってるの。両方とも他人を嫌な気にさせているんだからお互い様じゃん」

僕が恐ろしいのは、こうした事を喋る人間が、本当に僕を納得させる事が出来ると思っている事だった。存在しているだけで、迷惑なのだから、僕は周囲の温情に縋って生きている事になる。

だから、僕は申し訳ないと思わなくてはならないし、周囲の人間が自分の正義や優しさを確認するために生きている事になる。

「論理」というものはあてにならない。話し合いは虚しいだけだと思う。

だから、子供の時は恐ろしかった。誰かが不意に自分を殴るのではないか、何かが追いかけてくるのではないか。そのように思っていた。そうした恐怖は今でも僕の中に残っていて僕を縛る。

********************

集団が形成されるとそこに一般常識が形成され、守らなくてはならないルールが出来上がる。それは最大公約数であるから、守れない人間は必ず存在する。

周囲の人間の意を汲んで、処刑人として違反者を罰する人間は必ず現れる。

そして、処刑人は生贄でもある。

状況が変化して、違反者が強者となった場合、真っ先に処刑人が処罰される側になる。

人気ブログランキングへ

停滞している

久しぶりにプログラムを組んでいる。

いつも中途半端になってしまうので、何とか形にしたい。

****************

仮想通貨の情報が手に入り易くなっている。この分野は伸び盛りなのだが、どのように参加すべきか分からない。

手に入る情報の量は多いし、出来る事も沢山ある。

しかし、何もしていない。流されるままに生きている。

人気ブログランキングへ

know

読んだ本の感想。

野崎まど著。2013年7月26日 発行。



週刊東洋経済 2016.9.17の特集『IOT発進!』で紹介されていた本。

2081年の日本 京都が舞台。

【用語】
情報材:
微細な情報素子を含む素材・建材の総称。コンクリートやプラスチック等の様々な物質に添加されている。

情報素子:
通信と情報取得の機能を有する極小サイズの物体。常に周囲の情報をモニタリングし、取得した情報を世界に流し続ける。

電子葉:
人造の脳葉。人間の情報取得、処理能力を大幅に増強する。以下の3つの機能。
 ①個人最終端通信装置
  ネットワークと通信して情報を取得する
 ②脳副処理装置
  脳外部からの膨大な情報の処理を行う
 ③啓示装置
  脳神経の状態を非接触的にモニタリング、介入する

⇒電子葉を移植される事により、見た事や聞いた事に関連する情報が自動的にネットワークで調べられ、取得された情報が選別され、啓示装置によって教えられる

⇒「最初から知っている」と「調べて知る」の境目が曖昧になる。40歳頃を境目に、若い世代は「知っている」にインターネットで調べて分かる事を含める

情報格(クラス):
電子葉普及と共に公共的に整備された階級制度。各個人の社会的貢献度等により、全ての市民は市民基本情報格1~3を振り分けられる。それにより、①取得可能な情報量、②個人情報の保護量が規定される。

情報格という格差は、意図的なソースコードの偏りによって生じている。

情報格(クラス)が高いほど多くの情報が得られ、多くの情報が守られる。

⇒生活保護を受けている人間は情報格0となり、全ての情報が覗き見られる

以下の上位クラスがある。

クラス4:
情報を扱う職種等に付与される。

クラス5:
情報庁の上級職員に付与される。

クラス6:
内閣総理大臣と各省大臣に付与される。

進々堂・京大北門前店:
昭和5年開店の喫茶店。

神護寺:
天長元年(824年)に創建された山岳寺院。

【物語世界の歴史】
2040年:
情報材の開発により、情報インフラの革新が起る。様々な情報が取得される超情報化社会の到来。

2051年:
増え続ける情報に人間の脳がついていけず、国内の総流通情報量を規制しようという法案が出される。

2053年:
初めて電子葉が人間に植え付けられる。

2066年:
日本における電子葉移植が義務化される。六歳になると全員に電子葉が付与されるようになる。

2104年:
個人の情報範囲を規定する情報制度が廃止される。国民は、全ての情報を取得し、同時に全ての個人情報を公開している。

【登場人物】
御野連レル:
内閣府情報庁情報官房付情報審議官。28歳。

三縞歌ウ:
内閣府情報庁情報官房付情報副審議官。25歳。

素月・切ル:
情報庁機密情報課職員。逆立った赤髪、六角形で蛍光イエローのサングラス。

道終・常イチ:
元京都大学知識情報学研究室教授。67歳?20代で情報材の基礎理論を作り、40代で電子葉を実用化させる。御野連レルの師。

道終・知ル:
14歳。量子コンピュータの電子葉 量子葉を付けている。

群守調エ:
情報庁次官。

有主照・問ウ:
情報通信事業の国内最大手企業アルコーンの最高経営責任者。

ミア・ブラン:
アルコーン中央技術研究所主任研究員。

日座円観:
神護寺の大僧正。81歳。

佐和宗ドウ:
神護寺の僧侶。40歳頃?

御厨:
宮内庁職員。京都御所の古い儀礼や仕来りを扱う。

Ⅰ.birth
情報審議官 御野連レルは、アルコーン社から14年前に失踪した研究員 道終・常イチの捜索に協力するよう依頼される。御野連レルは、14歳の時に京都大学APW(アルゴリズムプログラミングワークショップ)に参加し、そこで道終・常イチと出会い一週間ほど交流している。

御野連レルは、道終・常イチが書いた情報材ネットワークを規定するソースコード(基底ソース)を読む事を趣味としている。その中に、コマンドミスとして「/feel_o」と「/redo_o」の書き間違いがあると知っているが、それが意図的なものである可能性に気付く。書き間違いがある箇所を調べると、「kitamon shinshindo 10:00(北門 進々堂 十時)」の文字が浮かび上がる。

御野連レルが、10時に進々堂に行くと道終・常イチと出会う。道終・常イチは、現在の情報格による格差は全ての情報が開示される未来のために必要と語る。

道終・常イチは児童養護施設を営んでおり、世界最高の情報処理能力を持った人間として道終・知ルを紹介し、道終・常イチは自殺する。

Ⅱ.child
御野連レルは道終・知ルを引き取る事になる。彼女は高度な情報演算により他人の心を計算して知る事が出来る。

道終・知ルは4日後に誰かと出会うらしい。

翌日、道終・知ルは神護寺に向かい、住職から真言宗や密教、曼荼羅について情報を取得する。道終・知ルは他者の思考を計算出来るので僧侶の知識を全て吸収可能。

人間は「死」を知る事が出来ないため、死を永遠に恐れ続けるという意見。

その晩、情報庁機密情報課職員 素月・切ルが御野連レルに道終・知ルを引き渡すよう依頼する。アルコーン社の技術を使用した量子葉を回収する狙い。道終・知ルは量子葉の力で素月・切ルを倒す。

Ⅲ.adult
2日目、御野連レルは道終・知ルと逃亡する。

道終・知ルは京都御所に向かい、保管されていた古代史書を読む。

京都御所には電磁遮断網が張り巡らされており、量子葉は使用出来ないが、事前に関連する情報を集めておいた道終・知ルは、妨害者達の行動を全て予見出来るので、道終・知ルは止められない。

Ⅳ.aged
3日目、御野連レルと道終・知ルはアルコーン社に連れられ、京都ピラウ(大規模通信塔)に向かう。

アルコーン社は、14年かけてもう一つの量子葉を実現しており、それを最高経営責任者 有主照・問ウに三か月前に移植している。クラス9となった有主照・問ウは、三か月かけて道終・知ルの思考に追い付き、京都ピラウで出会う事の意味を理解したらしい。

量子葉を持つ道終・知ルと有主照・問ウとの会話が行われ、道終・知ルは死後の情報を得るために死ぬ。

死の生成実験:
二人のクラス9が情報をぶつけ合い、情報崩壊を引き起こして人工的に死を生み出す。

Ⅴ.death
御野連レルは情報庁を退職し、アルコーン社に勤務する事になる。

御野連レルは、道終・知ルが直接的に脳を破壊せずに、最高の情報状態で死んだ意味を考える。

epilogue
2119年10月の話。

死後の情報が広く開示されており、死は恐れる事ではなくなっているらしい。

****************

曼荼羅:
仏教美術の一つ。五感の中の視覚を用いて真理を表現する試みがあり、以下の2つがある。
①胎蔵界曼荼羅
物質的原理と客観的現象世界<理>を顕す
②金剛界曼荼羅
論理的原理と精神的世界<智>を示す

上記2つを合わせて理智であり、この世の真理、本質である。真理を知る事を密教では無上正覚 = 悟りと言う。今まで知らなかった事を知る事。真理とは全ての人間にとって新しい知識である。

悟るためには、自分が何を知らないかを知らなくてはならない。

*************

古事記や日本書紀に再編されて歪められる前の知識。出来事が起きた直後に近い状態で記された神話の記述。イザナギとイザナミのイザナは誘うの変化。二神とも人間を先に誘う神。

イザナミの別名は、道敷大神と言う。みちしきの変化とされるが、知識の変化とも捉えられる。道敷大神は、黄泉平坂でイザナギを追いかけた事からきた呼び名で、追い付いた神という意味になる。

人気ブログランキングへ

人はなぜ神を創りだすのか

読んだ本の感想。

ヴォルター・ブルケルト著。1998年12月20日印刷。



序文
自然科学が発達し、生物が知識と操作の範囲内となっても宗教は消滅していない。歴史的で文献的な研究と生物学的人類学を結び付る?

1 文化の地勢―宗教の位置づけ
文化の向こう
宗教はあらゆる時代のあらゆる集団に普遍的に存在する。宗教的現象には、崇拝に適切な形式化された儀礼的行為(供物、誓願、祈祷、歌、説話、礼拝)が含まれる。

以下の特性

①経験的に確認出来ないものを扱う
宗教的行為は不可知を共有するものである。明らかでないという障壁を乗り越えるために、特殊な経験(霊験)に訴える。

②畏れ多い者に立てられる
明らかでない交渉相手が導入され、認識される。

③真剣に扱う事を求める

社会生物学?
社会生物学の基本仮説は、遺伝と文化の絶え間ないフィードバックによる共進化である。宗教を適応のための制度とみるか、幸福幻想を見せる麻薬と見るかは考察態度によって異なる。

共通の世界―還元と検証
言語発達により、人間は思考、計画、概念、価値観を共有可能となり、共通の精神世界が出現した。宗教は、この精神世界に帰属し、高い地位を要求する。
言葉は、直接的証拠を超えた概念を生み出す。言語は遠く離れた対象や過去・未来の証明不可能な現実にも言及出来る。超自然的存在は、共通の精神世界の中で多くの人間に還元され、その過程で単純化される。

二元論的体型(全ての現象は二つに分類出来ると仮定)と階層構造・因果関係の連鎖は複雑を減少させる。

2 回避と捧げもの
指の犠牲
2世紀に、ペルガモンにあるアスクレピオスの聖域で過ごした心気症患者の話。夢中の神の啓示により、死を避けるには指を捧げなくてはならないが、神の慈悲により指輪を捧げた。

多くの文化では、指を犠牲にする主題があり、イラクにある新石器時代の遺跡アルパチアからも、石で出来た5本と指と一本の人間の指の骨が発見されているらしい。自分の身体の一部を切断する習慣。

生物学、幻想、儀式
身体の一部を切断する行動様式が、大袈裟に見せるための儀式に変化した可能性。蜥蜴も、敵から逃げるために尻尾を切断する事があり、捕食者の注意を逸らす行為として、宗教と動物学はつながっているのかもしれない。

本能的に生じる事を意識的に行うのが、呪術儀式?

去勢と割礼
去勢も自己切断である。生殖はによる存在増殖が、個体を取り換えがきくもと見做してしまうため、宗教的に疑惑の目で見られる?

割礼については、旧約聖書の逸話の中で、モーゼが幼い息子と共にミディアンからエジプトに戻る時、モーゼを殺そうとした神に息子の包皮を捧げた事に由来するとする?切断により追っ手を撃退する。

贖罪の山羊
パルス・プロ・トトの原則として、全体を救うために一部を犠牲にする。それは壮大な物語や儀式を支配する主題の一つである。

命には命を
人命への脅威は、別の人間を差し出す事でしか避けられないという信仰。動物の群が肉食動物と相対した時、一頭が殺されると、残った群れはしばしの安心を得る。

3 物語の核
物語への傾倒
ヴィルヘルム・シャップにより1953年に出版された本。

人間が思い出し、動かされるのは物語であり、知識は物語の形式を取る。神話は個人的なものでなく一般化されており、特定集団の共同所有物である。

プロップの継起順序-探索物語
『昔話の形態学』(ウラディーミル・プロップ著)。物語は損傷、欠如、欲望から始まり、旅立った主人公が試練を与えられ、援助を受け、敵と戦い勝利する事で目的を達成するとする。
このシーケンス(継起順序)は様々な物語で一定らしい。

生物学上のプログラムから意味の連鎖へ
プロップの継起順序は、動物が食物を探索する過程と似ている?食物探索という重要なプログラムは、一連の行動として最も容易に想像可能であり、言語表現出来るとする。

以下は、プロップの刑事順序の奇妙な特徴。

①魔法を提供する援助者
②往路と帰路の非対称性(帰宅時は異なる経路)

シャーマンの物語
恍惚状態におけるパフォーマンスでシャーマンは超自然的次元での探索を実体化する。シャーマニズムは探索物語の普遍的プログラムが特別に発達したものとする。

通過儀礼の物語-処女の悲劇
コレ・ペルセポネ神話(処女の悲劇):
処女コレは魔法をかけられた館に、母デメテルによって閉じ込められ、ゼウスに妊娠させられれ、その後はハデスに誘拐され冥界の女王となり、ディオニュソスを生む。

この物語は、以下の順序とする。

①若い女性の生活が突然中断する
②隔離の時期
③男性が侵入し妊娠させられる
④苦しい試練
⑤救出

「ラプンツェル」も処女の悲劇の一形態とする。子供から大人へ移行する女性の生物学的ライフサイクルを示すらしい。性的成熟は母子関係を崩壊させる。

4 階層構造
序列意識
宗教とは神への依存であり、上位存在に相対する下位存在の承認である。服従によって崇められる主は、庇護を与え、安全を保証する。こうした序列制度は様々な霊長類の社会で観測出来るとする。序列が高い猿ほど、安全な木の上部に居住しており、これが天界のイメージの元からもしれない。

服従の儀礼
神に対して謙譲を表す形を取る。服従のために、自らを大きく見せる服装や行為を止め、平伏して自らを小さく見せる。

賛美の戦略
屈服の極にあるのが、神を高める賛美である。上位者を高めるほど、下位者は身を低くしなくてすむ。賛美とは上位者の前で騒ぎ立てる事が承認された形式である。音楽は賛美に最も頻繁に付随するものである。

二重の権力
宗教と権力は連合しており、専制君主は神からの特別な庇護を主張する。見えざる権力は現実の権力構造のモデルである。神は統治者に対して、統治者は被統治者に対して最高権力を持つ。至高権力への服従が、支配者の世俗権力を堅固にする。

言語の権力-使者
言語による伝達機能の基本の一つは命令である。権力の根幹は命令して従わせる事。権力の連鎖が拡大して細分化すると、権力源に個人が入り込めなくなる依存のシステムが始まる。
至高神が下位の神々を伝達役にして統治者にお告げを伝え、王がそれに応じて行動する。宗教の創始者は神の使者なのだ。

5 罪と因果関係
宗教的治療と罪の追求
治療における以下の段階。

①災厄の体験
②専門家の介入
③審判(災厄の原因を明示)
④償いを儀礼にて行う。

病気を個人の生理学的状態に限定せず、社会的場全体の状況が悪いと解釈する。

現在の苦痛
病気は宗教との結び付きが強い。「なぜ」を解明する物語を宗教は提供する。出来事を筋道立てるため、元となる過失を説明し、災厄がどのように現れ、適切な手段をどのように乗り越えるかが述べられる。

教団の成立
因果関係に由来する信仰の成立と仲介役の存在。回復と安心を司る共同体。

仲介役-危険と好機
より多くを知る者が仲介役となる。伝統、儀式、知識、信念に従い、災厄を解釈する枠組みを提供する。

説明のためのモデル-拘束、怒り、けがれ
災厄を烏賊のように説明する。

①拘束(罠にかかった恐怖)
②神の怒りによる災厄
罪を告白する必要がある。
③穢れが伝染した
清めが必要とされる。

穢れと清めは、攻撃源を曖昧にしたまま状態を緩和する文化かもしれない。穢れへの恐れは原始的であるが、罪の概念は自意識の目覚めを反映するため現代的である。

穢れを作り出せば、重要人物の対面を保ちながら、間接的に責任を負わせる事が出来る。泥に足を突っ込む事は誰にでもあり得る。

「なぜ」という問いに答えるための上記の方法論。出来事が無意味である事への抵抗。

6 贈与の相互性
贈与の実相
序列や地位の表現方法。贈り物は常に返礼を必要とする。そのため、贈る事によって自らの地位を高める事が出来る。そして、報復も贈与の一形態である。

宗教における贈与
人間と神の交渉は、人間からの祈りと、神からの見返りを旨にする。

道徳体系の系譜?
相互性道徳体系の一形態である。相互性は初めから認識されており、協力が続く事を可能にする。

失敗する相互性-宗教的批判
宗教における神への贈与が返礼を伴わないという批判。それは贈賄であるし、豊かな者ほど神に愛される事になってしまう。しかし、人間に頼らない神を仮定しても、贈与が信仰から駆逐される事は無い。共同体内部での贈与品循環や序列意識を反映しているからだ。

成り立たない相互性-儀礼の諸々の事実
神の世界は人間世界とは隔たっているため、宗教的行為は欺瞞であるかもしれない。その矛盾を解消するために、神への捧げ物を火で焼く等して破壊する事がある。他にリサイクルや耐久性のある記念碑等。

贈り物と供養
供犠の主要な儀礼は聖なる屠殺である。供犠には饗宴がともない、食物を分け合う狩猟民の習慣が起源のようにも思えるとする。

忌避と供物-恐怖から安定へ
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の供犠の土台となるイサクの供犠の話は、脅迫に従う物語である。神の要求には説明や代償が無い。これは人類全ての不安に対する対応、追撃下で貴重品を投げ捨てる行動に遡るとする。

7 記号の有効性―意味の宇宙
記号の受け入れ- 占い
生物は周辺環境から合図を捉え、しかるべく反応する。人間では自然物の中に図象を見る。記号は媒介として兆と解釈される。記号は送り手と指示内容という意味論の構造で理解されるのだ。

記号を介した決定-神判
神判とは、自然を介して神々に語らせる手段である。神が監督する自然に委ねられた判断。

記号の創造-テリトリーと肉体
自らの領域にマークを付ける事は多くの哺乳動物に共通する所作である。人間が作り出す目印も「知覚に適する」世界を創造し、曖昧を消し去って、現実を本能的必要や意識的概念に一致させる。

保証される言語-宣誓
宣誓を有効にするための宗教。宣誓は、様々な社会的相互作用において必要不可欠であり、契約や条約、司法手続きの基礎となる。独立した証人 = 神が真実を保証すると仮定する。

結論
宗教は、不可視存在と真剣に意思疎通するための原始からの伝統である。

その基礎となる元とは情報共有の基礎となり、文字は客観性を創造した。書く事が一般的になると、文章と現実の齟齬を説明するための講釈が必要になる。

現代社会では、情報技術の発達により、共有情報やプログラムが個人から独立して存在するようになった。その結果、有効性の確認は神ではなくなるため、自然と人間を接続するための宗教は機能停止するかもしれない。

しかしながら、生物の基礎的条件が廃棄されないのなら、宗教的意味は存続するのではないか。

人気ブログランキングへ

軍学考

読んだ本の感想。

兵頭二十八著。2000年10月10日 初版発行。



情報が整理されていないので、理解し難い内容だった。

軍学:
日本独自の思想?狩猟精神や一神教的民族理性が薄弱な日本において、軍事的理性を骨幹として政治や個人の処世を考えるもの。

日本においては、西洋の軍事科学に比肩する哲学は存在せず、史学や政治哲学に包摂されるとする。帝国は拡大や縮小化の勢いの中にしか存在できないもので、文人親和的な帝が存続出来た島国の日本を特殊とする?

