眠れない

不安感の原因は分かっている。

色々な事を知ったり、経験を積むと、自分の中に理論が構築されて、その通りに物事が動くように感じられてしまう。

何も知らない状態に戻る事は出来ないから、何かを知れば知るほど不安感が強くなる。

新しい事を始めたい。

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精神的に不安定になっている

色々な事があって、自分が思っている以上に傷ついているのだと思う。

以下を人間が構築する物語の原型としてみる。

応:
自分が制御出来ない事は正当化される

比:
自らを基準とした優劣。自らを最上位にする事も最下位にする事もない

対称性:
階級上位と階級下位が等しくなる事が美とされる

強化:
際限無く強くなっていく。「強」は美徳である

自らの中に制限があって、定められた通りにしか行動出来ないとしてみる。不安感がとても強くなっている。

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ゆっくりと生きたい

外部に惑わされずに、何もしないで生きていたい。

考える事や焦る事が良くないと思う。

「○○は◆◆である」という確かな法則が存在しているように見えるが、そうした事は存在しない。付和雷同して生きている方が確実な場合がある。

周囲の人間が愚かで、自分だけが賢い事はあり得ない。

不眠になったり、食生活が乱れている現状を少しずつ通常に戻したい。

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ハプスブルク帝国の情報メディア革命

読んだ本の感想。

菊池良生著。2008年1月22日 第一刷発行。



欧州における15世紀以降の環境変化 = 大航海時代、宗教改革、初期資本主義等が情報技術の変化を引き起こした。

活版印刷:
情報蓄積メディア。

郵便:
情報伝達メディア。

上記2つの変化が同時期に発生した。

近代的な欧州郵便網は、ハプスブルク家のマクシミリアン一世により、当時の二大経済圏(ネーデルラント、北イタリア)を結び付ける目的で整備された。当初は公用郵便に限定されていた郵便は、やがて民間へも開放され、近代確立に大きな役割を果たす事になる。

以下は、Wikipediaの「マクシミリアン1世 (神聖ローマ皇帝)」の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%9F%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%B31%E4%B8%96_(%E7%A5%9E%E8%81%96%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%9E%E7%9A%87%E5%B8%9D)


マクシミリアン一世は、ブルゴーニュ公国(ネーデルラントを領有)のシャルル大胆公の一人娘マリーを后に迎え、彼女の死後にはミラノ公の娘を後妻とした。

1494年のフランス シャルル八世によるイタリア侵攻に代表されるイタリア権益をめぐるフランス王家との争いや、支配が盤石でないネーデルラントの情報を手に入れるための情報網が必要とされた。

マクシミリアン一世の政庁は、内陸のチロル インスブルックにあり、この地から欧州南北の情報を集める事になる。

***************

以下は、近代郵便の雛形。

◎アケメネス朝 ペルシャ
創始者であるキュロス大王により、宿駅制度が整備された。ヘロドトスの記述によると、ペルシャ王の伝令便は、スーサ(アケメネス朝の首都)とエクバタナ(メディアの首都)間の約450キロを一日半で踏破したらしい。

アケメネス朝にて構築された騎馬を活用した駅伝によるリレー式郵便システムの利用者は、王や官吏に限定されたという。

◎プトレマイオス王朝 エジプト
古代ペルシャに酷似した駅伝制度。公用に限定。

◎ローマ
以下の4種類の飛脚。
 ①地方総督の訓令兵
  ローマと地方を連絡
 ②国家の文書連絡係
 ③用益賃借人飛脚(国に営業権料を支払う)
 ④職業としての飛脚

上記③、④は民間が活用した。ローマの勢力圏拡大は情報需要増大の原因となった。やがてローマ帝国が崩壊する事で、情報インフラを維持する中央政府が無くなり、駅伝制度は維持不可能となる。

******************

欧州における中世定住社会では、国王の使者や飛脚、教会組織による情報伝達、大学飛脚制度等があったとする。

フランスとドイツの違い。

○フランス
「カペー家の奇跡」として、12世紀末~14世紀初頭にかけてのフランス王家は代々が長命で男子後継者に恵まれた。そのため、他国よりも早くから王権強化が為されたとされる。国家理性の思想。

⇒公的権力による飛脚制度の傍ら、商用郵便が行われた

○ドイツ
10世紀後半から13世紀後半にかけて、血統断絶により王朝が三度交代している(ザクセン朝、ザリエル朝、シュタウフェン朝)。シュタウフェン朝滅亡後は、大空位時代を経て、一代限りで王朝が変わる状態となる。

⇒諸侯領は独立国家に等しくなっていく

第三回十字軍を契機に1198年にローマ教皇の承認を得て成立したドイツ騎士団は、移住国家であったために土着勢力との戦闘が絶えず、情報網構築のために自前の飛脚制度を作ったとされる。

ドイツ騎士団は、バルト海貿易にも関与したため、騎士団の飛脚はハンザ同盟諸都市を頻繁に回り、北欧商業の潤滑油になったとする。

⇒経済的目的を主とする郵便制度?

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商業が盛んだった14世紀のミラノにて古代ローマ駅伝制度が復活されたとする。

以下は、Wikipediaの「ガレアッツォ1世・ヴィスコンティ」の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%AC%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%84%E3%82%A91%E4%B8%96%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3

時刻伝票システムにより、配達物の時間管理が徹底され、それが近代的時間間隔の基になったとしている。やがてヴェネツィアやフィレンツェにおいても駅伝制度が整備されていく。

ヴェネツィアの商人飛脚にはベルガモ出身者が多く、タッシス家(タクシス家)という有力な飛脚問屋があった。タッシス家は、アルプス以北への事業拡大に乗り出し、1490年にマクシミリアン一世と郵便契約を交わす事になる。

タッシス家の郵便網は、ネーデルラントのリエージュとローマを40日間で往来したとされる。

マクシミリアン一世の嫡男フィリップ美王は、1505年にフランツ・フォン・タクシスと新しい郵便網構築のために郵便契約を締結した。

フィリップ美王の宮廷があるブリュッセルとインスブルック、パリ、スペイン宮廷を結ぶもので民間にも門戸が開放された。郵便網が数カ国に跨る事で、国際性を獲得した事になる。

フィリップ美王の長男であるカール五世の時代に郵便インフラが民間に開放される事が郵便契約(1516年)に明記される。

1522年のニュルンベルク帝国議会の最終議定書には郵便制度整備が盛り込まれ、1531年にネーデルラントのアントワープに証券取引所が開設されてからは定期便の需要が高まり、1534年にアウクスブルク ― アントワープ間、1538年にアウクスブルクを経由してヴェネツィア、ローマに通じる定期郵便コースが出来上がった。

⇒イタリアとネーデルラントが郵便によって連結した事により、フランス シャンパーニュ地方の大市が衰退したとする。『物質文明・経済・資本主義』第2冊(フェルナン・ブローデル著)。

カール五世の時代は宗教改革の時代でもあり、反宗教改革のための公会議やプロテスタントの情報を集めるためにも定期郵便が活用されたとする。

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<郵便危機>
国家事業としての欧州近代郵便制度が、財政危機に陥った事?

1556年のカール五世退位により、ハプスブルク帝国はスペイン・ハプスブルクとオーストリア・ハプスブルクに系統分裂した。ハプスブルク帝国の郵便制度はスペイン王となったファリペ二世が引き継ぎ、維持費もスペイン政府から支払われる事になる。

カール五世は1555年の「アウクスブルクの宗教和議」にて、ルター派を容認し、プロテスタント諸侯の存在を認めたが、スペイン王フェリペ二世は宗教和議を認めていない。ドイツ北部、西部のプロテスタント諸侯はハプスブルク帝国郵便との連結を断つ事になる。

さらに、スペイン王国は1557年、1565年の二度にわたり国家破産を繰り返している。郵便局長は年100フローリンの報酬が受け取れなくなり、郵便網が機能麻痺状態に陥った。

帝国諸侯だけでなく、商人達が都市共同事業により都市飛脚制度を整備していく事になる。

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<ルドルフ二世>

以下は、Wikipediaの「ルドルフ2世 (神聖ローマ皇帝)」の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%952%E4%B8%96_(%E7%A5%9E%E8%81%96%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%9E%E7%9A%87%E5%B8%9D)

ルドルフ二世は、郵便の国家独占の理論的裏付けを主張した。1597年に郵便事業は国王大権(国王に属した特権的収入源)に属するとしたが、分裂国家であるドイツで郵便を皇帝政府が独占する事は無理だった。

帝国郵便と領邦郵便の妥協と連結が進み、輸送量が増えた事で助成金無しでも事業維持が可能になっていく。

フランスにおいては1654年に郵便制度が王の直属となる。同時期のフランスでは、傭兵隊長の軍編制権を国王が奪取し、30万人の常備軍が確立している。1676年には郵便事業の賃貸契約システムが始まり、王政府が請負業者に郵便を任せるようになった。

英国では、1591年にエリザベス一世が郵便の国王大権を宣言。チャールズ一世の時代から公的郵便制度が機能し始めたとする。清教徒革命後の1657年には護国卿クロムウェルが郵便の国家独占令を公布している。
1680年にはロンドン市内に一ペニーで手紙を配達する「ペニー郵便」が民間により登場するが、1685年には国営化され、ロンドン郵便となる。

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<新聞>
新聞は郵便インフラを起源とする。

不特定多数の人間に情報を売るという意味での手書き「新聞」は、1480年頃からあったとされる。「新聞」の定期性は、1560年代のドイツ、イタリア、スペイン、ネーデルラントを巡る主要郵便コース整備と時を同じくして確立される。

1605年には、フランスのシュトラースブルクの印刷業者 ヨハン・カルロスにより世界初の活版印刷の定期郵便「報告」が発刊された。手書きから活版印刷に切り替わった事で、新聞情報の威厳性が増し、普遍性や公共性を帯びたとする。

ドイツでは、中央郵便局による新聞発行が行われ、ドイツ三十年戦争による情報需要増大により多くの新聞が創刊されたらしい。

17世紀のドイツでは、約200の新聞と60の印刷所があり、読者は20万人~25万人とされる。帝国政府は新聞検閲を行い、世論が形成されていく。

********************

情報量増大により、18世紀欧州には「手紙の世紀」が到来したとする。

ドイツ三十年戦争の終結時に締結されたウエストファリア条約では、国家主権が明記された。欧州が一つの正義を奉じるべきとする普遍主義では、カトリック普遍主義とプロテスタント普遍主義による戦争が終わらない。

帝国化するのでなく、分配システムが構築される。多数の正義、秩序の併存。

戦争も普遍主義から離れ、国家と国家の戦争に限定され、殲滅戦から限定戦に変質する。欧州世界「帝国」の代わりに、「経済システム」が全世界へと拡大していく。

欧州の総人口は、1600年の9500万人、1700年の1億3000万人、18世紀末の1億8800万人と増加し、増加分の大半が都市住民として郵便の利用者となった。

17世紀後半からの郵便事業は上納金を国庫に納める事が可能になる。事業化された郵便システムは経費節減のために最短コースを使用する必要があり、郵便契約によって国境が克服されていく事になる。

****************

活版印刷だけでは急激な社会変化は引き起こせない。郵便によって文書が拡散し、市場等で読み上げられた事で変化が発生したとする。

蓄積メディアと伝達メディアの複合。

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体調が良くない

自分の考える力や行動する力が衰えているように感じる。

そのためか、心配事が減っている気がする。

将来の事は考えても仕方がないし、発生した時に考えれば良い。

対策を取る事が出来ない事が多い。

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現在の自分

今日も疲れている。

易で、「現在の自分」を占ってみた。

蒙卦の五陰と出た。

無知な幼児。高い地位にありながら恭しい態度で教えを乞う。それ故に吉。

現在の自分は気が高ぶっているので、占ったような状態ではないと思う。

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「暴力と聖なるもの」を読んでいる他

「暴力と聖なるもの」(ルネ・ジラール著)を読んでいる。

社会を安定させる心理的機構について?読み終わるには、かなり時間が必要だと思う。

以下、色々と書く。

①確定申告に関する愚痴
e-taxにて、確定申告をしようとしたところ、手持ちのICカードリーダライタがWindows10に対応していないため、新しいICカードリーダライタを買う事になった。
さらに、確定申告の場面にて、使用するブラウザがMicrosoft Edgeでは、送信時に送信ボタンが表示されない事を発見。Internet Explorerでなくてはいけない。使用するブラウザが間違っているというエラー表示がないから間違いに気付き難い。使用しているブラウザが規定のものと異なっている場合、そのようにエラー表示させるべきじゃないかな?

②ポンド
以下は、インターネットの記事からのコピペ。

英国の通貨ポンドが大幅に下落している。英ポンド/米ドルは1.40ドル台を下回っている。2009年3月以来のレベルであり、2010年にキャメロン首相が就任して以来の水準である。

英ポンド/米ドルは、少なくとも1991年以降では終値ベースで1.40ドルを下回った事は無い(取引時間中ならばある)?

ポンド下落の発端は、現職ロンドン市長のボリス・ジョンソン氏が英国のEU離脱を支持した事にあるらしい。EU離脱の可能性が高まった事を材料にした下落。

ポンドとFTSE100種の変動率を予想するインプライド・ボラティリティでは、EU離脱を決める国民投票日(2016年6月22日)の1カ月後と2カ月後に期限を迎えるオプション取引のインプライド・ボラティリティは、その他の期日を設定している取引に比べて遥かに高い。変動率3.5%~6%で、過去1年間の1日の平均変動率と比較して、3倍~5倍になる。

期間6カ月のユーロ/ポンドのオプションでは、ユーロに対してポンドを売る意欲が2011年末以来の最高水準まで高まっている。これは2014年にスコットランドの英国独立をめぐる投票が行われた時点をも上回る。

(*)ボリス・ジョンソン
ロンドン市長。オックスフォード大学卒業後に、世界最古の日刊紙である英タイムズ紙に就職し、政治記者を経て、2008年からロンドン市長となる。2016年5月にロンドン市長としての任期が切れるが、次期首相候補最右翼であるらしい。

⇒ポンドは大幅に割安になっている可能性がある

③チェス
少しだけチェスに興味がある。ユーラシア大陸の歴史では、ギリシャ、インド、中国が文化的起源の発信地として、相互に影響を与えていたという説があるらしい。

チェスの戦略や哲学から、古代の歴史的背景を考える事が出来るかもしれない。

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何だか疲れた

週末まで3日ある。

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未だに考えている事

以下、未だに考えている事。

知能検査で高得点を出す or 試験で高得点を取る能力
         ↓
学習能力が高いと判断される
         ↓
少ない要素数で判断する能力?
         ↓
因果関係の物語を作る能力が高い

***************

学習能力が高いと判断される事は、簡単に考える能力が高い事であるとしてみる。

簡単なイメージやモデルを構築する。

そうした人間が何かを知ろうとする場合、実際には既知の事象を確認しているに過ぎない事があるとする。

自らが構築したモデルを修正困難であるとしたら、認識出来る失敗は自分の無知に起因するのでなく、周囲にあると判断されるはず。

簡単に考える能力が高い場合、「複雑」を認識出来ない。背景は修正不可能、若しくは不可知の事とされる。

すると、最も簡単に操作可能と思える事象への操作欲求が増す?

その理由付けとして創造される物語は、簡単であるが故に多くの人間の共感を呼ぶのではないか?

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ウニいくら丼を食べた

お昼にウニいくら丼を食べた。

何だか平和な気分だけれど、それも今日が最後だ。

構造について様々な事を考えている。

この一週間で考えた事は、人間の思考や行動を規定する「構造」が①人間の脳機構に由来する構造②帰属する社会に由来する構造の2種類ある可能性だと思う。

文化には地理的要因も含まれ、その相乗効果によって人間の行動が規定されるなら、人間は理解出来る事になる。

考える事にしても、行動する事にしても確かにパターンは存在すると思う。

それは個人にも当て嵌まるし、創作物や社会にも存在する。

人間が自らの内部を認識出来ないのなら、「人間」を理解するのは、人間ではない別の知性体であるのかもしれない。

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図解雑学 ポスト構造主義

読んだ本の感想。

小野功生監修。2006年1月3日発行。



第1部 ポスト構造主義の背景
構造主義とポスト構造主義の関わりの概略と、近代を批判する思想の系譜。

第1章 ポスト構造主義とは?
ポスト構造主義は、構造主義の後としているだけなので、それだけでは内容は不明。単独のキーワードではポスト構造主義を表現出来ず、現実の複雑に対応しているとも言える。幾つかの思想を大雑把に一纏めにした名前?

1960年代に流行した構造主義を引き継ぎ、近代を批判する思想として1970年代に流行したとする。

構造主義では、「近代」を科学的な観点から不変の構造を見い出そうとしたが、ポスト構造主義では歴史意識が強く、歴史に無関係な真理を対象にしない。

第2章 現代思想としての条件
19世紀後半に現れた近代批判が理解されたのは、20世紀の世界大戦によって進歩に対する懐疑が発生してからとする。

認識論:
近代哲学の課題。自律した確固たる「人間」の正しい認識が如何にして可能であるかを問う。

存在論:
ハイデガー等。存在の意味を解明しようとする。

<現象学>
現象とは、人間の意識にとっての世界の現れである。人間の認識は先入観に染まっているが、印象に囚われずに本質を知ろうとする。フッサールは、後期において人間が介入する事によって事物の本質を決定出来るとした?弟子のハイデガーは、人間との関係で事物が「ある」の性質を変えるとして、自分が何者であるか分からないまま現実にある人間観を提唱?

**********

マルクス主義は歴史法則を信じるが、マルクス自体の思想は偶然が人間にとっての自然とする。自然と現実の在り方であり、人間は自然によって決まる自然物とする。

ニーチェは生物の目的を生きる事自体として、そのために混沌とした世界の現状を自らの図式に当て嵌めなくてはならず、世界と対話しながら自分と世界を作り変えるとした。図式化とは、世界をそのまま認識するのでなく、必要な条件のみを認識する事であり、理性は認識のためでなく、図式化のために必要とした。

しかし、西洋の歴史は自らの外部に理想と世界を作り、生きる現実と関係の無い道徳で自らを縛っているため、人間が生きる事に疲れたとしている?

第3章 構造主義の衝撃
構造主義は近代を批判した。近代は、西洋を基準に全世界を観測し、他の文明を劣位としたが、構造主義は未開の観点から西洋を批判した。文化は独自の秩序を持っており、その内側にいると全体像が見えない。

西洋が進歩しているという思い上がりへの批判?

<バタイユ>
前近代的な社会の仕組みについて考察し、無駄な消費を社会的に強制する仕組みについて明らかにした。自然から逸脱した人間は生きるのに不要な物を貯め込み、それを一度に消費する事を繰り返すとする。これは、普段は不要な服を着込み、裸になった時のエロティシズムを作り出す人間の性の在り方と同じ仕組みであるとする。

人間は帰属する文化によって規定されており、個人による思考が人間本来の思考とは限らないとする。思考とは意味を持つ記号の運動であるが、記号が自らの法則を持ち、自力で動くため、自分で考えていると勘違いしている。

第2部 ポスト構造主義の登場
構造主義の不足店。とポスト構造主義の思想内容。

第4章 構造主義の彼方へ
構造主義は、現実の多様性より共通性に注目する。人間は言語によって混沌とした現実を再定義し、安定した人為的世界を構築している。現実と直に接しているのでなく、言語や文化によって構築された人工的世界。

構造主義では、不変のパターン = 構造の存在を前提にしているため、変化する現実を説明出来ない。

構造主義では数学の理論が重要な役割を果たしており、数学は原理をモデル化する学問であるから、現実を単純化するもので、多様性や変化を拒否するのかもしれない。

⇒構造は、異なって認識される多くの社会の根底にある不変なものとして想定されており、それでは多様性や変化を捉えきれない

人間が文化によって規定されているのなら、それに向き合うのは政治(人間社会における闘争であり変化の要因?)であり、構造主義が背を向けた政治や実践に取り組む事がポスト構造主義の課題である?

第5章 ポスト構造主義の思想(1)
構造主義による批判が政治参加に積極的だったサルトルに向けられた事により、構造主義には積極的な政治参加に冷淡であるという印象があった?

不変の構造を想定する構造主義は、現実を眺めるだけという態度に結び付き易い。現実には、個人の意識に上る事の無い不可視の仕組みが変化を引き起こす可能性を想定するが、そのように世間に思われる事は困難だった。

進歩への幻想とは別に、近代主義で失われた未開に対するロマン主義的心情。

<ロマン主義>
現実世界が無味乾燥であるため、現実から遠いものへの志向が強い。遥かな過去や異世界を求める心情がロマン主義である。現実とは異なる事が重要で、現実から逆規定された夢想である。過去の美化はこうした心情の産物とする。

*******************

課題に対処するため、アルチュセールは、現実は複数の要因が複雑に関係しているとし、それぞれの要因が独自の構造を持っているとした。一つの原因や目的を見い出す事は不可能とする。

弟子のフーコーは、複雑な現実を捉えるには、目前の細部に丁寧に付き合うべきとする。これはアルチュセールのマルクス読解方法(徴候的読解)であり、マルクスの著作が読み難いのは、複雑な現実を単純化しなかった証拠とする。

⇒認識においては、知っている事は簡単に知覚可能であり、人間を安心させるが、それは既に知っている事を確認するための儀式でしかない。徴候的読解では、知らない事を読み取る事を目的とし、構造主義やポスト構造主義は世界を丁寧に読む方法であるとする

フーコーにおいては、現代の視点から過去の歴史を眺めている限り、分かり易い事象しか知る事が出来ないとする?フーコーは、過去の言葉遣いの些細な癖等に注目し、現代人が馴染んでいる思想は200年程度の歴史しかないとした?

