姿現すメムコンピューター

日経サイエンス2015年6月号 P71~P75。

記憶(メモリ)と演算(コンピューティング)を同時に実行するメムコンピューティングについて。

現在の計算機械は、処理を行う場合、情報を記憶領域から引き出し、演算装置にて変換し、変換後の情報を記憶領域に再び移す必要がある。

人間の脳と同様に、演算と記憶を同じ素子で実行するメムコンピューターには、省力化と演算効率向上が期待される。情報を、処理を行った回路にそのまま記憶するので、転送する必要が無く、省力化される。この設計は脳に似ている。

世界の計算センターが2012年に消費した電力は前年比で58%増加し、情報通信にかかる電力消費は世界の総電力の約15%に達している。2030年までに、家電製品向けの全世界の電力消費は米国と日本を合わせた総世帯電力消費量に並び、年間2000億ドル程度になると予想している。

国際半導体技術ロードマップの予測では、トランジスタの製造は2016年までに技術的限界に突き当たるとしている。メムコンピューターには、計算速度向上と省電力化の両方を実現出来る可能性がある。

平均的な人間の脳は、毎秒1京(10の16乗)回の処理を実行可能で、消費エネルギーは10ワット~25ワットである。スーパーコンピューターで同様の処理をするには、1000万倍以上の電力が必要である。

人間の脳は、計算機械のように演算と記憶を同一のシナプスで実行するため、情報転送の手間が少ないため、エネルギーを節約可能。

以下は、メムコンピューターの主要構成部品?電源切断後も状態を維持するため、複雑な計算を素早く実行可能。

①メモリスタ
抵抗器(レジスター):電流を抑制する。電力の大きさによって抵抗値を変化させ、その状態を保持する。抵抗値の変化を計算処理とすると、電源切断後も情報を保持可能。

②メムキャパシタ
コンデンサー:静電気を蓄積する。素子の状態である静電容量が印加電圧の履歴によって変化する。蓄積した電荷を演算処理に再利用可能。

③メムインダクタ
コイル:電流を磁場に変換する。電流を通しつつエネルギーを蓄える。

以下は、主要構成部品開発の歴史、現状?

①メモリスタ
1970年代に、カリフォルニア大学バークレー校 レオン・チュアが提唱。2008年には、HP スタンリー・ウィリアムズ等が抵抗値を変化させ、変化後の状態を保持可能な記憶素子を開発。小型化に目処。

②メムキャパシタ
比較的効果な強誘電性材料で作られたメムキャパシタが既に市販されている。安価なシリコン製のメムキャパシタの研究開発が進行中。

③メムインダクタ
現状では大きな磁気コイルが必要で嵩張るため、小型化困難。

**********

2010年、著者達(M.ディベントラ、Y.V.パーシン)のチームは、メムコンピューターが既存の計算機械よりも効率的に演算処理を行う事を、迷路探索問題を利用して実証。

従来の迷路探索アルゴリズムは、連続した小ステップを繰り返し実行して迷路探索を行う。

メムコンピューターでは、迷路の曲がり角全てにメモリスタを配置した回路を考え、入口と出口に単一の電圧パルスを加える。電流は、入口と出口を繋ぐ経路のみを流れ、その経路上のメモリスタの抵抗値が変わる。

⇒メムコンピューターは、既存の計算機械が繰り返し演算しなければ出来ない問題を、一度の演算で処理可能。

現在の計算機械で、大量の整数列の特性全てを計算しようとすると、対象となる整数全てを計算機械に入力し、考えられる特性全てを一つずつ調べるため、処理時間が指数関数的に増加する。整数10個について1秒かかる場合、整数100個で10の27乗 = 1兆年の数千万倍の時間が必要になる。

メムコンピューターの場合、全ての特性を一度の演算で処理可能。情報の出し入れを行う手間の無い、一段階計算法を使用出来る。

**********

メムコンピュータの素子は研究室段階にあり、学術研究機関や一部メーカーが初期バージョンをテストしている段階である。何年も故障無く動作する事を確認する試験には何年も必要。