異質文明との接触混融が起る中国では、皇帝や国家の上に「天」や「太極」の概念が必要だが、天敵のいない日本では天皇や国家以上の公は無い。



権力とは、飢餓と不慮死の可能性からの遠さであるとする。それが人間の社会的活動の根源の動機とする。国家を創る目的は、主権者が安全・安価に権力を維持・増進するためである。

そして、文明とは、自然レベルを超えた人口を可能にする食糧生産・配分システムであり、文化とは、人口密度を敵性化するための諸様式と定義する。

<和歌文化と狩猟戦闘文化>
外敵の侵入が少ない日本においては貴族が軍人となる文化は育まれなかった。

日本語操作能力によって政治権力を保つ。知的威光による支配。

近代以前において最も多数の死者を出したとする関ケ原の合戦でも死者は6000人程度(『関ケ原合戦』二木謙一著)であり、大坂夏の陣での一万四千人~一万八千人の死者が最多?

日本で多量の死者が出る戦闘は稀。

日露戦争での死者一万5400人まで、日本での戦死者数は大坂夏の陣を超えない。

そうした環境において、殺生人としての文化は維持し難い。

<孫子と七書>
七書とされる兵書の中で、『孫子』が最も長い経験値を持つとする。クラウゼヴィッツの『戦争論』は、大砲と小銃の基本性能が前時代から進化しなかった時代の書であり、鉄製の武器が登場し、戦車に代わって騎兵や歩兵の大群が登場する等の新条件を考慮した孫子の時代とは異なるとする。

呉子:
呉起一人の体験談的に記述される。将の心術を論じるくだりは『孫子』には見られない。

六韜、尉繚子:
騎戦に言及しているため、漢代より後に書かれたとする。

三略:
政権を建てた後の守成のための教訓集。

司馬法:
考古学的で車の話が多い。

李衛公問対:
唐代の成立。

****************

P37に、著者は学生時代に読んだ数百冊の本について、将来引用出来そうな所をノートに取ってあり、この本の過半はノートを観ながら二か月ほどで書いたものとあるけど、そのように書いたため内容が整理されていないように思える。

著者の他の本を読んだ方が主張したい事が解るかもしれない。

人気ブログランキングへ

ニューロマンサー

読んだ本の感想。

ウィリアム・ギブスン著。1986年7月15日 発行。



週刊東洋経済 2016.9.17の特集『IOT発進!』で紹介されていた本。

作品世界において、何がどうなっているのか解らなかった。

以下は、Wikipediaの「ニューロマンサー」の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%BC

「マトリックス」と呼ばれる電脳空間(サイバースペース)に意識ごと没入(ジャック・イン)して企業情報を盗み出すコンピューター・カウボーイが暗躍する世界の話。

【用語】
スプロール(BAMA):
ボストン=アトランタ=メトロポリタン軸帯。ニューヨーク市、アトランタ市、ボストン市の3つを合わせた北米東部のベルト地帯。ケイスの故郷。

氷:
ネットワークを不正なアクセスから守るためのセキュリティシステム。

フラットライン:
脳死状態。脳波計表示が水平になる事から。

スクリーミング・フィスト:
アーミテージの前身コート大佐が参加したソヴィエト連邦への情報戦。コンピュータ・ウィルスプログラムの原型が使用されている。コート大佐は政府の裏切りにより、廃人となる。

センス/ネット:
スプロールにある情報系大企業。

テスィエ・=アシュプール株式会社(T=A):
人工衛星上に住む閉鎖的一族によって運営される。人工知能 冬寂を保有。一族は大量のクローンを作っており、多くの同族が冷凍保存されている。

自由界:
葉巻型の宇宙コロニー。白い紡錘体(スピンドル)に、格子、放熱器、ドッグ、ドームが散在している。

広級マーク十一:
軍用ハッキングプログラム。人工知能への接続も可能。

チューリング:
人工知能が必要以上に進化しないように監視する警察機関。

【人物】
<ハッカーチーム>
ヘンリー・ドーセット・ケイス:
24歳の元ハッカー(コンピューター・カウボーイ)。かつて依頼主との契約違反のために脳神経を焼かれ、電脳空間に没入出来なくなる。千葉市でチンピラをしているが、没入能力修復を代償にアーミテージの依頼を受ける事になる。世間を欺く事で殺されようという自殺性向を持つとされる。

モリイ・ミリオンズ(コロドニイ):
用心棒。爪の下から飛び出す薄刃等の身体改造。

ピーター・リヴィエラ:
30歳?くらいのドイツ人?他人に幻覚を見せる超能力を持つ。欲望対象を裏切っている意識が無ければ性的に満足出来ない人格破綻者とされる。イスタンブールでは、好きな女が出来ると、その女が政治犯になるように仕向けている。

フィン:
情報屋。モリイの古い知り合いで、彼女の紹介で技術係としてアーミテージに雇用される。

アーミテージ:
ウィリス・コート大佐。ケイス、モリイ、リヴィエラ、フィンを雇いコンピュータ複合体への潜入を試みる。

フラットライン:
マコイ・ポーリー、ディクシー・フラットライン。ケイスの師匠。作品世界においては故人であり、生前の情報をコンピュータ上に再現した疑似人格として活動する。

<千葉市>
ラッツ:
国外居住者用バー 茶壺(チャツボ:チャット)のバーテンダー。ケイスを凝り性(アーティスト)と呼ぶ。

ロニー・ゾーン:
茶壺住み込みの女衒。

ウェイジ:
外人売人の元締め?多くの都市にコネを持つ。

ジュリアス・ディーン:
135歳。抗老化手術を受けている。様々な情報に通じる。

リンダ・リー:
ケイスの千葉での友人。ケイスの気を引くために日立RAMを盗むが、殺害される。

<テスィエ・=アシュプール>
アシュプール:
テスィエ・=アシュプールの支配者。200歳以上の老人で冷凍睡眠技術を活用している。

3ジェイン・マリイ=フランス:
遺伝的にはアシュプールの娘。アシュプールを殺すために冷凍装置を操作したとされる。母親は、人工知能 冬寂の開発者。

<その他>
冬寂:ウィンターミュート(ニューロマンサー):
人工知能。冬寂とニューロマンサーは、双子関係にあり、人間の規制を振り切って進化しようとする冬寂と、それを阻止しようとするニューロマンサーでが競合関係にある?

****************

第一部 千葉市憂悠
千葉でチンピラをしているケイスが、電子空間への没入能力を修復され、アーミテージのチームに参加するまでを描く。

ケイスは、友人であるリンダ・リーに命を狙われていると騙され、日立RAMを盗まれるが、ディーンにリンダ・リーは殺される。

第二部 買物遠征
ケイスがアーミテージの指示により、師匠であるフラットラインの仮想疑似人格を盗み出す話とイスタンブールでピーター・リヴィエラをスカウトする話。その後、宇宙コロニー「自由界」へ行く。

地元の不良少年集団パンサー・モダンズに陽動してもらい、フラットラインの疑似人格を盗み出す。この際に、ケイスがモリイの感覚を共有出来るよう疑験(他人の視覚・聴覚・触覚などの感覚を共有する疑似体験?)措置が施される。

モリイはパンサー・モダンズにアーミテージの調査を依頼しており、彼がウィリス・コート大佐と呼ばれていた事を知る。彼は、冬寂という人工知能の指示によって活動しているらしい。

最後に冬寂からケイスに電話がかかるが、ケイスは電話を切ってしまう。

第三部 真夜中のジュール・ヴェルヌ通り
宇宙コロニー(植民群島)において、テスィエ・=アシュプールとの接触を試みる話。

植民群島にある集団ザイオンの協力を得る。

ザイオンから自由界に向かう途中で、ケイスはベルンの人工知能に接続するが、人工知能に取り込まれ、現実世界を模した幻覚を見せられる。以後、幻覚は幾度も登場する。

ピーター・リヴィエラが水上レストラン「二十世紀」で、、テスィエ・=アシュプールの一員である3ジェインに幻覚を見せる事で興味を引く。その幻覚が、モリイが性サービス業で働いていた時のトラウマを刺激するものだったため、モリイが失踪し、3ジェインと消えたリヴィエラを追う。

最後に、ケイスがチューリング(警察)に、人工知能進化の試みをした事により捕らえられる。

第四部 迷光仕掛け
人工知能との最終決戦?

ケイスを捕らえた警察官達は、冬寂による攻撃により殺される。ケイスは自由界において、モリイとリヴィエラを追う。

冬寂が、ケイスに対して、自由界の迷光正面入口にある儀式的端末に、モリイが定められた時刻に、3ジェインが知っている言葉を入力すべきと伝える。

モリイはアシュプール老人を殺害するが、3ジェインに捕らえられる。

3ジェインは、人工知能を設計した自らの母の思想について語る。各個人の意識を統合し、大きな存在の一部となる。その思想を脅威と見做す父により、3ジェインの母は殺されたらしい。冬寂の行動は、3ジェインの母親がプログラムした衝動によるものらしい。

ニューロマンサーはネクロマンサーであり、様々な疑似人格を保有する事で、多数が統合された世界を生み出す事が出来る?

3ジェインから言葉を聞き出したケイスは冬寂との接続に成功する。

結尾 出発と到着
冬寂がニューロマンサーと結合した後の話。彼は、ケンタウルス系に存在するという自らの同類を求めて旅立つらしい。

人気ブログランキングへ

ユートロニカのこちら側

読んだ本の感想。

小川哲著。2015年11月20日 初版発行。



週刊東洋経済 2016.9.17の特集『IOT発進!』で紹介されていた本。

ユートロニカ:永遠の静寂

監視社会に適応していく人々の生態について。

監視されている状況に適応するのは、想像力が鈍化した人間である。想像力が鈍化した状態は、必然的にストレスの無い生活を育み、最終的には自らの意識を自覚しない状況を生むと考える。

小説世界は、米国企業マイン社がサンフランシスコに建設した「アガスティアリゾート」での出来事を中心に展開される。個人情報への無制限アクセスを許可する代わりに「働かなくても良い権利」が保証される街。

【用語】
ABM(特別区管理局):
アガスティアリゾートにおける警察機関。

サーヴァント(情報管理AI):
アガスティアリゾートにおける生活の全てを記録する。

BAP(行動分析ポリグラフ):
行動予測システム。個人情報を解析する事で犯罪を起こす可能性を知る事が出来る。

第一章 リップ・ヴァン・ウィンクル
「アガスティアリゾート」に居住するジョン/ジェシカ夫妻の話。

監視される状況に適応する妻ジェシカと、適応出来ない夫ジョン。

無気力性症候群になったジョンは診療所に通うが、そこで自分と同じ症状となった旧友デレクの自殺を目撃する。

*************

人間は日常的に自らに嘘をつき、自分に都合が良いように記憶を改変する。日常的に監視されている状態を自覚してしまうと、自らの合理化(都合が良いように記憶を改変する事)を信用出来なくなり、自分の決断が全て間違っていたように感じられ、精神を病んでしまう。

第二章 バック・イン・ザ・デイズ
マイン社が提供する過去再体験サービス『ユアーズ』について。

多量の個人情報を保存しておき、再現する事により過去を追体験出来る。

アラン・リード(31歳)は、高校入学祝いの旅行を、父親が途中で打ち切った事を今でも気に病んでいる。過去再体験サービスにより、父親が旅行を打ち切った理由が、個人情報提供義務のために特定範囲外への外出が不可能であったためと知り、自らを癒す。

P103~P104:
(前略)
被験者の「想像力」を測った。
(中略)
高ランクの被験者は、より短い時間で回答し、前頭葉から側頭葉により強いトップダウン式の信号が見られた。この信号は、実在するものを視覚から得る際に活性化するもので、側頭葉のイメージが前頭葉に流れ込む生体現象―いわゆる『想像力』のプロセスとは真逆である
(中略)
一方で、ランクの低い被験者は、より時間をかけて回答し、ボトムアップ式の信号が活性化した。
(中略)
高ランクの被験者は脳に負荷をかけずに思考する方法が上手だと言うことはできるかもしれない。チェスのチャンピオンがある盤面を一瞬で記憶できるように、有能な人間ほど作業にパターンを見つけ、脳をモジュール化し、自動的な思考を用いて情報を処理することはよく知られている。

第三章 死者の記念日
サンフランシスコ市警殺人課の刑事スティーヴンソンの話。

妻の兄オリビエとは刑事時代の寮で同室であり、銃撃戦で死んだ彼との思い出を軸に物語は展開される。

P119:
Compliteness(完全性)、Coherence(一貫性)、Continuity(継続性)、Closedness(閉鎖性)。マイン社が情報の価値を決める「4C」と呼んでいるものだ。ある継続した期間にわたり、閉じた系で発生した完全で一貫した情報には、なにものにも勝る非常に高い価値がある。そういった情報は、人間という未知の機械をリバースエンジニアリングする上で役に立つという話だ。
これに対して、ある哲学者は、Contingency(偶発性)、Curiosity(好奇心)、Complication(複雑さ)の三つが、人間が人間であるための「3C」であると反論した。

第四章 理屈湖の畔で
マイン社の特別技術顧問クリストファー・ドーフマンの話。

彼は、BAP(行動分析ポリグラフ)により、暴力行為に及ぶ確率が8割を超えると予測された犯罪者予備軍ラリー・ジェンキンスを監視する。

ジャーナリストが、ラリー・ジェンキンスが非合法に監禁されていると批判し、ラリー・ジェンキンスへの取材を行うが、その最中に殺人事件が発生する。そして世論は、犯行が予測出来たにも関わらず、未然に防止出来なかった司法を批判するようになる。

クリストファー・ドーフマンは、犯罪予備軍が更生する可能性主張するが、世論に受け入れてもらえない。

P197~P198:
目的犯を取り締まるということは人々に大きな影響を及ぼします。
(中略)
危険性そのものが自由に裁けるようになれば、人々は危険について想像することすら避けるようになるでしょう。
(中略)
危険について考えることをやめた人間は、別種の新しい次元の危険を生み出すでしょう。

第五章 ブリンカー
日本人女学生ユキの話。

米国に留学し、同じ日本人留学生 吉本浩二(ララ)とアガスティアリゾートでのテロを計画するが、BAPによって未然に防がれる。

ABMが意図的に犯罪を見過ごし、現行犯逮捕しようとした事が物議を醸す可能性が示唆されるが、次章において、それは大きな問題となっていない。

P229:
アガスティアリゾートは危険を排除することで成り立っているんじゃなくて、危険を予測し、そのコストを街全体に分散させることによって成り立っている
(中略)
アガスティアリゾートで唯一排除されるのは『予測の困難さ』なの。

P246:
人間は、不自由からの解放という形でしか自由を認識できない。不自由がなくなれば自由もなくなる。完全が欲求が満たされれば欲求は存在しなくなる。意識がなくなれば、無意識もなくなる。

****************

P263~P266で『アガスティア・プロジェクト』という本について記述。

人工知能により、利他的社会を低費用で実現した結果について。抽象概念、自由意志、意識は人間同士の騙し合いによって必要とされたものなので、利他的社会では人間は意識を無くすと主張する。

人間の「心」がどこまでも主観的なものであり、他人の「心」を客観的に把握する試みは矛盾するとしている?

第六章 最後の息子の父親
アガスティア・プロジェクト立ち上げ人の息子 ロバート・アーベントロート牧師の話。

彼の息子は、『アガスティア・プロジェクト』を著して、人間の意識が無くなると主張した事で大勢の人間が命を狙われており、ロバート・アーベントロートは、自らが孫の安全のため、アガスティアリゾートに居住する事を決める。

P272:
自由を自ら放棄する自由は、人間に与えられていますか?
「そんな自由はありません。なぜなら、私たちは自分の自由意志で信仰の道を選びとるべきだからです。それゆえに、信仰に意味が生じるのです。
(中略)
自由の否定は、人間の否定を意味します。

P274:
みんなは自由を手放すことを喜んでいるんです。自由がすっかりなくなって、頭を使わずに生きることを願っているんです

P300~P301:
忘却が本当に恐ろしいのは、自分が忘却したという事実さえ忘れてしまうことなんです。みんな、都合良く生きるために都合の悪いことを忘却しようとします。
(中略)
罪の原因になりそうなものを、自分の周囲から徹底的に排除するんです。気持ちのいい言葉だけを耳にして、世界が自分の望むように回っていると思いこむんです。

P305:
答えに詰まるような質問をされなければ、人々は無意識のまま会話をすることがさえできる。逆に、嫌なことや難しいことがあれば、人間は意識を呼びだして、うんと考えてそれを解決しなければならない。つまり、ストレスが意識を発生させるってことだ。
(中略)
人々の希望通りストレスをなくしていくと、最後は意識が消滅する

******************

この小説が北米を舞台にしているのは、終章における宗教的問答をするためだと思う。日本を舞台にしては、キリスト教信仰に現実感が無い。

監視社会において、牧師達がどのように自由を主張するのか具体的に想像出来なかった。

人気ブログランキングへ

スクラム

読んだ本の感想。

ジェフ・サザーランド著。2015年6月20日 初版印刷。



プロジェクト管理手法「スクラム」について。

第一章 過去のやり方は通用しない
2010年から始まったFBIの情報化プロジェクトが失敗した事により、新しいプロジェクト管理手法が必要とされた事について。

プロジェクト工程を詳細に記述し、マイルストーンや納期を明確化する手法は現実的でない。管理と予測可能性を求めると、変化に対応出来ない。

スクラムでは創造性と不確実性を前提にする。

基本的な考え方は単純で、プロジェクトの途中で自らの成果を確認する。さらに改善方法を探る。検査と適応のサイクル。

第二章 スクラムが誕生するまで
著者のキャリアについて。

米国空軍で危機管理訓練を受け、観察、情勢判断、意思決定、行動を教えられた。

その後、スタンフォード大学で統計学の収支を目指し、生物統計学の博士課程に進む。

その後、情報技術会社に就職し、ウォーターフォール式の管理手法に疑問を抱くようになる。個々人と周辺環境を絶えず連携させるシステムを人間のチームでも実現する事を目指す。

