嗜好品の文化人類学

読んだ本の感想。

編者:高田公理、栗田靖之、CDI。2004年4月10日第一刷発行。



「嗜好品」とは、生命維持に積極的に効果が無い(栄養源や薬ではない)が、精神的効果によって珍重される物である。生存不可欠な物には経済観念があるが、嗜好品にはそれが通用しない領域がある。

酒、煙草、茶、コーヒー等は植物由来であり、人間の感覚を強く刺激して満足させる。嗜好品の多くは、初期には医薬品と見做され、摂取する人が増えると嗜好品になり、使用量が増えると日用品になる。酒のように飲用だった物が、食糧供給が安定するに伴い嗜好品になった物もある。

嗜好品は儀礼において使用され、会合や神事において、双方が嗜好品を共有する事で共通性を認める効果があった。それが繰り返されると一定の様式が生まれ、社交の道具となる。

世界化する嗜好品には、工業製品として輸送や流通に適した面がある。すると、広く一般庶民が商品として嗜好品を購入するようになり、規範や儀礼の拘束力が弱まる。

それに伴う問題として、例えば、伝統的に酒が存在しなかった地域に酒が導入された場合、「飲酒によって社交する」という伝統が無いために、酔うために酒を飲むようになり、混乱が発生する地域もある。

〇韓国
緑茶や焼酎、煙草を嗜好品とする。

〇イタリア
飲酒は少なく、コーヒーの消費量が多い。ワインは滋養飲料と見做される。

〇タイ・ラオス
嗜好品という言葉が無く、薬(ヤー)という言葉が近い。

〇モンゴル
馬乳酒が有名。

〇ブラジル
清涼飲料水ガラナ(照葉樹系のムクロジ科の植物の実から作る)が有名。

〇インド
パーン(キンマの葉の裏に阿仙薬と石灰乳を塗り、ビンロウジュの実を包んだ物)と煙草が一般的。

〇カメルーン
煙草、大麻(バンゴ)、チョウジ、コーラ等。

〇エチオピア
コーヒー、チャットの野生種が存在する。

〇中国
果物(菓子)、爪子(西瓜や向日葵の種子を乾燥して煎った物)、茶が広く普及している。南方の茶の産地では鮮度の良い緑茶が好まれ、それ以外ではプーアール茶のような後発酵茶が好まれる。

〇イエメン
社交の道具としてのカート(アカネ科の植物の葉)。モスクにてカート・パーティーを行う。農業生産の40%がカートらしい。

〇台湾
酒、煙草、ビンロウが一般的。

〇パプアニューギニア
ビンロウと酒が一般的。ビンロウの実と石灰を付けた胡椒の実を噛むと、軽く酔ったような気分になる。伝統的に酒が無い社会であったため、ビンロウは社交の道具として有効だった。

〇ポリネシア
カヴァという飲料が儀礼に使用される。

〇コンゴ
ピグミー社会では、蜂蜜、象の脂、塩、ヤシ酒が嗜好品となる。野生動物の肉には脂がほとんど含まれず、例外的に脂を大量に含む象の肉は御馳走となる。塩や油は人類にとって当初は嗜好品で、現代人の多くは中毒しているのかもしれない。

〇マダガスカル
海亀が嗜好品となり、牛肉の倍以上の値段で取引される。

〇ネパール
豚肉や濁酒(ハーン)、煙草が一般的。

〇パキスタン
チャイ(濃く煮出した茶にミルクを入れる)、パーン(キンマの葉の中に消石灰やビンロウ樹の実が入っている)、煙草、酒等。

〇シベリア
酒、煙草、茶が嗜好品。従来は酒が貴重品で滅多に飲まない物だったが、ロシア人の入植以後、ウォッカを一気に飲む習慣が普及し、先住民人口が激減した。茶もロシア風に大量の砂糖を入れて飲む。

〇中国(広西チワン族、トン族)
牛を解体した時に手に入る糞便に近い物に藁灰を加え、濾過した物を料理に利用した。苦味を好む文化で、味覚・嗅覚の好みが後天的に形成される事を示す?

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毒殺魔の教室

読んだ本の感想。

塔山郁著。2009年2月20日 第1刷発行。



以下、ネタバレ含む。

1979年10月2日に、那由他小学校 六年六組で発生した児童毒殺事件の真相を2009年に推理する。

殺人事件の調査をしていたはずが、終盤になって女の恐ろしさの話になっている。

他人の男だと欲しくなる女の話で、蓬田美和と千石夏美が男を取り合う。

最後まで、蓬田美和は千石夏美が楠本大輝を愛していたと思っているし、千石夏美は女の話を聞いて覚えている男が好きと主張して、二人の会話は噛み合っていない。

蓬田美和は、千石夏美を虚栄心が強い女と評するが、それは自分自身の姿なのではないか?

そのように解釈している。

【登場人物】
鶴岡泰夫:
那由他小学校 六年六組の元担任。毒殺事件後に退職し、職を転々とする。二年前に癌になった事や、元教え子が書いたと思われる「殺人者もまた死す」を読んで事件の再調査を甥である友田邦彦に依頼する。

蓬田美和(櫻井忍):
那由他小学校 六年六組の学級委員長。小説家になり、友田邦彦から毒殺事件調査を引き継ぐ。

楠本大輝:
那由他小学校 六年六組の学級委員長。毒殺される。

三ツ矢昭雄:
楠本大輝の死の二日後に自殺する。問題児で、楠本大輝から密かに下剤を飲まされる嫌がらせをされており、意趣返しのつもりで砒素を飲ませた。

楠本(米盛)圭吾:
楠本大輝の五歳上の兄。優秀な弟を妬んで密かに下剤や砒素を飲ませる嫌がらせをしていた。楠本大輝が三ツ矢昭雄に行った下剤の嫌がらせは、兄の行為の模倣らしい。自分が砒素を飲ませた痕跡を誤魔化すために、三ツ矢昭雄を唆して砒素を楠本大輝に飲ませる。

千石(米盛)夏美:
那由他小学校 六年六組の女王的存在。当時から楠本圭吾と交際しており、後に結婚する。

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聖家族

読んだ本の感想。

古川日出夫著。平成20年9月30日 第一刷発行。



東北地方を旅する兄弟 狗塚牛一郎(1975年~)、狗塚羊二郎(牛一郎より四歳~五歳下)と、その妹の狗塚カナリア(1986年~)の話。

兄弟は永楽19年(1422年)に中国人 劉達が東北に伝え散逸した武術を探しながら、拉麺の食べ歩きや、武者修行をしている。

狗塚カナリアは、平成元年に長男の秋、その三年後に長女の夏を産み、三人目の子を産むらしい。

東北の歴史や、新興宗教の信者による秋、夏の誘拐の話等。

P124:
十三湊は日本海交易の拠点だ。大陸の青磁の移入口として、列島各地にその名を馳せた
(中略)
十三湊は本州のほぼ北端にあって、海峡を挟んで北海道と一体化していた

P230:
いま、境界を喪失した

P366:
名だけが呼ばれるのはどんな世界でしょう?想像してほしい。全員が同じかばねの世界です
(中略)
一例を挙げれば家族

P404:
殺さない者は滅ぼす側に回る

P444:
近親相姦の罪の意識は日を逐うごとに犀等洲に被害妄想を与えて、ある瞬間からは、それこそが誇大妄想の温床となった

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バブみネーター

読んだ本の感想。

壱日千次著。2017年9月25日 初版第一刷発行。



作者が狂っていると話題だった本。狂っているとは思わなかった。

主人公の高校二年生 甘粕一徹には、高校一年生の義母 綾音(結婚して二秒後に父が死亡)と小学六年生の義妹 雛(兄妻の連れ子)がいて、二人に甘える事が人生の目標になっている。

作者自身が書いていて苦しいのではないかと思った。

①ターミネーター篇
転校生の九条ララァが、甘粕一徹に綾音と雛が未来から甘粕一徹を駄目にするために送り込まれた人造人間であると伝える。

②ストーカー篇
九条ララァの本名は日吉由理香という甘粕一徹のストーカーで、未来からの人造人間は虚偽だった事になる。しかし、雛は本当に未来の甘粕一徹が送り込んだ人造人間だった。

作者は当初、上記①のテーマで物語を書こうとしたけれど、自分が書いた小説が自分で気持ち悪くなってしまい、上記②に方針転換したのではないか。

後半になるに連れて作者の嫌悪が伝わってくるのは僕の気のせいか。

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ともだち同盟

読んだ本の感想。

森田季節著。平成22年6月30日 初版発行。



兵庫県の話らしい。地元の地理に詳しくないと情景が思い浮かばないと思う。

互いの秘密を守り、嘘をつかない「ともだち同盟」の話。

【登場人物】
大神弥刀:
高校二年生。女のような外見と性格。剣道部員。高校生になってから友達同盟に入る。

芝宮朝日:
高校二年生の剣道部員。細川千里に脅迫されて大神弥刀に告白する。伊勢朝日駅が向いのホームに行くためには改札を通らなければならない事から、引き返せない女と自称する。

細川千里:
「今、死にたいですね」が口癖の女子高生。小学校時代は芝宮朝日から虐められており、小学校時代の芝宮朝日の殺人を知っている。

上記の三人が「ともだち同盟」を組んでいる。

話の途中で、細川千里が死亡し、葬式において芝宮朝日が「昔から親友だった」と嘘をついたため、化けてでて幽界の紀伊神谷駅に、大神弥刀と芝宮朝日を閉じ込める。

大神弥刀は細川千里を選んで幽界に留まり、芝宮朝日は現実世界にて二人を思いながら生きていく事にする。

P144:
千里のひどい言葉って、全部実際にやろうと思えばできることだって知ってた?

P170:
数を増やしていけば、ここもどんどんとパブリックな場所に近づいていって単なる人間社会のミニチュアになるに決まっている

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