メムコンピューターを動作させるためのオペレーショングシステムも定まっておらず、実際に制作し、様々なシステムを試行して最適化する必要がある。

著者達のグループは、2013年にイタリア トリノ工科大学 ファビオ・トラベルサ等と共同で、「ダイナミック・コンピューティング・ランダム・メモリー(DCRAM)」を提唱。

計算機械におけるDRAMをメムキャパシタに置き換える事を目的とする。現状の標準メモリーであるDRAMでは、情報の各ビットはされぞれ1つのDRAMに保持されるため、演算には多数のDRAMとトランジスタが必要とされる。

メムキャパシタであれば、上記の迷路探索問題と同様?に2つのメムキャパシタで足りる。1つの素子が入力信号に応じて異なる処理を実行するためで、脳が持つ多相性と呼ばれる能力と似ている?

**********

結局、実用化するにしても何十年もの時間が必要という事か。未来予測系の本を読んでいると、著者自身が特異な未来の実現を望んでいないように感じる時がある。

線形には変化しないのは、技術的側面だけでなく、社会心理もだと思っている。

何もかも壊れるような変化が近未来において実現して欲しいものだ。

人気ブログランキングへ
スポンサーサイト

習慣を作る脳回路

日経サイエンス2015年5月号。P51~P55。

無意識的に行われる行動は、時間とエネルギーを節約する利点があり、日常生活において自然に生じる。しかし、自分の行動を確認出来ないため、習慣は依存症に似る事もある。

習慣が形成されると、意欲に関係無く行動してしまう(強化随伴性)。

<スイス フリブール大学 シュルツ、ロモ>
強化関連学習に対応する脳神経信号を実験で示す。報酬予測誤差信号 = 未来予測の正確性に対する脳の評価。脳は行動を監視し、特定の行動を強化し、意図的な行動から習慣的な行動にシフトさせる。

【習慣のテスト方法】
英国の心理学者ディキンソンが1980年代に考案した方法。実験対象のラットに、レバーを押すと報酬として餌が与えられる事を学習させる。その後、餌に吐き気を催す薬を混入させる等して報酬を不快にする。報酬が不快になった後もラットがレバーを押し続ければ、行動が習慣化したと考える。

⇒現代においては、習慣化の過程を脳回路を観測する事で確認可能

⇒脳内の新皮質(哺乳類の脳の際立った特徴)と線条体(原始的な大脳基底核の中枢領域で、脳の中心部にある)を繋ぐ複数の脳回路が、意図的行動が習慣化する手掛かりとなる?

<マサチューセツ工科大学 グレイビエル、ダートマス大学 スミス>
著者達の実験。習慣化の過程にあるラットの線条体にある脳細胞の電気的活動を記録して分析。

⇒学習当初は、線条体の運動制御領域が活動し続ける

⇒行動が習慣化するに連れて、線条体は行動の最初と最後時だけ
 活発に活動するようになる

⇒行動がパッケージ化され、一つの行動ユニットとなる?

線条体は、記憶に値すると判断した行動の最初と最後に目印を付け、習慣的行動として纏めている?一連の動作を一つのユニットに纏める。

意図的行動には、線条体の別領域が含まれるようであり、選択に意思決定が必要な場合に活性化する。

【新皮質との関連】
著者達のグループは、線条体と伴に動く、下辺縁皮質(新皮質の関連領域)の活動も記録。下辺縁皮質においては、習慣が定着した後で行動ユニットが形成される。

著者達のグループは、オプトジェネティクス(光感受性分子を脳領域に当てる事で、該当化個所のニューロンスイッチをオン・オフする技術)を使用して、下辺縁皮質の習慣への影響を調査した。

以下の結果。

①新たな習慣
下辺縁皮質のニューロンがオフになると、ラットの習慣行動は阻止される。しかし、消えるのは価値が下がった報酬に向かう行動であり、価値を下げられていない習慣に向かう新しい習慣が身に付く。