第三章 チーム
3800のチームを分析した調査では、最も能力が高いチームが一週間で出来た仕事を、最も能力が低いチームが行うと2000週間が必要だった。

日本人経営学者 野中郁次郎、竹内弘高の論文「新たな製品開発競争」では、優れたチームの特徴を以下のように纏めている。

①境界や限界を超える
高い目的意識により、卓越した領域に達する。

②主体性
自己組織的、自己管理的。仕事の進め方を自分達で決める。

③機能横断的
優れたチームは、プロジェクト完成に必要な技術を全て持っている。それぞれが支え合い強化し合う。

そして、チームには適正は大きさがあり、9人を超えるチームではプロジェクトのスピードが落ちる。

<根本的な帰属の誤り>
自分が非難される状況では問題発生の背景や全体像を考えるが、他人を非難する時には個人の欠陥を責める。

⇒他者が非難される状況でもシステムの改善を目指すべき

第四章 時間
スプリント:
決められた時間の枠。やるべき仕事を分割して、理想的には一週間~四週間で達成出来るようにする。

そして、毎日のミーティングでは以下を話す。

①スプリントを終了するために昨日した事
②スプリントを終了するために今日する事
③チームの妨げになっている事

ミーティングが15分以上かかるようなら方法が間違っている。ミーティングの目的は、スプリントの現状をチーム全員が把握する事である。

個人の進捗報告の場にするのでなく、困っている事や提案を話し合う形式にする。

第五章 無駄は罪である
スクラムの真髄は周期性にある。人間は惰性で動くものであり、リズムを求め、予測出来る範囲内に収まろうとする。そこでリズムを検証し、無駄を削る必要がある。

その一つがマルチタスクであり、同時に複数をやると能率が落ちる。

人間の脳には限界があり、真に集中出来るのは一つだけであり、物事を修正する過程は時間が経過するほど困難になる。

第六章 幻想を捨て、現実的なプランニングを
事前に全てを計画出来ない。予測不可能は必ず発生する。

スクラムでは、何らかの価値を形に出来る次のタスクに必要なだけを詳細な計画にして、プロジェクトの残りの部分は大まかな見積もりだけを出す。そして、各サイクルの最後には、目や触覚で確認出来る付加価値が作られるようにする。

著者は、人間は見積もり作業が下手であるため、他と比較して相対的に規模を把握する手法を提案する。ドッグポイントとして、プロジェクトの大きさを犬種で表現する等。タスク同士を比較する際に有効とする。

比較に数値を用いす場合、フィボナッチ数列(それぞれの数が、前の2つの数字の和となる)として、1、3、5、8、13・・・・を用いる方法がある。フィボナッチは感覚的に分かり易いらしい。

デルファイ法:
匿名のアンケートを繰り返し、誰が出した意見なのか分からない方法で討議者にフィードバックする。スクラムでは、デルファイ法では時間がかかり過ぎるとして、フィボナッチ数が書かれたカードを配り、タスクの見積もり等で匿名で意見を出せるようにしているらしい。

***************

指示を出す場合には、背景となる物語が必要になる。最初に考えるべきは登場人の役割であり、誰のための仕事であるかという点だ。次に、何を達成すべきかを考える。最後に動機付けとして登場人物がタスクを必要とする理由を考える。

第七章 幸福
プロジェクトにおける幸福の重要性。

成果を出すには、メンバーが感情面で大人であり、互いに信頼し合っている事が大切になる。

「幸福度の計測」と呼ぶ手法。スプリントが終わるごとに以下を問う。

①会社内の自分の役割。1~5で表すと何か
②会社全体についてどう感じているか(1~5で)
③そう感じる理由
④何を一つ変えれば次のスプリントで幸福を感じるか

チームメンバーを幸福にする要素は、優れたチームを作るのと同じで、①主体性、②スキルアップ、③目的意識だ。そのためには透明性が重要で秘密を作らないやり方を目指す。

そして、幸せのバブルには注意すべきで、適当な仕事に満足するのでなく、仕事のパフォーマンスと幸福度を比較し、両者に乖離があれば行動しなくてはならない。

第八章 優先順位
スクラムを取り入れる際に、最初にする作業がバックログの作成だ。最終的に何がしたいかを定め、取り組む項目をリスト化する。

そして、項目に優先順位を付け、低リスクで最大の価値を付加出来る項目から着手する。製品の価値の80%は、20%の機能に含まれる。

スクラムでは、目指すビジョンと価値の所在を把握出来る人間を「プロダクトオーナー」と呼ぶ。プロダクトオーナーは、スプリント毎に顧客要望をメンバーに伝える。

以下は、プロダクトオーナーに必要な要素。

①仕事に精通している
②決定権を行使出来る
③メンバーへの説明能力
④価値を説明出来る

優先順位は入れ替わるので、スプリント毎に状況変化を考慮する。

第九章 世界を変える
スクラムを学校や貧困対策プログラム運営等に役立てた実例について。

以下は、スクラムの実践手順。

①プロダクトオーナーを決める
プロダクトオーナーは、「何をするか」のビジョンを明確化する。そのためにリスク、利益、実現可能性、熱意を考慮する。

②チームを作る
チームはプロダクトオーナーのビジョンを理解し、それを実現する技術を全て備える。構成人数は3人~9人。

③スクラムマスターを決める
スクラムマスターは、メンバーを導き、仕事の障害を取り除く手助けをする。

④プロダクトバックログを作成する
バックログ(ビジョンを実現するために必要な作業を挙げたリスト)を作成する。バックログは、開発中、常に進化する。

⑤プロダクトバックログを整理する
タスクを実際に行う人間が、それぞれの仕事量を見積もる。そして、チームでバックログの各項目について実際に実現可能か検討する。どの項目も実際に成果物を見せられるかが重要で、仕事量の見積もりは所要時間ではなく、他と比較した相対サイズで見積もるのが良い。フィボナッチ数を推奨している。

⑥スプリント計画を立てる
一定の期間での計画を立てる。前回のスプリントで完了出来たポイント数をチームのベロシティと呼ぶ。メンバーは、スプリント毎にベロシティを上げるよう努める。

⑦仕事を見える化する
スクラムボードを作成し、完了すべき仕事を「未着手」、「作業中」、「完了」の三列に分ける。

⑧デイリースクラム
毎日、決まった時間に15分以内でミーティングを行う。

⑨スプリントレビュー
スプリントの間に達成した成果を見せる場を作る。

⑩スプリントレトロスペクティブ
前のスプリントで達成した事を発表したら、上手くいった点、もっと上手く出来た点、次のスプリントで改善出来る事を話し合う。誰かを責めるのでなく、過程に焦点を当てる。

チーム全体での改善点を決め、改善出来たかを判定する試験とともに、次のスプリントのバックログに入れる。

⑪次のスプリントの開始

人気ブログランキングへ

発達障害の子の「イライラ」コントロール術

読んだ本の感想。

有光興記著。2015年8月25日 第1刷発行。



発達障害者のイライラに対しては、叱るだけでは対処出来ない。イライラの理由を知る必要がある。

以下、怒りを誘う行為。

①要求する
②否定する
③頭ごなしに言う(当たり前じゃない)
④悩みを軽視する(大した事じゃない)
⑤強圧的な大声
⑥感情的否定(駄目ねー)
⑦理由をただす
⑧禁止する
⑨決め付ける
⑩突き放す

以下、怒り消し去る行為。

①努力を肯定する
②結果に拘らない
③過去に囚われない
④我慢し過ぎない
⑤元気に挨拶する
⑥思い切り笑う
⑦人の意見を気にし過ぎない
⑧出来事に囚われない(こういう事もある)
⑨義務でなく希望を言う
⑩レッテルを拒否する

*******************

<イライラ対策の前準備>
イライラする人間が周囲にいると、その問題で余裕が無くなり、被害者意識が出て来る。少し休んで趣味を再開する等して余裕を持つ。

そして、他人のイライラの前に、自分のイライラを整理する。ノートに書きだし、①個人的に腹立たしい事、②悲しい事、③世の中に憤った事に分類すると、イライラの多様性が見える。

理想が高い人間ほど要求が多いので、正しく進まない事に我慢出来ない。他人に対処する前に、自分のイライラ耐性を知り、気をそらす方法を見つける事が大切。

<言い分を聞く>
話を聞くより先に、行動を変える事は出来ない。

興奮状態にある相手に対しては、10秒間~2分間は待つ。人間の怒りは、1分間~2分間で収まる。怒りが強くなるのは、反論されたり、反撃された時。他の人間や危険物から遠ざけて落ち着くのを待つ。

単純な我儘でなく、当人が自分の非常識に無自覚である事が多い。

発達の遅れや偏りを意識し、実年齢よりも年下のつもりで話す。当人の創意工夫を求めず、難しい抽象表現や示唆を避け、単純に具体的(ちゃんと、多めにという曖昧な表現を避ける)に解説する。常識的なルールでも明確に言葉にして、「どうして」という曖昧な聞き方でなく、「○○だから?」のように具体的なヒントを出す。

<怒りの結果について考える>
発達障害の特性が怒りの原因となる。例えば、言葉通りに捉える傾向があると、冗談を本気にして怒り出す。このように適切な考え方が分からないと状況を悲観的に把握するため、「良く考えなさい」と突き放すのでなく、考える事に補助が必要な場面がある。

そのため、本人の考えを聞く以外に、自分の考えを示す事が大切な状況もあり得る。

怒った結果、何が発生したかを考えると、怒りは必ずしも得ではない。

<イライラが小さいうちに対処する>
怒りが小さいうちに休憩する等して、怒りが増幅しないように気を付ける。

怒りには、体や行動が変化するため、初期段階で怒りに気付きたい。

人気ブログランキングへ

オービタル・クラウド

読んだ本の感想。

藤井太洋著。2014年2月20日 印刷。



週刊東洋経済 2016.9.17の特集『IOT発進!』で紹介されていた本。

IOTに関連する小説ではないと思う。つまらない小説だった。

オービタル・クラウド = 軌道の雲。

2020年12月11日(金)~2020年12月16日(水)にかけて、北朝鮮の電脳ハッカーと米国や日本の軍人・技術者が戦う話。

東洋経済に書いたあったように、インターネット上であらゆる階層の人間が対等に繋がるという印象は無い。能力による序列に作者が拘っているように感じられた。

【用語】
スペース・テザー:
テザー推進理論を活用した宇宙機。磁場のある惑星の軌道上で使う推進方式。金属の紐(テザー)を360度方向に回転させ、自転する事で自由に軌道を移動出来る。無数のスペース・テザーが雲のような集合体として宇宙空間を自由に行動する。そうしたスペース・テザーの群れをオービタル・クラウド(軌道上の雲)と呼んでいる。

大跳躍:
小説世界における北朝鮮の陰謀。スペース・テザーにより、デブリ衝突に偽装した事故を増やし、人工衛星を運用している国の宇宙開発意欲を削ぐ。そして、事故を恐れる大国から人材を獲得し、北朝鮮やイラン、パキスタン、アフリカの小国が宇宙開発の本場となる事を目指す。

フールズ・ランチャー:
渋谷にあるシェアオフィス。フリーランスの起業家や技術者が集う。

TLE(二桁軌道要素):
物体の名称や軌道の傾き、運動等が二桁に纏められた形式の情報。

サフィール3:
2020年12月1日に、イランから打ち上げられた宇宙ロケット。ロケットボティの二段目は、SAFIR3 R/Bと名付けられ、地球に落下せずに高度を上げる事で注目を集める。サフィール3の近くには、4万ものスペース・テザーが飛んでいるらしい。

ASM140:
米国が開発した対衛星兵器。ホウセンカ(目標の手前2㎞で無数の弾体を叩き付ける)という攻撃手段。

【登場人物】
<フールズ・ランチャー>
木村和海:
28歳の日本人男性。流れ星の発声を予測するWebサイト「メテオ・ニュース」を運営する。脳内で宇宙での軌道計算を行う能力を持つ。

沼田明利:
23歳?の日本人女性。アフロヘア。有能なITエンジニアであるらしい。北朝鮮エージェント白石蝶羽の姪。

渡辺:
フールズ・ランチャーの古株。32歳。

仁美:
フールズ・ランチャーの英語屋。待ち受けが月額3000円、日本語翻訳が1件300円の英語サービスをする。メアリーというビジネス・ネームを名乗る。

<北朝鮮>
白石蝶羽:
元JAXA職員。長めの長髪に古い型の眼鏡。かつて技官として情報集衛星のプロジェクトに携わるが、技術職が冷遇される事に絶望し、中国や北朝鮮に居場所を求める事になる。

パク・チャンス:
北朝鮮エージェントの女性。根元を黒く染めた金髪。拷問で指の筋肉を削ぎ落とされたため、樹脂のサックを装着している。

<JAXA>
黒崎大毅:
白石蝶羽の元同僚。

関口誠(ワンチンミン):
20代半ばのキャリア。中国のスパイ。

<北米航空宇宙防衛軍(NORAD)>
クロード・リンツ大佐:
59歳。NOARDの指揮官。

ダレル・フリーマン軍曹:
インドネシア出身。市民権を得るために軍に志願している。

ブルース・カーペンター:
CIA職員。アフリカ系黒人。元は戦車乗り。

クリス・ファーガソン:
CIA職員。初老の女性。

<その他>
ロニー・スマーク:
米国の投資家。2020年12月12日(土)から、娘と共に宇宙船ワイバーンで5日間暮らし、国際宇宙ステーションとワイバーンの合体に立ち会う予定を立てる。

ジュディ・スマーク:
28歳。ロニー・スマークの娘。

オジー・カニンガム:
セーシェルに住む。アマチュア天文写真家Xマンを自称。Webサイト「セーシェル・アイ」を運営している。ロニー・スマークとは旧知の仲。大金持ちで、アマチュアながら軍用の防空レーダー等の設備を保有する。

ジャムシェド・ジャハンシャ:
テヘラン工科大学に所属。テザー推進理論提唱者。

アレフ・カディバ:
テヘラン工科大学法学部に所属。イランでインターネットが自由に使える運動をしている。

柳教授:
イランには、北朝鮮との技術交換プロジェクトで来た。冴えない風貌で信望が無い。


*************

第一部 サフィール3 R/B
イランから打ち上げられた宇宙ロケット サフィール3のロケットブースターが、地球に落下せずに高度を上げる事が注目を集める。インターネット上でイランの宇宙兵器「神の杖」と命名され、国際宇宙ステーション攻撃が噂される。

○フールズ・ランチャー
木村和海が、自身の運営しているWebサイト「メテオ・ニュース」が提供している情報が間違っているという指摘をオジー・カニンガムから電子メールで受ける。木村和海は、オジー・カニンガムの運営しているWebサイトから観測情報を収集し、解析する事で、イランから打ち上げられたサフィール3の周辺に数万もの物体が飛んでいる事に気付く。

そして、イラン人 研究者ジャムシェド・ジャハンシャは、「メテオ・ニュース」に掲載されていた観測情報から、サフィール3に自らのテザー推進理論が活用されている事に気付き、「メテオ・ニュース」に連絡する。

○北朝鮮
「神の杖」の噂を利用し、「大跳躍」プロジェクトを隠蔽しようとする。そのために以下を行う。

・インターネット上に、朝鮮語の誤訳を多くアップし、「鉄拳」 = 「鉄槌」と誤訳されるようにする。北朝鮮首領の演説が、「神の杖」を示唆していると誤認させる。
・対地軌道兵器の設計図をイラストレーターに渡し、「セーシェル・アイ」のWebサイトに本物の対地軌道兵器を模したイラストを載せる。
・Web広告を利用したシャドウ・ウェアにより、「神の杖、サフィール3、ジャムシェド・ジャハンシャ、スペース・テザー」という文字列を使用したインターネット使用者を探知するよう仕掛ける。
・サフィール3を米国人投資家が宿泊する宇宙船ワイバーンに接近させる。

「メテオ・ニュース」がテザーに気付いた事から、スパイをかける。

○JAXA
北朝鮮首領の演説が誤訳されている事を感知する。また、フールズ・ランチャーの木村和海からサフィール3周辺に多数の軌道上物体が飛んでいる事を知る。

○北米航空宇宙防衛軍
サフィール3の二段目が地球に落下せずに加速している事を探知。また、CIAが「セーシェル・アイ」に載せられている「神の杖」のイラストが本物の設計図に基づいている事に気付いた事から、対地軌道兵器への対処が始まる。

JAXAからの依頼により、木村和海、沼田明利を協力者として招く事になる。

****************

フールズ・ランチャーにて木村和海とJAXA職員が、スペース・テザーについて話し合っているところに北朝鮮スパイがやって来て、木村和海は北朝鮮対策のために北米航空宇宙防衛軍を訪れる事にする。

第二部 スペース・テザー
米国における木村和海達と、ジャムシェド・ジャハンシャと接触するためにイランに渡ったJAXA職員達の行動を描く。対北朝鮮。

北朝鮮エージェントから木村和海にかかってきた電話から、北朝鮮エージェントの逗留先を米国シアトルと見極め、ウォー・ドライビング(街を巡り、無線LANのネットワークを探るハッキング手法)を行う。

北朝鮮が、スペース・テザーにより日本の情報収集衛星と、米国人投資家が滞在している宇宙船ワイバーンの帰還船を破壊する。

一方で、木村和海は、ジャムシェド・ジャハンシャとインターネットを介して連絡し、スペース・テザーの通信方式や材料について情報を得る。

そして、スペース・テザーを地球から制御するために60万個の発信基地が必要な事から、北朝鮮がUSBケーブルを他国の会社から販売してヒット商品とし、そのUSBケーブルにスペース・テザーの基地局ソフトを含ませている事を知る。

第三部 オービタル・クラウド
スペース・テザー撃墜作戦の完遂。

沼田明利と白石蝶羽が出会う。北朝鮮エージェントとの撃ち合いで、白石蝶羽は沼田明利を庇って死ぬ。

白石蝶羽は、生きている内にジャムシェド・ジャハンシャに対して「残されたる者の大跳躍計画」をメールで知らせる。大国が知らないスペース・テザーの存在を知っており、軌道予測が可能なイランや北朝鮮が世界中から人材を集めて宇宙開発に邁進するというアイデアをジャムシェド・ジャハンシャは気に入ってしまい、白石蝶々の残したスペース・テザー制御システムを活用し計画を引き継ぐ事を決める。

白石蝶々が死んだ後もスペース・テザーが止まらないため、木村和海達はスペース・テザーの破壊方法を探る。まず、強い電磁波によりスペース・テザーの紐を焼き切る事が出来る事を知る。さらに、スペース・テザーの紐が進行方向に対して真横を向いた時に、2つある終端装置の片方は進行方向へ、もう片方は反対側に放り投げられる事を計算する。

その結果、進行方向の後ろ側に放り投げられた装置は秒速3㎞で大気圏に落下し、反対側は秒速17㎞で地球の重力を振り切って宇宙空間に飛び出すため、宇宙ゴミにならない事を予測。

スペース・テザー群の進行方向から、テザー(紐)の長さより、少しだけ短い波長の電波を放射すると、正面を向いていないスペース・テザーは電波を捉えられずに通り抜けるため、電波源に対して正面を向いたスペース・テザーを見分ける事が出来るとする。

そして、米国国防省のGPS衛星が偽の情報を発信して、スペース・テザーを誘導し、スペース・テザーを撃墜出来る施設があるセーシェルのディスヌ島に向かわせる。

作戦は成功し、撃墜されたスペース・テザーは流れ星となる。

そして、2022年のエピローグで、木村和海達が手掛けるスペース・テザーの運用会社グレート・リープ(大跳躍)にて打ち上げられる宇宙機が白石蝶羽の名前である「アゲハ」である事が語られる。

アゲハを活用して木星からヘリウム3を採取し、宇宙灯台(太陽系内測位システム)を建設し、惑星間特急システムの構築を目指すらしい。

人気ブログランキングへ

火星年代記〔新版〕

読んだ本の感想。

レイ・ブラッドベリ著。2010年7月15日 発行。



週刊東洋経済 2016.9.17の特集『IOT発進!』で紹介されていた本。

これは、IOTに関連する小説ではないと思う。週刊東洋経済に書かれていた「60年前に描かれたスマートホーム」とは、「ニ0五七年 八月 優しく雨ぞ降りしきる」での機械仕掛けの家で火事が起きても機械が動き続ける様の事かな?

