悪党重源

読んだ本の感想。

高橋直樹著。2010年10月15日 第一刷発行。



十二世紀の日本で宗教を利用した起業活動を行う重源の話。自らが師を殺害した過去があるため、弟子の鑁阿に怯えている。

以下は、Wikipediaの『重源』の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8D%E6%BA%90

【登場人物】
重源(俊乗坊):
仏教を表看板にして、交通路や港、大仏造営を行う企業家。

鑁阿:
重源の弟子。幼少期に片目を失い、成長しては重源を庇ってもう片方の目も失って全盲になる。

西光(阿波ノ君):
重源の兄弟子。師匠の善宝を殺害後、朝廷の実力者 信西に仕え、平治の乱(1159年)で信西が殺害されると後白河院の側近になる。加賀の国司となった近藤一族の長者。

【用語】
勧進:
寺院の建立や修繕等のため、信者達に費用や労働力を奉納させる事。

犬法師:
人身売買に従事する者達。

宋版一切経:
「一切経」とは「真物の経典、全て」の意味で、中国の僧、智昇が撰した五千四十八巻の経典を指す。宋版は983年に皇帝の勅命によって完成し、仏の教えの真贋を判定する基準として重宝された。

金剛峯寺の覚鑁は、「大日如来と阿弥陀如来は同一」と主張し(真言宗では大日如来のみが宇宙の根源)、自らの理論の典拠となる資料を探している。

【あらすじ】
〇家督争奪
17歳の重源(三郎太)は、家督係争によって実母を殺害され、敵討ちのために異母兄を殺そうとするが、誤って首藤兵庫助(源氏譜代の郎党)を殺害してしまい、源為義の報復を恐れ四国に逃れる。

讃岐国 曼荼羅寺の善宝に弟子入りし、土木技術を学ぶも、19歳の時(1139年)に仲間達と師匠を殺害して財産を奪う。

〇宋版一切経
22歳になった重源は、畿内に帰るも身柄を補足され、金剛峯寺の覚鑁(伝法院派)から、源氏との遺恨を水に流す起請文と引き換えに、宋版一切経を調達するよう依頼される。

重源は自らが宋へ渡り、宋版一切経を入手し、27歳で畿内に帰還。1152年には醍醐寺円光院の理趣三昧衆になる。

〇事業拡大
1167年に47歳の重源は二度目の渡宋をする。宋の技術を用いて、天王寺(大阪湾)を起点とする東西の経済循環路を構築しようとするが、物流網の起点での鉱物採掘に失敗。

借金の800貫文を西光に支払ってもらう。

1178年に西光は山法師を従えて高倉天皇を確保し、平氏に代わって支配権を確立しようとするが、高倉天皇を奪還されて失敗する。

P251:
朝廷を司る大臣公卿は、平安王朝のながきにわたる前例の積み重ねの中で生きてきた。前例のない事態に遭うと、もうどうしてよいかわからない

P279:
平家の兵力は圧倒的に大きい。しかし印璽なしにそれを行使すれば、盗賊と同じである。天皇を聟に取るまで台頭した平家が、どうしていまさら盗賊に成り下がれよう

P306~P307:
多くの者を死に追いやった頼朝は、いまこの場に出現した光景に極楽浄土を見ている。そこに来世を想定し、現実から離れることによって、心の平安を得ようとしている
(中略)
重源はそこに来世を想定せず、眼の前の光景が血みどろの穢れから生まれてきた現実を、あるがままに受け入れていた

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図解雑学 電池のしくみ

読んだ本の感想。

著者 株式会社ユニゾン。2004年3月21日発行。



<電気を生み出す化学反応>
ステップ1:
電気を通す液体(硫酸液等)に、プラスの性質を持つ物質(銅板等)とマイナスの性質を持つ物質(亜鉛板等)を入れ、電線で繋ぐ。

ステップ2:
亜鉛板から亜鉛(Zn)が電子を残して硫酸液に溶け出して硫酸亜鉛(ZNSO4)になる。その結果、硫酸(H2SO4)から水素がはみ出し、銅板に吸い寄せられる。

ステップ3:
銅板に付着した水素原子(プラスの性質を持つ)が、亜鉛板の電子(マイナスの性質を持つ)を電線を通じて引き寄せるため、亜鉛板から銅板へ電子が移動して電流が発生する。電子を得た水素原子は水素ガスとなる。

電流は、硫酸液と亜鉛板の化学反応が進み、電解液が硫酸亜鉛と水になるまで続く。

<電流について>
原子は、プラスの電荷を持つ陽子と、マイナスの電荷を持った電子が引き合いながら成立している。原子を摩擦したり、加熱すると電子が原子核の周囲軌道から飛び出して摩擦電気となる。

電流は、原子から電子が飛び出し、プラスの性質を持つ原子に引き寄せられる事で発生する。液体の場合は、混入した物体が溶け出し、プラスの性質を持つ原子とマイナスの性質を持つ原子に分離(イオン化)する事で電流が発生する。

〇水素原子のイオン化
原子が科学的に安定した状態は、最外殻の電子軌道に電子が0個か8個の状態。

水の中に硫酸を混入させると、水素原子(最外殻に電子が1個)は安定するため(最外殻の電子を0個)に、するため硫酸(最外殻に電子が6個)に電子を渡し、電気的にプラスの電荷を持つ。

逆に硫酸原子は水素原子2個から電子を受け取り、最外殻の電子が8個となり、マイナスの電荷を持つ。

水素イオンと硫黄イオンは化学的に安定しているが、電荷はプラスとマイナスになり、電子が移動し易くなる(電解液)。

〇電極
電解液に電流を発生させるには、電極として電解液に容易に溶ける物質が必要になる。ただし反応が早過ぎるとすぐに反応が終了してしまうため、金属が使用される事が多い。

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スパイスの人類史

読んだ本の感想。

アンドリュー・ドルビー著。2004年12月24日 第1刷。



第1章 世界史のインセンティブ
スパイスとは料理に使用される香料であり、移植困難な物が供給の少なさ故に高価になり、交易を促進した。他に一世紀頃に絶滅したシルフィウムの話等。

第2章 スパイス貿易の起源
<モルッカ諸島>
スパイス諸島と呼ばれ高温・高湿度が島々を肥沃に下。

〇ジンジャー
中国南部とインドネシアに野生種が群生。紀元前後にはローマ等で、体を暖める、消化を助ける等の作用が注目された。

〇砂糖
中国南部に自生する竹蔗が原種とされる。

〇ビャクダン
軟膏として使用された。

<アラビア半島>
メソポタミアやエジプトでの祝祭にスパイスが使用された。

〇メッカ・バルサム
アラビア南部の代表的スパイス。樹脂が髪につける軟膏の材料として使用された。

〇シナモン
紀元前七世紀頃には地中海に到達。歴史的はスリランカとインド南部が産地として有名で、紀元前二世紀の中国では香料の中で特に効能があるとされ、南方からの貴重な輸入品だった。

〇デジパット
香油に使用される香料の一つで、ローマ時代には四川省山岳地帯からインドを経由してローマに輸出されたらしい。

〇麝香
400年頃にローマ帝国に入る。強い香りから強い効き目が連想され、薬として使用される。

第3章 母なるマレー群島
〇クローブ
一世紀頃にローマ人に知られるようになる。中国では丁香として知られており、七世紀の宮廷薬理学者 蘇敬は皇帝に案件を奉上する際に、クローブを口に含む事を勧めている。
現在では大半がインドネシアで消費されており、クレテックという紙巻煙草の約60%がタバコの葉で、約40%がクローブとスパイスの混合。

〇ナツメグとメース
イランの古王国パルティアの宮廷で使用された珍貴なスパイス。ナツメグはニクズク科の常緑高木の美で、ナツメグ(乾燥させた種子)、メース(種子を包む繊維質の仮種皮)、果実全体の三つのスパイスになる。

〇クベバ
胡椒の一種で中世欧州や中国ではある程度普及していた。

〇樟脳
解毒剤や虫除けとして使用された。多くの文化では死体の防腐処理に使用される。

〇ベンゾイン
九世紀頃に中国に伝わり、香に持続性がある事から、他の香料と組み合わせて使用された。

第4章 かぐわしき東南アジア
〇竜涎香
マレー群島から少し離れたニコバル諸島の特産品だった。九世紀頃に中国で知られるようになり、香料として使用された。

〇沈香
冷気を遮る化粧品として使用された。

第5章 中国、悠久のスパイス
中国の『楚辞』に収録されている「離騒」では、芳香植物やスパイスで政策や気分を象徴させているらしい。他の漢詩でも感傷的表現に香料植物を用いる手法がある。

〇山椒
四川料理に多用される。

〇ガランガ
ジンジャーの一種で根茎を使う。

〇ルバーブとリコリス
ルバーブはチベット産の大黄として知られており、十世紀頃の中国、ペルシア、欧州の医師達の関心を集めた。同じく中央アジア原産のリコリスも甘草として知られており、強壮剤として使用された。

〇薬用人参と八角
中国の薬用人参は十七世紀半ばに欧州でも知られるようになり、中国でも需要が高かったため、十九世紀初頭には北米で発見されたアメリカニンジン(サン)が中国に輸出された。

八角は新顔の中国産スパイスで、五香粉や中華出汁に入っている。

第6章 スパイス王国、インド
インドとスリランカは、東南アジアのスパイス産地と欧州、アラビアのスパイス産地と中国を結ぶインド洋航路の中央に位置し交易が盛んだった。

紀元前三世紀にインド北部を支配したアショーカ王は香料植物や薬用植物の移植に力を入れており、ペルシア帝国やアレキサンドロス大王の東征等によっても様々な種子がインドに齎された。

〇プチャク(コスタス)
カシミールが産地でインダス河口の港から出荷された。

〇スパイクナード
インド北部高山のオミナエシ科の草と葉と根から抽出される精油。

〇長コショウ
インド北東部のベンガル、アッサム地方原産。ケララ地方にも移植されている。2000年近くの間、インドの輸出品の中で最も高価だった。中央アメリカで第三の長コショウ(チリ)が発見された結果、十六世紀末から値下がりしたらしい(黒胡椒の1/12)。

〇黒コショウ
インド南部原産の蔓性植物ピペル・ニグルムから採れる。ローマ帝国初期頃に、季節風を利用してインド南西部とローマが交易可能になると大規模栽培が行われるようになる。後にジャワ島やスンダ列島、スマトラ島、マダガスカル島、マレー半島等でも栽培される。

〇ターメリック
中国では血液凝固剤として出血に処方される。高価なサフランの代用としても使用される。

〇レッド・サンダーズ
白檀の代用品。

〇ゼドアリーとゼルムベット
解毒剤として用いられた。

〇アモムムとカルダモン
両方とも似たものであり、アモムムは紀元前三世紀頃からの西洋で需要があったらしい。アモムムは整髪料や香料入りワインに用いられ、カルダモンはコーヒーの香り付けに使用された。

第7章 恵み多きアラビア
アッシリア帝国やペルシア帝国はスパイスを貢物として要求した。

〇グッグル
没薬に似た香料。

〇アサフェティダ
シルフィウムに似たスパイス。

〇乳香
アラビア南部に生えるボスウェリア・サクラの木が採れるゴム質の樹脂。

〇没薬
アラビア南西部とソマリアに生えるミルラノキが採れる樹脂。

第8章 地中海世界の繁栄
ローマでは香料を気前良く使用するのが富貴の証明だった。古代ギリシア以降、香料をワインに入れて飲む風習がある。

〇コリアンダー
ギリシャや地中海東部原産。肉料理やシチューの付け合わせに良く使用される。中国の文献には六世紀から登場し、タイ料理にも使用される。

〇クミン、キャラウェイ、アニス、アジョワン、ニゲラ
地中海地方南部、東部の伝統料理に良く使用される。

〇マスタード
紀元前2000年頃のギリシャの遺跡から種子が出土している。

〇ケシ
穏やかな芳香を持つ干した種子と、強力な麻薬である乳液(アヘン)が採れる。

〇マスティック
キオス島南部の村にしか生えないピスタキア・レンティスクスの変種から採れる樹脂。チューインガムの原種とも言われる。

〇ストラックス
シリア産の木ステュラクス・オフィキナリスから採れる樹脂。

〇サフラン
染料、香料として使用される。

第9章 新大陸での発見
〇ウチュ、ロコト、ウルピカ
ウチュ(ペルー産唐辛子)はインカ帝国の料理に多用された。ロコト(太い唐辛子)はピーマンと似たような調理法(種子を取り除き、中に挽肉やチーズを詰めて焼く)で食べられ、ウルピカ(サクランボに似ている)は珍重された。

〇ピンク・ペッパー
傷薬にもなった。

〇コカ
重労働を癒す興奮剤。

〇チョコレート
食用だけでなく日焼け止めとしても使用された。

〇バニラ
メキシコに群生する蔓性植物。1840年頃に人工授粉が発明され、マダガスカル島やレユニオン島に移植された。

〇チリ
メキシコの香辛料。

〇タバスコ・ペッパーとスコッチ・ボンネット
トウガラシ属の種。

〇カネラ
野生シナモンとして知られる。

〇ペルー・バルサム
傷薬として使用された。

第10章 人類史としてのスパイス
古代からスパイスは交易によって入手されていたため、史料に書かれている事は伝聞や憶測に基づくものが多い。古代からスパイスは栽培地とは異なる遠隔の異郷で使用されるている。

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サファイアの書

読んだ本の感想。

ジルベール・シヌエ著。1998年4月25日 第1刷発行。



1487年のスペインが舞台。

異端審問にて処刑されたユダヤ人アベン・バルエル(67歳)が、神が書いたとされる『サファイアの書』の所在を記した暗号を残す。暗号は三分割され、サムエル・エズラ(ユダヤ人ラビ、70歳くらい)、シャヒル・イブン・サラグ(アラブ人シャイフ、50代)、ラファエル・バルガス(フランシスコ修道士、28歳)に遺され、三人は探索グループを組んで暗号を解く旅に出る。

書には人間の基本的議論に対する答えが記されているらしい。

処刑されたアベン・バルエルの住居から、暗号の一部を入手した異端審問長官等は、キリスト教の正統性が脅かされる事を恐れ、イサベル女王の友人であるマヌエラ・ビベロ(34歳)を探索グループに紛れ込ませスパイをさせる。

暗号によって示される六つの町(ウエルバ、サラマンカ、ブルゴス、テルエル、カラバカ、グラナダ)を結ぶと六芒星になり、これらの町がある王国(セビーリャ王国、レオン王国、カスティーリャ王国、アラゴン王国、ムルシア王国、グラナダ首長国)を結ぶ六芒星の中心にあるトレドのモンタルバン城に『サファイアの書』があると導き出す。

『サファイアの書』に書かれる内容は、三人が読む毎に変わる。

サムエル・エズラ(ユダヤ教徒)が読んだ場合:
私はおまえの父の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である。
私はおまえを称える者を称える。
おまえを呪う者には永罰を与える。おまえによって地上のすべての国は互いに称えあう。
私はおまえと契約を、代々不滅の契約を結んだ。
おまえと、おまえのあとに来るおまえの民の神となるためだ。

シャヒル・イブン・サラグ(イスラム教徒)が読んだ場合:
ここにコーランがある!
これにはいかなる疑念の余地もない。
これはアッラーを畏れる者、神秘を信じる者の指針である。
無言の輩について言えば、おまえが警告しようがしまいが、彼らにはまったくどうでもよいこと。彼らは信じないのだから。
「ユダヤ教徒とキリスト教徒以外は誰も天国へ入れない」と彼らは言うが、それは彼らの虚しい願いである。
おまえたちの神は唯一の神!
慈悲深く、慈愛あまねきその神をおいてほかに神はない。

ラファエル・バルガス(キリスト教徒)が読んだ場合:
あなた方にははっきり言っておく。私は門である。
私を信じる者は私を信じるのではなく、私を遣わされた方を信じるのである。
私は光。私を信じる者が誰も暗闇のなかにとどまることのないように世に来たのだ。
私は父のなかにあり、父は私のなかにあられる。父が子によって褒め称えられるよう、あなた方が私の名によって願うことはすべて叶えよう。
あなた方に耳を傾ける者は私に耳を傾けるのである。あなた方を拒絶する者は私を拒絶し、私を遣わされた方を拒絶するのである。

P68:
人間の自己の思索で得られた結果をどのような形でとらえ、表現してきたかを調べてゆくと、特定の観念に特定の図形、もしくは色を当てはめるというこの方法に突き当たるのです

P218:
人は太陽を見ているけれど、太陽は絶対に人を見ない。ただ焼き尽くすのみです

P372:
この戦いは不公平だ。春と秋が戦っているようなものだ

P553:
同じ光景が二人の魂をとらえていること、そのなかには人間の愚かさ、狂気、心の狭さ、自尊心が映し出されている

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経済学の犯罪

読んだ本の感想。

佐伯啓思著。2012年8月20日第一刷発行。



経済を以下の二つから解釈する。資本は利潤を求めて土地を超えるが、生産は特定の場所で具体的個人を必要とする。

①市場(交換の経済)
広範囲を移動する資本による利潤機会を富の源泉とする。

②国家(生活の経済)
自らの勢力範囲内の土地と労働を富の基礎とする。

人間は先行観念に寄り掛かって思考する(ミシェル・フーコー:認識論的な布置、カール・マルクス:イデオロギー)。現代では「自由貿易の教義」が無条件に信じ込まれているが、それは冷戦時代に社会主義への対抗上、生まれたものであり、グローバル経済における自由主義は必ずしも正しくない。

従来の景気循環は実体経済主導(技術革新や過剰投資等で景気の波が生じる)だが、1990年代以降、金融主導による経済不安定化が生じている。

〇産業型成長モデル
フォーディズム(生産過程標準化、大量生産等の戦後米国型産業社会型)を基にする。

以下の循環。

技術革新 → 大量生産 → 所得上昇 → 大量消費

〇金融型成長モデル
以下の循環。

金融市場での革新 → 金融市場での優位 → 資本流入 
→ 消費拡大

成熟段階にある先進国が既存産業で投資をしても、新興国に対して収益が少ないため、金融経済への転換が発生した。

市場中心主義は需要要因を重視せず、供給が需要を生み出す(欲望は無限)とし、マネタリズム(デフレは貨幣供給量過小によって齎されるとする)によって生産能力増大と金融緩和を志向する。過剰に市場化が進展すると、生産要素の規制が減少し、安定的に生産を継続する事が困難になる。

従来は国家が市場外で管理・監督を行っていたが、現在では財政や為替を通じ国家までが市場に従属している。それは市場が不安定化した時の管理者不在を意味する。

そうした環境変化によって観念は以下のように変化した。

①人間
人々は与えられた条件の下で合理的に行動する → 
人々は不確定な状況で行動するため合理的でない

②貨幣
物的満足が主で、貨幣は実体経済の補助手段 →
貨幣は独自価値を持ち、欲望を掻き立てる

ケインズは投機資金が金融市場に流入し、実体経済が衰退する事態を考え、不況時に貨幣供給量を増加させても実体経済を刺激出来ないと考えた(流動性の罠)。その場合は政府による実体経済への資金誘導が必要となる。

③欲望
欲望は無限で、資源は有限であるため、希少資源配分が重要 →
欲望は他者との関係の中で作られ、無限ではない。過剰な巨大生産力の処理が問題になる

人間は欲望するが、欲望対象は他者の模倣である。相互模倣は無限の競争を齎す。

<経済学の問題>
科学の特質は価値 = 善悪を含まない事にあるが、解釈を含む経済学では自然科学的な意味での正しい事は不可能。実証でなく価値観が重要になる。

それ故、現実の社会変化による価値観の変化が経済学を変化させていく。

1980年代以降、市場中心主義の新古典派経済学は経済行動を合理的に説明しようとして、数学的表現(形式化)を追求し、普遍性を表した。

同時期にマクロ経済学の分野でもケインジアン(財政・金融政策の有効性を説く)に対して、「マクロ経済学のミクロ経済学による基礎づけ」が行われていく。総需要と総供給の均衡で物価と生産量が定まるというミクロ市場理論をマクロ経済に当て嵌めたようなもので、総需要と総供給が一致しない場合は価格や賃金が変化するので、長期的には失業は問題にならない事になる。

ミクロ経済学(価格変化による市場調節)とは異なったマクロ経済学の否定。

それでは金融市場(貨幣)を理解出来ない。

〇市場経済における不測の事態
貨幣は生産過剰を生み出す。

不確定な将来に対して価値を保蔵するのが貨幣であり、一部の貨幣は流通から引き上げられ、貨幣経済は実体経済に比して不況圧力がかかる。金融市場は引き上げられた過剰貨幣を投資に振り向けるために発達したが、それが投機を生み出して実体経済を混乱させる(ハイマン・ミンスキー:金融的不安定)。

常に貨幣は一部が保蔵されるため、生産可能な物が全て消費される事態は起こらず、実体経済での不況を解決するには人口増加や技術進歩による経済成長が不可欠になる。

<象徴としての貨幣>
貨幣は具体的意味を持たない無駄で過剰な記号(ゼロ・シンボル)であるが故に全ての物と交換可能である。

貨幣を持たない原初社会では過剰に生産された物は浪費されたが、現代では貨幣として蓄積され経済成長を義務付ける。現代社会における経済問題は、過剰(過剰な資本、過剰な生産)を処理する事にある。

成熟社会においては生産能力を吸収するだけの欲望が形成されない。

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