②古い習慣の復活
上記①の新しい習慣を身に付けた後で、下辺縁皮質を再びオフにすると、前の習慣が現れる。その後、下辺縁皮質を再びオフにしなくとも古い習慣が持続する。

⇒習慣として深く条件付けられた行動は無くならない?抑制された習慣が復活する可能性

③習慣化阻止
学習期間を通じて下辺縁皮質をオフにすると、習慣を獲得出来ない。

【習慣形成の過程】
以下の過程によって習慣が定着するらしい。

①新しい行動の吟味
前頭前皮質と線条体、線条体と中脳が情報交換する。中脳ではドーパミンが学習を補助し、目標に価値を与える。

②習慣の形成
行動を繰り返すと、感覚運動皮質と線条体間のフィードバックループが強く関与し、型に嵌った一連の行動ユニットとなる。

③習慣の刷り込みと許可
習慣が行動ユニットとして格納されると、下辺縁皮質が線条体に働き掛け、半永久的な脳活動として刷り込む?下辺縁皮質はドーパミンによって、習慣的行動を操作している?

****************

話のポイントは2つあると思っている。一つは、脳内の物理的事象を計測可能になっている事。従来は仮説によってしか把握出来なかった脳内の事象を不完全であるが計測、解析している。

二つ目は、脳活動を操作出来る可能性。遥か遠い未来の事だけれど、著者のグループがラットに行っている脳操作技術が人間にも適用される時代が訪れるはず。

倫理的には、このようにして獲得された知見を現実に適用する枠組みの不在が問題だと思う。

人間が世界を理解する方法について何も理解出来ないまま、情報が積み上がっていく。そもそも「理解」とは何のか?考えていると、考えている自分について考える事になるので堂々巡りになる。

多分、人間とは異なる思考過程を持つ何者かを創り出す事になる?

僕が生きている内には結論が出ない問題だと思う。

****************

自分の脳内で何が起こっているかを知る術が無いのだから、僕が僕自身について考える事は全て妄想である。脳活動を全て計測出来たとしても、それを解釈する基盤が妄想なのだから、結局は何も分からない。

しかし、誰もが自分の思想や解釈について確固とした確信を持ってしまう。

その構造や特色、欠陥について何も知らないはずなのに、知っているという確信が存在する。

何も知らないという事、知らないはずなのに知っていると思い込んでいる事。それらを把握する方法は在るのだろうか?

人気ブログランキングへ

伝承を活かすリバース薬理学の挑戦

日経サイエンス2014年10月号P76~P82。

スイス ローザンヌ大学グラーツ、英国 オックスフォード大学ウィルコックスの研究。

自然界由来の薬を探す従来の手法では、植物等から純粋な化合物を単離し、実験室で最適化し、動物で安全性を評価してから人間での臨床試験に進む。この手法による治験薬の95%は臨床試験で失敗に終わる。

単離した化学物質が動物で有効であっても、人間でも有効とは限らない。例えば、試験管による実験では強い抗マラリア活性を示すベルベリン(ケシの成分)は、鼠や人間のマラリアには効果を示さない。米国では、創薬から当局の承認を得るまでに12年の歳月と8億ドルの費用がかかる。

そこで、天然薬探索方法を逆転させる方法論(リバース薬理学)が試みられている。最初に人間で研究し、その後に活性物質を単離する。様々な伝統的薬草を使用している患者を観測し、有望な薬草を特定する。然る後に薬草内の活性物質を特定し、新薬を開発する。

リバース薬理学において重視されるのは、観察的研究?これは観察に基づいて治験効果を推論するもので、患者を治療群と対照群に振り分けるランダム化比較試験とは対照的。

薬の効果の有無を確かめるには、ランダム化比較試験しかないが、非現実的な状況で一部の患者のみを対象に行われる試験には問題がある?患者の経過を記録、解析する必要性。

<後ろ向け治療成績研究、コホート研究>
2002年12月に、スイス ローザンヌ大学グラーツがマリで行った観察的研究試験。マラリアに罹患した患者の治療に使用された植物66種類をリストアップし、メキシコ減算のアザミゲシの葉が有望であると考える。
この情報を、英国 オックスフォード大学ウィルコックスに知らせ、マラリアに対する薬草の効果を調べる臨床試験を行って貰う。
グラーツが過去の事例を調査する後ろ向き研究を行うのに対し、ウィルコックスは治療された患者集団のその後を追跡するコホート研究を行った。