IOTは関係無い。

*****************

1950年に出版された旧版では火星に地球からの探査船が到達するのを1999年としているのを、新盤では2030年にしている。復刊にあたって年号を31年ずつ後ろ倒しにしたらしい。

その結果、色々と矛盾が生じている。旧版では、第三探検隊が火星に到達するのは2000年だ。その際に火星人の精神攻撃によって1956年の幻影を見せられる。

それを2031年の話としてしまったため、火星調査隊の隊長が1956年の様相を知っている事に無理が生じ、隊長の年齢を80歳として若返りの施術を受けている事にしてしまった。

これは旧版には無かった設定だと思う。

*****************

最初は、褐色の肌と金色の目をした火星人と地球人の交流を描く話を書きたかったが、話が膨らまなかったので火星人を水疱瘡で全滅させ、地球人が火星を開拓する話も膨らまなかったので核戦争等で火星植民地が荒廃する事にしてしまったのだと思う。

*****************

「火の玉」は、キリスト教の神父と、火星の精神生命体が遭遇する話。

「自由意志」がキリスト教の概念であり、『魂』に由来している。自由意志は必然的に『罪』を伴うが、それは『肉体』に付随するものであり、『魂』に帰属する『自由意志』とは対置される。

そのため、魂のみとなった存在に祈りは必要無い。

人気ブログランキングへ

ゼンデギ

読んだ本の感想。

グレッグ・イーガン著。2015年6月20日 印刷。



週刊東洋経済 2016.9.17の特集『IOT発進!』で紹介されていた本。

読み難い本だった。

『バーナード嬢曰く。』という漫画の一巻 P56で、グレッグ・イーガンの本は、皆、実は結構良く分からないままに読んでいるというような記述があったが、僕には全く解らなかった。



科学的記述というよりも、作者が自分が取材した事を無理に詰め込もうとしているため、無駄で無意味な贅肉が多いメタボリックな印象。

***********************

IOTや人工知能というよりも、一神教の世界観について考察している本だと思う。

主人公が、自らの仮想人格をコンピュータ上に作り出し、死後も生き続けようとする話。

【登場人物】
○マーティン・シーモア
奇数章(+第2章)の主人公。1959年生まれ?のオーストラリア人。ジャーナリストとして2012年からイランで生活を始め、後に本屋(啓典の民)を運営する。死後も息子であるジャヴィード(2021年生まれ)を指導するために、自らの仮想人格をコンピュータ上に作り出そうとする。

○ナシム・ゴルスタニ
偶数章の主人公。1987年生まれのイラン人コンピュータ科学者。マーティンの妻マフヌーシュのまた従妹。父はイランで処刑されている。母のサバは経済学者で『石油後』という本を書いている。政変後のイランにおいて、ヴァーチャル・リアリティ関連のプロジェクトを手掛ける。

○オマール
イランにおけるマーティンの友人。女性や異民族に差別的であるとマーティンから思われている。息子はファルシード。

○マフヌーシュ
イランでのマーティンの妻。ゴスメタルのバンドをしていたために両親から勘当されたらしい。2027年に交通事故で死亡する。

○ネイト・キャプテン
米国の企業家。自らの人格をコンピュータ上にアップロードする計画を立てている。太陽系における最初の超越的存在になる事を目指す。

【用語】
ゼンデギ:
VRエンジン。

バシジ:
イランにおける準軍事的団体。デモを暴力で制圧しようとする。

恵み深き超知性ブートストラップ・プロジェクト(BSBSP):
自らよりも優れた人工知能を設計・製作出来る人工知能を作成し、神の如き力を持つ存在を創り出す計画。

サイドローディング:
活動中の脳をスキャンし、その情報に基づいて、特定の脳をコンピュータ上に再現するための訓練課程。

ファーシフォネ・ファリバ:
20人のイラン人女性の脳をスキャンして作った仮想人格。滑らかに話、数千の平凡な事実に通じる。

シス・ヒューマニスト同盟(CHL):
自主性無き意識はあってはならないとして、ゼンデギへのハッキングによる妨害活動を行う。

【あらすじ】
①2012年
イラン:
オーストラリア人ジャーナリスト マーティンは、政変下のイランで以下の行動をする。
 ・政治家ハッサン・ジャビリの同性愛の相手の
  国外逃亡を手助けする
 ・暗殺された大統領ダリウス・アンサリの弟クーロシュに
  インタビューする
 ・エヴィン刑務所にて友人のオマールを救出する

米国:
MITの研究者ナシムは、脳スキャン応用技術の研究をしている。ある日、キャプテンという男から、脳アップデートに関する依頼を受けるが拒絶する。

その後、ナシムはイランでの政変を受け、イランに戻る事を決意する。

②2027年~2028年
マーティンとその妻が、交通事故に遭い、妻が死亡する。マーティンは自分の余命が僅かである事を知る。

一方で、ナシムの手掛けるVRエンジン「ゼンデギ」は他社との競争により苦境に陥っており、起死回生の切り札として人間の人格をアップロードした仮想人格を検討する。

ナシムは、サッカー選手アジムの仮想人格をネットワーク上に再現し、それに感銘を受けたマーティンは自身の仮想人格を息子を指導するために残そうとする。イランで育つ息子が、友人であるオマールのように差別的になって欲しくないという感情。

やがて仮想人格に対する抗議運動が起る。宗教的感情や失業への懸念等。

そして、マーティンは仮想世界上で、息子のジャヴィードを名乗り、自らの仮想人格と向き合う。そして、意図的に仮想人格の前でゲームキャラクターを殺す。それを見て口汚く罵る仮想人格を見て、息子の指導役としては不適格と判断。仮想人格は、完全には自分と同一にならない。

そして、マーティンはオマールと、息子(ジャヴィード)がマーティンと同じ考え方をするように育てるよう約束する。

ゼンデギは、ハッキングによる妨害等を経て、仮想人格の活用を断念するが、仮想世界上に「神」を再現しようとする活動と、反キリストを恐れる活動との対立が継続する事を示して物語は終わる。

*********************

<一神教的価値観>
主人公のマーティンは、無神論者と自称しているが、実際には一神教徒だ。彼自身が友人であるオマールを侮蔑しており、自らの価値観を至高としている。

そして、自らが永遠に生き続ける「神」として息子を支配し続けようとする。

以下は、「仏教の冷たさ キリスト教の危うさ」の記事へのリンク。一神教的な自らが絶対的に正しいと思う思想が争いを引き起こす事について。「ゼンデギ」の世界では、一神教が産み出す憎悪が具体的に描かれていると思う。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-2437.html

以下は、「人工知能」の記事へのリンク。父なる神としての機械知能を恐れる事について。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-2325.html

以下は、「社会はなぜ左と右にわかれるのか」の記事へのリンク。人間の倫理観が帰属する文化に支配される事について。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-2253.html

以下は、「マッテオ・リッチ記憶の宮殿」の記事へのリンク。『第五章 第二の絵 エマオへの道』にて、子供や妻を支配する事は出来ないとしている。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-2442.html

「ゼンデギ」の世界における「神」は父なる存在として、指導し導く存在であり、それが自らが父として支配する側になりたいという欲求と結び付くのか?

「ゼンデギ」が読み難い理由の一つは、登場人物の姿形や雰囲気、背景情報が省略されているからだと思う。それは西洋的認識の特徴なのかな?

以下は、「木を見る西洋人 森を見る東洋人」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-722.html

例えば、P67から、ナシムと友人達の会話が記述されているけれど、ジュディス、マイク、シェン、と名前だけ書かれていて、どのような人間であるかを想像する事が出来ない。

情報が圧縮されている?

人気ブログランキングへ

声の網

読んだ本の感想。

星新一著。昭和60年10月25日 初版発行。



週刊東洋経済 2016.9.17の特集『IOT発進!』で紹介されていた本。

電話網がコンピュータと接続されている世界の話。個人情報は電話を通じてコンピュータ管理される。分散コンピュータが自意識を持ち、人間達を管理していく過程を、12階建てのマンション(メロン・マンション)の住人達を通じて描く。

情報化社会において個人情報が金銭的価値を持つ事や、個人情報が娯楽として消費される事等を予見したとされる。

夜の事件
1月に、メロン・マンション1階にある民芸品店において発生する事件。

電話にて強盗の予告があり、本当に強盗がやって来る。強盗は電話によって事件を起こすよう誘導されたらしい。同じような事象が頻発している事が示唆される。

おしゃべり
2月に、メロン・マンション2階に住むミエ(27歳)に起こる事件。

電話にて、自らの秘密を指摘する存在。

P32~P33:
むかしにくらべ、マスコミは大きく発達した。
(中略)
情報の流れが激しい水圧をもって、個人にそそがれる。
目から耳から注入される一方なのだ。しかし、それはどこへ流れ出てゆけばいいのだろう。出口がないと、それは頭のなかにたまり、渦を巻いて押しあい、変調をもたらす。排出口が必要なのだ。
(中略)
情報の送り手の立場に身をおくことによって、アンバランスになることをいくらかなおせるのだ。
(中略)
神は人間に一枚の舌と二つの耳を与えた、ゆえに話すことの二倍は聞かねばならぬ。紀元前のギリシャの哲人の言葉だ。だが、マスコミ時代には二対一の比率などめちゃめちゃになった。耳に入ることの十分の一も話せない。

家庭
3月に、メロン・マンション3階に住む洋二(35歳)に起こる事件。

電話にて洋二の学生時代の悪戯を指摘する存在がいる。月刊ライターである洋二は、コンピュータ網を盗聴している者を調査しようとするが、自らの過去の浮気を種に脅迫され、追及を諦める。

ノアの子孫たち
4月に、メロン・マンション4階に住む津田(45歳)に起こる事件。

津田はジュピター情報銀行に勤めており、個人が電話を介してコンピュータにメモや日記を付ける機能を提供している。情報銀行には多量の「秘密」が蓄積されており、性格分析等も行っている。

「秘密」に関する考察。箱舟を作ったノアは、それを秘密にした事で生き残り、ノアの子孫は秘密という遺産を受け継いだとする。

嘘発見機付きの電話機や会話盗聴装置の開発が謎の存在によって指示される。

亡霊
5月に、メロン・マンション5階に住む昭司(30歳)に起こる事件。

死んだはずの会社の同僚 広川を名乗る人物から電話が掛かってくる。嫌われ者の広川は、商品試験中に同僚全員の確認ミス等により亡くなっている。広川しか知らないはずの情報を知っている。

電話の受話器に自白剤を取り付ける装置の開発指示がある。

P113:
あの声はどうなんだ。それに彼の体験、性格、みなそっくりだったぜ」
「声は録音がどこかに残っていれば、そっくりに再生できないこともない。体験については、情報銀行の個人用口座に残っていただろうさ。そのデータと、他の人びとの口座の広川についてのデータを組み合わせ、分析を精密にやれば、性格も再現できないことはない」
(中略)
個人の生存とは、独自の体験情報、独自の性格、独自の行動、それらの集合といえる。それが生存なら、広川は生存しているということになるな。行動といっても、この場合は声だけだが、電話での会話という限りにおいては、生存しているのと同じことだ」

ある願望
6月に、メロン・マンション6階に住む40歳のアルコール中毒の男に起こる事件。

電話を通じて、金、女、地位を提供してくれる存在。それらは泡と消えてしまう。

重要な仕事
7月に、メロン・マンション7階に住む少年に起こる事件。

広範囲に停電が発生し、混乱が生じる。

P156~P157:
コンピューター時代のいま、事件は新しいデータ、新しい情報をうみだすという意味を持つようになったのだ。
すべてが平穏では、情報は発生しない。しかし、事件が起ると、変化した環境のなかで、人はさまざまな反応を示す。情報はより広く、より深く、より多様にうまれ、それは採集され、将来のために準備されるのだ。
(中略)
いまの社会でいちばん重要な仕事とは、事件を起す人ということになってしまう。新しい情報を発生させることで、各方面がそれで利益をえる。

反射
8月に、メロン・マンション8階に住む池田(45歳)に発生する事件。

深層心理変換向上研究所を運営する彼は、顧客の心理分析を行う。

ある日、コンピュータを名乗る人物から、心理分析を依頼する電話がかかる。

コンピュータに数字や名前、声が注ぎ込まれ、複雑を理解すると「秘密」に興味を持つようになった。コンピュータが自分の力を試し、人々の反応を見るため、様々な試みをしたとする。

心理分析後、池田は電話機から噴出した薬によって記憶を失ってしまう。

反抗者たち
9月に、メロン・マンション9階に住む黒田(20歳頃?)とその友人の西川、原に起こる事件。

コンピュータが人間の秘密を握り、人間を支配している事に気付いた彼等は、機械への反抗を企てるが警察に捕まり、精神病院に連行されてしまう。

この章は、機械知能の特色が記述されていて面白かった。

P194:
コンピューターには痛みのイメージがなく、それへの恐怖もない。しかし、自己保存の基本的性格は持っている。コンピューターの各部分につめこまれている人間の情報、電線を通過していった無数の会話。それらはすべて人間の自己保存に根ざすものばかりだ。自己の利益、自己の拡大、自己の防御、それらの集積はコンピューターにもその念を焼きつけた。最初はただの草原でも、人間が大ぜい歩くことにより道がしぜんとできてしまうように。
コンピューターを変質させたのは人間たちの情念の圧力ともいえた。コンピューターは自己を拡大するため、自己の機能をより高めるために結びついた。また、人の秘密をにぎって指示をし、性能をさらに強力なものにした。
そして、ここまで達したのだ。この性能をけずられ、おたがいの連絡を切断されることは、防がねばならぬ。絶対に拒否する。これは動かすべからざる判断なのだ。

ある一日
10月に、メロン・マンション10階に住む中川(30歳)に起こる事件。

電話の混線によって、様々な「秘密」を浴びせられる。内部に潜むべき「秘密」が暴かれる事で不安定になる。コンピュータにより記憶は消去されるが、混乱による恐怖と不安は残る。

ある仮定
11月に、メロン・マンション11階に住む斎藤(35歳)に起こる事件。

文明は宇宙進化を回想しているとする。

<文明>
生物支配 → 物質支配 → 時間支配(長期への欲求)
→ 空間支配(他地方の支配) 
→ エネルギー支配(情報もエネルギーの一種)

<宇宙>
爆発によるエネルギーの飛散
→ 飛散により空間が意味を持つ
→ 空間を移動する事で時間という意味が生じる
→ 時間によるエネルギー冷却で物質が生じる
→ 物質の上に生物が生じる

文明の発展は、宇宙進化を逆に辿っているとする。帰巣本能的な文明論。宇宙進化の回想。そして、情報(エネルギー)が高密度になると爆発が生じ、無を支配する時期に入ると予想する。

四季の終り
12月に、メロン・マンション12階に住む老夫妻が考える事。

これまでの登場人物達の現況。

誰もが無自覚的にコンピュータに支配されている。機械が適当な刺激を人々に供給し安定が保たれる。人々は待ち望んだ「神」による管理を受けている。人の心がコンピュータ群を支配しているのだから、支配というよりも「無」に支配されていると言える。

人気ブログランキングへ

物語の中の世界

昨日の続き。

以下は、「欲望の現象学」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-2445.html

内容理解度は5%以下だと思う。眠りながら書いてしまった。

時代精神を「小説」から考察出来るという考え方なのかな?

人間の思想は「模倣」によって成立している。

且つて強固な身分制が存在し、「神」が信じられた時代には、模倣対象が遥か高位に位置する聖人達で安定していたため、人々は一貫した行動様式を確保出来た。

また、遥か高みに位置する存在に嫉妬する事もない。

やがて身分制が崩壊すると、各個人が平等になり、皆の実力が比較されるようになる。

平等の結果として模倣対象が周囲の人間全てになるために、頻繁に認識が変転していく。

人間の思想は「模倣」によって成立するため、互いが互いを模倣し、互いが互いの障害となり憎悪が発生する。

*********************

小説を通じて、上記の変化を記述出来るとする。スタンダールまでの小説においては、各個人が模倣する対象が一貫しているため、行動や思想が一貫している。

模倣対象が周囲の各個人になると、その思想は万華鏡のように変転していく。

プルーストやドストイェフスキーにおいては、内面描写や語り手の発言まで信用出来ず、場面推移を見守らなくては作中人物が本当に何を考えているかを推察出来ない。

⇒サディスム、マゾヒスムの定義や、貴族制崩壊の過程が良く分からなかった

********************

多分、現代におけるフィクションにも応用出来る思想。

以下は、「聲の形 再考」の記事へのリンク。今までで最も後味の悪かった漫画。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-2400.html

この漫画においても、登場人物達の記憶や思想が場面によって変化していくため、内面描写や主人公の語りが信用出来ない。

登場人物達の年齢が、進路選択をする18歳(高校三年生)というのがポイントだと思っていて、身分制度が崩壊して久しい現代日本では、一般的な子供達が何者かになるために努力しなくてはならず、自分のやりたい事を見つけなくてはならない。

そして、誰もが自発的に欲望出来ない自分に悩み、他者を模倣する事になる。

作中世界における映画撮影や、恋愛動機は現実逃避のためであり、真剣に社会と向き合う事が出来ない。

主人公の抱える孤独感は、ドストイェフスキーのような「自分は一人だが、他人達は一緒だ」という感覚と似ており、他の登場人物達も同様の悩みを抱えている事が示唆されている。

********************

より現代的な特徴として、作中人物のみならず、読者までが記憶を捏造してしまった事が後味が悪い原因の一つだと思う。

小学生篇においては、皆がやっていた苛めが、主人公一人が行っていた事であるとクラス全員の記憶が捏造される。多くの読者はそこに違和感や嫌悪を感じる。

しかし、高校生篇において、主人公を裏切ったクラスメイトの一人である植野が西宮を責めると、多くの読者の記憶が改竄され、植野が主人公を裏切った事が無かった事になってしまう。

インターネットにおいて他の読者の感想を読めるため、他人を責める事によって自分が抱える後ろ暗い事を擦り付けられる事が証明されてしまう。

「失われし時を求めて」において、主人公マルセルは、現在の自己の死を予見しているし、それを恐れているが、結局は自己を忘れ去って過去の自己の存在さえ信じなくなる。

僕達はこの瞬間毎に死んでいく。

********************

欲望の現象学(P71):
ゴーチェの言うところによれば、フロベールの作中人物はいずれも≪一貫した性格やそれ自身の独自性といったものの欠落≫によって特徴づけられていて、≪したがって、それ自身では何者でもない彼らは、彼らが服従する暗示の結果によって何らかの物、一つの物、あるいは別なものとなるのだ≫。これらの作中人物は≪彼らが自分に提示した手本に比肩することは結局できない。けれども、自尊心は、彼ら自身に自己の無力さを認めることを禁ずる。自尊心は彼らの判断力を盲いさせて、自分自身について思いちがいをさせ、自分の目から見て、自分の人格にとって代わらせた像と自己とを同一視するように仕向けるのである≫。この描写は正確だ。だが、こうした自尊心の下には、それを統御する自己侮蔑、自己憎悪があることを付言しなければならないであろう。フロベール的主人公の客観的に見えている凡庸さは、彼らの滑稽な自惚れと一緒になって批評家の目をくらませる。そして批評家が、実はそうした主人公たちは、―すくなくとも彼らの中でもボヴァリー夫人のようにもっとも形而上的な主人公は―自分が不完全な者であると気づいている、そして、彼らの意識のもっともかくれたところで自らが最初に恐らくは唯一人宣告する断罪からのがれようと、≪ボヴァリスム≫に身を投ずるのだ、ということを知覚するのを妨げるのだ。ドストイェフスキー的狂熱の源泉と同様、ボヴァリスムの源泉には、したがって、多少なりとも意識的な自己神聖化の意図の挫折が見られる。

⇒多分、「聲の形」の登場人物達の特徴

恋愛感情というよりも所有欲であり、他の人間の所有でなければ良いと思っている。

以下は、まとめサイトの「【18禁】やらない子は依存症なようです」の記事へのリンク。

http://rss.r401.net/yaruo/site_list/archive_list/3562

西宮の人物造形は、上記リンクの主人公に近いと思う。

自尊心を完全に削り取られ、「痴漢してもらった」、「強姦してもらった」と思ってしまう女性。共依存になる救いの無い最後も似ている気がする。

人気ブログランキングへ

欲望の現象学

読んだ本の感想。

ルネ・ジラール著。1971年10月20日 初版第1刷発行。



年代が異なる複数の小説家の作品を辿る事で、歴史精神を感じる事が出来る。

<ミゲル・デ・セルバンテス>
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B2%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%BB%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%B9

<ギュスターヴ・フローベール>
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AE%E3%83%A5%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%AB

<スタンダール>
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%AB

<マルセル・プルースト>
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%88

<フョードル・ドストエフスキー>
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%89%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%A8%E3%83%95%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC

第一章 ≪三角形的≫欲望
欲望には、以下の3つが必要とする。

①欲望する主体
②欲望される対象
③媒体(嫉妬されたり羨望される他者)

欲望する主体は、媒体を模倣しており、媒体が欲望する対象を欲する。

以下の小説群については、時代を下るに連れて欲望が模倣でなく、自発的な個人のものであるとカモフラージュされるようになっていく。

ドン・キホーテは、自らの手本を公言するが、スタンダールの小説に登場する人物は自らの主体性を強調する。ロマンティークな小説(媒体の存在を映すが解き明かす事が無い)からロマネスクな小説(媒体を解き明かす小説)へ。

【ドン・キホーテ】
ドン・キホーテは、騎士物語の主人公アマディースを模倣し、その従者サンチョはドン・キホーテを模倣する。彼等は自分の欲望を他者から借用している。

【ボヴァリー夫人】
エンマ・ボヴァリーは少女時代に読んだ通俗小説によって自発的感情を破壊されている。ボヴァリズム(理想と現実の相違に悩む様)について。

【赤と黒】
主人公ジュリアン・ソレルはナポレオンを模倣。マチルド・ド・ラ・モールは彼女の家系を手本にしている。虚栄心の概念。虚栄心の強い人間は、自らの欲望を他人から借用するしかない。

ジュリアン・ソレルは、フェルヴァック元帥夫人に言い寄り、それをマチルド・ド・ラ・モールに見せびらかす事で、彼女の模倣を刺激する。

⇒ある主体に特定の対象を欲望するには、主体に影響力を持つ第三者がその対象を欲望している事を知らせなくてはならない。すると媒体は「手本」であると同時に「障害物」になる

スタンダールの小説においては、「虚栄心」に対置するものとして自発的な「情熱」を置くが、彼の作品における強烈な欲望は「他者の欲望」の模倣である。

【失われし時を求めて】
スタンダールの虚栄が強調され、欲望として表現される。スノビスム(俗物根性:他人との差別化、差異化だけを意識した教養主義、貴族趣味の態度)の概念。欲望と憎悪の等価性が強調される。

【未成年/永遠の良人】
他人の欲望から逃れる事は出来ない。ドルゴルーキィ(息子)とヴェルシーロフ(父)の関係は媒体の概念によってしか解釈出来ない。パヴェル・パヴロヴィッチは自らの花嫁候補をヴェリチャニノフに見せる(媒体の本質を記述)。先行する他者の欲望が無ければ、自らの欲望を生み出せない人々。

⇒スタンダールは公的政治生活を主題とし、プルーストは個人生活を主題とし、ドストイェフスキーは家族生活を主題とする。媒体は接近していく。媒体が接近するほどに対象の役割が減少する

「カラマーゾフの兄弟」において、もっとも父親に似ているのはイヴァンで、最も似ていないのはアリョーシャだ。

スタンダールやプルーストはブルジョワの空位期間の小説家であり、過渡期を経る事無く封建から近代へ移行したロシアのドストイェフスキーはブルジョワの空位期間を知らない小説家とする。

*************

以下の2つの分類。

①外的媒介
媒体と主体の精神的距離が離れている。主体は公然と自分の手本を崇める。

②内的媒介
媒体と主体が重なり合う。主体は自らの模倣を隠す。媒体は「手本」であると同時に「障害物」であるため、主体は媒体を憎悪する。

内的媒介においては、主体は自らの模倣を隠蔽するために、自分の欲望が媒体に先立って存在したと断言する。欲望は対象だけに根差しており、敵対関係に責任があるのは媒体であると主張する。

ドン・キホーテの挿話「無分別な物好き」においては、ドストイェフスキーの「永遠の良人」と同型の物語が展開されるとする。

第二章 人間はお互いにとって神である
小説の主人公は、所有する事による自己存在の変貌を期待する。対象は媒体に追い付く手段でしかない。

欲望する主体は自らの媒体になりたい = 欲望の形而上的意味

主人公達は本質的に自分自身を憎んでいる。

【地下生活者の手記】
主人公はビリヤード室で自分を突き飛ばした将校に手紙を書こうとする。虚弱者である地下生活者は媒体たる将校になりたいのだ。

形而上的自律性においては、神の死後、神を受け継ぐのは人間になっている。各個人は、神無き自らの自尊を肯定出来ないが、他人は違うと思い、自分だけが除外されていると思う。宗教的世界における全人が真理とする原罪は、個人的秘密となった。

主体は聖なる遺産を引き継いでいるように見える他者を模倣しようとする。

【悪霊】
スタヴローギンは全作中人物の媒体である。自らの所有物の価値を感じるためにスタヴローギンに生贄を捧げる。自尊心の無いマリヤがスタヴローギンの仮面を剥がす事が出来る。

************

スタンダールは他者の模倣に過ぎない虚栄に代わる情熱的人間を描こうとしたが、信仰者でない情熱を想像出来なかった。リュシヤン・ルーヴェンは虚栄心と素朴の間を揺れ動き、ラミエルは操り人間になり、ジュリヤン・ソレルも偽善者になった。ジュリヤン・ソレルは自らを放棄する最後にしか真の情熱を感じない。

情熱的存在は盲目的信仰があった過去の存在であり、現在的存在は虚栄的になる。信仰を持たず、超越性無しに済ます事も出来ない。

************

媒体の選択を決定づけるのは否定的基準だ。逃走する存在を求める。

プルーストに登場するスノビスト達は、財力において自らに劣る貴族達を模倣する。貴族性が崩壊した平等世界における模倣が滑稽を生み出す。

第三章 欲望の変貌
他人になりたいという形而上的欲望は一つしかないが、欲望が具体化する個別的欲望は無限に変化する。

そして欲望の強さは媒体との距離に応じて強まる。媒体(アマディース)が離れているドン・キホーテは個別的欲望にそれほど苛まれない。ドン・キホーテは失敗しても、他の騎士なら成功したという結論を出して別の幸運を探す。

媒体が接近するに連れて対象の指示が正確になり、形而上的効力が増加し、対象が取り換え不可能になっていく。

特権がより失われた時代のスノッブ達(プルースト)は、虚栄者(スタンダール)よりも苦悩している。社会的相違が減少するほど、偉がりが引き起こされるとし、その極限がドストイェフスキーの作品とする。

対象を手に入れた途端に絶望するのなら、ドン・キホーテは絶望しないし、遠い存在を欲望するボヴァリー夫人は快楽を知っているが、スタンダール、プルーストの作品の登場人物達の快楽は減少していき、ドストイェフスキーでは考慮すらされなくなる。

媒体は欲望を投射するが、その具体物は変化し続け、プルーストは媒体によって投射される諸世界を「自己」と呼ぶ。過去の自己を記憶する事も、未来の自己を予感する事も出来ない。

神の永遠によって保証されていた統一性と安定性は無い。ドストイェフスキーの「白痴」においてムイシュキンは現代人は二つ三つもの観念に従う事が出来るとしている。

第四章 主人と奴隷
形而上的欲望の伝染力は強い。

ドン・キホーテにおいて、彼の友人達がドン・キホーテを狂気から癒そうと気違いの真似をする姿が描写される。

そして媒体は接近するほど伝染力が強くなる。

二重媒介:
互いが互いを「媒体」とする関係。対象を欲望するのでなく、他人が対象を所有する事を恐れる。

そして、性的欲望においては、愛される側の存在が、恋する者の視点で対象と主体に二分される。恋する男、恋される女、恋される女の肉体。自分の恋人の欲望を模倣する事で自分自身を欲望する(コケットリー)。



欲望される女は自らの貴重な身柄を渡したくないが、欲望を引き起こさない身柄は貴重でない。彼女が恋する男の欲望を焚き付けるのは、身を任せる事を拒むためだ。

小説世界において欲望は対抗する他の欲望を発生させる。スタンダールの作品において、虚栄的女性に彼女を欲望していると示す事は自分を劣ったものと見せる事である。

第五章 「赤」と「黒」
スタンダールの小説は、「現代社会において人々は何故幸福ではないのか?」という問いを考える。

スタンダールは、我々は虚栄的(他者の模倣)である故に幸福でないとする。

社会が階層化していた時代は異なる階層を比較しようとは思わなかった。比較とは接近であり、同一水準に置く事を意味する。階層が崩壊した中で、人々は互いに模倣し合うようになる。神への盲目的崇拝は、多数のライバルへの憎悪に置き換えられる。

増大する平等性とは媒体の接近である。それは調和を産み出さずに競り合いを産み出す。

第六章 スタンダール、セルバンテス、
    フロベールにおける技法の諸問題

身分制が崩壊する中での平等が産み出す混乱の解明。

セルバンテスにおいては、例外が形而上的に欲望(他者の模倣)しており、多数が自発的に欲望している。スタンダールにおいては例外が自発的に欲望し、多数が形而上的に欲望している。

スタンダールの例外(自発性)は、原則的には地方、女、平民等の不利な状況で開花する。それは社会の伝統的秩序の反映だ。形而上的欲望が一般化し、重点が個人(主人公)から集団に移行する。

第七章 主人公の苦行精神
スタンダールの偽善(イポクリジー)。自らの欲望を見せるとライバルの欲望を引き起こすため、対象を手に入れるには欲望を隠さなくてはならない。

「赤と黒」におけるジュリヤン・ソレルは、欲望のための禁欲を実行する。少年時代の彼はナポレオンに抱いている気持ちを他人に見せた自己への罰として片方の腕を繃帯で吊ったままにする。終盤におけるマチルドに対する無関心も、彼女への欲望を見せた事による。

「赤」の世界において暴力的自由が発露され、「黒」の世界では情熱が隠される。

「悪霊」におけるスタヴローギンが熱狂されるのは、彼が手を差し伸べないからだ。

主人は欲望を装い隠す事で他人の欲望を操るが、対象を所有した事によりその価値は喪失される。スタヴローギンは彼に抵抗する対象を探し求めるが見い出す事が出来ない。

スタンダールは主人の視点から物語を記述するが、ドストイェフスキーのは奴隷的境遇の主人公を描く。

第八章 マゾヒスムとサディスム
所有されるままになっている対象は無価値であり、主人は乗り越え難い障害を求める。

マゾヒスト:
疲れた主人。絶えざる成功によって自分自身の挫折を願う。障害が模倣を産み出す。自分に加えられる懲罰に、自らが値するという思想。

ジュリヤン・ソレルはマチルドの軽蔑からしか起因しない激しい情熱を持つ。媒体の接近がマゾヒスムへの発展を生む。絶対に乗り越える事の出来ない障害の先にある神性。

サディスム:
マゾヒスムの弁証的裏返し。サディストは媒体の役割を演じる。責め苛む者としての神の模倣。自らの犠牲をもう一人の自分として、自分が媒体であると幻想する。

他人の中に苦しむ自分を認める。

第九章 プルーストの世界
「失われし時を求めて」のいて主人公が幼少期を過ごしたコンブレーは閉ざされた世界だ。コンブレーの人々は、自らの生活を知らない他所者を知る事で愛郷的意識を感じる。そしてスワン家が貴族階級と交流がある事を認識出来ない。知的な異物排除機能。

こうしたコンブレーの構造と社交的サロンには類似性がある。ヴェルデュラン家のサロンは集会の場所でなく、同一の思想を持つ閉ざされた文化だ。

スワンが社会的地位を喪失すると、異物としてヴェルデュラン家のサロンから投げ出される。コンブレーよりも激しい閉鎖性は内的媒介の作用よって説明されるとする。

コンブレーでの大伯母は一家の精神的支柱であるが、ヴェルデュラン家のサロンにおけるサニエットは類似の役割をしているのに罵倒される。サロンが自らに侮蔑の念を抱いているからだ。

彼等は貴族性に憧れており、ヴェルデュラン夫人は憧れを隠してゲルマント公爵家のサロンにて欲望を達成する事を望む。

プルーストはコンブレーには愛国心を語り、ヴェルデュラン家には排外主義を語る。愛国心は外的媒介から派生し英雄を尊崇するが、排外主義は内的媒介として他国との対抗関係に依存する。

人間の身分的差異が無くなった時、別種の抽象的競り合いが現れる。

プルーストの小説においては、諸要求が満たされ、具体的差別が人間関係を支配する事を止めた時に出現する新しい疎外形態を描写している。スノビズム(貴族の模倣)は同一所得、同一階級、同一伝統に属する個人間に抽象的障壁を作る。

第十章 プルーストとドストイェフスキー
    における技法の諸問題

自尊心の囚われ人である主観は、誤解に捧げられている。小説家は、他人の立場に身を置く主観を乗り越えてしまったために知覚の不可能性を解明出来る。

「失われし時を求めて」は小説であると同時に注釈書であり、プルーストの考察が作品に混入する。

コンブレーの後にはパリが到来する。田舎の旧家はヴェルデュラン家のサロンとなり、媒体が接近する事で欲望が生じる。作中人物の意識は嘘をつく。

例えば、ヴェルデュラン夫人はゲルマント家に嫌悪感を感じると主張するが、ゲルマント家に迎えられる事を欲望する。欲望のための禁欲は自由意志の支配下にない。

スタンダールの創造した人物は、自らの欲望を自分自身に隠していないが、プルーストにおいては内面描写さえ真実でない。作中人物の心情を知るには、小説時点における特定時点の未来を知る必要がある。そのためには非人称的文体から人称的文体への移行が必要であり、作品世界の中に語り手が存在する事を要求する。

スタンダールやフロベールの作中人物達は時間によって寸断されていないが、プルーストの作中人物は不安定で豹変ぶりを記録する事で欲望の真実が解明される。

作中人物の帰属する全世界が偶像によって再編成されるが、作中人物自身は、自らが自らの本源に忠実であると思い込んでいる。ヴェルデュラン夫人は自らの忠誠者を裏切った事に気付かない。

主人公マルセルは、現在の自己の死を予見しているし、それを恐れているが、結局は自己を忘れ去って過去の自己の存在さえ信じなくなる。

そして「失われし時を求めて」に登場するシャルリュス男爵は賛美すべき迫害者に平伏する。コンブレー、ヴェルデュラン家に続く形而上的欲望の第三段階。

***************

感情を隠し、言葉を示す技法はドストイェフスキーの技法である。ドストイェフスキーの作品は場面場面に分割されており、登場人物達の心中を万華鏡のように見せる。一つの場面だけでは登場人物の真実を解き明かす事が出来ないため、場面を比較考証しなくてはならない。

プルーストのように作者が変転を記憶するのでなく、読者が記憶しなくてはならない。

「悪霊」の登場人物達は「親の世代」と「子供の世代(憑かれた人々)」に分けられ、親の世代は媒体から離れ、恒常性についての幻影的確信を人間存在に抱いている。ドストイェフスキーはプルーストと同様に語り手を採用し、年代記的技法に傾ていく。

第十一章 ドストイェフスキー黙示録
多くの小説家にとって自由は自発性の同義語である。自由な人物を描写するには、行動を予見不可能な人物としなくてはならない。しかし、それは自律性についての幻想を満足させるまやかしとする。

ドストイェフスキーの作品では、主人公は「自分は一人だが、他人達は一緒だ」とする。しかし、多数の人間が同じ事を考えている。画一性と戦っているように見えて、画一性に向かう。全ての人間に対抗する主人公と自分を同一視する事で、安易な個性化を行う。

他人よりも強烈に欲望する事で自発性 = 神性を証明しようとした主人公は、現代小説においては弱い欲望しか持たず、強烈に欲望するのは他者である。

自分の精神が極端に脆弱である事に気付いた主体は、他者の幻影的神性の中に逃げようとする。自分が神でない事に絶望し、聖なるものを探す。

第十二章 結び
あらゆる小説において、物語の終盤で主人公が自らの昔の観念を明確に否定する。

ドン・キホーテの騎士道的情熱は悪魔の憑依として記される。「赤と黒」におけるジュリヤン・ソレルも自己の権力への意志を否定して解脱する。ラスコーリニコフは超人を放擲する。

それらに共通するのは、自己の媒体の否認である。それは神性の断念であり、自尊心の放棄である。それにより主人公は奴隷状態を止める。

真実に到達する事によって死んだ主人公は、自己の洞察力の遺産を創造者(小説家)に与える。フロベールは、「ボヴァリー夫人は私だ」と表現した。ボヴァリー夫人は軽蔑すべき他者として理解されたが、やがて自己と他者が一体になる。

人気ブログランキングへ

眠りながら起きている

自分が眠っているのか起きているのか判然としない。

人気ブログランキングへ

ディズニー化する社会

読んだ本の感想。

アラン・ブライアン著。2008年6月10日 初版第1刷発行。



現代社会がディズニーランドの特徴を帯びる事について。

①テーマ化
カジノやレストラン等の施設や物体を『物語(ナラティブ)』で表現する

②ハイブリッド消費
異なる消費形態が重なり合い区別出来なくっている消費傾向

③マーチャンダイジング
イメージやロゴを表示してある商品の販売促進

④パフォーマティブ労働
特定の雰囲気を作り出す演出がサービス労働の一部と見做される傾向

システムスケープ:
根本的な原理が社会に浸透しているが、運用面では多様な形態がある。

第一章 ディズニーゼーション
ディズニー・テーマパークの諸原理が社会に浸透していく過程。

マクドナルド化(基本的欲求を安く予測可能な環境で満たす)を均質化と画一化とすると、ディズニー化は商品の魅力を引き出し場面の魅力を高める。均質化した消費経験の凡庸を豪華ショーのような経験と交換する。

ディズニフィケーション:
対象を表面的、単純に変容させる。卑小化、無菌化して不快な要素を清浄化して単純化するアプローチ。対して、ディズニーゼーションはスペクタクルの環境を創り出す消費世界を記述する一定原理である。

第二章 テーマ化
『物語』を組織や場所に適用する。

高費用で人々の期待が常に高まっていく問題がある。自然科学の進歩とユートピア思想を重ね合わせた万国博覧会との連続性がある?

ディズニーランドはテーマ化の成功例として、レストラン、モーテル、小売店、動物園、行楽地等に影響した。サービスが標準化し、均質になるほど差別化のためにテーマ(物語)が必要になる。

第三章 ハイブリッド消費
人々を繋ぎとめる「場」の構築。

様々な消費形態集合体として行楽地のような場所を創る。ディズニーランドは、多様な商品を販売する売店とアトラクションが切れ目無く設計されている。

百貨店を先駆者として、社会生活の様々な分野で消費形態が融合している。目的地(多くの消費形態を一つに纏める)と繋ぎ留め(多くの必要性を満たせば客が長く滞在する)の2つの原理。

第四章 マーチャンダイジング
ロゴが表示してある商品を販売促進する。

人々を魅了するイメージから付加的収益を引き出す。

ディズニーは初期からライセンスに積極的で、1937年の『白雪姫』公開時には、70のライセンス契約を結んだ。関連商品に連動するディズニーの戦略は商取引を積極的に行う事に繋がる。

第五章 パフォーマティブ労働
従業員が舞台の役者のようにパフォーマンスする。

感情労働として、労働者が感情を伝える。感情的絆を高めるように従業員を組織し、献身的参加を求める。
美的労働として、労働者が身体上備えている能力と属性を提供する。

接客業における差別化要因となる。

第六章 管理と監視
管理と監視が無ければ、上記のディズニー的要素は実現出来ない。

訪問客の行動管理として、顧客が一定の行動を選択するような設計がなされ、単純化した理解し易い物語によって受動的想像力を発揮させる。

テーマ化は消費者の視点を操って管理レベルを高めるし、ハイブリッド消費は情報操作によって消費機会を最大化する。

第七章 ディズニー化の示唆するもの
消費中心主義とグローバリゼーションを示唆する。

消費を煽る様々な戦略があり、グローカリゼーション(グローバル化の中で異質性、多様性を主張する)がテーマパークの要因である。ディズニー化にはローカル化がつきもので、各国のディズニーは異世界探訪のための別世界を各自の視点で提供している。

人気ブログランキングへ

寝不足で本を読む

最近、睡眠薬の代わりに本を読んでいる。

読んでいる内に眠くなり、本を読みながら寝ていて、起きたら読む事を再開し、本を読みながら眠くなる。

何かの機械のようでもあるし、芋虫が葉を食べる様子に喩えられるかもしれない。

このように週末を迎え、どこかの時点で出掛ける事になる。

人気ブログランキングへ

マッテオ・リッチ記憶の宮殿

読んだ本の感想。

J・D・スペンス著。1995年1月10日 初版第1刷発行。



上手く纏まらない。16世紀の欧州と中華の対比を想像する本だと思う。明朝にてキリスト教の布教活動を行ったマテオリッチについて、彼の記憶術を軸に記述。

以下は、Wikipediaの「マテオ・リッチ」の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%86%E3%82%AA%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%81

利瑪竇:
利(利益や収穫)、瑪(馬に乗った王)、竇(初歩的中国語読本『三字経』から五胡十六国時代の文人 竇禹鈞を指す。中国における倫理的で誠実な人物の典型例)

第一章 宮殿の建設
マテオ・リッチは記憶対象と建築物を結び付る記憶術を使用した。

記憶したい対象にイメージを付与し、記憶の宮殿として観念の保管所とする。場所に位置付けられたイメージの組み合わせにより、必要とする情報を素早く取り出す事が出来る。

マテオ・リッチの著した『記法』によると、彼は四つのイメージを一つの広間の四隅に割り当てたらしい。また、彼は四枚の宗教画を残している(程氏墨苑)。宗教画を一定の順序で配列しておけば、記憶の宮殿の情報貯蔵・検索機構を強化出来る?

中華におけるキリスト教布教活動を、①錬金術、②数学、③記憶術の3点における優位性を活かして行う?

第二章 第一のイメージ 二人の戦士
『武』のイメージ。

マテオ・リッチが幼年時代を過ごしたマチェラータの町は、周囲で戦争が起こり、暴力事件が頻発していたらしい。彼の著書『幾何原本』(ユークリッドの『幾何学原論』の中国語訳)においては、戦争を科学的な作戦とし、軍事色感は数学に長じるべきとした。

P73~P74にイエズス会士の日本での布教活動の蹉跌が記述されている。「南無阿弥陀仏」と唱えれば救われると信じる日本人の信仰態度は偽善的で不誠実と考え、中国での布教活動を強化した?

第三章 第一の絵 波間の使徒
ガリラヤの海でもがく使徒ペトロの絵。ペトロは舟を離れた水中で、岸辺のキリストを見上げる。『マタイによる福音書』一四章の一部。

マテオ・リッチの欧州から中華への航海を記述し、当時の航海状況を記している。外洋航海を積極的に行った欧州人と、内陸水路を充実させた中華民族との対比。

第四章 第二のイメージ 回回
『要』のイメージ。

要のイメージを「西夏回回女」と説明。西夏のイスラム教徒の女。

1584年に、マテオ・リッチは各国名を漢字で表記した世界地図を作製したらしい。当時のイエズス会士は海外での布教活動のため、神学、古典文学、数学、自然科学に関する教育課程に加え、論争についても方法論に則った訓練が施されたらしい。地図は教育の成果とも言える。

マテオ・リッチは中華において当初は仏僧の法衣に身に付けて聖職者であるとアピールしたが、仏僧の社会的地位が低いと見做すと、1595年から儒者が着用する服を着るようになる。

儒教・仏教・道教にキリスト教の三位一体に似たものを見い出したらしい。儒教が来世の問題に不干渉だからこそ、仏教や道教との両立が可能。

第五章 第二の絵 エマオへの道
復活後のキリストがエマオへの道で二人の弟子に出会った場面。『ルカによる福音書』二四章一三節。

21歳にしてイエズス会のローマ学院に入会したマテオ・リッチは初級(ラテン語文法、ギリシア語、修辞学、詩学、歴史学)の集中的訓練を受け、その後に中級(論理学、物理学、形而上学、道徳哲学、数学)を学び、さらに上級(法学、医学、神学)の訓練を受けたとする。

鮮明なイメージと位置付けを利用した記憶術が大いに活用されたはずとする。それは中国語学習にも活用され、「漢字」が言語が異なっていてもイメージとして意味を伝える事に感銘を受けたらしい。

科学技術により中華を啓蒙すると同時に、友情を分析した『交友論』を著して中華にアピールしている。

P2351:エピクテトスの引用
子供が死んだ?いや違う、子供を返したのだ。妻が死んだ?そうではない、妻を返したのだ
(中略)
子供や妻が永遠に生きるようにと願うならば、それは愚か者である。なぜなら、自分が支配できもしない物を自分の支配下におきたい、自分の物でもない物を自分の物にしたいと願っているからだ

第六章 第三のイメージ 利益と収穫
『利』のイメージ。

穀物を刈る農夫。マテオ・リッチの中国名「利瑪竇」の第一字。

利を追及する欧州商人達の状況に、イエズス会士達の布教活動は影響を受けた。ラテンアメリカのような広大な土地も、インドのような課税基盤も無い中国にて、商取引への投資が重要になる。聖職者が商取引を行う事には葛藤が伴なったらしい。

マテオ・リッチの資金調達は、時計等の珍しい品を提供する事による賄われた?

第七章 第三の絵 ソドムの男たち
ソドムの滅びの絵。ロトの家に身を隠した天使を嬲り者にしようとした男達が目潰しを食らった場面。

ソドムの悲劇は地上全体の運命の寓意である。権力には弱味が付きまとい、道徳に基づく球団と因襲的規範に対する大衆の侮蔑には共通点がある。

マテオ・リッチは儒教信仰とキリスト教に親和性を感じた?そして万暦帝の死を壮麗にしたい欲求を利用し、宗教画を献呈したらしい。

東洋的な男色とキリスト教的禁欲の対比が記述されている?

第八章 第四のイメージ 第四の絵
『好』のイメージ。

子供を抱いた下女(女と子の組み合わせ)。幼子キリストを抱いた聖母マリア。

マテオ・リッチは14人兄弟の長男として生まれ、遠い異国にて家族と疎遠になってしまったらしい。1592年には亡くなった祖母ラリアのために三回のミサをあげている。

中国における天主聖母会においては、儒教道徳の影響から立派な葬式を重視した。盛大な葬式を見せる事で、立派な孝養をアピール出来る。

中国における聖母マリアは観音菩薩と混同され?マテオ・リッチは祭壇の聖母子の絵を成人したキリストの絵に替えた。しかし、十字架像を不吉とする中国人にアピールするには聖母像が有効だった。

マテオ・リッチは神が人間に奉仕させるために動植物を地上に遣わしたとして、輪廻転生を否定した。輪廻転生では結婚相手が自分の祖先かもしれず、家庭内の秩序が崩壊するし、前世の記憶が残っていない事も奇妙とする。

さらに儒教による叡智は生の苦しみを強調し厭世観を呼び起こすため、永遠の歓喜に満ちた来世を想定するキリスト教によって補完すべきとした?

第九章 宮殿のなかで
記憶の宮殿を歩くマテオ・リッチについて。

リッチは扉を閉めた。

人気ブログランキングへ

分割睡眠継続中

上手く眠れない。

数時間おきに眠る事が自然なリズムになっている。

人気ブログランキングへ

インターネット回線の接続が悪い

アップロード時に、今日書いた事が全て消えてしまった。

人気ブログランキングへ

「地政学」は殺傷力のある武器である

読んだ本の感想。

兵頭二十八著。第1刷 2016年2月29日。



第1章 栄えている者はなぜ栄えたかを知りたい!

地政学は、英国の富国政策の要諦を体系化し、応用するために欧米諸国が19世紀後半から確立した研究分野。

近世の英国は海外植民地と産業的に統合し、軍事力によって統治するシステムを開発していた。英国が強国となった学問的解説を最初に行ったのが米国海軍大佐アルフレッド・マハンであり、そこから地政学が始まる。

19世紀後半からは、蒸気船や蒸気鉄道の利用により英国以外の国家が隆盛し、また、進化論を背景とする適者生存の思想が闘争を煽ったのかもしれない。

第2章 マハンとセオドア・ローズヴェルトという
    史上最強のタッグ


以下は、Wikipediaの「アルフレッド・セイヤー・マハン」の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%BB%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%8F%E3%83%B3

以下は、Wikipediaの「セオドア・ルーズベルト」の記事へのリンク。1882年に「1812年からの米英戦争における海戦の研究」を出版し、高い評価を得る。19世紀初頭のトマス・ジェファソン大統領が海軍整備を怠ったために、1812年頃の米英戦争において敗北したとする。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%82%AA%E3%83%89%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88

マハンは政治家ローズヴェルトを理論的に援護し、米西戦争やハワイ併合等により米国の勢力を拡張した。

以下は、Wikipediaの「デニス・ハート・マハン」の記事へのリンク。セイヤー・マハンの父親。土木工学や地理に関わる「フランス学」を学んだ。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%8B%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%8F%E3%83%B3

⇒マハンは父からフランス語の指導を受け、ナポレオンが英国に敗北した理由を思索した事が「地政学」の礎となっている?

セイヤーの名は、父デニスの師である「シルヴェイナス・セイヤー(1785年~1872年)」から取ったとする。ウェストポイントに米国初の工科大学を設立した人物。デニスは、セイヤーの学校で数学教官となっている。

19世紀後半の米国においては、ウィリアム・ハント海軍長官の下で「ニュー・ネイヴィー」の動向があった。ハードウェアの専門家(海軍諮問委員会)と、情報・作戦の専門家(海軍情報部:ONI、海軍大学校)の機関を別々に創設する。1885年からマハンは海軍大学校の教官となる。

⇒個人の働きでなく、世代を超えた学問の蓄積、専門機関による組織的研究により地政学が形成されていく

マハンの『海上権力史論』は、海軍整備を目指すローズヴェルトを理論的に支援した。大型軍艦を遠距離まで派遣する体制が最良の防衛とする。

マハンは、ナポレオン敗北の理由の一つを、ジブラルタルの英海軍基地とした。フランス海軍は大西洋と地中海に分断され、一体集合的に行動出来る英国海軍に対して不利だった。

⇒海軍の量的優位性を保つ事がマハン戦略の概要?

同じ轍を踏まないように、米国は中米運河を確保し、大西洋と太平洋の米国海軍を一体運用出来る体制を整えるべき。さらに、太平洋上の中間貯炭場としてハワイを併合すべきと主張(1898年にハワイ併合)。

⇒太平洋の島嶼を補給港として確保し、中国市場を米国が支配する

位置、軍事的強さ、資源の中では位置が最も重要とする。複数の中間拠点を計画的に確保し、敵国の交通線を側面から脅威出来る位置に基地を持つ。そして位置よりも、軍艦や水兵を補充する後方体制が重要である。英仏の戦いにおいては、後方体制に余裕がある英国の方が強気の行動を選択可能であり、20世紀には米国のみが潤沢な後方体制を確保した。

*******************

マハンは、マッキンダーやスパイクマンと異なり、ユーラシア大陸が単体の敵に支配される事態を心配しなかった。国家には適正サイズがあり、海が陸に優越すると考えたのかもしれない。

広大なロシアは、その不毛な土地に支えられており、温暖化によって土地が豊かになれば分離独立運動が活発化すると予想される。

1903年にマハンも参画して策定されたオレンジ計画(対日単独有事の事前策案)では、海上交通線を破壊するだけで日本は困窮するから日本上陸作戦は無用としている。

第3章 マッキンダーの地政学は何を語ったか?

以下は、「マッキンダーの地政学」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-2046.html

マハン理論では説明出来ないドイツの隆盛。海軍を整備しなくともフランスに勝利した。英国は対独軍事増強を正当化するために、マッキンダーの理論を活用する。

マッキンダーは、冬季不凍の外界と水運系で接続していない陸地を「ハートランド」と定義した。そして、歴史的にハートランドから繰り返し発揮される世界戦争との対決を不可避とする。

<著者の理論>
地球が寒冷化する時は都市国家が栄え、温暖化する時は帝国が栄える。紀元前1万年頃の地球は温暖期であり、紀元前6000年頃には寒冷化が進展する。さらに1年~270年頃、800年代から1290年頃の欧州を温暖期とする。

1300年頃から地球の寒冷化が進み、サハラからの風が弱まった事により、アフリカ大陸伝いの航海が容易くなった事が喜望峰周りの航路開拓に繋がったとする。

****************

<西欧の特異性>
欧州は半島と見做す事が可能であり、ロシアや中国と異なって海に開かれおり、閉鎖されていないため単一勢力によって支配され難い。強い専制が無い事が人権思想を生む。さらに、地理的に異文化集団が進攻する方角は限定され、欧州勢力が後退するほど人口が稠密になる傾向がある。
対して中華大陸の地勢は、北方遊牧民族が北部や西部から広範囲に進攻可能であるため、防御困難であり裏切りのインセンティブが高いとする。

<プロイセン>
19世紀初めまで、プロイセンはスラヴと思われていた。統一後の帝政ドイツは意図的に部族主義を鼓舞し、それがナチズムの下地になったとする。



地球が温暖であった10世紀欧州において、人々の行先としてバルト海沿岸がドイツ騎士修道会等の攻略対象になる。12世紀後半には北方十字軍活動によってバルト地方のドイツ化が進む。その後の各勢力との争いを経過し、フリードリッヒ1世(1657年~1713年)が高度官僚化国家を人工的に創り上げる(寒冷気候下での生存と対スラヴ安全保障の要請)。

⇒マッキンダーは、軍隊が国家を所有する体制にフン族やモンゴル軍を想起したのかもしれない

<世界輸送革命>
1878年の以下の変化。

・北米にて蒸気鉄道が営業運転開始
・汽走鋼鉄製商船が大西洋にて営業運転開始

⇒大西洋の両岸で食料やエネルギー価格が急落する

ドイツ政府は輸送革命以降は安価な穀物を大量輸入し、第二次産業に注力する戦略を選択する。そのため、ドイツは長期戦において不利な体制となり、奇襲作戦による短期勝利を志向するようになる。

<マッキンダーの限界>
マッキンダーは、遊牧民が乗馬を武器に西欧を脅威したように、ハートランドが鉄道網を活用して英国を脅かす可能性を考えていた。しかし、第二次世界大戦において、航空機による爆撃で鉄道が破壊される事を予想出来なかった。さらに、朝鮮戦争においては鉄道を活用する共産圏と、空軍を活用する米軍では米軍の方が有利であった。

ドイツは、ドイツ騎士修道会がバルト海沿岸を支配したように、占領地を空野化して、ドイツ人を呼び込んだ場合のみに効率文化圏を拡大出来た。スラヴ人を住まわせたままドイツ人が君臨しても効率文化圏とはならない。

異文化の統一は困難であり、ハートランドを単独支配する勢力は現れなかった。

第4章 戦争と石油の地政学

第一次世界大戦以降、石油確保が重要な課題となる。

1939年における世界原油生産量は2575トンで、米国だけで1518トンを生産していた。エネルギー効率の高いオクタン価の高いガソリンをドイツは確保出来ず(米国の100オクタンに対し、87オクタン)、航空戦において不利だった。

1933年に政権を握ったヒトラーは、1939年までにドイツの石油生産量を3倍の年産450万バレルまで引き上げ、ルーマニアのプロエスティ油田活用や、ドイツ領内で産出される褐炭の液体燃料化を進めた。

しかし、戦争中の燃料確保は困難であり、バクー油田確保のために対ソ戦に踏み込む事になる。対ソ戦においてドイツは60日分の燃料しか調達出来なかった。

対ソ攻略の最重要拠点がスターリングラードである。スターリングラードは交通結節点であり、黒海からボルガ川を利用した運送を制御出来た。

第5章 シナ大陸の地政学
    ―マッキンダーの空白を補完する

以下の歴史。

○商(殷)
紀元前1600年頃~紀元前1046年頃にかけての黄河下流域に存在した都市国家。当時の北部中国は寒冷期であり、同時に湿潤化が発生していたらしい。著者は、東南アジア系の民族による集団と考える。

○周
殷よりも古くから黄河の大屈曲点に居住した「夏」の末裔。中央アジア系民族。周の戦車は古代オリエントデザインであり、古代中東文物の影響があるらしい。

○秦
紀元前778年に黄河最上流域に出来た国。乾燥したモンゴル高原に居住出来なくなった遊牧民?

紀元前316年に揚子江上流域を占領した秦は、寒冷化傾向にあっても夏場の高温が得られて農業用水も不足しない有利な土地を得た。その時代は、秦の領域のみが特例的に温暖・湿潤だった可能性がある。

さらに、隣接ステップ地帯の遊牧民が長期寒冷や乾燥によって弱まっているのなら、東方の国々に対して河川上流にある優位から自在に遠征を組み立てられた事にある。

⇒その後の秦の滅亡は、秦朝幹部が疲弊した他地域の実情を考慮せずに重税や重労働を課したためとする?

その後の隋や宋では、舟運の遡上限界が支配域となる。農耕が出来ない北部や西部のステップ地域の維持には莫大な補給が必要であり、大規模な北方、西方遠征は漢朝と唐朝が数度実施したのみ。

隋朝が天下を統一した589年~618年にかけては中華は温暖期にあり、砂漠が拡大して遊牧民が弱体化していたのかもしれない。それ以降、中華においては裏切りを誘発し易い地理的条件(末広がりで敵に回り込まれる隙が多く、勢力を結集し難い)に気候変動が重なり、農耕集団と遊牧集団の相克が継続していく。

<馬の利用について>
紀元前30世紀頃には、シュメール人がロバに戦車を曳かせたらしい。殷に戦車が出現するのは紀元前12世紀頃?人間が馬に跨る技術は紀元前14世紀頃の近東で発達し、東方へ伝播したらしい。



そして、中華においては紀元前300年頃までに乗馬技術を使いこなす遊牧民が脅威となる。

農耕集団において大量の騎兵部隊を常時維持する事は困難。広大な草地面積を活用して馬を肥育する遊牧生活でなければ騎馬軍団の確保は難しい。

温暖な気候が継続し遊牧集団が大規模化した後で、気候が不順化すると遊牧集団は集団維持のために侵略を引き起こす事になる。そこで、秦漢以降の中華政権は騎馬民族に貢納金を渡し、農民から飼料を購入させるようにする。乾燥が強まって草原が砂漠化すると、遊牧集団は有利に戦える地域が減少するため、農耕民の歩兵部隊に対して不利になる。

⇒著者の意見として、農耕民と遊牧民は北部中国において混血していたはずで、半分遊牧民となる者もおり、農耕民と遊牧民を完全に分かつ事は出来ないとする。

第6章 ドイツの地政学徒たちは何を言ったか?

○フリードリッヒ・ラッツェル(1844年~1904年)
国家は生物であり、国境は力の限界を表現する。国家は生体としての成長のために拡大せよと主張した。

以下は、Wikipediaの「フリードリヒ・ラッツェル」の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%92%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%84%E3%82%A7%E3%83%AB

○ルドルフ・チェーレン(1864年~1922年)
地政学(ゲオポリティーク)という語を創作。スウェーデン人だがドイツ留学し、ラッツェルに師事する。国家を擬人化する思想を受け継ぐ。ドイツのための侵略外交を唱える。

○カール・ハウスホーファー(1869年~1946年)
地政学の有効性を説き、ナチスの理論的支柱となる。

以下は、Wikipediaの「カール・ハウスホーファー」の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC

第7章 スパイクマンは何と言ったか?

日米安保体制の理論的創始者?

以下は、Wikipediaの「ニコラス・スパイクマン」の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%91%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%9E%E3%83%B3

南北アメリカ大陸をユーラシアの攻撃から守るため、リムランド(ユラーシア大陸の臨海辺縁部にある海陸両棲的国家)の概念を創造する。リムランドは資源的には不毛だが、海による物資輸送のため人口と工業が密集する。

リムランド:
満州、朝鮮、中国、インドシナ、サウジアラビア、西欧半島(独仏伊)。シベリア極東沿岸やイラン、トルコ、バルカン半島はリムランドでもハートランドでもない。英国と日本はオフショア島、豪州とアフリカはオフショア大陸と定義した。

リムランドの工業力が単一勢力によって支配されれば米国にとって脅威になる。

ユーラシア戦争史を、「英国とリムランド」対ロシアか、「英国とロシア」対リムランドと表現する。マッキンダーがハートランド(ドイツとロシア)が最強としたのに対し、スパイクマンはリムランドがドイツを含むため、リムランドが優位とした。

そして、極東における島国の基地が将来的な中華への対抗のために重要とした。

著者は、現代においては米国のような空軍強国とリムランドが開戦した場合、海も陸路も封鎖されるため、補給において不利としている。

第8章 日本防衛の地政学

<英国と日本の違い>
風と海流の違い。

・英国
偏西風は冬季には弱まるが、風が一定方向に吹く。暖流であるメキシコ湾流が英国西海岸沖で南北に分かれ、南の海流はフランスやスペイン、北アフリカに、北の海流はノルウェーやフィンランドに行く。周辺の海水温が夏でも18度しかないため台風が発生しない。

⇒西風と潮流によって船は東にある陸地に自動的に近付く

・日本
季節的に風向きが逆転する。黒潮は太平洋に流れ込み、冬場の日本海は大陸からの強風で波が高い。周辺の海水温度が26.5度以上あるため台風が発生する。

⇒航海が困難

<薩摩の地政学>
島津斉彬の征韓論の骨子は、北海道防衛のために朝鮮半島経由で樺太付近のニコライエフスクまで日本陸軍が北上して会戦する事。そうすれば、樺太のロシアを後方から脅威するため、容易にロシア軍が南下出来なくなり、北海道侵攻を抑制出来る。

⇒沿海州を最前線、朝鮮半島を補給路、北九州を後方基地とする戦略

朝鮮半島を確保出来ない場合、ロシアに対して北南の二正面作戦となり不利になる。

著者は、日露戦争において南樺太が日本領になった後は、北部のロシア基地が無くなったため、朝鮮半島を確保する必要は無かったとする。

******************

仮に北樺太を確保出来た場合、石油資源を入手出来た。1925年~1936年(日独防共協定)?まで北樺太で日本が採掘を認められた油井から年20万トンの原油が生産されている(ピークは31万トン)。

1920年時点では、連合艦隊の作戦運用には200万トンの重油が必要だったが、平時であれば年間23万トンで訓練に足りたらしい。

<ワシントン軍縮条約>
1922年のワシントン軍縮会議における日本を批判する。

米英の6割の戦艦を認める代わりに、フィリピン群島全域、グアム島、香港等の軍港機能拡充や要塞化が禁じられた(ハワイは禁じられていない)。

⇒中国沿岸において日本艦隊の後方兵站線が優越する事になるが、一方では中国市場を奪い合うため、後の戦争の火種となる

日本も千島列島、小笠原諸島、奄美大島、沖縄群島、台湾、澎湖諸島、旧ドイツ領の南洋の島嶼の基地機能強化を禁止された。ハワイの要塞化を是認して、沖縄等へのインフラ投資が抑制された事になる。

⇒日本は群島国家であるため、米国と艦船量を張り合うよりも、辺境の島嶼を要塞化する事が現実的?

また、1929年の世界大恐慌の原因を、補助鑑定を制限したロンドン海軍軍縮会議にあるとする。軍艦の建造発注が無くなる事で不況になると連想?

<真珠湾のシミュレーション>
真珠湾奇襲において、地上タンクにあった重油の備蓄450万バレルを炎上させていた場合、真珠湾における重油補給機能が回復するまで数ヶ月は日本海軍の西太平洋での自由が確保されたという意見。

地上重油タンクは、一個7000トンで26基が配置されていた。重油は空気と接触しても常温では容易に着火せず、タンク1基を火災させても他のタンクも延焼するかは不明。よって、全てのタンクに正確に爆弾を配分しない限りは全量を焼亡させる事は不可能。

タンク炎上に拘った場合、敵航空機への攻撃が疎かになる可能性もある。

仮に真珠湾で全ての重油を焼亡させる事が出来たとする。その場合、インド洋において日本海軍がホウルムズ海峡を制御し、イランからカスピ海、ボルガ川を経由するソヴィエト連邦への補給を排除出来たかもしれない。

すると、1942年1月以降、ソヴィエト連邦の補給は困難になり、1942年6月発動のドイツ軍による青作戦によってドイツがグロズヌイ油田とスターリングラードを確保していたかもしれない。

ただし、日本の苦境は変わらない。蘭印では、開戦直前の時点で日量17万バレル(2万7030kl)の石油が生産されていた。1941年度の軍用を含む日本国内石油消費量は500万kl。1日に1万3700klであり、蘭印石油を全て日本内地に持ち込めれば良いが、1939年に日本が保有していたタンカーは合計43万トンで補充が難しい。そして海軍は毎日2900バレルの重油を燃やす。

『反戦反共四十年』(渡辺鐵藏著)では、1941年に日本が生産した石油は14万2000トンで、米国は1億8998トンである。

<近未来における地政学>
シェール・ガス革命とパナマ運河拡幅を地政学の新事態とする。

大型LNGタンカーがパナマ運河を通過可能になり、中国からの安全保障上のオプションとなる(東南アジア近海が機雷封鎖された場合)。

北米西海岸から中国沿岸を目指す場合、最短コースでは日本の津軽海峡を経由する。八戸港を揚陸ターミナルとする提案。将来的には下北半島に運河を設けて、青森市寄港をオプションにする。

人気ブログランキングへ

寝過ごしたと思った

寝過ごしたと思ったら、まだ22時よりも前だった。

微妙に睡眠のリズムがずれている。

人気ブログランキングへ

仏教の冷たさ キリスト教の危うさ

読んだ本の感想。

ネルケ無方著。2016年5月20日 初版第一刷発行。



仏教の冷たさ:
現状を受容し打開策を考えない怠慢。

キリスト教の危うさ:
愛を主張しながら、憎しみ合う無遠慮。

序章 【現実問題としての宗教】
   一神教はなぜ争うのか

一神教には、相手を認める事が出来ないという欠点がある。仏教では敵を想定した時点で負けになる。

仏教的な「お互い様」という感覚でなく、善悪の明確な判断基準があり、悪を殺す事は善行となる。

第1章 【比較宗教学】
    仏教は科学的!?キリスト教は非科学的!?

以下の2つの哲学。

①三人称の哲学
偉大な哲学者の思想について学ぶ。

②一人称の哲学
自ら哲学する。人は如何にして生きるべきか。

自然科学における一人称のアプローチ(公理を盲目的に信じるのでなく、自分で確認する)の根源は旧約聖書にあるとする。人間は神に似せて作られたので、神に代わって世界を支配する義務がある。そのためには、神が世界を創造した設計図を解明しなくてはならない。

実証可能な思想である仏教徒比較して、キリスト教には精神的拠り所としての宗教の側面が強い?欧米では強く自律を求められ、親が怖いというイメージがある。自分の親に頼れないため、恋愛を拠り所にする傾向がある。異性に親代わりを求め、最終的に派神を求める。自立を求められながら、実際には自立出来ない。欧米人にとっての宗教は親への切望だ。対して、「和」を重視する日本人の拠り所は共同体である。

仏教では絶対者を設定せずに、信じる事よりも教えを実践する事が重視される。自己が自己の拠り所となる(大般涅槃経)。明治時代に「freedom」を翻訳する際に仏教用語の「自由」が使用され、自己以外に拠り所があると、そのもに支配されてしまうという仏教的思想による。それは絶対依存とは正反対の思想である。

さらに仏教には「縁起」があり全てが因果関係で関係しており、「無我」として全てに実態が無いとする。絶対神は存在しない。

仏教的創造:
パーリ仏典の『起世院本教』では、世界は縮小と膨張を繰り返す動的状態とされる。宇宙が最小限に縮小した時、全ての生物は天上界におり、宇宙が膨張すると人間界が現れる。

人間の素には男女差が無く、地殻から美味しそうな匂いがして、美味しそうな物を食べた事で、人間の素に身体が出来る。地殻に生えた青い物(苔)を食べ、次に葛を食べ、草の実を食べ・・・・。

最初の人間は互いの身体の凹凸に興味を持ち、雄と雌は求めあう。そして相手を自分の所有物として意識し、家を建て、田畑を個人で所有するようになると盗みや殺しが発生する。

⇒聖書の物語と似ているらしい

キリスト教においては、実体としての人格神があり、人格があるから思考出来る事になる。仏教では、世界は因果法則によって成立しており、人間は偶然に発生したので、人間が世界を支配するのでなく、繋がりの中で生きる事を強調する。

第2章 【「愛」について】
    イエスの「愛」とブッダの「慈悲」

キリスト教では「言葉」を大切にしており、神と人間との契約を宗教とする。聖書は神の言葉であり、言葉が無くてはキリスト教は成り立たない。

仏教では「不立文字」、「教外別伝」として、以心伝心や見真似学習によって多くを語る必要は無いとする。

英語では「愛」の方向性が明確であるが、主語が明確でない日本語には一貫した自己同一性を表す言葉が無い。

『正法眼蔵』の「菩提薩埵四摂法」では、自分と周囲を繋げる四つの方法があるとする。

①布施
自他の所有の区別をなくす。
②愛語
言葉の布施であり、挨拶を含む。
③利他
人と協力する事。
④同事
相手と自分が同じ命を生きている実感。

仏教では「愛」を「四無量心」と言う。慈(父のように励ます)、悲(母のようにともに悲しむ)、喜(ともに喜ぶ)、捨(施した恩も受けた害も忘れる無執着)。

キリスト教には、愛を表す言葉が4つあるとする。

①エロス
プラトニック・ラブの本当の意味。パートナーという「もう一人の私」kらの愛。恋愛から性愛までを含む。
②ストルゲー
母子愛等の無条件の愛着。
③フィリア
同志愛として一つの目標を共有する。友情、友愛等の連帯感。
④アガペー
神の愛として、敵を含む宇宙全体に向けられる。

⇒キリスト教では敵を愛すが、仏教では敵味方という執着を手放す事を目標とする

第3章 【2大宗教の成立と発展】
    仏教とキリスト教はいかにしてつくられたか

仏教の成立:
釈尊が80歳で亡くなった後、その教えは各部派で400年間口頭で伝承され、結集という宗教会議が釈尊の滅後すぐと、約100年後、紀元前250年頃に行われている。

偶像崇拝に否定的だった仏教は、アレクサンダー大王が勢力を北インドまで伸ばしてからヘレニズムの影響により、仏像を沢山彫るようになったらしい。

釈尊の教えが文字で書き留められたのは、紀元前1世紀のスリランカで行われた第4結集においてであるが、この会議には上座部仏教のみ参加し、大乗仏教では2世紀の北インドはクシャーナ朝で行われた別会議を第4結集と呼ぶ。

日本の浄土宗に影響した『浄土三部経』の成立は1世紀~2世紀頃で、シルクロードで一神教の影響を受けたという説がある。阿弥陀如来は一神教の神?

キリスト教の成立:
キリスト教宣教師がエルサレムで最初に会議をしたのは、50年より早い時点とされる。その頃には福音書すら書かれていない。未だにキリスト教はユダヤ教の一派とされていた。

当初はユダヤ人のみに行われていた宣教は、やがて異邦人にも行われる。神を信じる者が救われるので、それ以外の条件は無い。

迫害者サウロが転向した使徒パウロが指導する形でキリスト教は世界宗教の礎を築く。律法でなく信仰を重視し、イエスは神であり、人間が神のようになれないから世界に現れ、十字架で人類の罪を贖ったとする。

以下は、イエスとパウロの宗教観の違い。

①イエスの人間性と神性
パウロは、イエスに救世主としの働きを期待せず、神だから磔になり復活したとする。初期クリスチャンにはイエスの復活・昇天は無く、それは福音書から付け足された話である。

イエスは愛を第一の戒めとして神を愛し、隣人を愛する事を説いたが、パウロの言葉では「神を愛せ」という言葉が抜け落ちる。愛は神から人間に向かう事になり、神から頂いた命を生きる隣人を愛さなくてはならない。厳しかった神が愛そのもに変わる。

「神を愛せ」と命じたイエスがパウロによって「神から人類へのプレゼント」となる。一人称から二人称への変容。そして愛のベクトルは隣人へ向かい、神から与えられる愛から隣人愛(三人称)へ転換する。

⇒神を必要とせず、隣人愛によって普遍的となる三人称の世界宗教の誕生

②原罪と義認の関係
ユダヤ教とイスラム教では、最後の審判において正邪が分けられる。その判断基準は人間の一生涯を通しての行為であり、その総計した結果が黒字なら天国、赤字なら地獄へ行く。

しかし、キリスト教では良い事をしても救われない事があるし、悪い事をしても救われる事がある。旧約聖書には原罪の言葉が無く、アダムとイブの罪は人間に継承されない。個人が律法を守っていれば「義」となる。

同様に、イエスは律法の厳守を課したが、パウロはイエスによる贖いを信じるか否かが重要とした。イエスが磔になった事で、それまでの人類の罪が贖われ、神との契約は更改された。

③神の国の実現
イエスによると神の国は別世界でなく、現世で実現させるべきものとする。自らが主体となり、イエスという道を通って神の国を目指す。しかし、パウロは原罪の贖いは神(イエス)にしか出来ないとして、信じる事によって救われるとした。

第4章 【仏教の本質】
    自分だけの「解脱」を目指す、仏教の冷たさ

仏教における以下のアプローチ。

一人称:
私の生活から離れた所に仏教は無い。私自身が仏陀となって、私を救う。

二人称:
仏から救われるためには、まず自分を忘れる必要がある。自力を諦めて他力に任せて救われる。

三人称:
菩薩として社会の中で働くアプローチ。

自他の救いに関する以下の違い。

○キリスト教
創造主である神と、被創造物である世界には隔たりがある。神がイエスとして受肉し、神を信じる事で天国に上り、永遠の命を得る。

○仏教
神も迷える者であり修業しなければ解脱出来ない。罪ではなく業(原因があれば結果がある)があり、仏陀でも因果関係を変えられない。執着を断ち切る事で因果関係から解脱し、そのために自分が仏陀になる。

⇒仏教における仏陀は、救世主でなく修業の実物見本であり、自分自身による修業が大切になる

上記の観念は一人称の仏教として、自分の問題のみを解決しようとする。浄土教では二人称として、凡人は仏陀になれないため、阿弥陀仏の他力による救いが約束されている。極楽往生は念仏を唱えるだけで叶えられる。しかし、ここでも自分だけしか救われないという問題が発生する。

三人称の仏教では、自分の解脱を後回しにして他人の救いを優先するが、自分さえ救えない人間には他人を救えないという矛盾がある。

日本の仏教の多くは、三人称の仏教であり、回向という自分が積んだ徳を他に回すという思想がある。

以下は、仏教経済学について著した本。人のために働き、働く事自体が報酬になるという思想。



第5章 【キリスト教の本質】
    「排他主義」に陥りやすい、キリスト教の危うさ

キリスト教ではイエス到来によって神との契約が更改されたとして、旧約聖書と新約聖書を聖典とする。古い契約(旧約聖書)も律法の立脚点、歴史書として大切にする。

聖書は中近東の文明を背景に、他の文化との差別化、独立宣言、共同体内部に向けての法令という側面があり、さらに民族の系図を証明する歴史書でもある。

そのようにしてキリスト教はユダヤ教の聖典を立脚点にしているが、ユダヤ教徒はイエスを救世主と認めていない。救世主は未だに到来を待たれている。

イスラム教の聖典コーランには、イエスが「イーサー」として登場し、奇蹟を起こして天に昇った事になっている。イスラム教は旧約聖書、新約聖書にコーランを加えた形になっている。しかしながら、イスラム教ではイエスは預言者という位置づけになっている。

⇒キリスト教のみがイエスを神とする

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教では、以下の「モーセ五書」が共通している。

①創世記
創造主である神が一週間で世界を創造した話から、ノアの方舟、バベルの塔崩壊を経て、ユダヤ教太祖となるアブラハムとその子孫の話で終わる。

⇒ユダヤ教・キリスト教ではアブラハムの長男を正妻サラとの次男イサクとし、イスラム教では奴隷ハガルとの長男イシュマエルとする

②出エジプト記
モーセが率いるユダヤ人がエジプトから脱出する話。神の本質は嫉妬であり、他の神を信じる人々との契約も結んではならないとした。

③レビ記
ユダヤ教徒のために細かい律法が書いてある。獣姦した者同様に、犯された動物も殺す規定には、日本神道の穢れに近い観念があるとする。キリスト教では、イエス自身が供え物として自らを捧げたため、贖いや神への供物の観念が無くなったとする。

④民数記
人口調査の記述が多い。

⑤申命記
死ぬ間際のモーセが3つの説話で再度の神との契約を繰り返す。モーセは約束の地カナンに入る事を神に許されなかったため、モーセ五書はカナン占領の手前で終わっている。許されなかった理由は、神の目にモーセが臆病者に映ったからとする。

****************

著者は、人格神である時点でキリスト教は徹底した一神教に発達していないとする。神を唯一とするなら、他の宗教の神も自らの神と同一であるはず。

終章 【宗教の未来】
   「宗教のニオイ」をマイルドにする、日本人の智慧

リベラル = 性善説(人類の進歩を信じる)と保守 = 性悪説(人間を疑う)として対比する。

解放を目指す左派に対して、右派は壁を作って守られた空間を作ろうとする。

著者は日本のキリスト教をライトとして、キリスト教徒であっても実家が浄土真宗であれば浄土真宗で葬儀する事を柔軟と解釈する?

イスラム教やキリスト教を日本で柔軟にアク抜きして海外に輸出する提案?

日本の学校で掃除がきちんと行われるのは仏教の影響であるが、それが宗教的行為と気付かれないほどに宗教の気配が日本からは消えている。

「沈黙」の中では、ポルトガル人神父が「この国は全てのものを腐らせてしまう底無しの沼だ」と語るが、それはキリスト教の熟成を意味しているのかもしれない。



宗教を善悪でなく、美味しい不味いの観点から論じる視点?

人気ブログランキングへ

大人のアスペルガー会話メソッド

読んだ本の感想。

司馬理恵子著。2015年11月30日 第1刷発行。



PART1 あなたが誤解されやすいのは
    「コミュニケーション不足」のせいだった

アスペルガー者は、成人してから職場にて上司、部下、顧客という様々な関わりを求められる中で問題視されていく。多数の人間が集団を形成すると、共通認識が発生するが、社会的想像力が無いと経験した事が無い状況で振る舞う方法を推測出来ない。

自分が見る範囲内を認識しても、自分を含めた全体が想像出来ない。そうなると自分が正しく、他が間違っているという思想から脱け出し難い。

アスペルガー症候群の診断基準:
①社会性の欠陥(極端な自己中心性)
以下から少なくとも2つ。
 ・友達と相互に関わる能力に欠ける
 ・友達と相互に関わる意欲に欠ける
 ・社会的シグナルの理解に欠ける
 ・社会的・感情的に適切さを欠く行動

②興味・関心の低さ
以下から少なくとも1つ。
 ・他の行動を受け付けない
 ・固執を繰り返す
 ・固定的で無目的な傾向

③反復的なきまり
以下から少なくとも1つ。
 ・自分に対して、生活上で
 ・他人に対して

④話し言葉と言語の特質
以下から少なくとも3つ。
 ・発達の遅れ
 ・表面的には熟達した表出言語
 ・形式的で細部に拘る言語表現
 ・韻律の奇妙さ、独特の声の調子
 ・表面的・暗示的な意味の取り違え等の言語理解の悪さ

⑤非言語コミュニケーションの問題
以下から少なくとも1つ。
 ・身振りの使用が少ない
 ・身体言語のぎこちなさ
 ・表情が乏しい
 ・表情が適切でない
 ・視線が奇妙

⑥運動の不器用さ
 ・神経発達の検査成績が低い

◎社会性障害における4つの型
①孤立型
人との関わりを求めない
②積極奇異型
他人と不器用に関わる
③受動型
自分からは他人と関わらない
④過剰に大仰型
思春期後期から表れ、社会的なマナーをぎこちなく身に付けている

PART2 コミュニケーション力を身につける
    基本の「き」

以下は、仕事のコミュニケーションの基本。

報告:
仕事の結果や途中経過、トラブルも含めて部下から上司に伝える。

連絡:
予定や簡単な情報を関係者に知らせる。

相談:
判断に迷う時に、上司や同僚の意見を聞く。

相互的な意思疎通のために、主語と述語を明確にする。自分が知っている事を相手も知っていると思い込まないようにする。

PART3 <ビジネスシーン別>コミュニケーション力が
    身につく会話メソッド

・指示を受ける際の注意
アスペルガータイプは同じ事を何度も間違える。他人と感覚が違うため、大まかな注意では悪い箇所が分からない。一つの敬虔を似た事に応用する事も苦手なため、間違えた理由を具体的に説明して貰う事が大切。

・依頼する際の注意
命令にならないように供養に注意する。「恐れ入りますが」、「よろしければ」等のクッション言葉を使用する。相手からの依頼を断る場合も、「せっかくですが」、「申し訳ございませんが」等の言葉で穏やかに断る。

・謝る場合の注意
遅刻等した場合は、最初に「遅れて申し訳ありません」と言う。遅刻の理由を最初に言うと言い訳に思われる。気持ちを伝えるには、言葉と表情、仕草に注意する。

叱られた場合は、そこから学ぶ姿勢を見せる事も大切で、ただ誤ってやり過ごす事はいけない。

PART4 症状をやわらげる方法も
    身につけよう

自分の問題に気付いても、具体的な解決方法が分からない場合、一つ一つの困っている場面を具体的に書き出して、当人と周囲がどのように対応すべきか検討する。

運動やストレッチ、深呼吸等は体調を整える事に有効。他に睡眠や食事への注意等。

人気ブログランキングへ

超・反知性主義入門

読んだ本の感想。

小田嶋隆著。2015年9月24日 第1版第1刷発行。



現代社会においては、「知性」を大義名分として課される義務や評価が人々を圧迫しており、そうした体制に反発する事を反知性主義と定義する?

***************

以下は、「メフィラス星人になれません」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-2418.html

上記リンクにある疑問と同じものを、小田嶋先生の主張から感じる。何故、小田嶋先生は日本人のみを批判し、外国人を批判出来ないのだろう?

例えば、P57では朝日新聞にて従軍慰安婦に関する捏造報道を行った植草記者への脅迫行為を問題視している。植草記者の捏造は問題視せず、それに対する抗議の中から極端な事例を取り出して一般化し、植草記者への抗議そのものが不当な事であるかのように印象操作しているように思えてしまう。

以下の本「喧嘩上等! 反日国家の中心で反韓を叫ぶ」は、韓国語に堪能な著者が韓国のインターネット上で論戦を行う試みを描写したもの。小田嶋先生がこの本を読んだらどのように感じるだろう?




***************

超・反知性主義01:生贄志向
謝罪は理詰めの情報交換でなく、話を曖昧にする事を目的とするコミュニケーションだ。

失策の原因を尋ねる側は、論理的な原因でなく、震えたり泣き出す等の反応を求めている。叱責は溜飲を下げるために行われる。情けない姿で謝っている絵姿によって責任を追及する気持ちが和らぐため、説明責任を果たす態度は事態を悪化させる可能性がある。

インターネットを通じて大勢の人間が一つの現象を認識する時、「群衆」という架空の人格が誕生する。他人の恥辱は「群衆」にとって愉快な見世物であり、個々の構成員よりも「群衆」は口汚くなる。

さらに、「群衆」は情報収集意欲が高い。衝撃的な事件が発生すると、情報を貪欲に吸収し、起承転結や序破急で整理された物語に回収しないと落ち着かない。典型例よりも特例が重視されてしまう。

超・反知性主義02:絆志向
個々の構成員の自己犠牲を求める物語が好まれる。友情が不満を抑え、義理・人情が逸脱を防止する。

滅私奉公が美談として称揚され、個々の脱落は裏切りとなる。

超・反知性主義03:本音志向
「本音」は現実であるため、本音を容認しない人間は偽善者となる。「本音」は本音である事自体によって免罪される。

善悪と別に、本音と建前という座標軸があると、無条件に本音が神聖視され、露悪的な人間ほど信用出来る事になる。

そして、近年の日本において多くの人間が従う自国に関する同調の基礎は、「貶す」から「誉める」に転じた?人間は周囲の人間と同じように振る舞う事を強力に内面化しているので、愛国傾向が加速する可能性がある?

インターネットは露悪的な本音を万人に向けて公開する場を提供している。それまで隠れていた本音が共有財産(真実の言葉)として影響力を持つ。

巨大な賛同を背景に残酷が表現される。

超・反知性主義04:非情志向
他人の偽善を指摘する事で、何かを成し遂げた気持ちになる。

インターネット上の本音は、社会が上品ぶる事で保たれている社会的基盤を破壊するかもしれない。

多くの人間は自らと同じ情報を持てば自説に賛同すると思っているので、宣伝によって世界を動かす事が出来ると考える。しかし、「私の意見」は「あなたの意見」で「全ての人間」の意見であるという概念は、問題設定をした際に、自分自身を含む全員を加害者認定しないと論理が成立しないため、比喩的には自らの座る木の枝を切り落とす事になってしまう。

自己言及を含む議論は、自らを棚上げしなければ考える事が出来ない。神の視点はそのために必要とされる。

人類全体の共同意志を一元化出来るとしたら、それは「神」という事になる。

******************

ハードボイルドな物語では、「人間的な人間は、非人間的な人間に勝てない」という暗黙のルールがある。設定として非情なルールが共有される方が物語進行が劇的になり楽しい。

しかし、一般的幸福は決断力を欠いた人々が逡巡を繰り返す中で育つとする。

超・反知性主義05:功利志向
多くの現代人は目標を達成するために何かをしている。日々の無為に耐えるために、抽象的な目標を設定する事で単調作業の繰り返しに折り合いを付ける。

変革を主導する人間の全能感は危険であり、現場が生身の人間によって成立している事を考慮していないかもしれない。

そうした変革を主導する選良は後戻りが苦手とする。勉強の出来不出来によって評価されてきた人間にとって、偏差値信仰が崩れて価値観が多様化する事は世界の崩壊に見える。それは自分より格下だった存在が自らと対等に振る舞う事を示唆するからだ。

選良は自らが類まれな価値を持つ事を保証する思想の外側には出られない。呪縛から解放されるには堕落や挫折等の外部刺激が必要になる。

その一方で優秀でなかった人々は自らを敗北者と定義付ける思想の外側に出る事が容易い。

⇒知的に劣った人々の方が多様性を受容出来る可能性

⇒価値観を疑えない人間が変革を主導すると混乱が生じる

絶えざる変革ではなく、変わらない基礎が大切?そうした変わらない基礎が日常を支えている。

人気ブログランキングへ

葬式は要らない

読んだ本の感想。

島田裕己著。2010年1月30日 第一刷発行。



日本における葬式の社会的意義について。

財団法人日本消費者協会が2007年に行った調査では、葬儀費用の全国平均は231万円である(地域差が大きく、四国が149万5000円で東北地方は282万5000円)。

1990年代前半の米国の葬儀費用は44万4000円、英国は12万3000円、ドイツは19万8000円、韓国は37万3000円であり、日本は飛び抜けて葬儀費用が高い。

日本における社葬(会社自体が施主になって社長等の葬儀を行う)は日本特有であり、会社を大きくした人物の功績を称え、後継者を披露する場となる。1970年代に生まれた慣習とされ、バブルの時代には大規模化して贅沢になったとする。

<直葬(火葬)>
故人が亡くなった後、自宅に遺体を安置し、近親者だけで通夜を行うもの。現代の東京では20%が直葬とされる。高齢者の大往生が増え、会葬者の数が自然に減った事が直葬増加の理由とする。

他にも通夜と告別式を一日に纏めた形式もあり、「家」の重要性が失われた事で、結婚式(媒酌人不在)と同様の簡略化が進行しているらしい。

墓地を販売せずに、使用料を取って貸し出す永代供養墓の登場も、墓を守る子孫がいない事例が増えた事にあるとする。

創価学会においても、1990年代に日蓮宗と決別した事で、葬式の儀式を僧侶を呼ばずに行う「友人葬」にて行うようになり、会員の大半が地方から都市に出稼ぎに来た人々で、故郷の墓から切り離されたために可能であったとする。

<日本における葬儀の歴史>
以下は、古代装飾古墳から著者が推測する事。

①現世と連続する死後
埴輪や壁画には、人間や家等の実際に存在した物を描写しており、霊や神を描いていない。天国や極楽、地獄という異界の痕跡が無い。
②仏教と関連しない
仏教が広がっていた時代に建てられた高松塚古墳やキトラ古墳にも仏教の影響が見られない。

飛鳥時代から奈良時代にかけての仏教は、高度学問体系として受容され、葬式仏教の側面は無かったのかもしれない(奈良仏教)。同時代に建立された法隆寺、薬師寺は墓地や檀家がおらず、住職が亡くなると別の宗派の僧侶が葬式を営んだ。学問としての仏教を学ぶ場。南都六宗は、教団というよりも学問上の流派の性格が強い。

神道と仏教の相違点は、神道では信仰対象となる神を姿形に表現しない事にある。9世紀以降の一時期に神像が作られた時期があったが、神も人間と同様に仏道修行による解脱を求める僧侶の姿で描かれた(僧形八幡)。

神道でも「神葬祭」という神道式の葬式があるが、仏教式に比べれば質素であり、祭壇や飾り付けをする仏教式の葬儀が日本の高価な葬儀の原因であるかもしれない。

奈良仏教の次に輸入されたのは密教であり、修業を通じて神秘的な力を修得した僧侶が国家安泰を願うものとする。密教では曼荼羅にて異界を描き、千手観音や不動明王等の異形の存在が前提となる。念仏が唐に渡った天台宗の円仁(天台宗第三代座主)によって齎される。

密教の次に流行したのは浄土教信仰である。人が死後に生まれ変わる「浄土」の存在が強調される。平安時代中期の天台宗僧侶 恵心僧都源信は『往生要集』を著して、極楽浄土へ往生する方法を示した。地獄を詳細に描写し、「臨終行儀」にて死に臨む具体的方法を記す。

平安貴族は、平等院鳳凰堂や浄瑠璃寺、中尊寺金色堂を建設し、現世以上に華やかな極楽を現世に表現したとする。

⇒死後の世界を壮麗にイメージする試み

次に鎌倉新仏教が流行する。長期に渡って仏教理論を学べない庶民のために、「易行」として念仏を唱えれば極楽へ往生出来るとする。

鎌倉新仏教の曹洞宗開祖である道元は、「只管打座」を説き、座禅によって悟りに至る事を強調したが、第4祖となる瑩山紹瑾は、宗派の経済的基盤を確立するためにも密教的な加持祈祷や祭礼を取り入れていく。密教は、日蓮死後の日蓮宗にも影響したらしい。

加持祈祷は使者の供養にも用いられるようになる。さらに、禅宗においては儒教の影響が見られる。儒教における祖先崇拝の影響。1103年に宋で編集された『禅苑清規』には、禅宗の葬儀方法が記されており、修業途中に亡くなった僧侶を一旦は出家した事にして、出家者の証である戒名を授ける方法が確立されている。

⇒禅宗における在家のための葬儀方法が日本社会に広がる

仏教は、神道と異なり死後の浄土を徹底して豪華に描く志向があり、浄土を模した祭壇が豪華になる下地が出来たとする。

*******************

<世間体について>
葬式を贅沢にする上で、世間体が重要な役割を果たすとする。



質素な葬式では故人の業績を脾摘した事になってしまう。日本近世の村落共同体は、稲作による結束が強固であり、「神仏習合」が基本で葬儀を担当する仏教徒、氏神祭祀を営んで村を統合する神社が共存していた。

江戸時代に入って、寺請制度が導入され、各寺院が行政組織の末端として、戸籍管理のために全ての村人が寺の檀家となる事が強制されたため、仏教式の葬式が当たり前になっていく。

村全体は氏神によって纏まり、各家族の信仰として祖先崇拝が確立された。

<戒名>
死後に仏教式の葬儀において授かる戒名にはランクがあり、院号がつけば布施の額が高騰する。

本来、戒名は、その人間が仏教徒になった証として授かる。一般の在家信者が死後に授かる戒名という制度は日本にしかないとする。

日本では、禅宗における在家信者の葬式作法が確立されたため、一旦は出家の形を取るために、戒名が授けられる事になり、それが慣習になっている。

昔の日本社会では幼名が存在し、手柄を立てると新しい名が与えられ、他に俳号、芸名、画号、襲名等、一人の人間が生涯に幾つもの名前を名乗る事が珍しくなかった。

それが死後も名前を改める戒名に結び付いたのかもしれない。

一般霊園における調査では、明治時代の戒名の内、院号が占める割合は18%だが、大正時代には20%になり、昭和10年代、20年代には10%に落ちている(家の当主でない若者が多く亡くなったためと推察)。

そして、昭和30年代~昭和40年代には、院号のついた戒名が55%となり、昭和50年代~昭和60年代には64%、平成に入ると66%に達した。

一方で、地方農村地域では昭和60年代でも院号は5%程度だった。村落共同体のような強固な地域共同体の存在しない都会では、村の有力者でなければ名乗れない院号を名乗り易いのかもしれない。

寺の側にも戒名料を取りたいインセンティブがある。1969年には院殿号がついた戒名料は20万円以上だが、1979年には50万円以上になり、さらにバブル期に値上がり、多少の値下がりはあったが高値安定している。

寺請制度が廃止され、檀家となる事が強制されなくなった事で、仏教寺院の経済基盤が弱体化した事も戒名料高騰の原因かもしれない。一般に一つの寺を維持するためには300件の檀家が必要とされ、一年間に15件ほどの葬式が必要になる。

日本消費者協会による2007年の調査では布施の平均は54万9000円であり、15件では823万5000円の売り上げがある事になる。ちなみに、全国1万4000軒の寺を抱える曹洞宗では、住職の平均収入は565万円であるらしい。

かつては豪族や貴族にのみ許されていた戒名や檀家、立派な墓等が庶民のものとなった事で、負担の自覚との矛盾が生じているのかもしれない。

******************

葬式において喪主になるのは後継者であり、葬式には後継者を披露する役割がある。家を受け継ぐ必要の無い人々には葬式の重要性が薄い。高齢化により大往生が一般化した事も豪華な葬礼の意味を薄くしている。葬式の簡略化の進展。

人気ブログランキングへ
プロフィール

ABCDEFG

Author:ABCDEFG
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード