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ローマ人の物語Ⅷ 危機と克服

読んだ本の感想。

塩野七生著。1999年9月15日 発行。



ローマ皇帝ネロが死んでから、トライアヌスが即位するまでの三十年ほどを描く。

第一章 皇帝ガルパ
(在位、紀元六八年六月十八日―六九年一月十五日)

皇帝ネロの死後、スペイン駐屯の軍団によって皇帝に推挙される。しかし、ライン河上流部を守る高地ゲルマニア軍の司令官ルフスを解任し、帰国させた事で反感を買い、低地ゲルマニア軍司令官ヴィテリウスの反乱が起こる。ガルバは部下のオトーに暗殺される。

第二章 皇帝オトー
(在位、紀元六九年一月十五日―四月十五日)

オトーはルジタニア属州(ポルトガル)の総督を十年続けており、当初はガルパを支持していた。ライン軍団を率いて南下するヴィテリウスに対抗するためドナウ軍団を呼び寄せるが敗北する。

第三章 皇帝ヴィテリウス
(在位、紀元六九年四月十六日―十二月二十日)

皇帝になるも、オトーに従った近衛軍団兵の解任やドナウ軍団への処罰等で恨みをかう。シリア駐屯軍ムキアヌス、ユダヤ駐屯軍司令官ヴェシパシアヌス等の反乱によって倒される。

反乱軍の戦略は、イタリアにはムキアヌスが向い、穀倉であるエジプトを主将たるヴェシパシアヌスが抑えるもの。本国にヴェシパシアヌス本人を攻め込ませず、同胞殺害の不名誉を皇帝になるヴェシパシアヌスに負わせない配慮?

同時に、ヴェシパシアヌスの息子ティトゥスはユダヤでの反乱を鎮圧しており、箔付けになっている。

第四章 帝国の辺境では
69年の内乱は一年で終結したが、動揺は辺境にも伝わり、ダキア族やガリア人等の反乱が発生した。ローマでは西方ガリア等における反乱や降伏は何もなかったように寛容で対処したが、東方のユダヤにおける反乱には厳罰で対処した。

ユダヤ戦没は67年から発生しており、神権国家樹立を目指す独立運動の体裁があった。

第五章 皇帝ヴェシパシアヌス
(在位、紀元六九年十二月二十一日―七九年六月二十四日)

ムキアヌスを協力者として反乱の鎮圧等、ローマ帝国を再興する。73年に国勢調査を行って税収増を行い、国有地の借地最小単位250ユゲルム(62.5ha)未満の土地にも借地料収入を科して国庫収入を増やした。

P200:
西方では、視力を回復した盲人や歩けるようになったいざりを見せられても、好奇心を満足させる程度の効力しか発揮しない。西方は指導者に、超能力でなく人間の能力を求めるのである。つまり、自由な生活を享受しながらの平和と秩序の維持を求めるのだ

第六章 皇帝ティトゥス
(在位、紀元七九年六月二十四日―八一年九月十三日)

ヴェシパシアヌスの長男。39歳で即位するも二年後に病死する。

第七章 皇帝ドミティアヌス
(在位、紀元八一年九月十四日―九六年九月十八日)

ヴェシパシアヌスの次男。睡眠中に暗殺され、死後には独裁者として記録抹消刑に処されている。

120年ぶりに兵士の給料を値上げし、リメス・ゲルマニクス(ゲルマニア防壁)としてライン河とドナウ河の上流が集まる地帯に防衛線を築いた。

第八章 皇帝ネルヴァ
(在位、紀元九六年九月十九日―九八年一月二十七日)

執政官としてヴェシパシアヌスやドミティアヌスの同僚となる。70歳で皇帝に推挙され、トライアヌスを養子に迎える形で後継者に指名する。

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ローマ人の物語Ⅶ 悪名高き皇帝たち

読んだ本の感想。

塩野七生著。1998年9月30日 発行。



第一部 ティベリウス(在位:14年9月17日~37年3月16日)
共和政を引き継ぐと表明するが、二代目の「第一人者」 = 皇帝となる。

緊縮財政を志向し、剣闘士試合等の見世物を制限した。ただし、貧民に小麦を無料配布する小麦法は廃止していない。災害(小アジアでの地震:17年)や金融危機(33年)への公金注入やライン川・ドナウ川防衛線構築等、後のローマで踏襲される前例を作る。

P53:
一人が殺されるごとに、兵士たちの間からは歓声が巻き起った。まるで、つい先頃までは仲間であった者を殺すことで、自分の罪が消えたとでもいうようだった

P176:
自分がやりたくてもやれない夢を、他者に仮託するのはよくあることだ

第二部 カリグラ(在位:37年3月18日~41年1月24日)
前任者ティベリウスの緊縮財政が不人気であった事から剣闘士試合等の見世物を積極的に行い、就任時にあった二億七千万セステルティウスの貯蓄をあっと言う間に食い潰す。

金策のために国家反逆罪法で元老院議員から財産を没収する等して恐怖政治を再来させ、近衛軍団兵士に暗殺される。

P209~P210:
エキセントリックな性格の人の内実は、小心者であることが多い。小心者は、他者の中に味方を開拓するよりも、味方とはっきりしている者で自分の周囲を固めたがる

P239:
常に弱者の立場にありつづけた民族は、被害者意識から自由になることがむずかしい。そのタイプの人々は、拠って立つ唯一のものが被害者意識であるがゆえに、強者に対して過敏に反応しがちなのである

第三部 クラウディウス(在位:41年1月24日~54年10月13日)
50歳で即位。それまで政治や軍役の経験は無く、歴史学の研究をしていた。

カリグラが廃税にした「1%の売上税」を復活させ、派手な見世物を抑制して財政を再建。国税調査や郵便制度の確立。外交ではブリタニア遠征やユダヤ問題・北アフリカのマウリタニア開発等の実績を残す。

P304:
認識とは、哲学的に言えば、理知によって事物の窮極をきわめることだが、普通に言えば、何が重要か、を理解することである

第四部 ネロ(在位:54年10月13日~68年6月9日)
皇帝属州と元老院属州を一本化。将軍コルブロによってアルメニアをローマ勢力圏にする。64年の貨幣改鋳等を行う。

貨幣改鋳は7.8gの純金だったアウレウス金貨を7.3gに落とす等して貨幣発行量を増やす意味合いがあったとする。

功罪半ばする皇帝ではあるが、64年のローマ大火の跡地にドムス・アウレア(黄金宮殿)という邸宅を建設しようとし、ドムスが私邸を意味する言葉であった事から大火への関与を疑われて人気が無くなる。

自らの不人気に怯えて高地ゲルマニア軍司令官、低地ゲルマニア司令官、シリア属州総督を粛清した事から、返って反乱を引き起こし、ヒスパニア属州の総督をしていたガルバに攻められ、国家の敵とされて自死する。

P497:
批判のための批判やスキャンダル志向に堕してしまうのは、それをしている人自身が、自分の言葉の効果を信ずることができないからである

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ローマ人の物語Ⅵ パクス・ロマーナ

読んだ本の感想。

塩野七生著。1997年7月7日 発行。



実子を後継者にする事を欲したオクタヴィアヌスのせいか、人間関係が入り組んでいる。付属している系図を参照しながら読んだ。

紀元前27年にオクタヴィアヌスは共和政復帰宣言をする。実質的には帝政であるが、外面上は共和政になる。

属州は元老院属州と皇帝属州に分けられ、軍団駐屯の必要がある地域を皇帝直轄とした。軍団を指揮する全軍最高司令権はオクタヴィアヌスのものとなる。

以下は、オクタヴィアヌスに認められた権利。一つ一つは共和政でありながら、全てを合わせると帝政になる。

①アウグストゥス
尊称であり、神聖で崇敬されるものを意味する言葉。武力や権力を想像させず、帝政を想起させない。

②インペラトール
元老院に許可された使用権。勝戦の将に兵士が贈る呼び名だが、ローマ全軍の最高司令官を意味する。

③護民官特権
護民官は、共和政の中で最もリベラルな公職で肉体上の不可侵権を認められていた。平民集会の招集権や拒否権(元老院の立案を拒否出来る)があり、元老院が反対する法案でも平民立法の形で政策化可能。

<オクタヴィアヌスの改革>
首都以外の地での投票も認め、違反に対する罰則を法制化。食糧安巡察官等の役職により首都ローマの食糧や水を確保し、同時に属州の再編成を行って属州総督の統治領域を明確化した。

ローマ人の少子化に対して、紀元前18年にユリウス姦通罪・婚外交渉罪法とユリウス正式婚姻法を制定し、それまで私的な問題だった不倫が告訴の対象になるようにし、男25歳、女20歳以上で結婚していない者は相続や税制で不利になるようにした。2万セステルティウス以上の資産を持つ女性は、資産からあがる年間収益の1%を子供を三人産むまで課された。

<軍事戦略>
ライン川、ドナウ川を防衛線とする戦略を実施(ゲルマン人を支配してエルベ川を防衛線とする戦略は破綻した)。

紀元前30年に、それまでの征服戦略から防衛戦略に移行するため、軍団の規模を帝国全域で二十五軍団(一個軍団の定員数が六千人なので15万人)として、ローマ市民権所有者総数500万人ではこれが限界とした(それまでの総兵力は50万人程度)。

不足する兵力は属州民からなる補助兵として、敵襲来に際しては補助兵が支えている間に後方から軍団兵が到着する体制となる。

P74:
体制(テーゼ)を倒しながらも、体制に反対することでしか力を獲得できないという特性をもつ反体制(アンチテーゼ)の不毛を知っていたからこそ、新秩序(ジンテーゼ)の建設を目指したのである

P300:
パンノニアとダルマツィアで勃発した反乱は、このような場合には常の、まずその地に住むローマ人を血祭りにあげ、次いでローマ軍の駐屯地を襲撃することではじまった。しかも、ローマ式の戦略まで学んでいた指揮官は、反乱軍を三分し、一軍はパンノニアとダルマツィアの地の確保、二軍は南のマケドニアへの侵略行、三軍はイタリア北東部に侵入するという、迎え撃つローマ軍も軍勢を三分せざるをえないように戦線を拡散した

P309:
妄執は、悲劇しか生まないのだ。古代の人々の考えでは、あくまでも運命を自分の思いどおりにしようとする態度は謙虚を忘れさせ、それゆえに神々から復讐されるからであった

P314:
征服者に対する被征服者の不満は、個々人がもつかぎりは暴発にまでは至らないからだ。暴発するのは、指導者を得たときである。未開の蛮族で指導者になれるのは、部族の長クラスの、いわゆる支配層に属す人々である。征服者に対して被征服民族の支配層が不満をもつのは、征服される前に自分たちがもっていた権力が、征服者に侵害されたと感じたときなのだ。つまり、軍事力によって制覇したばかりの民族への制覇状態を永続させたければ、被征服民族の支配層がもっていた権力を、侵害せずに温存してやればよい

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ローマ人の物語Ⅴ ユリウス・カエサル ルビコン以後

読んだ本の感想。

塩野七生著。1996年3月30日 発行。



ルビコン川を渡って以降のカエサルの話。帝政実現に尽力する。

カエサルはポンペイウスと対峙する事になる。イタリア本国を押さえたカエサルに対し、ポンペイウスは東方植民地を拠点とした。属州税年間4000万セステルティウスのガリアに対し、小アジア・シリアは年間2億セステルティウスの属州税があり、経済的にはポンペイウス有利だったが、カエサルには本国を支配した事による法の保護があった。ローマ人は法治の民であり、カエサルが独裁官に就任した事の人心掌握効果は大きかった。

紀元前48年にバルカン半島で行われた二人の決戦(ファルサルスの会戦)は、カエサルの重装歩兵2万2千に対し、ポンペイウスは4万5千と数ではポンペイウスが絶対的に有利だったが、ガリアで実戦を経験したカエサル配下の兵に対し、ポンペイウス側の兵は紀元前63年に東方制覇が完了した後は本格的な戦闘の経験が無かった。特に百人隊長に代表される中堅指揮官は圧倒的にカエサルの方が上質だったとする。

ポンペイウスは自軍の騎兵戦力が7千とカエサル側の1000に対して優位にある事を活かし、騎兵を左翼に集中してカエサルを包囲しようとしたが、カエサルは40代前半のベテラン兵だけを集めた軍団を編成し、騎兵に対して立ちはだかる役目を課し、機動性を殺ぐ作戦を実行して勝利した。

<カエサルの改革>
ローマは共和制下にあった創立当初よりも広大になり、多民族・多宗教・多言語の国家となったため、それまでの毎年選出される執政官二名を元老院が補佐し、市民集会での投票で最終決定がなされるシステムは現実的でなくなっていた。

元老院に所属するのは本国に住むローマ市民に限られ、ローマ市民権所有者が百万人に達する状態では直接民主制は機能しない。

カエサルはユリウス暦(ローマ世界のどこでも使える暦)制定、貨幣発行(横顔を彫らせる通貨はローマではカエサルが初)、ローマ市民権の範囲拡大(北伊属州の自由民全員への市民権授与)等を行った。

元老院に属州ガリアの部族長を入らせ、市民集会は追認機関となった。カエサルは終身独裁官として事実上の皇帝となった。

カエサルは紀元前45年に暗殺され、養子のオクタヴィアヌスが、カエサルの部下だったアントニウスと協力・対立しながら改革を引き継いでいく。

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ローマ人の物語Ⅳ ユリウス・カエサル ルビコン以前

読んだ本の感想。

塩野七生著。1995年9月30日 発行。



ローマを帝政に移行させたユリウス・カエサルの半生。共和制に反旗を翻すまでを書く。

弁護士、将官とキャリアを積み、27歳で神祇官に抜擢された事が躍進の切っ掛けとなる。37歳で最高神祇官となり、元老院議員としてスペインやガリア属州で実績を積み上げた。

当時のローマはポンペイウス(有能な将軍)、クラッスス(金持ち)の勢力が強く、カエサルは40歳の時に二者と三頭政治の協約を結ぶ(紀元前60年)。

ポンペイウスが旧部下を動員してカエサルの執政官当選を助ける代わりに、カエサルはポンペイウスの旧部下に農地給付をする。二者ではポンペイウスが強過ぎるため、クラッススを取り込んだ。

紀元前56年には、ラヴェンナで再度、ポンペイウス、クラッススと話し合い(ルッカ会談)、スペインをポンペイウス、シリアをクラッスス、ガリアをカエサルの勢力範囲とし、各々が五年間の属州総督となる事にした。

ガリア平定に成功したカエサルの勢力は増すが、紀元前50年末で属州総督の任期が切れ、後任は元老院が決めるため、紀元前48年の執政官選挙までカエサルは軍事的に無防備な状態になり、元老院派からの告発が行われる事は必至だった。

カエサルはルビコン川を越えて本国に攻め込む事を決意する(ルビコン川は本国と属州の教会であり、軍団を解散せずに入国する事は国法違反になる)。



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