アザミゲシ茶の有効性を調査するランダム化臨床試験を行ったところ、アザミゲシでは患者の89%が回復した。試験の総費用は50万ドル。アザミゲシをマラリア治療に使用すれば、マラリアの治療費を75%削減出来るらしい。

****************

従来の創薬プロセスでは、最初に調べる化合物が多過ぎるため、問題のありそうな化合物は切り捨てられる。リバース薬理学では、効果が高くて安全である事が確実な化合物が候補に上がる可能性が高い。

スイス ローザンヌ大学グラーツ、英国 オックスフォード大学ウィルコックスは、アフリカの数カ国で母乳の出を良くする薬草エイズの症状を改善する薬草を研究する科学者を訓練しており、2013年には、太平洋諸島のパラオで30種の植物を調査して、コーヒーノキと同じアカネ科のヤエヤマアオキと体重減少の関連性やファレリア・ニシダイと血糖値低下の関連性を明らかにした。

2人は、スイス ジュネーヴを拠点とするメディシン・フォー・マラリア・ベンチャーの協力を得てマライア医療の研究を進める。アザミゲシの活性物質を特定し、体内での代謝を調べる。

****************

リバース薬理学は、ゲノム解析等から治療の標的となる遺伝子を特定し、薬物を設計するアプローチを指す場合もある。

無限に対処する方法論の1つだと思う。

人気ブログランキングへ

自由意志なき世界

日経サイエンス2014年10月号 P85~P87から。

人間は常に夢遊状態であると主張する哲学者や神経科学者が増えている。自分の人生を自分の意思で紡ぎだしているのでなく、単に過去の出来事に突き動かされている。

全ての生物は物理法則に縛られている。人間は生物である。従って人間の行動は因果の連なりの結果であり、本人の操作を超えている。

意識的な選択という体験は、当人の行動を引き起こす神経プロセスの結果であり、意識的選択は行動の原因ではない。

①ドイツ ケルン大学 ロッケンバッハによる実験
被験者に、ゲームに非協力的なメンバーを罰する事が出来るグループと、罰する事が出来ないグループのどちらかに加わるか選んで貰う。ゲーム開始時には、被験者の1/3が非協力的なメンバーを罰する事が出来るグループに加わったが、ゲームを30回行った後には、被験者のほとんどが非協力的なメンバーを罰する事が出来るグループに加わった。

⇒この実験に関する説明が解らない。懲罰的なグループが好まれる事の説明にはなると思う。しかし、刑罰によって社会システムが維持される事の説明にはならないのではないか?

②米国 カリフォルニア大学スクーラーの実験
反自由意思の文章を読んだ被験者は無関係な文章を読んだ被験者に比べ、テストでのカンニングが50%増えた。さらに、正答数を実際よりも多く申告する例も多くなった。

⇒自由意思への懐疑は、自分の行動に関する本人の説明責任の感覚を弱め、既存ルールを放棄するよう仕向ける?

③米国 フロリダ州立大学バウマイスターの実験
被験者に自由意思に対して肯定的な文章、或いは否定的な文章を読んで貰う。文章を読んだ被験者達に、他のメンバーに食べさせるトルティーヤの味付けをして貰う。トルティーヤを食べるのは、被験者との協力を拒んだメンバーで、辛い食べ物を好まないメンバーであると事前に知らせる。自由意思の存在を疑う文章を読んだ被験者は、そうでない人間と比較して激辛サルサソースを2倍かけた。

⇒自由意思への懐疑が他者への攻撃性を解放する可能性。

④イタリア パドヴァ大学リゴーニの実験
被験者の頭蓋に電極を付けて準備電位を測定する。自由意思への確信が薄れると準備電位も弱まる。衝動的な反応を抑制し難くなる。

⑤その他
米国 ユタ大学アスピンウォールによる実験では、被告人が精神疾患であると科学的に説明されると、裁判官は軽い判決を下す傾向がある。自由意思の存在を疑うほどに応報的な処罰を支持しなくなる傾向。危険人物を自然災害と同等に扱うようになり、犯罪の抑止や再発防止を志向するようになる?