⇒従来の単純化された歴史観から離れ、細部に注目

人間の日常生活を構成する些細な人間関係こそが権力であり、些細な関係が積み重なる事で秩序が保たれるとする。人間の日常生活は政治である。

第6章 ポスト構造主義の思想(2)
ポスト構造主義という分類は、米国の文芸批評の場で用いられ始めたとする。フランスや哲学には囚われない観点。

<形而上学:メタフィジカ>
アリストテレス以来の用語で哲学の中心的課題。現実は現実を超えた何かに規定されているという思想であり、肉体的感覚によって知られる世界は影に過ぎず、理性によって知られる真の世界が重要とする。

形而上学は支配の正当性を語っており、形而上学批判は支配に対する批判的検討を意味する。哲学的原理が世界を支配するという思想は現代にも生き残っている。

**************

デリダの「脱構築」では、書き手の意図(形而上学)を無視し、読み手の側から意味を構築するべきとする。解釈学的循環を読解の障害とせずに積極的に利用すべきとする。

解釈学的循環:
あらゆるテクストにおいて、部分の意味は全体の中で決定されるため、全体の意味を知らなくてはならない。しかし、全体の意味は部分の理解を積み重ねなくては知る事が出来ない(例:全体が「磯野家」、部分が「サザエとカツオ」では、全体の意味と部分が揃わないと解釈学的循環に陥る)。

形而上学には、存在論という主題があり、事物が永遠に変化しない在り方を示す。変化を虚しいものとして永遠の真理を目指す事が西欧哲学の伝統である。ニーチェは、存在論は変化し続ける生命には相応しくないとして古代ギリシアのヘラクレイトス等の思想を参考にした自然哲学を提唱したとする?

自然哲学は、生きた世界という世界観を唱え、形而上学による存在に支配された変化しない世界へのアンチテーゼとする?歴史の進歩という概念は、一方向への変化しか想定しないため、多種多様な変化を捉えられず、人間性の本質という思想は様々な生き方を否定するとする。

<ガタリ>
反精神医学運動の後継者。人間を特定の枠に当て嵌めるべきでないとする。医学の観点で患者を病気と分類する事で、病気という社会現象が作り出されていると批判。

<ネグリ>
全体を見通す立場からの大きな変革でなく、個々の現場での都度の多様な在り方を肯定。現代の社会秩序は、支配される側が自発的に支配に協力する仕組み = 帝国であるとする。

<ベルクソン>
カントの認識論を批判。カントは、人間が世界を理解するための条件を時間と空間という数量的形式としたが、時間的経験は数量化出来ない。数量化とは、全体を外部から眺めた比較で、経験した時間経験の直接性が失われている。
生物には、自らを変化させて新場面を作り出す力があるとして、その創造性が進化の原動力とした。

第7章 ポスト構造主義の多様性
ジラール、リオタール、ボードリヤール、クリストヴァ等の紹介。

構造主義は、不変の構造を想定するために、以下の問題があったとする。

・理念を通じて現実を見る近代哲学の観念論的発想
・変化を抑え込む政治的効果

構造とは合理性(理性による認識)の現代的解釈であり、世界が合理的に構築されている前提がある。

科学も形而上学的に世界を合理的なものと見做す試みであり、流動的現実を外部から固定している。科学は近代特有の自然観に基づいている。世界の現実と人間の認識が一致する事が科学の前提であり、ポスト構造主義により批判されている?

第3部 ポスト構造主義の展開
ポスト構造主義は、歴史に参加するという態度の思想である。

歴史を闘争の現場と認識し、歴史は目標に向かって進むのでなく、闘争の渦巻く方向性の定まらない現実とする。

理論と実践を区別せず、何かを言語化すること自体が現実を作る実践の一つとする。理論と実践の区別は、現実を変化させない誤魔化しである?

同様に、日常と非日常という区分けも誤魔化しであり、個人的な事を日常の中に閉じ込めている事が政治的仕組みとする。個人の世界と政治の世界という区分けが、政治的な問題を個人の領域に押し込めて問題を隠蔽しているとする。

第8章 男性と女性 : フェミニズム
性別は、自然現象ではなく人為的制度とする。

男と女の利害が対立しないように、日常的な男女関係が自然であるように制度化されている。男は○○である、女は◆◆であるというステレオタイプは社会に根付いており、生物学的特徴として認識されている。

社会の認識が「男」、「女」を作り出しているという見方は構築主義と呼ばれる。

歴史的には、男が文化を象徴し(遠く、高く、地面 = 自然から離れていく)、女が自然を象徴したとする(身近な日常)。文化が自然の上にあるという理解や、理性が感情を制御するという価値観。

その最大の理由は、人間のとっての最大の自然である出産が女にしか出来ない事にあるとする。出産によって人間は自然物であると明確に示される。人工的な社会関係の中で人間は誕生するため、人間になる前のヒトと関わる事が文化以前の自然として区別される理由?

古代ギリシアでは昼の秩序の世界を男が支配し、夜の闇の世界は女が支配した?歴史的には、文化的秩序が自然を支配する方向で進んだとされる。

第9章 西洋近代と国家
近代になって、世界は西洋を中心に編成されたとする。

東洋は、西洋による造語であり、多様な地域を一つの用語で纏めている。さらに西洋からの一方的な印象が押し付けられたとする。

サバルタン:
自分の立場を語れないほどに従属的立場に置かれた人々。スピヴァク等の著書。従属的立場が固定すると、従属者でもそうした役割を受容するようになる。自分の言葉を失い、自分から見ても自分が他者になってしまう。

****************

一つの文化とは、国家によって作り出されたように思えてしまい、国家があるから文化があるように思えてしまう。国家内の一部の人間が行っている文化でも、全ての人間が行っているように思える = 差異の消滅。

民族とは、同じ文化を共有する人間集団であるが、そのような集団は近代国家が整備されるに従って多様な人々が均質化されて認識されるようになっただけとする。

一つの文化と思われているのは、多様な文化の闘争の場であり、一方が他方を飲み込もうとする統一と、統一から逃れようとする動きの場とする。

人類学者 ピエール・クラストルは、南米原住民の社会研究を通じて、統一国家を作らない社会は集団の多様性を維持する知恵があったとする(国家に抗する社会)。

第10章 ポスト構造主義批判
ポスト構造主義は一つに固定にし難い多方向な思想である。今後、完成されるかどうかも分からない。そして、安易に近代を否定し過ぎているという批判がある。

<ソーカル事件>
1996年に、米国の物理学者 ソーカルが、ポスト・モダンと呼ばれる思想家達の著作を適当に引用し、不適切な数式を散りばめたパロディ論文を学術誌に投稿したところ、掲載された。

⇒思想書が言葉遊びをしている可能性

近代的思想には、人間が世界を統一的に理解出来るという自信があり、暴力性の克服を思想的課題とした。合理的思考への批判は、理性自体が多様性を切り捨てる暴力であるという認識がある。多様な現実は比喩的にしか理解出来ないが、近代科学は数学によって世界を一つの視点から把握する。ポスト構造主義の課題として、唯一解を押し付ける暴力性に代わって比喩の多様性を復権させる。

<ハーバーマス>
近代は未完のプロジェクトとする。近代は理性的に生きる事に価値が置かれたが、それは未だに実現していない。批判する前に近代を実現しなくてはならない。

各人の理性によって様々な現象を統一して把握する方式だと、様々な主観性を持った個人の認識が合わない。合理的で公共性のある社会空間を作り、個々の主観に頼らずに合意によって合理性を形成すべき?

*******************

フランスでは、フランス革命による理性の支配により、多様性が弾圧されたため、フーコーやデリダは理性を暴力的としたが、ドイツでは前近代が侵入する形でナチズムが到来したため、ハーバーマスは近代を未完のプロジェクトとする?

構造主義が近代以前へのノスタルジーを感じさせたのに対し、ポスト構造主義では近代後にしか向かわないという歴史意識が明確になっている。この歴史意識は近代思想と共通かもしれない。

ポスト構造主義の今後の展開として以下を予想している。

・伝統的共同体思考には回帰しない
・近代思想により、近代以降の思想的展開の
 可能性を探る
・思想として完成を目指さず、不定形の思考となる
・現実の変化に楽天的になる

多方向に拡散するポスト構造主義では、中心となる一部の人間が方向性を全て決定して、他が従うという社会モデルは採用出来ない。全て個々の現場で考えなくてはならない。

第11章 日本のポスト構造主義
国内の権力維持のためには、古代から外国という超越性が必要だったとする。外国の権威を自らの権威とする。

*************

モダン・デザインを機能重視の芸術とすると、ポスト・モダンでは芸術の多様性を復活させた。ポスト・モダンはモダンが最高度に達成された事で可能になり、20世紀後半の日本は条件に当て嵌まったとする。

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勉強会に参加

本日、勉強会に参加した。

考えている事が未だに纏まっていない。

集団と個人の関係について。

抽象的に考えると、優れた個人が集団を指導する事に無理があるように思える。しかし、具体的事例で考えると、指導者の力量が集団の成果に関係しているように感じられる。

組織に帰属していると、自分が組織を変える事は不可能であると思える。

現在の体制がどのように終わるのかは誰にも予想が出来ない。

***************

年金資産を株式投資する事について様々な意見があった。

もしも、絶対的な権力があった場合、国に年金の運用などやらせないという人がいた。効率の悪い運用形式になるしかないらしい。

僕は年金を株式で運用する事には賛成だけれど、もっと良い運用方法があると思っている。

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図解雑学 構造主義

読んだ本の感想。

小野功生監修。2004年10月6日発行。



第1章 構造主義の登場
構造主義を巡る議論は、レヴィ=ストロースが1962年に出版された『野生の思考』でサルトルを批判した事から始まった。

野生の思考:
文化人類学の研究所で、未開人の思考と文明人の思考を「構造主義」によって対比した。

<サルトル>
人間の自由と主体性を重んじる実存主義を提唱。各人の意見が対立する中で、新しい意見に到達する「弁証法」によって歴史が進歩するとした。

<レヴィ=ストロース>
人間は、不可視の思考的枠組み = 構造によって規定されるとした。主体性を持った人間というサルトルの意見への批判。

レヴィ=ストロースは、未開人と呼ばれた人々の社会を研究し、未開人が昔からの習慣を無批判に受容しているとした。歴史の中で変化し続ける文明を「熱い社会」とすると、未開人の文明は変化を拒む「冷たい社会」とする。

⇒未開人の社会は、個人ではなく社会全体として熱くなる事を拒んでおり、そうした社会全体の考えを「構造」とする物事を考える時のパターン。

構造は、複数を認識した時に共通のパターンを見つけた時に発見出来る。置き換えを変換と呼ぶ。例えば、種族Aが自分達の先祖を梟と主張し、種族Bが自分達の先祖を鼠とすると、「自らの先祖が動物である」 = トーテミズムというパターンを発見出来る。

レヴィ=ストロースは、人間社会を交換する社会と定義する。

・「もの」の交換:経済活動
・言葉の交換:意思疎通
・女性の交換:結婚制度

未開人の神話的思考は、思考に抽象的な言葉を用いず、具体物を使用して成り立つ。「愛」や「憎悪」のような抽象的な言葉を用いると能率は良いが一つの意味しか考えられない。具体物を使用する思考は能率が悪いが場面の中で具体的に考える事が出来る。

⇒文明人の独善への批判。

自由な個人が集まって社会を作り、人間の力で進歩するのでなく、個人の思考、行動は社会の中で決定され、社会の根底には同じ構造があるとする。

第2章 主体性の系譜
構造主義が批判する「人間」とは、近代文明が定義する人間であり、進歩する人間という概念を批判した。

<実存主義>
主体性の哲学。本質(○○である)と実存(◆◆がある)を分け、人間にとっては実存が本質に先立ち、「である事」よりも、「ある事」が先とした。勇敢な人間が勇敢「である事」は、その人自身が決めた事であり、自分自身を本質を決定出来るとする。

子供の立場から見た人間観であり、親は子供が生まれる前から自分の子供「である事」を期待するが、子供の側では知らない。現実に生まれてから、自分「がある事」を理解して、自分の本質を決める。実存主義は、親の立場からは客観性に欠けるため、社会の現実を客観的に考える哲学と結び付く必要がある。

<マルクス主義>
自然界に自然法則があるように、人間社会にも客観的法則があるとする。歴史は法則に従って進歩し、個人の力では変えられない。

<西欧マルクス主義>
ソヴィエト連邦が歴史法則の名の下に個人の自由を圧殺している事から、人間の主体性と自由を重視。人間が主体的に歴史を作るとする。

サルトルは、実存主義の客観性欠如を埋めるためにマルクス主義に歩み寄る。『弁証法的理性批判』では、マルクス主義の弁証法を受容し、歴史の意味は人間の理性によって決まり、理性は個人のものとであると同時に、歴史を推し進める弁証法的なものとした。マルクス主義を実存主義と結びつけ、人間中心の思想に読み替えた。

実存主義と構造主義が、フランス革命を起こしたフランスで生まれた事には意味がある?理性を武器に歴史を切り開く人間という思想が強かったからこそ、その系譜を受け継ぐ実存主義と、批判する構造主義が生まれたのかもしれない。

第3章 近代哲学の発展
人間中心主義の背景には、産業革命による生産力向上と資本主義経済による売買を個人が決定する経済システム成立があるとする。王族が独占していた富が普及し、人間には物事を決める能力があるという思想 = 啓蒙主義が広まった。

啓蒙主義:
全ての人間には理性があり、正しく教育すれば理性的に考えるようになるとする。人間には理性を使って生きる権利があり、理性がある点で人間は平等と考える。

中世までの欧州では、人間は神に支配されていたが、近代以降は、人間は自由であり神から独立しなくてはならないという人間中心の世界観が出来上がった。

<カント>
啓蒙主義を哲学的に完成させる。批判哲学とされ、人間理性に可能な事を定義した。世界と現象(人間が経験出来る範囲の世界)を区別し、現象が学問の対象とする。

死後の世界は死なないと分からない。しかし、生きて経験出来る事ならば正しく認識出来るはず。人間にとっての世界という理性の限界を示し、同時にその範囲内での理性の正当性を保証した。

理性によって正しく知る目的は、正しく生きる事である。理性の力で考え、自らに責任を持つ人間観。そして、人間が生きる目的のためには理性を超えた道徳的判断が必要であり、道徳のような理性的には分からない事を分かった事にするために、死後の天国や地獄の存在を認める事が好都合とする。これを要請と呼ぶ。死後の天国や地獄の実在を道徳のために要請する。

<ドイツ観念論>
理性と実践の橋渡しを課題にする。カントの哲学では、理性的認識と生きるために要請される事は別になってしまう。生きる事の実践に繋がる理性。

・フィヒテ
理性がありのままの世界を作り替える事を強調。

・シェリング
人間理性の彼方にある自然の力を強調。

・ヘーゲル
人間全体の理性が歴史を動かすとする。理性自身の運動を弁証法として、対話によって異なる意見を統一する意見が作り出され、徐々に全ての意見を総合した結論に辿り着くと考える。歴史はその過程とする。

カントは現実を「見る」哲学であるが、ヘーゲルは現実を「作る」哲学である。理性が実現していく過程を歴史と捉え、個人は理性の持主でなく、社会全体の理性の道具と言える。

サルトルは、カント(自らを吟味する人間理性)とヘーゲル(個人を超えた弁証法的理性)を統合し、理性的で自ら歴史を作る人間の在り方を提唱したが、レヴィ=ストロースの構造主義による批判が行われたとする。

第4章 近代哲学の彼方
ドイツ観念論に対する批判は、19世紀当時から存在した。

<ショーペンハウエル>
カントと同様に、理性で分かる現象の世界と意志の世界を区別。カントは意志を道徳的に生きようとする人間の崇高さとしたが、意志を生命への衝動とした。理性ではなく生存への欲求に支えられた?貪欲な意志によって生きるとする。ドイツ観念論の主流にはならなかったがニーチェに影響を与えた。

<フォイエルバッハ>
ヘーゲル哲学を継承。ヘーゲル哲学の本質を神学(人間の全てが神に起因していると考える思考パターン)の哲学化だと考える。歴史が人類全体の理性を実現していく過程という思想は、ユダヤ・キリスト教に由来し、神の意志が実現していく過程が歴史と捉える思想と似ている。

歴史の終点では、人間が神になる。個人では無力でも人類全体では全知全能であり、個人の無力故に偉大を外部に見出したものが神と考える。

<マルクス>
歴史を重視し、人間性は社会が変化する度に変化してきたとする。人間という理念の虚構性。

<ニーチェ>
ショーペンハウエルが否定的に認識した生命への意志を肯定的に評価。人間は自然の存在であり、自然に従う事が当然。近代では、生命への意志ではなく、理念を目標に掲げて目標に引っ張って貰う事で生きようとするが、理念が空しいものと気付く事によって生きる事が重荷になってしまう。生命の力に目覚めるべきとする。

<フロイト>
一人の人間を集団のように解釈する。個人の中には多くの意見があり、衝突しながら纏まるのが意識である。自分は○○であると考え、相応しく行動する事が主体性であるが、実際には自分が知らない多くの意見の結果として個人の行動は決まる。自分自身の主人であるべきというカントの思想を拒否し、自分の行動の意味は分からず、決定も出来ないとする。

<ダーウィン>
進化論の思想では、全ての生物は連続している事になる。理性の有る人間と、理性の無い動物の区別という前提を覆す。新しい人間観の誕生。

*****************

構造主義では、人間を理性的で道徳的な主体とする思想を批判した。それは人間を自然と認識する事である。カントやヘーゲルは「人間はどうあるか」を提示したが、構造主義は「人間の事実」を考える。

自然とは、人為の対義で人間の意図を超えた物事の全体である。

第5章 構造主義前史
構造とは、物事の仕組みである。全体でも部分でもない部分同士の関係が最初にあるとする。例えば、会社組織では役職や階級が最初に決まっていて、その中に個人が入る。

・全体論(全体を分割して部分が出来た)
・要素論(部分が集まり全体になった)
・構造論(部分同士の関係が先にあった)

これは数学の思考に基づいており、以下のような式を前提にする。

Y = 1000 - X

上記の式は、YとXの関係を示しただけであり、具体的な数値は決まっていない。物事の関係を物事自体とは別に考える。具体的な物事に先立つ関係。

<ソシュール>
共時言語学。言語とは、パロール(人間が語る個々の発言)と、ラング(発言を可能にする規則体系)の複合とした。ラングはパロールのように実在しないが、個々の言葉を規定する。数学の構造と似た思想。

言語とは差異の体系であり、言葉が差異によって「もの」を作り出す。犬であるとは狼でないという事であり、そうした相違を差異とする。犬と狼の他に山犬という言葉を作ると、差異が増加する。言葉によって世界は分けられている。

**************

フランスでは、構造主義以前から未開社会研究が盛んであり、社会での決め事は社会的事実として自然法則のように個人を束縛するとした。こうした思想は構造主義に影響を与えており、また、交換の重要性という思想も影響を与えた。贈り物にはお返しをしなくてはならない。

レヴィ=ストロースは、構造主義は以下の3つからの影響されたとする。

・地質学
・マルクス主義
・精神分析

上記の3つの共通点は、表面から認識出来ない深層に決定要因があるという思想である。さらに、言語学の差異の体系に影響を受けた?個々の発言は、多くの差異の中から適切な語句を選択する事で成立する。そのためには選択肢が同時に提供されなくてはならない。つまり差異には時間的変化が無いという事であり、この時間制を無視する方法論を社会全体を読む方法とした捉え直した時に構造主義という思考法が確立した。

第6章 構造主義の展開
以下は、構造主義の特徴。

①構造
社会の深層には変化しない構造がある。近代哲学では、歴史の進歩を信じる。

②規定
人間は深層構造によって規定される。近代哲学は、人間の主体性を強調する。

③言葉
世界は言葉によって作り出された文化的形成物とする。近代哲学では、人間が世界にどのように関わるかを考える。

④差異
「もの」は言語という差異の体系によって生み出されたと考える。近代哲学では、「もの」はそれ自体として存在する。

上記の内、歴史の進歩と主体性を否定した事が問題になった。人間の努力や責任を否定するという理屈だが、構造主義は「人間」という理念を否定しただけである。

<フーコー>
過去の社会は異文化であり、人間の思想は特定の時代の権力によって作り出されたものとする。各時代の思想の特徴をエピステーメーと呼ぶ。近代的な人間理念を生み出したモデルとして、刑務所で囚人を監視する塔 = パノプティコンを例とする。囚人からは、自分が監視されているかどうか分からないが、その可能性があるだけで緊張し、自らを監視してしまう。

同じように権力に支配される人々は存在しても、権力者は必要無い仕組みが現出している。自分で自分を律する人間という仕組み。人間は、権力者の時代から次の時代への過渡期に現れた特殊な理念的存在とする。

<ロラン・バルト>
記号論。文学作品の読解という場面で権力者不在の現代社会を示す。文学作品には、全てを支配する作者は存在しないとする。作者は言語の制約を受けており、依然読んだ作品の呪縛から逃れられない。

作者は読み方を指定出来ないので、作者を離れた作品は無限の読み方が可能であり、それをテクストと呼ぶ。文学テクストを規定しているのは作者の意志でなく、作者も知らないテクストの構造とする。

人間の文化も大きなテクストであり、読解されていないメッセージが多く発せられている。会社員が真面目を示すために背広を着る等。現代文化の中にも意識されない神話的要素が潜む。

例として、P144、P166にミルトンの『失楽園』が提示されている。ミルトンは熱心なキリスト教信者だったので、宗教信念を叙事詩として謳い上げたが、作者の意図以外 = 権力によって主体が形成されていく17世紀の近代初期の時代相が読み取れるらしい。19世紀以降、神に逆らう事で自らの主体性を形成するサタンを重視する読み方が盛んになる。これは作者の意図とは合わないだろうが、近代化が進展する中で、サタンの強烈な自己意識が人々の気持ちを引き付けた?

サタンは神に逆らう事で主体となったため、神の意志が無ければ主体になれなかった事になる。サタンは主体として神の意図通りに動き、神に服従してしまったという解釈が作者の意図を離れて読み取れてしまうとする。

<ラカン>
人間が自分と思っているものは、他者によって作られた作り物とする。赤ん坊は自分という纏まりを実感する前に外界を認識し、胸像段階 = 鏡に映る自分を見る事で「自分」を理解する。自分とは鏡に映った虚像に過ぎない。

鏡像と自分が一致している状態を想像界と呼び?、やがて言語によって秩序付けられた象徴界を知る。人間は、言語によって作られた象徴界に住み、現実界(ありのままの世界)とは無縁。

<アルチュセール>
新しいマルクス解釈の提示。社会の仕組みを様々な要因が組み合わさる重層的決定とした。社会は複雑で、原因と結果を特定する事は出来ない。観測者自身も複雑の中にいるので、全体を一つの視点から見渡す事は不可能。

構造主義は、異なる社会の根底に一つの構造を見い出すが、アルチュセールは複雑を複雑のまま捉えようとする。

第7章 構造主義を超えて
構造とは、現実の単純化であり、構造の外を把握する哲学としてポスト構造主義が提唱されるようになる。

構造主義では、構造を安定した仕組みとするため、変化を説明出来ない。構造と時間の関係を説明する思想が必要になる。哲学は永遠の真理を求めてきたので、変化するものは真理ではないとする?不変の構造は古典的哲学概念であり、ポスト構造主義は生成変化を肯定する事から始まった。

<デリダ>
言語で整理しきれない部分に着目。安定している「もの」でも、自分自身との時間的ズレがあり空間的差異と時間的遅延の2つの意味を合わせた差延といおう造語で表現する。

「世界の現実は○○である」と認識した時点で現実は変化している。「もの」が安定して目前にあると見なす態度を現前の形而上学と読んだ。世界を偽りの安定で抑え込むとする。

構造主義が各要素が同時に置かれている事を前提にしている事への批判?

偽りの安定を壊すために、意味の内側に入り込んで世界の意味を書き換える事を「脱構築」と呼ぶ。構造とは、複数の要素の関係であり、対比をなしている。対比が揺らげば構造は自壊するため、脱構築は二項対立に揺さぶりをかけるとする。批判すべき価値観が正しい前提で考える事??

・グラマトロジー
書き物の学の意。
現前の形而上学は、複雑に動いている現実を一つの型にはめて理解する。自分自身の言葉 = 当人に意味が明確な言葉を聞くという言語観をモデルにするが、デリダは、既に書かれた物を読むという別のモデルを提示。他人の言葉だから解り難く、物事の意味を明晰に把握可能という姿勢を批判した。

<ドゥルーズ>
動くものを動くままに捉えようとする。近代資本主義社会は変化し続ける社会であり、資本主義は自然に触れているとする。多種多様な差異を肯定する事で統一の束縛を逃れる。文化に染まっていない幼児は人格の首尾一貫性に欠けており、精神の分裂は必ずしも不幸でないとする。

整理された思考は、本筋と枝葉を固定する(ツリー)。自在な思考(リゾーム)という複雑な地下茎のような思考を採用?自分が何者なのか考える事は自分を固定する作業であり、いつでも何者かになるように変化し続けなくてはならない。

生成変化を肯定し、自由な変化を目指す。

・器官なき身体
現実の身体だけでなく、全体の意志に服従しない自由な在り方全般を示す。身体の各部は役割によって意味付けられるが、そうした意味付けを拒否し、各部分は全体のためでなく勝手に動くとする。

・ノマドロジー
ノマドとは遊牧民の事であり、定住する農耕民が社会の仕組みを固定的と考えるのに対し、常に変化するしゃきあや人間の在り方を考える。

・欲望する機械
記憶の支配から逃れ、自由に何とでも結び付くリゾーム的、ノマド的生き方。精神が自分を支配している限り人間は主体だが、幼児のように精神の支配を受けない人間像も考えられる。

<リオタール>
近代とは誰にでも通用する普遍的な「大きな物語」が力を持った時代であり、万人に通用する普遍的なこおTばが通用しない現代をポスト・モダンと読んだ。

理性が全てを解決するという「大きな物語」が通用しない状態では、場面毎に問題解決に取り組むしかないとする。

<クリステヴァ>
間テクスト性として、テクストは他のテクストとの関係の中にしかないとした。無数のテクストが交錯して、一つの方向性が生まれる(意味生成)。

<ボードリヤール>
欲望は社会的であり、他者の承認という記号を欲しがっているとする。生活用具としての実体を失ったもの = 現実の基盤を欠いた記号をシミュラークルと呼ぶ。現代社会では、シミュラークルの交換 = 象徴交換が行われているとする。

<ジラール>
人間世界の本来の姿を相互暴力の嵐とする。秩序を生み出すために、暴力を一か所に限定し、一人に全員の暴力を向ける。一人の犠牲者によって秩序が生じ、犠牲者は秩序の原因として聖者となる。

個人の成立には他者の圧倒的な影響があり、他者を模倣して欲望を取り入れる事で人間としての纏まりを作る。

⇒構造が最初からあったのでなく、生成されたとする

⇒構造の外に渦巻く力の存在

第8章 構造主義と同時代思想
構造主義と同時代の他の思想との関わり。

近代哲学は個人の内面的理性を重視した結果、個人の心の中に閉じ籠る傾向があったので、20世紀の哲学では言語を重視する傾向があった(言語論的転回)。

言語論的転回は、英米系の哲学であり、フランス中心の構造主義とは別の系譜に属する。

<パース>
思想を人間が生きる実践との関係で考える(プラグマティズム)。言葉という記号の特徴は、単語一つでは成り立たず、一つの単語の中に多くの単語の意味が含まれるとした。ソシュールが単語同士の差異を強調したのに対し、単語の意味が協力し合っているとした(例として犬:動物、なつく、高い嗅覚、ETC)。

<ハイデガー>
存在論。世界が世界として意味を持つのは、人間ではなく言葉によるとする。西欧近代は、人間が独立した主体として外部から眺めるように世界に接するとする(世界像)。これは人間が自らの都合によって世界を作り変えようとした結果であるとして、個人を超えた言語の伝統に注目し、「もの」が人間の思惑を外れる事に着目?

人間が世界の中に住んでいる場合、個々の「もの」は人間の生活と結び付き、様々な意味を持った(例:「岩」の解釈として、これは道標であり、日除けであり、礼拝対象である)。

人間が外部から世界全体を見るようになると、「もの」は何であるか決められてしまうので一つの意味しか持たない(例:「岩」の解釈として、岩であり、岩でしかない)。

<ヴィトゲンシュタイン>
初期には科学的使用に耐える厳密な言語を打ち立てようとしたが、後には言語活動は生きる実践であるとした。言語の意味は、外側にある現実によって決まるとした。

****************

ハイデガーとヴィトゲンシュタインは、人間は言語の中でしか生きられないし、言語には人間の支配が及ばないとした。さらに、言語は完結しておらず、歴史や社会関係の中で動いている事に注目した。

言語という制度の外側に着目する事は、ポスト構造主義の先取りと言える。

人間は本来無秩序であり、物事を分類する秩序 = 文化による安定を必要としている。人間を縛る保守性が文化の本質。

ポスト構造主義は、文化の拘束から逃れる事を目指しており、それはフェミニズムの思想でもある。男女差は文化的な人工物だから変革可能とする。

<ポール・ド・マン>
イェール学派。言葉の意味は発言者の側では決められないとした。テクストから作者の意図を推測するのでなく、テクスト自体の論理を追及する。テクストの語る事は、一つの意味には決められず、作者の意図とは正反対の事も同時に語ってしまう。

<カルチュラル・スタディーズ>
先進国の文化研究。1950年代にマルクス主義の立場から英国の労働者階級の文化を研究した事に始まる。客観的に事実を知る事よりも、現状の改革を目的とした実践的態度。高級文化と低級文化を分けず、外部から眺めるように区分を無視して研究する事で束縛を逃れらるとした。

<ニュー・ヒストリシズム>
進歩という固定観念を捨てて、過去を解釈し直す文学研究。現代文化の基になった過去を研究する事で常識を解体しようとする。歴史資料と文学作品を区別せず、人間精神を読み取ろうとする。

第9章 構造主義と神学的思想
自由で理性的な人間と言う理念には、キリスト教思想の強い影響がある。キリスト教においては、神が自由で理性的な主体であり、「人間」という理念は、神の似姿である。

<シュライエルマハー>
人間中心の神学。
感情と個性ある人間像を強調。神によって生かされている人間という依存の感情を基本とし、依存感情の表明が宗教とした。近代の人間観は、カントの理性的人間像と、シュライエルマハーの個性的人間像が複合して出来たとする。

個性ある人間という人間観は、各個人に独自の価値があるという思想は民主主義とも合致した。

<キルケゴール>
人間に対して楽天的になれない神学。
自分は自分であるという事実を実存とする。人間を他ならぬ自分とする実存は、神との関係でしかあり得ないとした。誰かとの関係で自分が自分であると決められ宇が、現実社会が規格化され、個性が感じられなくなると、現実社会の外との関係が必要になる。

世界の外に存在する神を信じる事で、自分が自分である事の独自性に賭けた。

<カール・バルト>
人間中心の考えを拒否。
人間とは全く異なる神という神観を復活させた。神は人間にとって絶対他者であり、人間中心に考えるのでなく、神の側から考えるべきとした。
人間中心的な思考を批判したハイデガーと同時代人であるが、ハイデガーと異なりナチスと対決した。現実の政治を批判する視点としての世界と断絶した神の存在。

⇒構造主義に先立ち、宗教的思考からも人間中心主義への批判が生じた

<ブルトマン>
聖書から奇跡物語のような現代人が納得し難い記述を洗い落とし、現代人が信じられるように純化する。納得出来る対象を吟味するカント的人間像。

<ティリッヒ>
宗教的精神が現実化する形式が文化とした。宗教を通じて神に接続するシュライエルマハー的人間像。

******************

上記は、ドイツ語圏を中心にするプロテスタント神学であり、中世的秩序を重んじるカトリック神学と異なり近代精神を強く発揮したとする。

20世紀の近代社会を最も明確に表したのは米国であるが、米国では保守的な宗教観が強い一方で、「神の死の神学」 = 人間が神の座に就いたという考え = ヘーゲル哲学的理念があり、ヘーゲル哲学が実現した国であるのかもしれない。

こうした人間の理念の帰結が、米国で独善的歴史理解に繋がったという意見があり、構造主義にはフランスの傲慢への内部批判に止まらない可能性がある。

<レヴィナス>
人間は人格を持ち、自分以外に対して責任を感じざるを得ないとする。他者を自分が理解し尽す事が出来ないと認める事から本当に必要な倫理的態度が始まる?という問題提起?

人間を否定しても、主体としての責任までは否定出来ない。私という一人称からは逃れられないし、他者と接する時はあなたという二人称と向き合わなくてはならないとする。

第10章 科学と構造主義
科学的態度とは、世界と自分を切り離し、外部から世界を観測する事で仕組みを理解する試みである。数学によって科学の正しさは保証される。

数学による世界の解明は、古代ギリシアのピュタゴラス、プラトンに始まる。現実世界の曖昧を捨象した知性的モデルを現実の上位に置く。

しかし、現実の複雑と多様性は明らかだったため、数学は世界観の中心にはなり難かった。

プラトンの弟子であるアリストテレスは生物学を模範に哲学を考えたとされ、多種多様な現実に相応しい哲学を構築したとされる。現実の影に隠れる秩序でなく、変化する多様な現実を考える。

プラトン哲学は、ルネサンス期になってから、それまで権威だったアリストテレスに代わって王道になったとする。

欧州の中世社会では、教会秩序の崩壊によって共同体から解放された孤独な人々が生じ、自由と孤独、不安を抱え込んだ近代的人間像の原型となる。

縛りつけられていた世界から自由になった人間は、神のように世界を作っていく権利と責任があるとされ、近代科学に独特の世界を作り変えるという積極性が生じる。数学的思考と実験を特徴とした。

科学には、世界を外部から観測する人間精神を扱えないという問題があった。数学は、世界を単純に把握しようとするが、人間自身は単純化を受け付けないとしている。科学的に見られたどのような人間像よりも人間は複雑であるという考え。

こうした複雑な現実の単純化という批判は構造主義にも向けられる。ポスト構造主義は、複雑な生きた現実を捉えようとしており、科学も散逸構造論(無秩序に認識出来るものの中から秩序が生まれるとする、世界を生物と見る思想)等があり、近代初期とは変化して生きた現実を捉えようとしている?

第11章 実践的な知性に向けて
近代とは、世界の主人である人間が外部から世界を観察し、自らのために加工する時代だった。こうした人間中心の思想は科学として現れ、人間が向上するという進歩史観としても現れた。

人間を自由な主体と規定する実存主義や、歴史法則を信じるマルクス主義は、人間中心思考の20世紀的形態とする。

構造主義は、西洋中心の進歩史観への批判として登場したが、構造主義も数学的分析等の理性的思想から生じており、構造主義者が主体でなければ批判が出来ない等、構造主義自体が近代思想に属しているという矛盾がある。

現実を言語という制度で表現するには主語という枠が必要であるように、現実を人間的に把握するには主体と言う制度が必要になる。

実存主義は、伝統的価値観が崩壊した時代に、生きる意味を見い出すために指示された。第二次世界大戦のドイツ、フランス、日本等の混乱を経験した社会での流行。

構造主義は、第二次世界大戦の混乱を脱した1960年代以降の先進国において流行した。混乱の時代には0から出発しようという意欲が盛んだが、安定した時代には意欲と現実が噛み合わない。そうした状況で構造主義が受容された。

現実を変革しようという青年の思想に対抗する、現実を変えられないという大人の思想という役割。

構造主義は、現実の根底に安定したパターンを見い出すが、それは実在の「もの」でなく、理論的仮定である。多様な現実を構造という理念で統一しようとすると、複雑な解釈が不可能になるため、生成変化する変化を捉えようというポスト構造主義が登場する事になる。

従来は、歴史全体を眺める立場で考えたが、ポスト構造主義では誰も全体を眺める事が出来ず、個々の現場が重要とする。目標に向かって真っすぐ進歩するのでなく、多方向に変化する歴史となる。

構造主義は、マルクス主義的歴史館への決別という意味では共産圏崩壊を予告し、実存主義批判では、近代的人間観を否定した。構造主義は、近代以降に向けての知的革新のための地均しの役割を果たしたといえる。

近代社会は未開社会のような安定を失い、伝統のからの解放と同時に恐怖も生んだ。「人間」という理念も歴史の波への対処であるが、それは有効な解決策ではなくなり、構造主義による金田思想批判やポスト構造主義に至る諸々の思想の展開は、生きる道標を探す道程なのかもしれない。

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超ライトノベル実戦作法

読んだ本の感想。

バーバラ・アスカ、若桜木虎著。
2010年4月2日第1版第1刷発行。



以下は、「出版評論社」へのリンク。

http://bestseller.jp/

以下は、「小説家になりたい!@Web」へのリンク。

http://sakka2001.jugem.jp/

第一章 ライトノベルは書き始める前に
    勝負が決まる?

バランス良く物事を書く事を心がける。対立する概念の一方に完全に肩入れせず、調節する。

原稿を書き始める前にアイデアを練るようにしなければ、文章が上手くなっても物語作りが下手になる事がある。

以下は、その現象について書かれた本。



しかし、長く考え過ぎても良くない。どうでも良い事を延々と考えると駄作になる。考えなくてはならない事はそれほど多くない。細部の設定は書く段階でも間に合う。3日~7日で充分。

アイデア設計にかける時間を短縮するには、普段からメモを取るようにするべき。音楽を聴かないようにすると、アイデアが浮かび易いらしい。

ライトノベル作家志望氏はの作品は、どれも似通っており、新鮮な作品が少ない。縮小再生産が始まっている。他ジャンルの作品を参考にすべきかもしれない。

以下のパターンが多いとする。

冒頭にエピソードが少しあり、次に過去の回想になり、延々と舞台背景を語る。冒頭は、異能力・魔法系アクションシーンである事が多いらしい。回想シーンを延々と書く人には、設定説明強迫神経症的思い込みがあるが、設定説明は基本的には入れない。

ライトノベルでは、作者を作中に登場させてはならない。業界の決まり事を直接書く事も、読者が物語に乗る事を妨げるとする。同人誌では内輪話が好まれるが、多くの人が購買者となる物語では避けるべき。

以下は、ライトノベルの条件。

①登場人物が若い
読者は10代が対象であるため、登場人物も10代にした方が共感され易い。

②文体が若い
若人が読んでも違和感の無い文体。

③青春がテーマ
若い時にしか出来ない事がテーマになる。

書き手の年齢は作品や文章に出る。ライトノベルは、若者の妄想を詰め込んだ作品であり、大人の妄想とは異なる。10代は学校に通うため、異性と知り合う機会が多く、さらに恋愛以外の要素が発生する事が少ない。

若いとは、傲慢で根拠が無い自信を持つ時期であり、無謀な挑戦をする時期でもある。分別が無いのが若さであるなら、才能が無いからライトノベルを書こうとする人間は、ライトノベルに向いていない事になる。

自分を過剰に高く評価する人間は、自分の判断基準を持っており、若い人間は基本的に傲慢であるため、共感される作品を描く事が出来る?

第二章 人と違うものを書く方法
    ~「枠」を作れ!

人間は、自由になるほど脳が持つ傾向に沿って行動するため、自由になるほど大勢と似たような行動になるのかもしれない?

そのため、自由に考えないようにすれば、個性的なアイデアが浮かぶようになる。そのためには、自分で『枠』 = 制約を作る。

以下が枠 = 制約の作り方のコツ。

①現実にある、既存のモデルを設定する
モデルは人間でなくても良い。業界や学校でも良い。現実に存在せず、脳内だけで考えた作品の方が似た作品になり易い = 想像力の限界。インターネット検索を活用すべきで、読者の知的好奇心を満たす物語を作る。

②首都圏以外を舞台にする
誰もが自分の居住地を舞台にしたがるため、首都圏を舞台にした作品は多い。他の地を舞台にする事で差別化が出来る。

③既存の作品を真似る
ストーリーが同じでも、登場人物や舞台、時代が異なれば別作品となる。例えば時代を変更すると細部も変更しなくてはならないため、全くの別物となる。時代、登場人物の年齢、舞台、展開、ETCを変える。

人間には類推する能力しかないため、誰もが自分が読んだ作品と同じような作品を書いてしまう。入力が多い人間ほど、人と違う作品を書く事が出来る。

さらに、類推するなら現実にある突飛なものを基盤にした方が面白い。

第三章 キャラは物語の生命線
物語の面白さは、ストーリーではなく、登場人物にある。

著者は、司馬遼太郎作品の面白さを、登場人物の選び方と造形にあるとする。

登場人物の造形を分析するには、最も売れている作品を参考にし、その作品と似ていない登場人物を考える。最も売れている作品の登場人物と似ているキャラクターは、他の作家志望者も真似るはず。

登場人物を真似ると物語も似てくる。強引で積極的な変人を登場させると、受け身な人間が語り部になり、さらに……という風に物語の中身まで似てくる。

登場人物の造形が思い浮かばず、真似るしかない場合は、舞台や配役を変える。

作品を進める内に脇役の方が目立ってしまう場合があるが、主人公を目立たせるには、主人子うを何かの天才に設定し、天才性を表す挿話を物語の序盤に入れる。場面として天才性を描写すべき。

登場人物の個性は一行で描写するようなものでなく、セリフや動きを描写出来るような場面で表現する。現実の人物を参考にするのであれば、女性の友達を作った方が良い。

第四章 ライトノベルの設計
    ~アイデアを固めよう

出版される作品を書く事を目標にすると、作品を描き易くなる。制約の効果。売れるにはどうすれば良いかを考える。

タイトルが重要であり、一番最初にタイトルを考える。意味が解らないタイトルや、読み終わって初めて意味が解るタイトルは避けるべき。

良いタイトルが思い浮かばない場合、①100個考えて、他人に投票して貰う②他作品のタイトルを借りるの2つの方法がある。同じタイトルの作品は沢山ある。

タイトルの次にペンネームが大切。ペンネームは作家の顔になる。

以下は、物語の骨組み。

①ウリ
物語の最大の特徴で、読者にアピールする部分。物語の本筋と関係無い所に設定して良く、制限は無い。例として、桃太郎では、「主人公が桃から生まれた事」、「犬、猿、雉が家来である事」がウリであり、一寸法師では、「主人公が小さい事」がウリである。た作品のウリを分析してみる。

ウリが思い付かない場合は、「独自性のある私立高校」や「独自性のある部活」をウリにする。

②パターン
物語の傾向を大きく分けた分類。ジャンル(物語の内容)とは異なり、進行方法の骨子。以下の4パターンにほとんどは分類可能。
 ・成長モノ(主人公が成長)
 ・天才モノ(抜群の能力による解決)
 ・旅モノ(異境で事件に遭遇)
 ・特殊なキャラクター日常生活引っ掻き回しモノ
  (特殊な人物により、日常が非日常に)

物語の独自性は、上記①ウリで出すべきであり、パターンでを創設すべきでないとする。読者に受容されるパターンがある。

③世界観
物語の舞台。未来世界等、設定に労力が必要な舞台を安易に選択すべきでない。

④キャラクター
登場人物の性格、外見、配置は最初に決めておく。

⑤テーマ
物語の主題。「正義は勝つ」や「愛は何より尊い」等。雰囲気づけのためにであり、適当に決めて良い。

挫折、友情、努力、犠牲、勝利等の泣ける要素は最高の娯楽とする。主人公を冒頭で挫折させたり、大事にしているものが犠牲になったりする。犠牲無しの感動は難しい。

100字プロット:
物語の内容を100字で表したもの。傑作やベストセラーは一字で説明出来るものばかり。単純な骨組みとなる物語の設計ほど困難。以下の6点を各。
 ・タイトル
 ・ウリ
 ・パターン
 ・世界観
 ・キャラクター
 ・テーマ







第五章 おわりに
    ~楽しくライトノベルを書こう!

以下は、「何となく書けない」への対処法が書かれた本。



以下の要因。

①情報過多
知識を得る事に夢中になっていて、活かす方向へ意識が向いていない。

②ネガティブなフィルター装置
ネガティブな考え方。

③フォローアップの欠如
習慣を打破する「変わりたい」という意思をフォローする仕組みが無い。

数少ない事を繰り返し実行するべき。著者は、基本として文章の丸写しを推奨する。文章修行の基本は、書き写す事。

習慣にするには、楽しむ事と、①決まった時間にやる②少しずつやる③続くように自分をフォローする事が大切。フォローするには、自分でグラフを作って達成感をかんじるのも良いし、自分に御褒美をあげる仕組みを作っても良い。

意気込みが強過ぎても良くないので、少しずつ継続する。

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熊から王へ

読んだ本の感想。

中沢新一著。2002年6月10日 第一刷発行。



神話的思考から考える「国家」の誕生。

自然と文化との対称性を作り出していた神話的思考の変化により、共同体の上の「国家」が生じたとする。

野生の思考 = 象徴表現を組み合わせて思考する
宗教的思考 = 超越的存在への注目

<現代の性質>
現代を規定している「科学」は原始的野生に基づいている?新石器革命時に人類が獲得した知的能力の中に、近代科学が駆使した思考様式はすべて用意されている。

かつて宗教?が齎した形而上革命は、新石器革命的文明の大規模な否定や抑圧の上に成立しており、科学は抑圧された野性的思考の復活と言える。

現代社会では、科学の限界 = 生命科学の機械論的凡庸、分子生物学と熱力学の結合の不十分、量子力学的世界観の拡大を阻む西欧型資本主義等が認知されており、一神教の開いた地平を科学的思考によって変革する、宗教、科学に次ぐ三度目の形而上革命が遥か遠い先に発生する事が予期される?

序章 ニューヨークからベーリング海峡へ
原初的社会において語られる神話では、人間と動物は対称であり、一方が優位に立つ事は無いとされる。人間の文化と動物の自然の対称。

神話における動物と人間は対称的であり、夏には人間が動物を狩猟によって殺すが、冬には動物の精霊が人間を殺す事が神話や儀式によって表現されたりする。

人間は捕食し、捕食される連鎖の一員という事になる。それに対して神話を否定した現代社会における人間と自然の関係は、人間優位の非対称なものとして認識される。

第一章 失われた対称性を求めて
「神話的思考」と「対称性の社会」を同一の意味とする。自らの世界から非対称の関係を無くすために、神話の思考を用いる。神話的思考は、非対称の解消にこそ能力を発揮するが、現代では社会秩序の正当化に使用されている?

神話の中では、人間が動物になり、動物が人間になる。自然と人間のどちらかが優位になる事はない。

神話的思考は「交換」という概念が基盤になっている?動物を捕食する理由付けがあり、その対価を支払わなくてはならない。異種間婚では、夫婦となった動物が人間が離れ々れになり、動物社会が人間社会に借りを作った事が狩猟の根拠になったりする。

第二章 原初、神は熊であった
1917年にスイス アルプス山脈の洞窟から、ネアンデルタール人の旧石器と一緒に、熊の頭蓋骨や大腿骨が見つかった事例。熊の骨は並べられており、宗教的対象物だった可能性がある。

アイヌにも「熊送り」という儀式があり、熊の頭蓋骨に化粧をして、霊の世界に送る。

神話では人間が熊に変容したり、熊と人間が結婚したりする。人類の象徴的思考は、分野の異なるもの同士の間に共通点を見い出し、異なるものを理解しようとするとする。

人間と熊の対称性は、言葉の象徴化能力 = 詩的思考能力の表れであるのかもしれない。

第三章 「対称性の人類学」入門
言語は、隠喩の軸(パラディグマ軸)と換喩の軸(シンタグマ軸)の組み合わせであるとする。言語を可能にする比喩の能力が人間の徴であるとする。

神話は、比喩を活用し、世界を象徴的に表現可能とする。

神話の思考では、補償対象である動物は獲物であるだけでなく、人間と対称となる兄弟や夫婦にもなり得る。

第四章 海岸の決闘
シャチをめぐる神話について。

海の動物であるシャチが鋭過ぎる武器を入手すると、対称性が崩れる。中世以来、アムール川流域やサハリン島との交易に刀等が用いられるようになり、狩人の世界にも変化が発生した?

強過ぎる人間は自然から一方的に奪うだけの搾取者になってしまう。

サハリン島のウルチの神話に、人間とカレイの間に生まれた子供が、シャチに出会って剣を手に入れる話がある。



神話の中では、人間とカレイとの子供は、剣で熊を次々と殺すが、最後には熊と素手で決闘する。これは非対称を否定し、対称性を回復する話?

対称性 = 贈与の関係が崩壊すると、自然が人間に富を齎さなくなるとする。自発的な贈与ではなく、自然を開発の対象として収奪する事が現代的思考?

第五章 王にならなかった首長
原初の世界でシャーマンになろうという志願者は、冬眠中の熊のように何も食べないで精霊を待ったとする。シャーマンは、熊になる事の出来る人間である。

シャーマンは、熊になる事によって自然の力の源泉に触れるが、一方では高エネルギーで危険な存在でもある。シャーマンは対称性を破壊する可能性があるため、社会の周縁部でいて、権力の中心に近づく事はない。

対称性社会の首長は、文化の原理を自らの拠り所とする。シャーマンの自然の原理のような流動的領域ではなく、文化的な規則や良識に随って社会を平和に保つ。

首長には「王」と異なり、絶対的権力は無い。

以下は、米国の文化人類学者ローウィが南北インディアン社会を観察した結果としての首長の特徴。

①集団の緊張を和らげる
部族間の戦争においては、主張とは異なる人物が戦争の指導者となる。戦時の政治原則と平時の政治原則は異なる。文化を成り立たせる言葉よりも、自然と渡り合う技術を重視する将軍の存在。将軍は強制力を行使する事もある。

②自分の財物について物惜しみしない
自らの貪欲を抑え、他者の欲望に応える文化的原理の体現。

③弁舌爽やか
歌い踊る事も含める。現代社会でも音楽家がカリスマとなる事がある。

第六章 環太平洋の神話学へⅠ
自分から国家を作り出さなかった民族が、太平洋を取り巻いて存在しているという意見。北米インディアンと縄文文化等の関連?

縄文時代の社会にも富の多寡による階層が存在したと思われるが、思想や倫理によって国家発生を防いでいたのかもしれない。

第七章 環太平洋の神話学へⅡ
民俗学者 折口信夫の意見。

冬は、冬至を挟んで秋の終わりから初春までの期間を指し、この期間に冬の祭り(霜月祭り)が行われる。

冬(ふゆ)は、「ものがふえる」という意味を表すとする。増えるのはタマ = 霊魂である。

上記の意見は、日本の祭りの調査や北西海岸インディアンの調査に基づくとする。

<クワキウトゥル族の生活>
季節に応じて、以下のように生活が変わる。

夏:世俗的活動の季節
共同のテリトリーで最終活動を行う。ヌマイマという地縁集団に分かれて、拡大家族のような集団が分散して生活。首長が指導者となり、掟を破らないようにする。

冬:聖なる期間
分散していた人々が一つの場所に集まる。家族中心の生活が、秘密結社に帰属する生活に代わる。日本の冬の祭りでは「講」、「座」と呼ばれる。首長ではなく、秘密結社毎の指導者が祭祀の主導権を持つようになる。

北西海岸部のインディアンには、「ハマツァ」 = 「人食い」の儀式があるとされる。人食いの精霊に食べられる事により、カンニバルに生まれ変わる。優れた性質の持主は、人食いの性質を持っている事になる。

⇒夏は狩猟の期間であり、人間が動物を捕食するが、冬には人間が「人食い」に儀式として食べられるとする?冬は自然権力が人間社会を支配する期間である。

祭りと戦争は似た行為とされ、優れた戦士は強力な人食いである。

**************

以下の4つの指導者があるとする。

①首長
夏(狩猟の季節、世俗的な季節)を指導する。法律、道徳、経済、政治。弁舌と理性でSH河相に平和を齎す。

②秘密結社の指導者
冬の季節を指導する。普通の社会的人家鵜を否定して、超越的な性格の哲学を追及する?

③将軍
普通の暮らしでは危険である力の領域で活躍する。

④シャーマン
理性の踏み込めない動物の領域。予言や治癒等を行う。

首長以外の指導者は冬を中心にしており、理性の限界を超えた領域で行われる活動に関わる。夏には文化と自然が対立するが、冬になると区別が無効化して文化に自然が流れ込む。

王とは、冬の季節に自然の力を取り込んだ指導者達が、世俗的な首長と一体化した姿とする?王は、自然のものであった力を人間である自分に取り込んで、社会がある限り君臨し続ける。

第八章 「人食い」としての王
人間は、思考の断片を組織化し、神話や儀礼を整える。

人食いは、具象的な形態を呑み込んで破壊し、抽象的な流動体に変える働きをもったものを表現しようとした原始的概念?

象徴的思考と超越的思考のバランスを取るために、冬という限られた季節にのみ、超越者が発現出来る期間、空間を限定した?流動的知能に由来する超越的存在への思念は、冬の終わりによって消失させなくてはならない?

古代のある時期に、自然のものであった権力が特別な人間に帰属すると主張された事があった?冬という特別な期間にのみ許された指導者が、常に社会の中に存在する事になる。

冬の祭りの間のみ、人間より大きな権力に呑み込まれており、それ以外は首長の文化によって指導されていたが、自然権力を体現したと主張する王によって、冬の祭りにおける個体性の否定が日常生活の中でも発生する。

⇒具体的な人間関係よりも大きな、社会を超越する権力 = 国の出現

王権 = 社会内部に取り込まれた自然権力

首長の権威は理性によって支えられるが、王の権力は宗教的儀式によって演出される。

終章 「野生の思考」としての仏教
原初の世界では、文化によって権力が抑えられていた?

仏教やキリスト教は、巨大な国家に対抗するために生み出されたのかもしれない。

ゴータマ・シッダルタの生国は、サーキャ族というモンゴロイドの民族によって立てられたとする。インドの宗教とは異なる共和制に近い宗教があったのかもしれない。

カースト制は社会を非対称の原理に従って作り上げる。人間を分類し、階層に固定して社会を作る。カーストでは観念性や抽象性に優位が与えられ、具象性から離れるほど階層上位になる。

王の権力は共同体を呑み込むが、仏陀は王の権力を否定し、智慧によって導こうとする。仏教は権力を無化する思想となる事で、文明圏に対称性を構築しようとしたのかもしれない?

「熊」は、仏教以前の「菩薩」の概念の体現者だったのかもしれない。

チベットの仏教徒は、動物を見て自分の母や兄弟と思えるまで瞑想を繰り返すとされるが、それは熊の神話と似た発想である。輪廻は古代神話の読み替えなのか?

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決定力を鍛える

読んだ本の感想。

ガルリ・カスパロフ著。2007年11月30日 第1刷発行。



以下は、Wikipediaの「ガルリ・カスパロフ」の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%AD%E3%83%95

名言集みたいな本で、要約するものではないと感じた。良い本だと思う。

以下、適当な抜き出し、意訳:

成功の秘訣:
必ず素晴らしい結果に導いてくれる普遍的な秘策は無い。全ての人間は類の無い存在で、無数の要素と変化の結果である。個人は独自に意思決定の公式を立てる。

自己認識と他者理解が重要?著者は、ウィンストン・チャーチルの著書を愛読しているらしい。

戦略について:
遠い未来の目標を設定し、そこから現在へ逆向きに考える。長期目標があれば、最大の効果と最大の速度は排他的にならない。目標が無いと受身の決断しか出来ず、相手に合わせてプレーする事になる。

長期目標を達成するための中間目標は不可欠であり、手順が大切になる。

自らの戦略を発展するには、「何故?」という問いが重要。自らの手段が戦略に合致するか考える。戦略抜きで幸運にも成功した場合は注意が必要で、成功にも失敗にも問いを投げ掛けるべき。

戦術無き戦略は勝利に至る遠い道のりであり、戦略無き戦術は敗北の前の雑音である。

戦術には先読みが含まれるが、それは人間の脳には困難であり、読みは強いて計画された応答であり、「もし○○なら、その時は◆◆」という文の連なりであり、戦略と比較すれば些細な事である。

チェスの評価基準(MTQ):
以下の要素から局面を評価する。

①物質
駒の数と種類から戦力を比較する。初心者は極端な物質主義者であり、敵の駒を多く獲得しようとして、他の要素を気にしない。

②時間
自らの持ち時間や、目的達成に要する手数。駒を犠牲にする事で、手数を得る事がある。

③質
駒の価値は局面次第で上下し、一手毎に変化する。戦力の配置は数に劣らず重要である。

物質を長期的と動的で分類し、特定の駒を犠牲にする事で、他の駒の価値を短期的に上げたり、長期的な駒得に賭けたりする。

チェスプログラムでは、駒の質と駒の価値変動を評価する事に手こずっているらしい。

ゲームの段階:
簡略化のために、ゲームを以下の段階に分ける。

①序盤(書物)
戦線が張られていく段階。キングが安全な場所に移り、各駒が最初の枡を離れた時点が序盤の終わりとされる。望み通りの中盤を実現出来るよう準備する。

②中盤(奇術師)
交戦の場。新たな判断が必要とされ、全景を俯瞰し、不均衡を検証し、戦略を立てる。

③終盤(機械)
両陣営の可動性が最小レベルに減退し、論理と読みが前面に出る。数学の練習問題のように想像力の出る幕は無い。

他プレイヤーのゲームや定跡の記憶と、自らの独自性のバランスが難しい?

全体像の把握:
獲得する情報を増やす以上に、情報の関連を知る事が大切。情報量に頼り過ぎると、様々な事実に付随する偏見にも陥り易くなる。

長期的利益のために短期的損失を序用出来る事が大局的思考であり、そのためには要素間の繋がりや推移をしる事が必要になる。

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地政学の逆襲

読んだ本の感想。

ロバート・D・カプラン著。2014年12月30日 第1刷発行。



冷戦終結後に唱えられた理想論は、地政学的現実によって否定されたとする。

序章 失われた地理感覚を求めて
地形は永続的要素であり、次を予測する歴史的論理の拠り所となる。現在は領土変化という継続的過程の一段階である。

例えば、アラブの春がチュニジアで発生した事は偶然ではない。チュニジアは古来から文明の合流地点であり、過去2000年間に渡ってカルタゴに近い場所ほど発展した。

アラブの春が始まったのは、歴史的にアラブ世界で最も先進的な社会に近い地点だった。先進地に近いが開発が遅れた地域が暴動の発端となる。

第一部 空間をめぐる競争
第一章 ポスト冷戦の世界
冷戦崩壊後に、地理的障壁を乗り越えられると思われた時期があった。グローバリゼーションが歴史と国際安全保障体制の道徳方向性になるという思い込み。

同様の理想主義は、第一次世界大戦後にウィルソン主義として提唱されている。

当時は民主主義を求める世界的風潮と、旧オスマン帝国内での民族意識の高まりの両方が発生していた。民主主義と自由市場による自由と繁栄が信じられていた。

冷戦以後は、ベルリンの壁崩壊以前に、「中央欧州」という用語の復活と伴に始まり、地理的事実を超えた概念として普及した。

マッキンダー等の地政学では、中央欧州を海洋権益を持つ海洋欧州と大陸的なユーラシアのハートランドに挟まれたクラッシュゾーン(破砕帯)に属するとする。

第一次世界大戦と第二次世界大戦はドイツによる東方のハートランド支配という問題によって発生したとすると、冷戦はソヴィエト連邦による東欧(ハートランドの西端)支配という問題によって発生したとする。

この場合の東欧にはプロイセン王国の領土だった東ドイツが含まれ、歴史的にカトリックで商工業が盛んな西ドイツは海洋同盟であるNATOに含まれた。

東西ドイツの境界線は、中世にはフランク族とスラブ族を分けた境界であり、東西ドイツの国境線は人為的でなかったとする。ドイツ分断によって争いが沈静化したとすると、ドイツ再統一は新たな戦いを生むかもしれない。

1990年代には空軍力が脚光を浴びたが、山脈や市街での戦いにより地政学は力を取り戻しつつある。

第二章 地理の逆襲
哲学的な状況判断について?

現実主義は抽象的原理ではなく、歴史上の前例に関心を持ち、絶対善ではなく、より少ない害悪の実現を目指す。地図は、共同体を制約する環境要因を示す事で、全ての人間が平等であるという意見への反証となる。

例えば、ドイツは東西に山脈を持たず無防備であるがために軍国主義や平和主義を追求し、英国は海洋によって安全が保障されたために民主主義体制を他国に先駆けて発達させたとする。

アフリカが貧しいのは、欧州の5倍の面積を持ちながらサハラ以南の海岸線の長さが1/4しかなく、天然の良港を持たないために交易に不利なためであるとする。経済的に貧しい国は内陸国が多い。

米国は、2つの大洋を通じて欧州と東アジアに接続出来るために理想主義に耽る事が可能で、また、それ故に孤立主義思想も持つ。

著者は環境による制約と自由意志との間で揺れ動いているように思える。地理や歴史、民俗的特性は未来に影響するが決定しないという意見が暫定的結論なのかな?様々な要因が組み合わさって事象を引き起こす。

第三章 ヘロドトスとその継承者たち
以下の2人の大学教授。

①ウィリアム・H・マクニール
「西洋の台頭」により、あらゆる文明が独立的に発展したという見解に異を唱える。文明は相互作用する。

ウィリアム・H・マクニールの意見として、要害を持たないメソポタミアの文明は暴政と官僚制度によって中央権力を強化するしかなく侵略と分裂に見舞われ易い。エジプトは砂漠という防衛し易い境界があったために王朝が長続きしたとする。

ギリシアとインドは北部の山脈によって守られ、中国は砂漠や高山、距離によって隔離されたとする。この3つの文明のバランスが古代ユーラシアの文化バランスを保ったが、中世には北方ステップ民族によってバランスが崩れたとする。

⇒文明が地理によって規定されたという発想

地形によって生み出された文明が他の文明と交わり、混合文明を形成する。

②マーシャル・G・S・ホジソン
イスラムを地理的、文化的に把握。エクメーネ(北アフリカから中国西部まで広がるアフリカ・アジア陸塊の温帯域)というイスラムが普及した地域について言及。

イスラム文化が形成されたのは、ギリシアとサンスクリットの伝統を外れた地域であり、アラビア半島の乾燥した気象は農業による富でなく交易による富を志向させる事になり、倫理的な行動と公正な取引が重視された。砂漠の宗教、商人の宗教としてのイスラム。

中東諸国は一般に考えられているほど人為的な国ではなく、人為的な国境線で区切られてはいるが、前身である文明の後継であるとする。

現代におけるイスラム教は伝統的土着宗教としての特徴が薄れ、親族から離れて暮らすスラムの人々の行動を統制するために厳格で観念的な信仰になったとしている。

<オスマン帝国の限界>
オスマン帝国は単一の軍事カースト制度を敷いていたために支配可能地域に限界があったとする。皇帝が地中海北東部の官僚機構本部があるコンスタンチノープルから指揮を取るため、大遠征の範囲は一季節をかけて行進出来る距離に限られた。北西はウィーン、南東はイラクまでが領土拡大の限界。
官僚機構と個人の権力が首都に集中する。そして、帝国が地理的限界に到達すると戦争が不可能になるため兵士は報酬を得られなくなり、士気が低下する。
海軍も同様の理由で黒海と地中海に集中していたため、インド洋でポルトガルに対抗出来なかった。

<ヘロドトスの意見>
紀元前490年~紀元前484年頃にペルシアの臣民として生まれたヘロドトスは、ギリシア・ペルシア戦争の起源と遂行を地理と人間の決断がバランスしたものとして語る。
部分的決定論。地理的要因も重要だが、人間の私利私欲も要因となる。

第四章 ユーラシア回転軸理論
マッキンダーの地政学について。11世紀から20世紀にかけて世界史に影響を与えたモンゴルの遊牧民の役割を拡大ロシアが担い始めたとする。

さらに中国がロシア領土を征服する可能性に言及し、その場合には中国が主要な地政学的勢力になるとする。

マッキンダーが第一次世界大戦後に出発点としたのは、地球上の全ての陸地の政治的所有権が明らかになった世界であり、そこから世界島の概念が生じた。

自己完結的社会であるインドと中国は平和的発展が可能だが、欧州と中東はハートランドに大きな影響を受けるため、未来はインドと中国のモンスーン地帯によって左右されるとした。

マッキンダーの地政学は決定論的とされるが、彼自身は環境は克服可能とした。そのためには最大の知識と敬意をもって地理と向き合わなくてはならない。

第五章 ナチスによる歪曲
ドイツにおける地政学について。

ドイツは欧州の中央に位置し、ランドパワーでもありシーパワーでもある。ナチスの地政学者 ハウスホーファーは、マッキンダーの理論をドイツの視点に当て嵌め、ドイツが世界大国になるためにドイツとロシアの広域圏を統合すべきとした。

ドイツ中部から満州、極東ロシアに至る地域を支配すれば、軍需工場を内陸に避難させ、陸海軍であらゆる方向を攻撃可能とした。

マッキンダーが東欧に独立国家からなる緩衝地帯を設ける事を提唱したのとは逆に、ハウスホーファーはそうした諸国の消滅を主張した。

第六章 リムランド理論
ニコラス・J・スパイクマンの思想。

地理の重視。地理の非情さに由来する空間をめぐる闘争からは逃れられない。世界は無法状態であり、全ての国が自衛のために戦わなくてはならない。

米国は大西洋と太平洋に面している地理的に恵まれた国とする。争乱に巻き込まれることなくアジアと欧州に影響力を行使出来る。戦略的中心地はメキシコ湾を含むカリブ海であり、パナマ運河の建設により大国となった。

アメリカ大陸は北米と南米に分かれているのでなく、アマゾンを中心とする赤道ジャングル以北と以南に分かれているとする。コロンビア、ベネズエラ、ギアナ地方は南米の北岸にあるが、北米とカリブ海の一部を成している。

南米の南半分は太平洋とアンデス山脈に押し潰されており、利用可能な河川も少ないため、歴史的に重要な連絡路には成り得ないとする。

⇒米国はカリブ海を支配し、熱帯林や山脈によって南米の中心部から切り離されているため、西半球には挑戦する国が無いとする

仮にアメリカ大陸が自由な北米と枢軸国に支配された南米に分裂すれば米国の優位に終止符が打たれるとした。第二次世界大戦において仮に米国が欧州支配をめぐるドイツとの争いを避けても、南米の覇権をめぐる争いが生じたはずとする。

<リムランド>
ユーラシアの周辺地帯、特に沿岸地帯。海洋志向のリムランドは、ユーラシアを支配するだけでなく、外部世界と接触するための重要な地域である。リムランドが世界的勢力になるために重要な地域とする。

欧州の周辺地帯、中東、インド亜大陸、極東が莫大な人口、経済開発、炭化水素資源によってインド洋と太平洋の沿岸地域を支配する。ロシアが北極海海域の温暖化に助けられても、これらの地域に抑え込まれるとする。

第七章 シーパワーの魅惑
マッキンダーがランドパワーに重点を置いたのは、鉄道や道路交通における新技術を考慮したからである。同様に、アルフレッド・セイヤー・マハンはシーパワーの重要性を説いた。海洋を支配する事は、富を蓄積する手段の一環である。

海軍戦略に重要な地として、アラピアとインドに挟まれた地域を指す用語として、1902年に「中東」という言葉を初めて用いたのはマハンである。

インドは、インド洋沿岸帯の中央に位置し、後方をヒマラヤ山脈に保護されており、海から中国に侵入するうえで極めて重要な地である。

インド洋と太平洋が世界の地政学的運命を握るとした。ロシアはインド洋から離れているために脆弱とする。富の蓄積に不利な位置。

マハンの意見の欠陥として、ランドパワー国家がイベリアからウラル山脈までの欧州を素早く包囲出来る事を考慮していなかったとする。

ユーラシアの現状は、米国海軍が縮小傾向にはあるが同盟国と貿易環境保護のために海を警備する一方で、中国やインドがマハンの思想に基づいて軍事力を増強させている。さらに北極海航路の利用可能性が拡大しており、覇権争いの激しさが増すとする。

第八章 空間の危機
かつては人口が希薄な地理空間が、軍事進出や技術進歩に対する安全装置の役割を果たしたが、技術進歩によって地政学的に距離が圧縮される中、限られた地球の規模が不安定要因になる可能性。

戦争技術と富の創出は密接に結び付き、アジアの経済力の高まりは、軍事力の高まりを齎している。

アジアにおける米国の力が低下し、中国のインドが軍事力を伸ばす中で、地理的緊張が高まる。かつては長い距離やヒマラヤ山脈が安全を担保していたが、技術進歩は距離を圧縮する。

人口爆発も同様であり、旧第三世界では人口の半数以上が都市部で暮らし、2025年には2/3に高まるらしい。将来の都市部の人口増は発展途上国に集中する。マッキンダーの活躍した20世紀初頭には、都市生活者が世界人口に占める割合は14%だった。

イブン・ハルドゥーンは、『歴史序説』の中で、都市化過程を説明している。連帯意識の強い遊牧民が物質的な快適を求めて定住を始める。強力な支配者が生まれ、安全を提供する事で都市が繁栄する。しかし個人が富を蓄積し影響力を高めると連帯が失われ、また、権威を保つための贅沢が帝国の衰退を招くとする。

この過程が地球規模で進行している。

人口が多い都市を中央から統治する事は困難であり、人口密集帯は自律的な単位に分裂する。イスラム過激派も中東全体で進行している都市化の徒花であり、激しい宗教感情は他者に揉まれて暮らす都市生活から生まれるとする。

過密都市に暮らす群衆は情報技術の発達によって感情を煽られ、民族主義や過激主義が流行する。その基盤は都市生活における孤独である。

情報技術の発達は、無国籍の権力も生み出し、国家に帰属しない小規模集団が統治せずに権力を握る。国家的単位では実現出来ない宗教的熱情。

第二部 二一世紀初めの世界地図
第九章 ヨーロッパの統合
欧州連合の人口は5億人で、中国やインドに次ぐ世界第三位である。ユーラシア西部の東端に位置し、極東ロシアと南アフリカから等距離にある。

複雑な地形のため、異なる言語集団と民族国家が形成された。分裂継続を予想する。

欧州文明は当初、地中海沿岸で開花したが、技術進歩によって北方に広がり、ローマ帝国が広大な地域を支配して欧州の原型となる。その後、ステップ地帯の遊牧民からの圧力を引き金にして、ローマの権力崩壊によって生じた真空地帯に蛮族達が押し出され、様々な国家的集団が形成された。

現状の欧州は、統一ドイツの復活により、勢力均衡点がプロイセン欧州と中央欧州の合流地点の東方にシフトし、ポーランド、バルト海諸国、ドナウ川流域がドイツ経済によって活性化されており、地中海沿岸とオスマン・バルカンが遅れを取っているとする。

欧州諸国の国民人口は低迷しており、2050年頃には欧州、米国、カナダの合計人口が世界人口に占める割合は12%程度になるとされる(第一次世界大戦後は33%)。2050年には欧州の生産年齢人口は24%減少するが、60歳以上の人口は47%増加する見通しであり、若年移民の流入が進むとする。欧州主要国の人口に占めるイスラム教徒の割合は、2050年頃には10%程度になると予想。

今後の展開としては欧州中央に位置し、東欧と西欧に影響力を持つドイツと、欧州との間に緩衝地帯を設けたいロシアの対立が主軸になるとする?ドイツがロシアに屈するか否かによって、中央欧州の独立性が左右される?

ギリシアが戦略的要衝であり、マッキンダーはハートランドの大国がギリシアを手中に収めれば、世界島の支配も手に入るとした。

第十章 拡大するロシア
ロシアは地球半周分の経度170度に渡って広がるランドパワー国家である。ランドパワー国家は、海による安全保障が無いために常に拡大するか征服されるかしかない。カフカス山脈は、大中東圏に噴出する問題から安全を確保するために支配しなくてはならない障壁である。

国土が平坦で、アジアと大中東圏まで途切れなく続いているため、その地を征服する必要があった。

キエフ公国やロマノフ朝、ソヴィエト連邦までが、平坦な地形という現実に直面して同じように拡大政策を採用する。ソヴィエト連邦では共産主義の恩恵を授ける事が征服を正当化する大義名分だった。そのため共産主義の大儀が揺らぐと帝国は分裂した。

もう一つの地理的事実は厳寒であり、ロシアの大部分は北緯50度線以北にあるため、北緯43度のカフカスは魅力的である。

ロシアが1700年代初頭に大国として浮上した背景には、ウラル山脈の森林地帯の豊富な鉄鉱石資源があり、現代では1960年代半ばの北西シベリアの油田とガス田の発見が国家を支えている。

現代ロシアの拡大は、それを正当化する大義名分を生み出せるか否かにかかっており、民族的自己同一性を超えた思想が必要である。生み出せる可能性は低く、ロシアの出生率が低いため、ロシアの総人口は21世紀初頭の1億4000万人から2050年の1億1100万人に減少する見込みである。ロシア国内のイスラム社会は拡大し、2025年?までに人口の20%を占めるようになる。

ロシアの戦略としては、政治的には欧州、経済的には東アジアとの結び付きを深めるべきとする。中国が中央アジアやベラルーシ、モルドバに経済支援を行う事で勢力圏を築いた事への対抗。生活水準を高める事で旧ソヴィエト連邦諸国がロシアに魅力を感じ、カフカスや中央アジアの問題を解決出来るとする。

今後、天然資源頼りのロシアが影響圏を維持する事は困難で、帝国が出現しても、中国やインド、イランによって抑え込まれるとする。著者は、天然資源豊富でユーラシアの中央に位置するカザフスタンが真のハートランドであり、ユーラシアの命運を判断する材料とする。中国とロシアが主導権を争う中、先住民族が主導権を握っている?

第一一章 大中華圏
マッキンダーは、巨大な資源と海に接続できる中国の強味を高く評価した。

ロシアが北緯50度以北に位置し、北極圏の氷に閉ざされているのに対し、中国は温帯域に属している。

605年~611年にかけて建設された黄河と長江を結ぶ大運河は、北米初の大陸横断鉄道と同様の効果があったとする。運河によって唐宋時代に北部から南部への征服が収まり、農業地帯の一体化が進展したとする。人間の行為が地理的条件を上回った一例とする。南北間の格差を埋め、分裂が恒久化する事を防いだ。

南北の差異は農業と遊牧の対比よりも小さく、中国の国家意識は農耕地帯と遊牧地との文化的差異に根差しているとする。中国の定住型農耕文明は、満州からチベットまでの三方を取り囲む乾燥高地の遊牧民との間に緩衝地帯を築く事に腐心するようになる。これはロシアも同様であるが、中国は相対的に人口が密集しており、ロシアよりは軍事的脅威が少なかっため、社会がロシアほどには軍事化する必要が無かったとする。

現代の中国は、世界人口の1/5を占める国民の生活水準向上を図るために大量の資源を確保しようとして海外に進出している。海外進出の目的が経済発展という中核的国益のため、社会的使命を重んじる米国や勢力圏が重なるロシアやインドとの衝突は避けられない。

シベリアや中央アジア、東南アジアや朝鮮半島への中国の影響力拡大で懸念されるのは、軍隊による侵略でなく、中国からの移住者や企業によって地域を乗っ取られる事である。

朝鮮再統一に関しては、韓国政府が主導権を握り、中国の経済力に頼るために中国寄りの政権が誕生すると考えている。朝鮮の敵意は日本に向かい、北東アジアにおいて米軍が縮小する中、日本の再軍備が促されるとする。

米国のアジアでの力は低下すると見られる。太平洋における米国の有利は第二次世界大戦で中国や日本が壊滅的打撃を受けたからであり、朝鮮半島での支配的立場は半島の分断による。

将来的には中国海軍と米国と同盟国の海軍の力が拮抗する?米ソ冷戦時は米国はソヴィエト連邦を封じ込める海軍力を持たなかっために大規模な陸軍を欧州に必要としたが、アジアでは米国海軍が優位を保つため、冷戦よりは安定した争いになるとする。

第一二章 インドのジレンマ
インドはリムランド国であり、米国と中国の競合時に重要な国になる。

インド洋沿岸帯の中心に位置するインドは、中東と中国による海洋進出の鍵の握る存在である。

インドには渭河流域や黄河流域のような人口が密集する地域は存在せず、そこから政治組織が拡大する事は無かった。ガンジス川以外にも多くの河川系があり、人口が分散していたために資源を動員する政治構造を築く必要が無かった。

北西部の地理的保護が弱く、歴史的に北西部からの侵入を受ける事が多い。パキスタンは、インドから見るとイスラム勢力による歴史的な侵入が具現化したものであるかもしれない。

以下の系譜。

アーリア人:
イラン高原?からインドに侵入し、紀元前1000年頃に北インドのガンジス平原に政治組織を作り上げた。紀元前八世紀~紀元前六世紀に多くの君主国が興る。

ハラッパー文明:
紀元前四世紀末~紀元前二世紀頃に存在した中央集権的族長連邦。シンド地方北部のインダス川下流の都市、モヘンジョダロ、ハラッパーを中心に、イランとアフガニスタン国境近くまでのパキスタン、インド北西部を支配。

ナンダ帝国:
紀元前四世紀頃にインド北部のパンジャブからベンガル湾に面するガンジス平原を支配した。

マウリヤ朝:
紀元前321年に、チャンドラグプタがナンダ朝のダナナンダ王を殺害して建国。インド亜大陸の南端部を除くほとんどを網羅し、政治実体としての「インド」の概念が南アジアと一致した。

多くの都市国家が一貫した体制に組み込まれたのは、以下の要因によるとする。

①アレキサンダー大王の脅威
紀元前326年に兵士の反乱が無ければ、アレキサンダー大王がガンジス川流域を征服していたかもしれない。

②新宗教
仏教やジャイナ教が商人に普及した。

マウリヤ朝の王達は仏教を受容し、ギリシアの慣習に従って王朝を運営した。マウリヤ朝は、インドを一つの政治体制が長期間に渡って運営出来る事を証明した。





その後、マウリヤ朝が衰退すると北西部のカイバル峠等から異民族が流入し、地方王朝が乱立する。グプタ帝国(320年~550年)がインド亜大陸の統一を回復するが、漢族の流入を受けて衰退すると、インドでは六世紀以上に渡って小国分立状態が続く。集権化と政治的統一を志向する傾向のある中国の違い。

七世紀から十六世紀にかけてはイスラム教徒が流入する。イスラム王朝は、ヒンドゥーとイスラムの中間であるデリーを根拠地にしたとする。

ムガル帝国:
1500年代初頭から1720年頃までインド全域と中央アジアの一部を支配。ムガルとは、インド北部の外国人イスラム教徒を指す(ペルシア語、アラビア語ではモンゴルを指す)。
インドでは北部が南部を支配する事は困難で、北部を単一の政治組織が支配し、南部の支配は不確かだったとする。

インドのイスラム教徒は大半は、過去の侵入の入り口だった北西部と、ガンジス平原の端に位置する東ベンガルに住む。北西部に位置するパキスタンは地政学的脅威である。

パキスタンは4つの民族集団(北西部のパンジャブ人、南東部のシンド人、南西部のバローチ人、北西辺境部のパシュトゥーン人)を擁し、イスラムが団結を促進していない。

インド亜大陸のイスラム教徒の国として建国されたが、インドには多くのイスラム教徒がいるためイデオロギーは不完全である。パンジャブ人主体の軍が無ければ国は維持出来ないとする。

地域安定化のためにはアフガニスタンが安定化する必要があり、アフガニスタンでの戦乱が収まれば真のハートランドとなり、道路や鉄道、パイプラインの建設がパキスタン等でも進むとする。

近年になって問題が大きくなっているのは中国であり、自国国境の監視や国家としての一体性保持をするしかなかった軍隊が技術進歩によって互いを脅かすようになり問題が生じたとする。

第一三章 中軸国家イラン
イランはイラン高原に位置し、7400万人というサウジアラビアの2.5倍の人口を持つ中東最大の人口国である。人口増加率は1%台で、15歳未満が人口に占める割合が22%程度のため、安定している。

ハートランドの真南、リムランドの内部に位置し、ホルムズ海峡を支配する。歴史的にはペルシア帝国を受け継ぎ、中東で最も制度化が進んだ国である。

サファヴィー朝:
一六世紀にシーア派をイランの国教とする。黒海とカスピ海に挟まれた高原地帯を支配した騎馬民族により建国され、様々な民族で構成された。安定した国家を築くために、聖教者政権の核となる宗教を導入した?

イランにとってはイラクが重要な要素であり、イラクで民主的体制が確立されれば、イランでの平和的政権交代が促進されるかもしれない。

<サウジアラビア>
アラビア半島をほぼ占領している。人口2870万人で、半島全体の半分もないが、年率2%で増加しており、国民の40%が15歳未満で大きな不安定要因となっている。地理的な纏まりを欠くオアシスに人口が集中しているため、国家としての一体性維持には高速道路や国内航空網が欠かせない。

脅威は南方のイエメンにあり、イエメンの面積はサウジアラビアの1/4だが、人口は同等である。イエメンは本格的に植民地化された事が無いため、強力な官僚機構が発達しておらず、安定しない。この地から兵器や麻薬が流入しているとする。

第一四章 旧オスマン帝国
アナトリア半島の陸橋を網羅するトルコについて。

トルコとイランには一億5000万人の人口が住んでおり、アラビア半島等を構成する12のアラブ諸国よりも多い。

歴史的にはトルコの王朝が関心を向けたのは交易路がある北西の欧州で、人口も欧州の近くに集中したが、標高が高いアナトリアの地形に阻まれて、トルコに挑戦する部族同盟がカフカスや中東に生じる事は無かった。

アナトリア東部の社会が分裂していたため、セルジューク朝やオスマン帝国は東部を心配せずにアナトリア西部から帝国を支配した。無秩序に広がっているロシアとは異なり海で囲まれているトルコは周縁部を侵略される危険がロシアよりは小さい。

第一次世界大戦後に政権を握ったケマル・アタテュルクは、トルコを西洋化し、旧体制を一掃するために首都をアナトリアの中心であるアンカラに移したが、それがためにイスラム文明を重視する事になる。民主主義は、アナトリア奥地の敬虔なイスラム教徒にも選挙権を与えた。

2002年に政権を握ったエルドアンは、イスラム教徒の支持を集め、イスラム主義が台頭する。トルコは、パレスチナの人々を擁護する事でアラブ世界の支持を得た。

トルコはイランと拮抗する存在であり、NATOの一員である事と、イスラエルとの国交がある事を合わせて中東全体で重要な役割を果たす事が出来る。

<イラク>
イラクは政治的進化の過程にあり、3100万人の人口、石油埋蔵量(サウジアラビアに次いで世界第二位)、スンニ派とシーア派世界の合流点等の要因からアラブ世界全体に影響力を及ぼしている。

以下の3つの負の遺産。

①歴代の独裁が齎した歪んだ政治文化
②暴力的な歴史が育んだ辛辣で疑い深い国民性
③民族的・宗教的分裂

イラクは西方のシリアの砂漠や東方のイランのエラム高原からの攻撃に常にさらされている。メソポタミアが民族的に結合した国であった事はほとんどない。分裂的傾向を食い止めるには抑圧的な専制体制を敷くしかなかった。防護になる境界が無い河川沿いの人口密集地域での争い。
オスマン帝国の支配の最も弱い地域でもあり、北からモスル州(クルド人)、バグダード州(スンニ派)、バスラ州(シーア派)の三つに強制的に分断されていた。オスマン帝国崩壊後に英国が三州を委任統治領として、クルド人の分離主義、シーア派の部族主義、スンニ派の自己主張の混合物を作り出した。北部のクルディスタンの油田とペルシア湾の港を結ぶために無理に結合した国家。

<シリア>
2000万人の人口があり、シリア北部のアレッポは、シリアの首都ダマスクスよりもイラクのモスルやバグダードと強い結び付きがあった。ダマスカスの勢力が衰えるとアレッポが輝く。

農耕地から生まれた国で、完全に人為的な国ではなく、民族的・宗教的アイデンティティが交易によって結ばれた世界の中心地である。

シリアが弱体化すると、ベイルートが大シリアの文化的・経済的首都になり、ベイルート南部のヒズボラに傾倒するシーア派が他勢力を人口で圧倒して政治的発言力を増すと見られる。

**************

アラブ世界の最大?の不安定要因は急増する人口であり、エジプトはアラブ有数の人口大国だが、エチオピアの人口は8300万人とエジプトより多く、スーダン、南スーダンの人口もそれぞれ4000万人超であるため、水資源をめぐる問題が発生する見込みである。

イスラエルではユダヤ人が少数派になる見込みで、イスラエルにおけるユダヤ人の人口増加率1.4%に対し、イスラエルのアラブ人の人口増加率は3.4%で、ユダヤ人の平均年齢は35歳だが、アラブ人は14歳となっている。合理的に考えると、イスラエルが占領地を返還して入植地を解体し、パレスチナ人が帰還の権利を放棄すべきだが、両者の心理的距離は遠いとする。

第三部 アメリカの大戦略
第一五章 岐路に立つメキシコ
米国が直面している地政学的ジレンマは以下の3つ。

①ユーラシアの中核地帯である中東
②台頭する中国
③メキシコ

<ローマ帝国の大戦略>
エドワード・N・ルトワックが提唱したローマの戦略。以下の三段階。

①ユリウス・クラウディウス体制
共和制帝国の体制。帝国が総合的な力を通してイタリア半島を取り囲む属国を威圧し、占領軍による強制は不必要だった。ローマ帝国の軍隊が帝国全体に配置されていたが、強制力の主体は外交術だった。軍隊は、兵力温存の方針に則って慎重に行使された。

②アントニヌス体制
一世紀~三世紀中頃。帝国の領域化が進行し、属国の忠誠を確保するために、属国内に軍隊を配備し、兵力温存の原則は失われた。ローマ化を通じて、異なる部族が連帯意識を持ち、結束してローマに対抗するようになる。

③ディオクレティアヌス体制
多層防御の体制。辺境の異民族が正式な同盟を結び、ローマに対抗するようになると、帝国全体が防御態勢に入り、緊急配備が日常的に行われた。上記②で維持されていた有事対応能力は失われた。

⇒現代の米国は、上記③の状況にあるとする

ローマが地中海沿岸の安定に貢献したのと同様に、米国軍は地球的公共領域を警備しており、過剰展開による疲弊が露呈している。

米国は、同盟国等に役割を肩代わりさせる必要がある。ローマ帝国が西部で衰退して滅亡した原因は、北部に成立した欧州近代国家の原型となる民族集団に対応出来なかったためであるが、滅亡の形を操作する事は出来た筈であるとする。名誉ある退場の仕組み。

****************

米国の弱点は南西部にあり、幅広く曖昧なメキシコとの国境によって一体性が脅かされている。メキシコの1億1100万人の人口と中米の4000万人の人口を合わせると米国の約半分になり、ラテン民族の北方移動によって社会不安が発生している。

メキシコは全体的に山がちで、地理的な一体性に欠ける。斜面の面積を合わせるとアジアほどの大きさになる。半島や中央部は地理的に分離している。

米国が移民国家であるという主張は部分的な真実であり、米国はアングロ・プロテスタントの入植者と移民の国であり、社会の哲学的、文化的根幹を支えるのはアングロ・プロテスタント文化である。米国の反骨精神、個人主義、共和主義はプロテスタンティズムに基盤があるとする。



メキシコからの移民はカソリックであり、米国南西部の特定地域に流入し、分散しない。2050年には、スペイン語を母語とする米国人が人口の1/3を占めるようになるとする。

著者の構想として、米国を東西志向の文明から南北志向の文明に変容させ、世界中から選良を集める国際商取引の重要な無関税区にすべきとする。世界から人的資産を集める事でメキシコ人の比重が高い移民人口を多様化する。

そのためにはメキシコが国家として破綻しない事が必須である。麻薬カルテルとの対立がその鍵となる。米国の世界戦略はメキシコとの文化的交流にかかっているとする。

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新100年予測

読んだ本の感想。

ジョージ・フリードマン著。2015年7月20日 初版印刷。



欧州の紛争について書いた本。小規模な国家が乱立する欧州における戦争を防ぐため、EUによる統合が志向されている。試みが成功するか判断するために以下の3点について考える。

①欧州の発見や改革の原因と経緯
②欧州における二度の世界大戦の原因
③今後、欧州の紛争の火種となる地

以下は、「100年予測」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-796.html

以下は、「激動予測」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-1012.html

Ⅰ ヨーロッパ例外主義
第1章 ヨーロッパ人の生活
著者自身の物語。1949年に、著者が家族とハンガリー領内から米国に亡命した話。

第2章 世界を席巻するヨーロッパ
欧州の大航海時代を象徴する以下の2つの人間型。ローマカトリックの教義である「両剣論」。

①伝道者
エンリケ航海王子等に代表される。社会の上層階級に帰属し、満たされている。忍耐強く慎重で几帳面。
②戦士
エルナン・コルテス等に代表される。社会の下層階級に帰属し、飢えている。焦りがあり情け容赦なく決断力がある。

秩序だって行動する伝道者達の認可をもって、戦士達が外界を征服していく。両者は互いに依存しあっている。

文明には、未開期(集団の法と自然法が同一視されている)、文明期(正義が信じられているが疑われてもいる)、退廃期(真実が存在しないと思われている)の三段階に分けられているとする。

大航海時代の西洋における戦士達は未開期の人間であり、自分達の信仰を疑わなかった。神は比喩や象徴でなく具体的な存在であり、神を信じているが故に危険を顧みずに行動出来た。

技術的な優越以外に、欧州人達が世界を支配していく過程では強迫観念 = 全てを我が物にしたいという願望があったとする。

以下は、「フライデーは正しかった」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-783.html

第3章 ヨーロッパの分裂
知的な人間は過去の因襲や既知によって制限されず、自らの良心や意志、理性によって設定したものによって制限される。知的な人間によって獲得された知見を平凡な人間が利用可能になり、平凡な人間が天才と同等の権利を主張した結果、欧州は分裂した?

以下の三つの知的衝撃が1492年~1543年に生じたとする。

①地球は宇宙の中心ではなない
1543年にコペルニクスが地動説を提唱。
②欧州は世界の中心ではない
1492年のアメリカ大陸発見。
③欧州の中心は教会ではない
1517年にマルティン・ルターが「九五ヶ条の論題」を提示。

カトリック教会は、人間は教会の教えを通じて神の知に到達出来るとした。教会の枠組みの外にいる人間はキリスト教の教義について自ら解釈を加えてはならなかった。

ルターは個人の良心、個人的信仰という概念を持ち込んだ。各自が別に聖書を解釈すると、解釈に食い違いが生じ、教会の勢力が分裂するようになる。宗教的分裂の結果、国境線が強く意識されるようになる。印刷技術の普及は読み書きを一般化させていき、言語を共有する人間の結束を生み、言葉の違いが境界となる。

個人判断の重視は権威に対する疑念の温床となり、科学革命の要因となる。ルターは、神が人間に直接介入する事はなく、神の創造した自然秩序は不変とした。そのため、自然法則を理解すれば、世界を理解出来るとした。聖書には自然の事はあまり書かれていないため、聖書だけでは不十分という事になる。

人間が理性によって世界を理解出来るのであれば、出自よりも理性的である事が重要になる。しかし、啓蒙主義では人間の理性有無を区別する方法は示されなかった。

正しい人間を特定する方法は無いが、人間が他人と協調せずに生きていく事は困難。自由に生きている人間は常に惑い続ける事になり、土地の文化や歴史から切り離される事も難しい。

科学は人間を物理的存在として理解する。それは身体と欲望だけの存在。そうした存在でも共同体に帰属する必要があるので、共同体を魅力的にする物語が作り出される。国家を神話無しで正当化する事は不可能。

教会から解放された人間を説得して参加させるための国家主義。科学技術が齎す経済発展と国民国家が齎す道徳は互いに矛盾するものであるが、教会に代わる秩序を作り出したとする。

Ⅱ 三一年間
第4章 大虐殺
1914年~1945年の世界大戦で約一億人程度(9100万人?)の人間が死亡した事について。

1939年時点の欧州の人口は5億5000万人だが、第二次世界大戦における死者は5100万人に達するという情報がある。ポーランドは人口の16%、ドイツは約10%、ソヴィエト連邦は約14%の国民を失ったとする。

国家主義的思想や民族自決の思想は、欧州の発展を後押ししたが、同時に他国への敵意を増幅させた。

1900年時点での欧州はドイツの台頭が問題となっており、各国間の競争によって軋轢が生じる事になる。科学技術の進歩、工業の発達、国家意識の浸透は強い軍隊を可能にし、それ故に被害は拡大する。

国家に普遍的価値を認める人間が増えた結果、個人という概念が飲み込まれ、道義的責任のために軍隊に参加する人間が多勢となる。

各人が神の存在抜きで自由に正義をを設定出来る社会。幾つかの基本的な原理を知れば、それを全てに応用し、全てを説明、定義可能とする。

共産主義とファシズムは「集団」を基礎とした政治思想であり、国家の目的は不定形な集団に秩序を持たせ、人類の将来を決める存在にする事となる。それは一部の選良が私欲のために集団を道具として利用する構造である。

ロシアにおける共産革命は、伝道者(知識人)と戦士(軍人)によって引き起こされたとする。理論は現場から離れた場所にあるほど冷静に機能し、それ故に虐殺を生み出すのかもしれない。

ヒトラーも知識人であり、血筋に基づいて国家神話を創作した。ニーチェの「地平」の概念では、人間は「地平」という自らの認識や思考の境界線を必要としているとする。幻想であっても境界線を設けなければ世界が広過ぎて人間には対処出来ない。世界人類という概念では広過ぎるため、人種、民族は不平等という思想は広く信じられた。

非論理的であっても魅力的な物語は共鳴する者にとって正しくなる。

二度の世界大戦は欧州の黄昏を告げるものであったとする。

第5章 疲弊
第二次世界大戦は、唐突に終了した。ヒトラーの死後、ドイツ国家は戦闘を止め、大英帝国の物語(世界中の劣等民族の文明化)も終了した。

欧州は裕福な米国と貧しいソヴィエト連邦によって分割される事となる。覇権国が一つだけでは均衡が崩れるため、両方共が撤退出来ない。

米国はソヴィエト連邦に対抗するためにドイツを強化し、地中海へ海軍を派遣されないようにギリシャとトルコを盤石にし、イタリアを同盟に引き入れた。

欧州は世界的影響力を喪失し、EUによる統合により一つの共同体となる事を目指す事になる。戦争によらない統一。

第6章 アメリカが始めたヨーロッパの統合
第二次世界大戦後、ソヴィエト連邦への対抗のために、米国による欧州への援助が行われる。

英仏海峡によって欧州と隔てられた英国は、欧州の統合に乗り気ではなかったが、フランスはソヴィエト連邦への対抗やドイツとの緊密な関係の必要性、欧州統合を主導する事による実質的支配等により欧州経済協力委員会(CEEC)発足に積極的だったとする。

ドイツとフランスの連携が欧州共同体の軸である。

欧州連合を人民の連合体とし、統一の文化を表す言葉とする事は困難。米国の場合は州毎に言語や文化は大きく異ならない。国民国家の寄せ集めである欧州連合を一つの国家と見せるために、統治体制は複雑になる。議長国は輪番制で半年毎に入れ替わり、欧州議会の権限も曖昧。意思決定は全会一致の場合も多数決の場合もあり得る。

ここでも伝道者と戦士の概念が出てくる?

経済的に弱い東欧や南欧の国々がユーロを導入したのは向こう見ずな楽観主義によるとする。欧州統合は平和と繁栄を拠り所としたが、それが常に存在しなくてはならない。各国毎の格差が意識されれば分裂が生じる事になる。

第7章 危機と分裂
ソヴィエト連邦崩壊により、欧州には500年ぶりに世界的な大国が存在しなくなった。狭い場所に小さい主権国家が犇めいている状態。

しかし、以下の問題が生じる。

①ジョージア
2008年に、ロシアとジョージアの戦争が始まった。
②リーマン・ショック
2008年に、リーマン・ブラザーズが破綻。

ロシアが安全保障への懸念事項となり、金融恐慌は経済を弱体化させる。

欧州連合は国家主義を恐れるが、ソヴィエト連邦からの小国の誕生を喜ぶ事は矛盾である。東欧や南欧の各国は欧州連合に参加すれば安全と繁栄が保証され、欧州的価値観を基礎にした政策を採用できると信じていたが、自国の主権は維持しようとしており深刻な矛盾があった。

欧州連合では、欧州全体の防衛政策が定められておらず、金融危機に際しても統一された意思決定が困難だった。欧州最大の経済大国であるドイツは他国の救済に乗り気でなかった。

しかし、ドイツでは輸出がGDPの35%~40%を占めており(米国は10%未満、中国は30%)、ドイツの輸出の約半分は欧州連合の自由貿易圏で購入されている。ドイツは経済的繁栄を欧州連合による自由貿易によって手に入れておきながら、システム維持には積極的でない事になる。

平和と繁栄を約束する欧州連合の社会契約が守られていない事になる。

欧州で未だに現体制が脅かされていないのは、システム自体に欠陥があるとされていない事と、技術官僚が状況を制御下におけると感じている事にある。

Ⅲ 紛争の火種
第8章 マーストリヒトの戦い
マーストリヒト条約が起草、調印、施行され、欧州連合が設立された時期に、バルカンやコーカサスで紛争が発生した事について。

どちらも山岳地帯であり、複数の民族が混じり合っている。戦争があっても山に逃げ込めば生き残る可能性が高い。しかし、山は人を守るのと同時に分断し、山岳地帯には国家に準じる小規模集団が点在する事になる。

小集団は好戦的で、大国の圧力が緩むと争い始める。

敵対民族が一つに纏まるとしたユーゴスラビアは1991年に崩壊した。バルカンは南東のトルコ、北東のロシア、北西のゲルマン国家による争いの歴史があり、それらの国家の痕跡により、宗教的にも民族的にも雑然としている。

1990年代にはソヴィエト連邦が崩壊し、米国は無関心、ドイツは東西統合に忙しく、トルコは内向きだった。欧州連合は紛争を防げなかった。

*************

コーカサス山脈は、黒海とカスピ海を繋ぐ陸橋のような場所であり、欧州とアナトリア、ペルシャを結合する。

南西のトルコ、南東のイラン、北のロシアに囲まれている。コーカサス山脈は険しい山であり、その北部のヨーロッパ平野は防衛困難であり、戦略的な要地である。

コーカサスの支配権とアゼルバイジャンの油田はソヴィエト連邦にとって重要だった。ソヴィエト連邦時代に、アルメニア人がアゼルバイジャンのナゴルノ・カラバフ地区に大量に流入した結果、ソヴィエト連邦崩壊後に同地区を巡って1992年に紛争が発生している。

バルカンとコーカサスの2つの地方の紛争は、欧州連合が紛争を防止出来なかった事を示している。

第9章 ドイツ問題の再燃
大国としてのドイツの問題。

1871年にプロイセン王国を核に、ドイツは一つの近代国家となった。1918年に第一次世界大戦に敗れ、第二次世界大戦にも敗れるが、その度に復興し欧州を牽引する大国となる。

その理由の一つは、ドイツの地理的位置にあり、北欧州平野の中央に位置する国は欧州にとって重要な存在となる。

ドイツは唯一無二でなく、同じような復興、繁栄を遂げた国に日本がある。共通するのは社会的連帯で、規律を保つ事が出来る。
両国共に国策として工業化を進め、工業化、国家統一、軍事力という要素が絡み合った。同時期に統一したイタリアが同じように発展しなかったのは、両国のような地政学的脅威に直面していなかったからであるとする。

ドイツと日本は米国の戦略の下にあり、米国が方針転換すれば将来は不透明になる。

ドイツの問題は輸出への過度な依存であり、欧州連合という自由貿易の枠組みが機能しなくなるのなら、新しい顧客を見つける必要がある。ロシアやラテンアメリカ、アフリカ各国との経済的関係の深化。

フランスとロシアとの関係について決断を下す必要があるとする。
 
第10章 ロシアとヨーロッパ大陸
欧州大陸とロシアの境界線は、バルト三国からウクライナまでと、ポーランドからブルガリアまでの二層から成るとする。

欧州大陸は狭く、デンマーク北部からイタリア南端まで2400㎞しかない。ピレネー山脈の細い部分は南北500㎞である。反対にロシアは広い。北から南まで長いところで約3200㎞あり、ウラル山脈あたりでも南北1800㎞ある。

民族的にもロシアは均質で、約100の民族集団があるが、人口の80%超はロシア人であり、次に多いタタール人は3.9%である。

ロシアは実質的に内陸国で、欧州大陸には5億人超の人々が住み、ロシアの人口は1億4000万人程度。欧州大陸のGDPは約14兆ドルで、ロシアは約2兆ドル。一人当たりでは、欧州大陸はロシアの二倍以上裕福になる。

欧州大陸とロシアの圧力が合流する地はウクライナとなっており、緩衝地帯になっている。著者は、冷戦後に勢力を東部に拡大した欧州連合とロシアの間の争乱を予期しているように思える。

第11章 ロシアと境界地帯
ソヴィエト連邦崩壊後、ロシアは石油や天然ガス等の資源輸出によって経済運営する事になる。

石油の輸出先は主に欧州諸国であるが、そのためにはパイプラインを第三国に通す必要があり、ベラルーシやウクラナイナ等のパイプライン通過国への主導権を握る欲求がある。

ウクライナは、モスクワに近い戦略的要衝でもある。ロシアの戦略は、欧州平野にて可能な限り西に進出して縦深性を高める事と、カルパチア山脈まで到達して防護壁とする事である。両方とも現状での実現は困難。

ロシアは東欧へのNATOの影響力を低下させたいと思っており、投資や諜報によって東欧への進出を図るかもしれない。また、欧州連合の機能不全に悩むドイツと経済的に連携する可能性も有り。

軍事的要衝であるバルト三国にロシアが関与し、紛争の火種となる可能性。三国には無視出来ない数のロシア人が居住している。

第12章 フランス、ドイツとその境界地帯
フランスとドイツの境界は、欧州を二分するものと言える。欧州大陸全土を巻き込む戦争は、フランスとドイツの境界で発生した?

フランスの衰退は、19世紀初頭にナポレオンが敗北した時に始まり、19世紀後半にはドイツに経済で抜かれた。著者は、英国のように貿易上の優位を確保出来る大帝国を構築出来なかったためとしている。

ドイツには英国のような帝国は無いが、地理的位置は欧州の中でも交易に有利であり、ドナウ川やライン川を利用出来た。

フランスとドイツの関係は、フランスと英国、米国との関係によって決定される部分があり、ドイツを拒絶出来るのは英国と米国の支持がある場合に限られるとする。

フランス経済は弱く、ドイツに比べて欧州内での地位が低下しているため、欧州連合の枠組みから抜け出て独自の経済政策を採用せざるを得なくなるかもしれない。

欧州連合に代わる案として、北アフリカや中東との地中海連合があるとする。2008年に設立され、明確には何も定義されていないが可能性はあるのかもしれない。

第13章 イスラムとドイツに挟まれた
     地中海ヨーロッパ

地中海は欧州の内海であり、北部にキリスト教徒、南部にイスラム教徒が居住する。

第二次世界大戦後に欧州にて多くの労働力が必要になると、北アフリカ等のイスラム世界から数百万人のイスラム教徒が移民として欧州へ移住した。

この移住は、以下の点で過去と異なるとする。

①移民の数
②移民の定住場所
北欧州の都市に居住し、パリは10%~15%、ブリュッセルでは約1/3がイスラム教徒となっている。
③流入速度
流入が本格的に始まったのは1960年代だった。

欧州の国民国家は、歴史、言語、文化を同じくする人々の集まりであり、移民は本来の国民の概念とは対立する。欧州各国は問題を多文化主義によって解決しようとしているが、それは分離主義に繋がり易く、先進国と呼ばれる国では急激な人口増加への対応が困難。

19世紀の欧州でオストユーデンと呼ばれる東方ユダヤ人が流入した時は、対処が出来なかった。

金融危機により、南北欧州での分裂も発生している。北部欧州は平野部が多く、国民国家という抽象概念が発達した。対して南欧では山が多く移動困難であるため、小集団が残り易く家族という集団が重要になる。

南北の対立が発生した状況で、移民排斥の感情を利用した極右政党が力を付けるかもしれない。

第14章 ヨーロッパの縁のトルコ
以下の2つの理由からトルコは欧州でないとされている。しかし、文化的影響は大きい。

①イスラム教徒である事
②東ローマ帝国をオスマン帝国が滅ぼした事

第一次世界大戦後にトルコ初代大統領となったムスタファ・ケマル・アタテュルクは、多国籍帝国の代わりに国民国家を設立し、国家を世俗化した。

これはイスラム国家を欧州の価値観で組み直す試みである。世俗化を保証するのは軍隊であった。

トルコはイスタンブールとそれ以外に分けられ、イスタンブール以外は保守的である。現在では、西洋の魅力が薄れ、世俗的軍事国家はイスラム世界全体では支持を失いつつある。

総人口7500万人の20%程度を占めるクルド人と、アルメニアが紛争の火種となっている。注目すべきはトルコが強大化している事であり、欧州に長期的な影響を与えるかもしれない。

第15章 イギリス
英国は、北海周辺では人口、国力ともに圧倒的である。英国の安全は海上支配権にかかっており、敵国の海軍力を弱めるために大陸に介入し、地上での戦争によって消耗させる事が基本戦略となる。

第二次世界大戦後に大英帝国が消滅すると、欧州大陸内部のバランスでなく、米国と欧州の間でバランスを取る事が基本戦略となった。

大陸欧州では、未だに英国を米国と同様に自分達とは異質と見做している。実際に英国の最大の貿易相手は米国であり、欧州連合とも一定の距離を保っている。

英国における紛争の火種は英仏海峡でなく、米国にあるとする。

第16章 終わりに
欧州の紛争の歴史は終わっていない。基本的な構造は変わらず、狭い土地が多数の地域に分かれ、国民国家が犇めき合っている。民族間の憎悪は未だに健在だ。

1945年~1991年の平和は米国とソヴィエト連邦が欧州で対峙したためとする。

欧州は世界の中心ではないため、世界大戦が発生する可能性は低いとする。世界大戦は欧州を静止出来る力が存在しなかったため発生した。裕福だが弱い状態にある。

発生するならば小規模紛争で、ドイツとロシアの境界地帯は紛争の火種となり易いかもしれない。それはコーカサス地方も同様。

コーカサスでは特にトルコが重要であり、南欧へのエネルギー供給通路であると同時に移民の流入経路である。

現在の欧州は以下の4つに分かれており、各領域間で状況が異なる。

①ドイツ、オーストリア
②上記①以外の北欧州諸国
③地中海諸国
④境界地帯の諸国

こうして統合しかけた欧州は、再び国民国家の集合に戻ろうとしている。自国の主権を維持しつつ、共同体として平和と繁栄を手に入れようとする望みは矛盾している。

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言語が違えば世界も違って見えるわけ

読んだ本の感想。

ガイ・ドイッチャー著。2012年12月5日 第1刷発行。



結論が出ない本。著者の思考過程を読み解くものであり、最終的には結論が出ない事を知らないと、変な理論が出来てしまう気がする。

プロローグ 言語と文化、思考
使用される言語が、その民族の文化、精神、思考方法を規定するという意見がある。

以下の2つの意見を本の中で検討する。

①自然主義:言語は人間本来の性質である
発語の種類こそ多様であるが、言語が表現する概念は単一である。
②文化主義:言語は文化による構造物である
文化的慣習が人間の概念に干渉する。

母語に固有の特徴が話者の思考に影響する話について。

第Ⅰ部 言語は鏡
言語は性質であるか、文化であるか?
第1章 虹の名前
○ホメロスの描く空が青くないわけ
「葡萄酒色の海」のミステリー:古代ギリシャ人は色弱だったのか

英国の政治家 ウィリアム・ユーアート・グラッドストンが、1858年に出版した『ホメロスおよびホメロスの時代研究』について。

ホメロスのイリアス、オデュッセイアについて記述しており、ギリシャ人の色彩感覚が19世紀の英国人と異なるという主張がある。色弱で、特に「青」、「緑」、「オレンジ色」、「ピンク」を認識出来なかった可能性。以下の根拠。

①同じ単語を使用して(19世紀の感覚では)異なる
 2つ以上の色を表す
→ワインに見える牛、菫色の毛に覆われた巨人、緑色の蜂蜜等

②同一の対象物を2つ以上の形容詞句で描写する時、
 使用される色が根本的に相容れない
→鉄は菫色、灰色だったかと思うと、馬や獅子、牛の色の形容にも用いられる

③色の使用が少ない
④黒と白が圧倒的に多く使用される
→イリアス、オデュッセイア全体で黒が約170回、白が約100回、赤が13回、黄は約10回、菫色は6回使用されており、他の色は6回未満の使用回数。青は使用されていない

⑤色を表す語彙の少なさ 

グラッドストンは、進化論的説明により、色彩知覚能力が古代においては発達しなかったという説を唱えた。黒と白と赤しか知覚しておらず、他の色名は特定の色でなく明暗を表現していたとする。

⇒文化の力を過小評価していた

第2章 真っ赤なニシンを追いかけて
○自然と文化の戦い
色感は進化する:キリンの首:心の目

1867年に開催されたドイツ博物学者・医学者会議に出席した言語学者 ラツァルス・ガイガーの主張。

古代人の色彩知覚能力が未発達であった可能性について。

古代インドの宗教詩ヴェーダ、聖書のヘブライ語においては、青の描写が無い。

近代欧州の諸言語においては、「青」を意味する言語の多数は「黒」から派生し、少数は「緑」から派生している。中国語でも「青」は「黒」から派生した。

また、「緑」は「黄」に包括されていた時代があるとし、その「黄」も赤みがかった色を意味する語からの派生語である。「青」や「緑」、「黄」が独立した一つの概念として認識されていなかった時代を示唆している。

「黒」と「赤」の二元的状況が色感の最も原始的段階であり、「赤」も「黒」と合体して曖昧な概念に行き着く。

**************

フーゴ・マグナスという眼科医が、1877年に「色感の歴史的進化について」を発表。人間の網膜が数千年を通じて色彩知覚能力を進化させた可能性について。

1875年にスウェーデンに発生した列車事故の原因調査時に、運転士が色弱で信号を見間違えた可能性が取り沙汰され、色弱は古代の普遍的な状況の名残であるとする説が流布した。

当時の進化論理解では、獲得形質は遺伝すると信じられていた。ダーウィンも特定器官を努力して使用した結果は次世代に継承されると信じていた。

<ヴァイスマンの実験>
1887年から着手された生物学者アウグスト・ヴァイスマンの実験。マウスの尻尾を切断し、その子供に尻尾があるか確認する。18世代で確認し、800匹のマウスを調べたが、尻尾の無いマウスがいなかった。

⇒獲得形質が遺伝しない事の証明

⇒古代人が色弱であり、それが近代に至るまでの努力によって変化したという説への反証

第3章 異境に住む未開の人々
○未開社会の色の認知からわかること
色の違いと色の名前:人類学のガリレオ:三つの思考実験:文化の勝利

19世紀後半に、「異境に住む未開人」の色感を調査する試みがあった事について。

スーダンのヌビア人は「青」を表す言語を持たず、黄、緑、灰色を区別しなかった。北米先住部族は、緑と黄、青と緑を頻繁に同一視した。シベリアのチュクチ族は黒、白、赤で全ての色を表現した。

⇒どの部族も語彙の欠陥が色覚の欠陥を反映しなかった。色の違いを見分ける事の出来ない部族はいなかった

W・H・R・リヴァースの調査:
オーストラリアとニュージーランドの間にあるトレス海峡諸島での視覚調査。黒、白、赤は明確であるが、他の色は曖昧で区別が明確でない。原住民は青に対する感受性が低いという結論を出した。

以下の3つの思考実験

①色感論争がロシアで行われた場合
19世紀にロシアの人類学者 ユーリ・マグノヴェエヴィッチ・グラドノフが欧州北部のイギリス諸島で行った調査。原住民達がダークブルーとライトブルーで混乱状態を示した。
色覚に問題があるのでなく、同じ色の濃淡に過ぎない色を2つの色とするとは馬鹿げていると主張。

⇒同様に青と緑を濃淡の違いと見做す文化がある

②子供の色名獲得
子供が主要な色の名前を確実に言えるようになる推定年齢は、20世紀初頭?の調査では7歳~8歳だった。2002年?の調査では3歳頃。特定の対象物から独立した性質としての色の概念を覚えるには反復訓練が必要である。
人工的な色がほとんどなく、色が伝達手段として重視されない文化では、色についての感受性が薄い。著者が自分の娘に対して行た実験では、生後18ヶ月から青い対象物を認識し出した娘に、空の色を言わないようにしたところ、空を青か白と表現した。混乱は4歳頃に収まったとする。

③未来世界
未来世界において、食物を作り出せる機械が存在するとしてみる。この機械は味、硬軟、etcを調節軸に沿って調節して食物を作り出す。人参とマンゴーの中間や、桃と西瓜の中間の果物等が出来上がるが、「○○に似ている」とか、「△△と◆◆の中間」という近似値では機械が作り出す風味を正確に表現していない。
そうした社会では、21世紀人が馴染んでいる数少ない果物の特徴に縛られず、味と口当たりが作る数百の区切りに固有の名前が付けられると思われる。

⇒味を色に変えてみれば状況は似ている。高度に純化した味を体系的に並べた味見本を味わった事が無いのなら、特定の食物から離れた抽象的なレベルでの味わいを描写する洗練された語彙は発達しない。自分の知っている果物の味に似ているとするしかない。色彩も同様で、特定の対象物から離れて、抽象的に色彩を語る必要の無い文化が存在する

第4章 われらの事どもをわれらよりまえに語った者
○なぜ「黒・白・赤……」の順に色名が生まれるのか
驚くべき発見:制約のなかでの自由:色彩を超えて

様々な文化において色名が同じような順序で進化した事象について。

順序に関する研究が遅れた理由は、社会通念の変化による。19世紀後半以降の社会において、獲得形質が遺伝するという信念が否定され、生物学的未開性でなく、文化が優位となった。そして、各人種間では感覚や運動過程、基本的脳活動の差が無いという調査結果が普及すると、諸文化を上下の階層に分ける見方は排除された。

黒白 → 赤 → 黄 → 緑 → 青

上記の順番で色彩語彙が発達するという仮説は、単純な文化を最下位、欧州の諸言語を最上位とする階層を想定したものとして、無視されていた。

1969年に、カリフォルニア大学 ブレント・バーリン、ポール・ケイが言語が色名を予想可能な順序で獲得する事を再発見した。ここで言語を人間本来の性質であるとする意見が復活する。文化は、決定するのは幾つかの焦点に独自の色名を付ける。どの焦点がどの順序で色名を得るかは人間の性質によって決定する?

文化が人間の性質という制約の中で規定するとしてみる。

赤は重要な色であり、他の色よりも目立つ存在である。その次には草木の色である黄と緑であり、自然の素材として稀な青は珍しい。

言語が明暗を基調とする体系から、基本色を重視する体系に移動するという思想は、ウィリアム・ユーアート・グラッドストンの分析と似ている。

特定個人が努力して獲得した特質は遺伝的には引き継がれないが、文化的慣習によって子孫に引き継がれるのかもしれない。しかし、文化が外界を自由に切り分けるのでなく、人間の脳や外界の性質の制約に規定される。

第5章 プラトンとマケドニアの豚飼い
○単純な社会ほど複雑な語構造を持つ
文明の進んだ言語の方が複雑か:社会が単純なほど、多くの情報を単語内で表現:大きな社会ほど新しい音素が出現し易い:複雑な社会ほど従属節に依存しがち

言語の複雑性を構成要素の数と定義してみる。語彙の量は、文字を持つ文化と持たない文化で大きく違う。文字を持たない小規模社会の平均的語彙量は3000語~4000語であるが、欧州の主要言語の二言語辞書は、小型でも5万語を収録する。

文字の無い社会では、ある世代の理解語彙が次世代まで存続しない。

そのため、社会が単純なほど、多くの情報を単語内で表現する。英語では名詞の単数と複数を区別するが、ハワイ語では単数と複数を明示せず、独立語を使用する。

1992年に、言語学者 リヴィア・パーキンスが人口規模、社会階層、生存維持経済の種類、手工芸技能の専門化によって、調査対象社会を以下の5つに分類して調査した。

①血縁集団(バンド)
数家族で構成され、定住地を持たず、狩猟と採集に依存し、家族外に権威構造を持たない。
②小集団
初期農業が見られ、半定住で、最小限の社会組織。
③部族
農耕を行い、定住地を持ち、手工芸技術の専門家が数人見られ、権威者が存在する。
④小作農社会
集約農業生産を行い、技能の専門化と地域的権威構造を伴う。
⑤都市社会
複雑な社会的、政治的、宗教的組織を伴う。

単語内部で表現される情報量によって単語の複雑性を比較したところ、社会が単純であるほど、多くの情報を単語内で表現する可能性が高かった。

怠惰と創造の2つの力があり、労力を省こうと発音を簡単にして単語構造は単純になる。逆に言語が創造されていけば言語は複雑になる。孤立した集団であれば、見知らぬ者同士よりも共通認識に基づいた簡略な会話が可能であり、他言語と触れ合う事も少ないので、語を単純にする必要が少ない。

11世紀以前の英語は現在のドイツ語に似た精巧な語構造を持っていたが、1066年以降のフランス語との接触により複雑性が消失したとする。語構造が僅かに異なるだけで意思疎通が困難になるため、話し方の変種が混じる大規模社会では語形の単純化に向けた圧力が高まる。

また、書き言葉が多用されると、単語間の境界が意識され、単語の融合が生じ難くなる。

他に以下の傾向がある。

①大規模社会ほど大きな音素が出現し易い
2007年に言語学者 ジェニファー・ヘイ、ローリー・バウアーが200以上の言語の音素の統計的分析結果を発表したが、話し手の数と音素総数には有意の相関関係が見られた。

規模が小さい社会の言語は、弁別的母音、子音の数も少ない傾向があった。話し手の数が多い社会では、音素総数も多い傾向がある。

②複雑な社会ほど従属節に依存
従属節とは、一つの節を別の節に入れ子にする統語過程。

(例)魚をじっと見ていた例の海豹の事を君に話したはずだ

「例の海豹の事を話したはずだ」という単純な文に、従属節を用いながら、順次情報を付加出来る。ヒッタイト語やアッカド語、ヘブライ語等の古代言語の叙述体には反復が多く、従属関係の機構が未発達であるため、「そして……そして……」の連続で出来事を時間的順序に従って並べる単純な文体が多いとする。

以下は、紀元前14世紀に存在したムルシリ王がヒッタイト語で書いた報告書であるらしい。

私はクンヌーに向かって戦車に乗った
そして雷雨がきた
それから嵐神が恐ろしい雷を鳴らし続けた
そして私は恐れた

⇒現代的な文章で従属節を使用すると以下のようになるとしている

私がクンヌーに向かって戦車に乗っていると、嵐になった。嵐神の雷が恐ろしかった。

第Ⅱ部 言語はレンズ
母語が思考に影響する可能性。
第6章 ウォーフからヤーコブソンへ
○言語の限界は世界の限界か
言語相対論―世界を知覚するレンズ:ヴィルヘルム・フォン・フンボルト、登場:「落ちる」という動詞のない世界:ホピ族の時間感覚

言語相対論:
観測者の外界知覚は、慣性基準系のみならず、観測者の母語にも依存する。

ヴィルヘルム・ヴォン・フンボルト(1767年~1835年):
言語学者として、文法的差異によって思考の差異が形成されたと主張。

米国アリゾナ州ホピ族の言語に時間に言及する手段が無いという意見。「私は5日間留まった」でなく、「私は5番目の日に去った」と言う。しかし、1983年に言語学者 エッケハート・マロトキが書いた「ホピ・タイムス」では、ホピ語の数多くの時間表現や時制、相形式を記述している。

************

ロシア系米国人言語学者 ロマーン・ヤーコブソンは、言語の違いによって表現が強いられる事の影響について意見している。例えば、英語であれば「隣人と過ごした」という言葉で隣人の性別を曖昧に出来るが、フランス語、ドイツ語、ロシア語では出来ない。

逆に英語では動作の時間を特定しなくてはならず、ed、have been ing 、be ing、will be ing等を選択するが、中国語では過去・現在・未来でも同じ動詞形が使用可能。

それぞれの言語が習慣的に、どのような情報について考えるかを強いるとする。

言語構造が話者の理解力を制約し、話者は使用言語が持っている概念と区別しか理解出来ないという主張は下らないが、特定の表現方法を習慣的に使用する影響はあるのかもしれない。

第7章 日が東から昇らないところ
○前後左右ではなく東西南北で伝える人々の心
カンガルーとグーグ・イミディル語:自己中心座標と地理座標:鼻を南に向けて泣く:海側の頬にパン屑:絶対方位感覚:相関関係か因果関係か

カンガルーという名称:
1971年に、人類学者 ジョン・ハヴィランドがオーストラリア諸言語のグーグ・イミディル語の調査を行ったところ、灰色の大型カンガルーを「ganguru」と呼んだ。カンガルーが「私には分からない」という意味であるとは俗説であるらしい。

自己中心座標軸と地理座標軸:
グーグ・イミディル語の別の特徴として、地理座標軸の使用がある。

他の言語で使用する自己中心座標軸では、自らの身体に依存した空間把握を行う(信号の角を右に曲がり、左手に見えるスーパーマーケットの角を左折する等)。

地理座標軸では、東西南北に固定した空間把握を行う(信号の東を北に進み、西にスーパーマーケットが見えたら、そこを東に曲がる等)。

他にも地理座標軸に依存する言語は世界各地にあるらしい。

ツェルタル語:
メキシコ南東部高地で発見されたマヤ言語の一つ。ツェルタル語の話者は、南側が急峻で北に向かって緩やかに下る山並みの山腹に暮らしている。この地形が基本になり、上り坂、下り坂、横断で、横断の方向を特定する時はXの方向へ横断とする。

こうした地理座標軸を活用する言語の話者は、睡眠時間以外は基本方位を知っていなければならない。そうしなければ、会話において基本的な情報も伝達出来ない。

そのため、グーグ・イミディル語の話者に方位感覚のテストをすると、戸外か室内かに関わらず、正確な方位感覚を持つ事が確認出来るらしい。

第8章 女性名詞の「スプーン」は女らしい?
○言語の性別は思考にどう影響するか
「ウーマン」は男性?「飛行機」は植物?:男性名詞・女性名詞の影響を確かめる実験:言語の性別、その豊穣な世界

ドイツ語では、無数の対象物を男性、女性に振り分ける。ジェンダー体系はスペイン語、フランス語、ロシア語にも見られる。

こうした欧州諸言語では、男性と女性のジェンダー分類が何千もの対象物に及ぶ。髭は女性系で、水は女性系だが茶にすると男性系になる等。

アフリカを中心とした幾つかの言語において、女性名詞のマーカーは「女」を表す名詞の短縮形に、無生物名詞のマーカーは「もの」を意味する名詞の短縮形に似ている。ジェンダー・マーカーは「女」、「男」、「もの」等の総名称として出発し、当初は女、男、もののみに適用されていた可能性が高いとする。

それが担当領域外の名詞にまで拡張され、ジェンダー体系の秩序が失われたとする。

古英語では、ジェンダー体系は各語尾の体系に依存しており、語尾によってジェンダーを判別したとする。1066年のノルマン征服後に、各語尾の体系が崩壊し、「it」という単語でほぼ全ての無生物が呼ばれる事になる。

ジェンダーは僅かであるが生き残るが、2002年3月20日に海運業界の日刊紙『ロイズ・リスト』は、船を女性系でなく中性系で呼ぶとした。「her」から「it」への転換。

以下の実験。

<モスクワ大学心理学研究所>
1915年に、被験者50名に対して一週間の曜日が特定の人物であると想像し、思い浮かんだ人間を描写して貰う。全ての被験者が、月、火、木は男性名詞であるため、男性を描き、水、金、土、日は女性名詞であるため、女性を描いた。

<心理学者 トシ・コニシ>
1990年代に、ドイツ語とスペイン語の話者のジェンダー連想を比較する実験を行う。様々な名詞の特徴を回答して貰うと、男性名詞を強いと回答する傾向があった。

⇒文法的ジェンダーが話者の連想に影響する

第9章 ロシア語の青
○言語が変われば、見る空も変わるわけ
日本のアオ信号:脳を覗いてみる

日本の交通信号の色が、青味を帯びた緑である事について。

日本語では、「アオ」は緑と青の双方を含んでおり、1930年代に米国から輸入された青信号は緑色だったが、日常会話の中で青信号と呼ばれた。

その当時は緑色灯を青と呼んでもおかしくはなかったが、時の経過に連れて不自然になる。しかし、道路標識を世界共通にするための国際基準があるため、緑の範囲内でありながら、出来る限り青に近い色合いにする事で整合性を保とうとしている。

**************

こうした色認識については色を見分けるまでの反応時間や脳測定により、言語によって色認識の難易度が変化する事が観測されたとする。

脳測定をすると、二つの色が同色であるか確認する際には、発語の必要が無い場合でも、視覚知覚回路が言語回路に協力を求めている事が明らかになった。

エピローグ わららが無知を許したまえ
言語学の調査研究は緒についてばかりであり、社会構造と文法体系構造の繋がりについての研究は始まったばかりである。

入力と出力を比較するだけでなく、脳活動を直接的に測定可能になれば、概念形成や知覚、記憶、連想関係等と思考要素が母語に影響される様子等について明確な解答が得られるはず。

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質問する事について

質問は、知る事が目的でなく、確認を目的として行うものであると思う。

既に知っている事について確認する。或いは異なる角度から設問を組み直す。

本当に何も知らない場合に質問する事は有効な学習方法とは思えないし、何も知らないであろう人間に質問する事も良くないと思う。

自問自答する事が多く、自分に質問する事は精神衛生に良くないと感じる。

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鴨料理を食べる

生活に変化をつけようと思って鴨料理の店に行った。

店員や料理人が話しかけてきて疲れた。

「この料理には、鴨のレバーと砂肝を混ぜてあるんです」
「この卵は数時間前に出産された鴨の卵なんです」

住んでいる場所やら普段の食生活まで質問されて、何だか気詰まりだった。礼儀正しくしなくてはいけないという重圧。

それと、以下の発言は何か違うと思った。

「鴨ってダイエットに良いんですよ」

前菜にスープ、メインにデザートまで含めると、鴨自体は低カロリーでも食べ過ぎな部類に入ると思う。

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クラウドファンディングでレストランや食物生産に資金を投入しようと思っている。

今日の店には投資しない事に決めた。

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強いものは知覚出来ない

以下、色々と考えている事。

可変的要素として知覚出来る事は、弱い要素 = 容易に操作可能なものであると思っている。

会社を辞めて起業する事と、会社を辞めないで自らのスキルアップに努める事では、後者の方が選択し易い。大抵は、起業すること自体が選択肢に入らないと思う。

本当に社会を支配しているルールは、意識出来ないと思う。

自分より上位の存在に逆らう事を思い付く事は出来ない。重力や時の流れに逆らう事を思い付かないように、社会システムは無自覚的に僕の思考や行動を規定しているはず。

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以下は、インターネット上の掲示板の記述。

円が安全資産というのは誤解だ。そう思う人間はマスコミ報道を鵜呑みにしている。今までは、 「魅力の無い円」を売って「魅力のある資産」に投資していたが、現在は金融機関の苦境に伴い反対売買で売却している。

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台湾メーカーの鴻海精密工業が、シャープを買収するらしい。

鴻海精密工業会長は、「40歳未満の従業員の雇用は守るから安心して欲しい」とコメントしているらしい。

40歳以上は必要無いという意見だ。

これは技能向上という概念の否定であると思う。

近年のインターネットに投稿される異世界系の小説は、「レベルアップ」が前提になっている。

異世界に転生した主人公が、冒険者として公的に登録され、敵を倒す事によって経験値を獲得して強くなる。そのような物語が多いと思う。

実世界においては、評価されるような経験を積む事が出来る人間は一部であり、ほとんどの人間は経年によって劣化する。少なくとも、社会からはそのように評価されてしまう。

年功序列型の人事制度では、「レベルアップ」が前提になっており、従業員の能力が勤続年数に応じて成長するものとなっている。

現実には、勤続年数に応じて体力が衰え、創造性や柔軟性が失われてしまうと社会的に認知されたら、現在の社会システムは維持出来ない。

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購買力平価で考えた場合、円高は継続するはず。

日本の株式市場は製造業に偏っており、経済全体の姿を正しく反映しない。

そうした状況下で株価対策や通貨安を志向する事は、古い経済システムに依存する点で、年功序列型の人事制度と似ていなくもない。

経年に応じて社会システムが劣化しているのであれば、古いシステムに寄り添っている僕の現在の状況は非常に危険なものである事になる。

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「弱いリーダー」が会社を救う

読んだ本の感想。

井上健一郎著。2015年12月31日 初版第一刷。



以下は、「経営組織アカデミー」へのリンク。

http://www.acala-cr.co.jp/service/%E7%B5%8C%E5%96%B6%E7%B5%84%E7%B9%94%E3%82%A2%E3%82%AB%E3%83%87%E3%83%9F%E3%83%BC/

著者の持論 = 組織運営を円滑に行いながら人材育成するには、5人程度の少人数集団を中心に組織を運営する事が効果的である。小集団には弱い指導者が適任?

弱いリーダー:
東洋的、調和、柔軟、忍耐力、分析、静。周囲との調和を図る事は、小集団活動に適している。他者の意見を傾聴し、メンバーの自発性を促す。

強いリーダー:
西洋的、洞察、剛強、行動力、発想、動。明確なビジョンを掲げ、強烈なリーダーシップを発揮する。

⇒強い指導者によって集団が発展していく場合もあるが、それは指導者の選択と決断が間違っていない場合に限る。

強い指導者は、常に指示に従う組織を生み出す?が、自立し、自ら考える組織は弱い指導者が作り出すのかもしれない。

第1章 「強いリーダー」から「弱いリーダー」へ
    ―新時代のリーダーシップ論

第1節 リーダーシップ論は時代とともに変化しています
1950年代以降、様々な指導者論が誕生している。以下の2つの要素。

①生産体制高度化、効率化
経済活動主体が個人から組織に移行
②競争激化

成果主義、人の管理がテーマとなり、強い指導者が求められた。

○リーダーシップ特性論
ギリシア時代から1940年代までの指導者論。
優れた指導者に共通する身体的特徴、性格を研究し、生来の資質を重視した。

○リーダーシップ行動論
1950年代以降?の経済発展により、多数の指導者を輩出する必要性から作り出された。米国を中心に、指導者を作り出す思想が発表される。代表は以下の2つ。

①システムⅣ理論
ミシガン大学 社会調査研究所所長 R・リッカートが提唱。組織を一つのシステムとして、以下の指導者を分類。
 ・独断的専制型(システムⅠ)
 ・温情的専制型(システムⅡ)
 ・協議型(システムⅢ)
 ・集団参加型(システムⅣ)
上記の内、システムⅣの指導者が理想的とした。

②PM理論
1966年に大阪大学 三角二不二教授が提唱。リーダーシップを集団機能の概念として捉える。
 ・Performance(成果を重視)
 ・Maintenance(チーム維持を重視)
リーダーシップは、上記のPとMのバランスによって機能するとした。

こうしたリーダーシップ行動論が発展し、以下の理論を生み出した。

○状況リーダーシップ論
1977年に、P・ハーシー、K・H・ブランチャードによって提唱。メンバーの成熟度や仕事の達成度等の状況に応じてリーダーシップの型を以下の四段階で変化させる。
 ・教示的
 ・説得的
 ・参加的
 ・委任的
後ろに行くほど、指導者の関わりは軽くなる。

○ヴィジョン志向のリーダーシップ理論
1980年代に登場。組織の長期発展には、未来のヴィジョンを創造し、メンバーと共有する事が必要であり、それが指導者の役割とする。世界的に経済が成熟した停滞感、環境変化による競争激化を背景にするらしい。

○変革型リーダーシップ
ハーバード・ビジネス・スクール名誉教授 ジョン・P・コッターが提唱。以下の2つから考える。
 ・リーダーシップ(変革型リーダーシップ)
  変革を成し遂げる創造的指導
 ・マネジメント(維持型リーダーシップ)
  環境に対応して組織を維持する

⇒強い指導者という思想は、ジョン・P・コッターが提唱した「変革型リーダーシップ」に基づく

以下は、強い指導者に必要な技術。

①指導者が示すもの(ヴィジョンとルート)
 1.どこへ向かうのか
  Why(何のために)、What(何が最適か)
 2.どうやって向かうのか
  What(何を使って)、How(どのように)
②指導者の行動
 1.先頭を行く
 2.周囲を巻き込む
③周囲を巻き込むための指導者の姿勢
 1.周囲の状況把握・理解
 2.発信・働き掛け
 3.あり方

⇒強い指導者は明確な目標を語り、そのために成すべき事を提示する。常に前向きで明るく、周囲を気遣う。そうしたカリスマになるには、高レベルの思考力と行動力が必要になる。

第2節 「強いリーダー」の頭の良さは
    「論理的思考力」から生まれる

1990年代以降のIT化やグローバル化を背景に、欧米発の国際基準に基づく経営方針や管理が必要とされた。そこで重視されるのは論理的思考力である。

経営コンサルタントやMBAがブームとなり、論理的思考力に裏打ちされた経営哲学が重視されるようになる。



ハーバード・ビジネス・スクールで以下を学んだとする。

①合理的意思決定のための思考法
不完全な情報下で判断する方法論。結果が重要なのでなく、そこに至るまでの思考過程を重視。
②理論的フレームワーク
ハーバードの授業科目には、学習上の基本的枠組みがあった。

<論理的思考>
思考の流れ(前提 → 推論 → 結論)に筋道が通っている事を重視。

前提:
重なり無く漏れなく網羅・分類・整理する事による「問題の見える化」
推論:
偏りの無い判断をするための「全体感の把握」
結論:
優先順位付けによる「取捨選択」

上記を段階的に進めるために、各過程においてフレームワークを設定する。問題の構成要素を枠内に入れ、細分化した要素について白黒を二者択一し、思考を積み重ねる事で合理的解決策を見つけ出す。

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論理的思考における以下の要素。

・効率性
論理的思考を実践する体系。無駄を取り除く事であり、置き換えると時間短縮となる。

・客観性
論理的思考の信頼性を保証する。個人の主観でなく、多くの人間が幅広く共有可能。客観性は情報を徹底的に活用する事で生み出されるとする。情報共有により、「皆が知っている事」になって信頼性が向上。

第3節 「強いリーダー」の動きの良さは
    「積極性」から生まれる


強い指導者は迷わず意思決定する。



自分自身に対する自信が素早い状況判断を可能にする。自分を肯定し、自らの言動に責任を持つ事で意思決定力が生じる?

ハーバード・スタイルの指導は外向的で高エネルギーとする。



第4節 本当にそうなのでしょうか?
   「強いリーダー」の弱点とは


以下は、論理的思考の弱点。

①想定外に対応出来ない
論理的思考は、客観性を背景にして、漏れの無い前提と根拠のある推論によって精度の高い結論を導き出す。

各過程において、思考を進めるための枠組みを活用するが、枠組みが一度構築されると、その中に入れる要素と入れない要素の基準が出来る。そうする事で思考を整理して解決策の焦点を絞る。

この過程で、枠外に入れない要素は考慮から排除されてしまう。

限定的な目的の場合には良いかもしれないが、共同体の活動方針や計画策定等の幅広い曖昧な目的には適用出来ないかもしれない。

フレームワークを使用した施策は成功した時にこそ注意が必要。枠が正しいと思うと、枠外を間違っていると認識し、意外性を許容出来なくなる。

②目的設定が苦手
自社製品(What)をどのように(How)売るかを追及するために論理的思考は力を発揮する。
しかし、何のために(Why)売るかという問題には回答困難。

Whyは人間の感情の問題であり、論理的思考はWhatやHow等の分類・整理・取捨選択とは相性が良いが、正確に分類出来ず、状況によって変化する感情を扱う事が困難。

顧客の共感を呼び覚ます物語の構築には論理的思考では対応出来ない。

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以下は、積極性の問題点。

・人材育成
主体性の発揮は出発点であり、最終目標ではない。単なる依存から自己を確立し、自立した個が相互に補完し合う状態を理想とする。

簡単な問題については積極的な指導によって対応出来るが、複雑な問題については構成員全体の協力が必要になる。

積極的指導者は静観しなくてはならない時にノイズを振り撒く。また、長期的には負ける事に意味がある場合もある。成功体験が多過ぎると、固定概念が強まり、柔軟性に欠けたパターンに固執する状態になる。

第5節 なぜ今、「弱いリーダーシップ」が必要なのか

グローバル化やIT化によって、2000年代から新興国の台頭が顕著となり、世界経済への参加者が増加している。日本が世界経済において果たす役割が大きな課題となり、労働集約的な新興国に対して、資本投下や知的付加価値の必要性が認識されている。

それは大企業のみに限定された課題でなく、高度情報化社会においては幅広い主体に影響する。

20世紀のビジネスは、欧米型の以下の2つの思想を中心に発達した?

①競争
戦い勝ち取る意識。市場が拡大する中で、強者が弱者を打ち負かす。東洋は調和を重視するが、西洋は対象を駆逐しようとする。

②縦軸を主体とした組織
指導者が決定し、部下が実行する上下関係を基礎とした縦軸の組織。こうした組織は、競争概念と相性が良く、指導者の決定は絶対なので、迷いも無駄も生じない。

以下は、「ピーターの法則」の記事へのリンク。競争と縦軸主体の組織を前提にしている。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-898.html

縦軸の組織が機能するには、指導者が正しい事が絶対条件となる。方針が誤っているのに行動規範が制限されると、組織全体が危機に陥る。創造性に相応しい組織ではない。

高度成長期には、強い個人が必要であったが、正解が複数ある複雑な社会では組織全体が考える必要性が高まる。発見には強さは必要でない。確実な正解があるならば強い指導者が組織を鼓舞すれば良いが、正解が見えない時は弱い指導者が必要になる。

第2章 「弱いリーダー」ってなんだ!?①
    ―「論理的思考力」を疑ってみる

第1節 若手社長、川上武(42歳)の改善計画は
   なぜうまくいかなかったのか?

竹芝機械という架空の会社の業務改善について。

川崎、鶴見、横浜に工場があるが、完成品を保管する倉庫が川崎にしかないため、鶴見と横浜に倉庫を増設した。その結果として、拠点間の人員交流が減少し、倉庫が情報共有の場として機能しなくなったために不良品の発生率が増加したとする。

○無駄の効用
マサチューセッツ工科大学 ダニエル・キム教授は、結果の質を高めるには、行動の質を高める必要があり、そのためには思考の質を高め、さらにそのためには関係の質を高めるべきとする。

チーム内の相互関係が良好でなければ良い思考にならない。

創造的な仕事のためには、余裕が必要であり、無駄が余裕の源泉であるのかもしれない。

失敗にも大きな価値があり、成功確率を上げようとすると、既存の手法や判断基準が優先されるため、新しい価値を生み出し難い。無駄は人材育成の肥料でもあり、無駄と思われている人間が状況変化によって必要になる場合もあり得る。

第2節 二代目当主、橘光男(39歳)がつまずいた
   近代経営手法の落とし穴

華橘荘という架空の老舗旅館について。

美容と癒しをコンセプトに女性客を取り込もうとするが思ったように顧客が増えない。都会と同じような利便性を重視した結果、自然の提供する価値を逃していたのかもしれない。

売り上げ拡大に終始するのでなく、自分達の使命を自覚すべき?

○情報に振り回される
SWOT分析(強味:Strength、弱味:Weakness、機会:Opportunity、脅威:Theatの4つの視点から施策を考察)等の思考過程では戦略立案が容易になるが、こうした論理的方法論では、強弱や機会・脅威等の両極で分析するため、中間的要素や強味と弱味が状況次第で変化する事を見逃し易い。

自らの使命(何のために、Why)が定まる必要性。使命のために役立つか否かを判断基準にする。

目的が無い状態で膨大な情報を入手すると、迷いが増える。

第3章 「弱いリーダー」ってなんだ!?②
    ―「積極的行動力」を疑ってみる

第1節 笹田光輝(34歳)のドン(純)なリーダーシップ
イベント企画会社「立木プランニング」という架空の会社の話。

存在感が薄い人間が良い影響を与える事について。笹田リーダーが、「地味な企画でも良いんじゃない」と言った事で新しい発想が生まれる。その影響を誰も自覚してない。

常勝はあり得ず、退く事も大切。最終的勝利のためには局地的敗北も必要。

第2節 カリスマリーダー候補、荒川美穂(34歳)の迷い
ABコンサル会社という架空の会社の話。

自らが全てを背負うのでなく、各メンバーに委ねて手を差し伸べる方法への転換。創造性は押し付けられる環境からは生まれない。

実行のためには強い指導者が必要であるが、発見のためには必要でない。先頭に立つ者が正解を知らない場合への対処。特定個人の意見を中心に動く組織では、特定個人の方法が誤っていた場合に代替案を考える事に余計な時間がかかる。



欧米においては、経営が独立した職業になっており、経営のプロが現場にトップダウンで命令する。日本の場合は、実際の決定の多くが現場で為され、稟議と言う形式で順番に上に回して確認していく。意思決定の中心が現場に近い中間管理層によって為される。

トップダウン型の組織運営は責任の所在が明確で意思決定が素早いが、ボトムアップ型の組織は現場が当事者意識を持ち、指導者に依存しない。

「ビジョナリーカンパニー」に登場する企業は、指導者が全てを決めるのでなく、現場を育成するために指導者が意思決定を放棄する事がある?



上司が下に位置し、部下の補助をする。

第4章 「弱いリーダー」が生み出す4つの理想像
   ―「弱いリーダー」だけが創造型チームを
    作れる!

第1節 ビジネスでもっとも大切なこと―
   「問題解決力」こそリーダー必須の条件

問題解決への参加の仕方の違い。

強い指導者:
メンバー全員の上に立ち、積極的に引っ張る。具体的な解決策も自分で決め、会議進行も主導する。

弱い指導者:
メンバー全員が問題解決を進めているのを、客観的に眺める位置に自分を置く。補助的な立場にいる促進的存在。

また、問題解決過程における最終目標の捉え方も異なる。強い指導者の組織はトップダウン型であり、会社が決めた目標に対して、各部門、小規模チーム、個人へと目標をブレイクダウンする。
弱い指導者の場合、経営側が常に正解を知っている訳でないと考え、現場から新しい発想が生まれると期待する

第2節 「弱いリーダー」とはこんな特徴を持っている
弱い指導者は、個々の力を集約する事を大切にする。そのための以下の特徴。

・周囲からの受信を優先
・柔軟な思考を評価
・強い表現で指示を出さない
・流れを感じ取ろうとする

以下の比較。

○目的
強い指導者は競争に勝とうとするが、弱い指導者は争わずに勝つ事を選択する。市場シェア獲得か、異なる価値の提供か。

○信条
強い指導者は行動力が必要として、組織を統率する影響力を持とうとする。弱い指導者は発想が大事としており、常に自分自身と向き合って自らの柔軟性を検証する。

○意思疎通
強い指導者は、自分の意見や指示を発信する。弱い指導者は受信を大切にする。

○管理手法
強い指導者は明確な指示と、指示の徹底を意識する。命令的管理スタイル。弱い指導者はメンバー自身で考える機会を多く設ける。自分の意見は押し付けず、質問による問い掛けから出てきたメンバーの考えを尊重する。

○判断基準
強い指導者は合理性や効率性を重んじる。弱い指導者は組織全体の理想や思いを重視する。戦略の重視か、精神的展開の重視か。

○意思決定
強い指導者は、迅速に決断し、動的に行動する。弱い指導者は、メンバーの意見を吸い上げる事に価値を置く。

○部下育成の方針
強い指導者は、個々のメンバーが自分の役割を全う出来る技術や知識を身に付ける事と、段階的な経験によって役割遂行レベルを上げる事を求める。万バーの機能性向上。弱い指導者は、メンバー個々が多くの気付きを生む事を期待する。そのため、段階的に経験させるのでなく、積極的に任せ、部下の発想を豊かにしようとする。

第3節 「弱いリーダー」が率いるチームの4つの理想
①当事者意識を持つ事が出来るチーム
当事者意識を持つ事の重要性。人間は自分で決めた事や自分の発言には5倍のコミットメントを見せるらしい。



強い指導者が迅速に意思決定する事によって、メンバーの当事者意識が薄れるかもしれない。

②豊かな発想を生み出すチーム
制約を少なくする事で、新しいものを生み出す。前提条件を外して違う視点から見る事の重要性。

③現状を的確に把握出来るチーム
多くの意見を集約する事で現状を把握する。

④自主的に動くチーム
当事者意識は自主性にも繋がる。

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考えていて纏まらない事

勉強会に向けて自分の考えを纏めている。

上手く言葉にならない。

◎論理的に考える事の弱点

「頭が良い人」と形容される人間の中には、異様に残酷な人間がいると思う。

論理的思考とは、因果関係によって事象を説明する事。論理は、「主張」と「根拠」から成り立つ。

「A」が発生した原因は「B」である。

上記が論理であるとして、人間が把握出来る要素数は少ないため、原因は少数であるほど説得力が増すとしてみる。理由や原因が少ないほど正しいと思われるのなら、「敵」と「味方」という区分は非常に分かり易い。

物事は複雑なものであるが、そこに単純な善悪論を持ち込めば共感を容易く獲得出来るとしてみる。さらに、自らが悪を倒す役割を引き受ければ良い。

人間の思考は周囲の影響を受け易く、帰属する共同体に思考を外部委託しているため、公認を獲得すれば正義となる事は容易い。

論理を追及すると、常に他人を攻撃しなくてはいけないのかもしれないし、定常状態や客観的視点という前提条件も危ういものであるのかもしれない。

◎技術的向上

仕事上の技術を身に付ける事が本当に素晴らしい事であるかについて悩んでいる。

特に、会話の仕方やメールの書き方、議事録の取り方や仕事の進行方法等は、本に書いてある事を実行しても、正しく機能する確証が無いものがほとんどのように思える。

本の中には、「正解」が書いてあり、その「理由」も記述されている。

人間が全て同一で、同じように思考・行動するならばそれで良いが、本当にそうなのか?

メールの書き方や、議事録の書き方、会話の仕方については、その人によって正解が異なり、それも個性に由来するのでなく、相手の関係性によって正誤が決定するように思える。

さらに、判断する人間自体が自分の判断理由を誤認している。

組織全体の関係性を良好にする事が重要で、仕事の技術を身に付ける事の重要性はそれより劣る気がする。

全体的に悪化してる組織内で、個人が努力しても成果は出ない。

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今週が終わった

来週から勉強会に参加するので、色々と本を読む。

読むつもりだけれど、全て読めるかが不安だ。20冊くらいある。

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若者との会話

会社で20代前半の若手社員と会話すると、自分が失ってしまったものを感じてしまう。

僕にも、早く仕事が出来るようになって周囲の役に立とうとした時期があったし、義務や意味について真剣に考えた時があった。

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インターネット上の掲示板で、黒田バズーカ(マイナス金利導入)が滅茶苦茶に批判されている。単純に批判している人間と、あれで株安円高になる事は容易く予想出来たのだから対処しない方が悪いという2種類の意見があるように見受けられる。

そうした予想は複雑過ぎて出来ないと思っている。

僕が思う事として、こうした政策決定こそ人工知能で代替すべきと思う。

人間同士による話し合いに頼るから、数ヶ月毎でなければ金利を変える事が出来ない。

その時々の気温に合わせて冷房や暖房の温度を変更するように、金融政策も機械が実態に合わせて瞬間毎に変更するようにすべきと思っている。

人間が曖昧な情報を収集し、明確化し、機械が情報を統合する。

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人生が長いという事は、複数回の人生を生きる事を覚悟する事であるらしい。

40代までの人生を一区切りとし、40歳~80歳までの人生、80歳~120歳までの人生を想定するとしてみる。

金融市場の予測と異なり、人間の老いは確実に予想出来る。

若者のキャリアプランでは、「強くなる事」が前提になっている。知識を蓄え、技術を身に付け、着飾り、そのような事が様々な媒体で奨励される。

僕の年齢では、「衰える事」が前提になる。忘れてしまうし、出来なくなるし、醜くなる。

様々な媒体では、個人の能力を引き上げるよりも、自らの共同体を強化する事が奨励されているように思える。

貯金や稼ぐ力に頼るのでなく、自らが頼る事の出来る人間を養成するべきであるらしい。

面倒な話だと思う。

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疲れた

変に忙しい一日だった。

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雑感と長生きするリスク

インターネット上の掲示板にて、「黒田バズーカが味方に着弾」という記述が散見される。

株価の値下がりは世界的な現象であり、日本銀行にのみ原因があるわけではないが、2016年1月の値下がりが中国や産油国への懸念によって生じたものとすると、2016年2月の値下がりは金利低下による銀行収益への懸念に由来するとしていた。

この2年間~3年間の異常な円安は期待出来ず、情報によって稼ぐ時期になっているとしていた。輸出偏重型重厚長大産業に不利な状況。

状況を分析して差益を期待するのでなく、面白い発想に価値が生まれるのだと思う。苦手な分野だ。

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日経ビジネスONLineのコラム「キーパーソンに聞く」(やがて来る「150歳寿命社会」で成功する秘訣)と、日本ビジネスプレスのコラム「読書ガイド」(平均寿命は200年で倍に、それでも人は必ず死ぬ理由)を読んだ。

1840年を起点とすると、人類の平均寿命は1時間あたり15分ずつ伸び続けており、2倍になっているらしい。これからの50年で、平均寿命が150歳~200歳程度になる可能性があるのだとか。

しかし、人間の老化速度は変化しておらず、死亡率倍化期間(死亡率が倍になる期間)は先進国でも新興国でも8年間で変わらないらしい。50歳の人間が1年間に死亡する確率は、42歳、34歳の時と比較して2倍、4倍となる。

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鍛錬による老いの克服を奨励している事に疑問がある。

老いても新しい知見や技術を身に付け、成長しなくてはならないとすると、激しい苦痛が生じると思う。

何も刺激を与えなければ、脳の神経細胞が徐々に消失し、刺激に対する柔軟性が低下するため、常に刺激を与えなくてはならないとしているが、それは拷問なんじゃないのかな。

生物の進化の特性上、老年期に有害に作用する遺伝子や、若年期に有利に作用するが、老年期に不利に作用する遺伝子は蓄積され易いとしている。

若年期に免疫系が機能すると感染から守られるが、老年期には免疫系が過敏となると関節リウマチを引き起こす事が、その一例であるらしい。関節リウマチの原因となる遺伝子は、免疫系が機能するための遺伝子であるため、人類進化の過程で優遇されてきたのだとか。

生殖可能時に有利に作用する遺伝子が蓄積される事による弊害。

老いる事がそれほどに不利で不自然であるのならば、何のために、どのように生きるのか難しい問題だと思う。



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機関銃が沢山ある世界

昨日の続き。

以下は、「複雑な問題を論理的に誤る」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-2177.html

論理的に考えると間違えてしまう。

機械によって人間の労働力が代替され、失業者が増加するならば、以下のような変化が発生していたはず。

発生していたはずの事象:
一人の兵士が100人分の敵を殺す事の出来る機関銃が発明されたのだから、残りの99人の兵士は戦争に参加しなくて良くなる。機関銃等の優れた兵器の普及が、兵士の数を減らした。

⇒現実には、一人の兵士が100人分の働きをするようになる兵器が100人全員に支給され、さらに兵員数が増加し、国家総動員体制が構築される。戦争が専門の兵士だけのものでなくなり、一般人も戦争に動員されるようになる。

「大格差」(タイラー・コーエン著)P26:
アメリカ空軍のフィリップ・M・ブリードラブ副参謀総長(当時)は、こう述べている。「空軍にとって最も大きな人事上の問題は、無人システム関連の要員確保だ」。そのなかには、無人航空機の整備を担当するスタッフと、それが撮影した画像の解析を行う分析官も含まれる。
アメリカ空軍によれば、無人航空機の「プレデター」を二四時間飛ばせるには、約一六八人の支援スタッフが必要だという。さらに大型の「グローバルホーク」の場合、必要な人数は約三〇〇人にのぼる。この数字は、F16戦闘機の場合は一〇〇人に満たない。

⇒無人化によって、より多くの人員が必要とされるようになっている。

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機械的な知能が普及する状態をどのように予想するのか?

多くの要素を同時に計算困難であるため、一つの要素のみが変化する場合を予測する。上記の例では、兵員数のみを計算し、兵員数の減少という予測が成り立つ事になる。

結果が明らかである場合、論理構築は容易いが以下を考慮する必要がある。

①供給
新技術を導入、維持するために必要な資源、エネルギー、労働力、時間、ETC。

②需要
新技術を導入する事に事によって得られる利益。武器を導入する場合、強い敵や弱い獲物が存在しなくてはならない。

③その他
導入する新技術の威力(火縄銃は騎馬や弓矢を完全には駆逐しなかった)、操作性(簡単に扱えるものか)、敵対的技術の可能性、ETC。

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論理は主張と根拠から形成される。

それが人間に納得感を与えるためには、根拠数が1つか2つである必要がある。それ以上の数を人間は扱えない。

考える事の限界。

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複雑な問題を論理的に誤る

「なぜ日本経済が21世紀をリードするのか」(徳川家広著)、「大格差」(タイラー・コーエン著)を読んだ。

以下の共通する論理が感じられた。

◎技術革新についての見解
労働の廉価な代替物である機械が普及すると、労働者には自らの賃金よりも低い費用で仕事をする競争相手が生まれた事になる。経営者は利潤を求めるものなので、労働者の賃金は安く仕事をする機械との競争によって低下する。

産業革命によって労働者の数が減って、賃金が下がり、経営者の利潤は増大する。

⇒現実には、そのようになっていない。

以下は、「なぜ豊かな国と貧しい国が生まれたのか」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-1465.html

以下は、「電力の歴史的影響、情報処理産業への類推」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-2007.html

⇒「なぜ豊かな国と貧しい国が生まれたのか」には、産業革命時の英国における高い人件費が機械の導入の原因であり、機械の導入によって所得が向上したという情報が記述されている。

⇒「クラウド化する世界~ビジネスモデル構築の大転換」には、製造業に必要とされる技能が低下した事で、賃金が上昇したという情報が記述されている。

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徳川家広先生やタイラー・コーエンの意見は、論理的に考えた結果だと思う。対して、ロバート・C・アレンやニコラス・G・カーの意見は調査結果に基づいている。現実を記述したのは、後者であると思う。

論理的に考えた結果が誤るのは、論理がフィードバックを前提にしないからだと思う。

現実には、以下の事象が発生したのではないか?

・機械の導入によって安価な製品が作られる
  ↓
・購買層が拡大する
  ↓
・需要拡大によってより多くの労働力が必要とされる

⇒無自覚的に需要が固定的であるとしているため、労働者が必要とされなくなる結論が導き出されている?

経済的格差が拡大しているとするなら、生産性向上以外の原因が存在するのだと思う。

論理的に考えると、前提条件を固定してしまうのかもしれない。それ故に、現実と照らし合わせて意見を修正する事が出来ない。

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多分、タイラー・コーエンは、「大停滞」(技術進歩が停滞している可能性について)、「大格差」(機械知能による人間代替の可能性について)に続く三冊目の本を書く事になると思う。

タイラー・コーエンの本の中では、社会が複雑化した結果、陰(女性的)な要素が高く評価される事になったとする記述が見られる。

一般的に、女性は男性よりも真面目で指示通りに動き、緻密に仕事をする。複雑化した社会では女性的要素が高く評価されるとしてみる。

陽(男性的)な要素は秩序を乱す存在である。他人に指図される事を嫌い、反抗的で全て自分の方法でやりたい人物は孤立化するとしている。

易経においては、陰極まれば、必ず陽と争う事になるとしている。陰が極めて強いと陽の観を呈するが、陰である限り陽を圧倒する事は出来ない。両竜ともに傷つく事になるとする。

実際、タイラー・コーエンは自説の矛盾を自分で指摘しているように思える。

あらゆる現象が複雑化した結果、物事は断片的にしか理解出来なくなり、説明されても直感的に理解出来なくなる。

学問においては情報収集と情報処理が重視されるようになり、理論モデルに頼る方法論が退潮していくとする。

収拾される情報が過大になると、構築される因果関係が複雑化し、人間には理解不可能になる。全ての構成要素を把握し、どのように結論が導き出されるかを理解出来る時代は終わる。

専門家とは、理論を打ち立てる人間ではなく、機械が出力した結果を解釈したり、機械が読み取れるように情報変換する人間となる。

この見解は、そのまま自らの論理への反証となるため、新しい説を構築するしかないのではないか?

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