<自由意思が存在しない世界の可能性>
①倫理規範の進化
18世紀の欧州における啓蒙思想の影響により、奴隷制度や残酷な刑罰等の慣行が道徳に反するとされた事例。人間の思考と行動の生物学的仕組みを明らかにする事で道徳観が変化する可能性。
②無秩序状態
自由意思を懐疑する事により、ルールを順守しなくなる可能性。
③新たな神の創造
神が否定された時代に、法や社会秩序を保つための神の必要性が主張された事例について。もし神が存在しないなら、神を発明しなければならない(ボルテール)。社会が自由意思を再発明する可能性。

*****************

個人的には自由意志は否定されるべき思想であると思っている。

以下は、「自我の哲学史」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-1490.html

日経サイエンスの記事に書いてあるような道徳観念の基盤となるような「自我」は近代になってから偶発的に普及した概念であるのかもしれない。視覚的な思考特性による影響の可能性も面白い。

社会全体が変化していくのなら、過去の社会システムに規定されていた自我概念も変化していくのだと思う。

自由意思を基盤とした応報的処罰を支持する社会は僕にとって生活し辛い。常に迫害される可能性があるからだ。僕は気持ち悪い。周囲を不快な気分にさせる。それだから処罰しても良いという思想だ。僕を処罰しても僕の特性は変化しないから、罰は加速していく。

罰とは許された迫害なのだ。

常に自分が排斥される可能性と隣り合わせで僕は生きている。もちろん僕自身が迫害する側になる事も多い。懲罰によって社会秩序が維持されているという意見は、特定の事象のみを取り出した偏った意見なのではないか?

人気ブログランキングへ

グーグル効果 ネットが変える脳

日経サイエンス2014年3月号 P56~P60。

インターネット(グーグル)の普及が、人間の知性を変化させる可能性について。

人間は、以下のような仕組みを使用して、集団と融合する事で自らの知性を強化している。現代では、計算機械と融合する事による認知機構の変化が発生しているものと思われる。

交換記憶システム:
集団内で、情報を記憶する責任を分散する仕組み。
誰でも精神的な作業を他人に委ねている。新しい情報に対しては、集団内で自動的に事実や概念を記憶する責任が分担される。あらゆる種類の記憶が集団のメンバー間で分配され、特定のメンバーが特定の記憶を保持する事を前提としている。

集団名は、「夫婦」である事もあるし、「企業」であるかもしれない。特定の情報を記憶する責任を他者に委ねる事によって、自らの責任範囲を深化出来る。他者が保有する記憶の種類を知っているだけで、認知リソースを節約可能。

************

グーグル効果:
インターネットの普及によって、情報を記憶しようという衝動が弱まる可能性。

人々はインターネットを交換記憶パートナーとして扱っている。家族や友人に記憶を託すように、コンピューターに記憶を任せる。

************

コロンビア大学 スパロウ等による実験①:
以下の被験者A群と被験者B群に、30種類の雑学情報をコンピューターに入力するよう依頼する。

被験者A群
入力した情報はコンピューターに保存されると伝える。

被験者B群
入力した情報はコンピューターに保存されないと伝える。

⇒コンピューターに情報が保存されると信じた被験者A群の方が、
 情報の記憶が出来ない。
 情報を記憶して欲しいと伝えても、忘れる傾向がある。

コロンビア大学 スパロウ等による実験②:
ストループ課題。被験者に、異なる色で書かれた一連の単語を見せ、単語の意味と関係無く書かれた色を回答してもらう。被験者が回答に要する時間を測定する事で注目度を計測する事が出来る。

以下の条件で2回の質問に回答してもらう。

1回目
簡単な雑学問題に答えた後に、ストループ課題を行う。

2回目
難しい雑学問題に答えた後に、ストループ課題を行う。

⇒難しい雑学問題に答えた後のストループ課題の結果が印象的。
⇒例えば、赤い字でグーグルと書かれた文字の色を回答して貰うと、
 文字色を答えるのに要する時間が有意に長くなる。
⇒インターネット関連以外の単語では、回答までの時間は短い。

回答困難な問題に直面した場合、インターネットで検索する傾向があるため、被験者がグーグルという言葉の意味を無視する事が難しかったものと推定される。

コロンビア大学 スパロウ等による実験③:
以下の段階で実験を行う。

段階1
被験者達に、自分の記憶力を自己評価して貰う。

段階2
被験者達を以下の2グループに分けて、雑学問題に回答して貰う。

被験者A群
インターネットを使用して雑学問題に回答する。

被験者B群
インターネットを使用せずに雑学問題に回答する。

段階3
再度、被験者達に、自分の記憶力を自己評価して貰う。

⇒インターネットを使用して雑学問題に回答した被験者A群の方が、
 自らの記憶力を高く評価する傾向がある。
⇒インターネットの記述を丸写ししたにも関わらず、
 自らの知的能力によって問題に回答したと錯覚する。

インターネットを使用しなかった被験者B群に対して、雑学問題の成績が良かったという虚偽の報告をしても自己評価は高くならない。そのため、インターネットを使用した事による成績の向上によって自己評価が向上したのでなく、インターネットが自らの知能を構成する道具の一つになったという感覚が自己評価の向上に結び付いたと推測される。

検索結果が、自らの記憶の産物として想起されるのだ。

************

インターネットの普及は、「自分は知っている」という感覚を多くの人間に抱かせていると思われる。それは新しい知性の発達過程かもしれない。記憶から解放されたの認知リソースを他の領域に活用する?

************

こうした動向は、マイクロソフトの戦略とグーグルの戦略との対比によって理解出来るかもしれない。以下は、インターネットの記事で読んだ比較。

マイクロソフトの戦略:OS中心
OSと各種ソフトウェアが一体化して分離出来ないようにする。各種ソフトウェアと抱き合わせで販売するため、OSを高価な値段で販売可能。OSの更新を繰り返す事で、他社に対応する手間を取らせる事で競合企業を弱体化させる。
OSと各種ソフトウェアが分離していないため、複雑なソフトウェアが必要になり、改良が困難になる。

⇒OSの変化にソフトウェアが追随する。

グーグルの戦略:インターネット中心
各種ソフトウェアがインターネットに付属するようにする。インターネットを通じて各種ソフトウェアが起動するように軽量なソフトウェアが必要とされる。

⇒インターネットの変化にOSが追随する。

OS中心の戦略を採用する限り、新しいOSは複雑化し高価にならなくてはならない。単体としてのハードの強さを追求するのでなく、全体としてのネットワークの機能を追求しなくてはならない。

プラットフォームを構築する事だ。単体としてのソフトウェアの機能に価値は無い。商品が動作する環境を公開する。必要となるのは、情報を収集し管理する能力であり、情報量と収集速度が向上するほどプラットフォームの価値は向上する。

重要なのは、大きくて高機能な少数派ではなく、小さくて低機能な多数派だ。情報管理によって総体を導き出させば蟻が像を倒す。

************

コンピューターのOSがネットワークに付随するものとなるのならば、人間の人格もネットワークに付随するものとなるかもしれない。

そもそも、現在でも人格は存在していないかもしれない。存在していない可能性は高い。

「自分」は存在しない。「自我」は虚構だ。

人気ブログランキングへ
プロフィール

ABCDEFG

Author:ABCDEFG
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード